ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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 法解釈は本作独自のもので、作者は国際法(戦時国際法含む)、民法に関する正規教育を受けておりません。
 ガバのところは平にご容赦を。


停戦条約(ご契約)は計画的に

 バイクの合金製の心臓にオイルの血を流し、ガソリンの排気(いき)をさせ、高速で景色が流れていく。爆煙の立ち上る方へ。うーん、誰かが「燃料を燃やすことほど楽しい事は無い」と言ってたが、わからんでもないな。振動と流れる景色、風を切る感覚が気分を高揚させる。

「みんなで免許取ってバイクで遊びに行きたいですね!」

「そうだね」

 ツーリングかー。それもいいね。なんて思えてたのは一瞬で、加速中にカイザーPMCらしき連中と交戦している便利屋とすれ違った。突如突っ込んできた僕達に算を乱すカイザーPMCの連中をすり抜けてかわし、更に基地方向へ。何かの車両が無理矢理突っ込んだのか、ずたずたになって引きちぎられたレーザワイヤー(有刺鉄線の棘の代わりに剃刀の刃みたいなのがついてるもの)をさらに躱して基地の方へ。撃破された車両やヘリ、気絶してるらしいオートマタが転がる中、これまた無理矢理吹き飛ばされて門になっている塀の中へ滑り込む。

 入って200mほど右手奥に小鳥遊ホシノさんを除くアビドス勢と先生がいる。先生の指揮統制を受け入れるかどうか、まるで拡張現実(オルタナ)コンタクトをつけているかのような表示が左上に表示される。えっ、どうなってるんだこれ。アロナちゃんパワーか?ローカルコトダマ空間に無線アクセスしてるのか?

「レイサちゃん、見えてる?」

「はい!先生の指揮に、っていうのですね!」

「3時方向、撃ち漏らしの航空機が見える。あれを喰って戻ってくるから、先に合流して」

「"バイクの2人、レイサとイヴは味方!撃たないで!"」

 アビドス勢の右側をすり抜けざま、宇沢レイサさんが後部座席を軽く蹴って飛び上がり、空中でシューティング☆スター(STG)を2連射。僕は左上の選択肢『いいえ』を選ぶ。

「先生、あの航空機を仕留めたら戻ります」

「トリニティの守護騎士、宇沢レイサ参上です!」

「ぅえっ?!トリニティ?!あっ、でもイヴちゃんと……イヴちゃんの友達よね!」

「はい!イヴちゃんのお願いで来ました!」

「助かる。援護する」

『お願いします!』

「行きましょう~☆」

 何か一瞬背中に圧を感じた気がしたけど気のせいかな。前線(タンク)を張れる宇沢レイサさんがいたらより戦闘効率が上がるはず。ともかく離陸しようとしてるあの機体を喰ってしまわないと。アクセルを開いて更に加速。

 砲弾で穴だらけになってまだ黒煙も上がっている滑走路を弾痕をかわしながら離陸しようとするカイザーPMCの茶色に塗られたF4Fっぽい航空機……F4F?!まあティーガーとかが動いてるしおかしくはないか……?が見える。良い腕なんだろうな、多分。あんな機体でも飛ばれたらヘリには厄介過ぎる。AKIRAの金田バイク滑りっぽいかっちょいい止め方をして、盾を持ち上げウッドペッカー(30mmMG)でつついてやる。曳航弾を含んだ火線がグラマン鉄工所(ワークス)の頑丈な機体を絡め取りあっという間に火を噴かせた。もう機首引き起し速度(VR)どころか離陸速度(V2)だったろうに、当たりもしない機関銃を撃ちながら僕の頭上をすり抜け、100mほど先の空き地で不時着してパイロットのオートマタが座席から逃げ出していく。やっぱり腕が良かったんだろうな、多分。喰えて良かった。滑走路の奥に並んでいる損傷が少なそうな航空機の列を念のためウッドペッカーで2往復撫でしてから、アビドス勢の方に向けて再度バイクで向かうことにする。

 

 わらわらと沸いてくる連中にバイクで走りながら30mm機関砲弾をばらまきつつ突破する。背後から挟撃も考えたが、こっちを先に潰す判断をされたら不味そうだ。今度こそ先生の指揮下に入り……バイクから降りた瞬間、銃声が止んだ。肩幅のでっかいオートマタがPMCを制止したようだ。あー、カイザーPMC理事のおっさんかあれ。タッパのある先生よりもさらにでかい。無言でにらみ合う2人。

 砲撃は止まってないので、基地が重砲で叩かれている爆音が定期的に響き渡り、遠巻きに飛んでいるヘリの音が、ん、もう1機ヘリが飛んできた。連邦生徒会とシャーレのマークが描かれたCH-53……Kかな?CH-53Kっぽいヘリが爆音を上げて降りてきた。さすがに連邦生徒会マークの機体に発砲しようとするあほはいないようだ。降着を待たずに奥空アヤネさんが飛び降りてきてこっちに走り寄ってきた。

「アヤネちゃん!」

「みんな!……と……」

「初めまして!トリニティの宇沢レイサです!」

「イヴちゃんと一緒に手伝いに来てくれたんですよ♠」

「他にも手伝いに来てくれてるのですが、後で……」

 これでアビドス勢はどっかで新人研修だか入社式だかをさせられてる小鳥遊ホシノさん以外は全員揃ったか。ええやんええやん。

 ドンパチやってる最中にも関わらず楽しげなこちらを見て地団駄を踏みかねない勢いでカイザーPMC理事が怒鳴る。

「何故だ?!散々痛めつけてやった!それでも毎日毎日楽しそうに!もはや非公認組織でしかなく、廃校寸前の貴様ら如きに……!」

「"アビドスの廃校対策委員会は非公認組織じゃないよ"」

「何だと?」

「"今の連邦生徒会なら、事前に電話しておいて書類を送れば、1~2時間で認可が下りるからね"」

 事務処理機械(紙噛くん)だけじゃなくて行政事務全般に手つけたって言ってたけど、そこまでちゃんと機能するようになってるんだね。まーアビドスの現状見ると活動自体には期待できないけど。

「あんたみたいな嫌な奴に負けるわけないでしょ!」

「年貢、いえ、租税の納め時ですよ☆」

「ん。ホシノ先輩を返して」

「これ以上の抵抗は無意味です」

 お前達を同化する?いやお断りだなあ。資本金とか施設だけなら欲しいかも。

「ぐ……だ、だが、退学した元生徒がどこに就職しようがそれは勝手ではないか?小鳥遊ホシノは我が社の社員だ。少なくとも退職には2週間前に申し出が必要なのは知っているだろう?」

 急にまともな理屈出してくるのやめーや。その前提に脅迫がある癖によお。

「"退学は認めない。先生である私が許可してないからね"」

「貴様……どこまでも邪魔を……!」

 11時方向の防壁が吹き飛ぶ。3,000mほど先に、黒い制服の一団がなだれ込んでくるのが見えた。

「何だ?!」

「あれは……ゲヘナ風紀委員会です!」

 呆けたように立ち尽くしていたオートマタ達の一部が、慌ててきびすを返し風紀委員会の方に向かっていくが、白いもふもふの小柄な生徒1人の放つ銃弾にバタバタと倒されていく。あー空崎ヒナさんも来てくれたんだね。終わったな。まだ小鳥遊ホシノさん回収できてないから風呂と飯はお預けだけど。

 重砲の榴弾が炸裂する爆音、風紀委員会の鬨の声、遠巻きに飛ぶ弾着観測ヘリの音が戦場音楽として響く中、僕はメモの切れ端を破いてさらさらとボールペンを走らせて十六夜ノノミさんに渡した。

「アビドスの皆さんがよかったら、現状を追認する契約を結ぶのはどうですか?」

「えっ、何何、見せて」

 黙り込むアビドス勢一同。僕が書いた契約書試案は単純だ。小鳥遊ホシノさんが社員になったということは、現時点でカイザーは債務を半分にしているはずだ。ちゃぶ台を返すなら上に乗ってる飯を食って茶を飲んでからでいい。

 奥空アヤネさんがちょっとだけ気まずそうな顔で先生を呼んだ。格好良くにらみ合ってた先生とカイザーPMC理事がどっちも少し気まずそうな顔をする。まあ何か……メンチの切り合いの最中だと何だよね……。

 

 僕の示した案は4条のシンプルなもの。

 (1)カイザーPMCの小鳥遊ホシノの雇用と、対価として債務が4億円となったことをアビドス高校は承認する。

 (2)カイザーPMCは小鳥遊ホシノを本日現時点で解雇する。退職金・各種福利厚生及び違約金はアビドス高校及びカイザーPMC双方が放棄する。

 (3)カイザーグループはアビドス高校の自治権が現存することを改めて認める。

 (4)契約締結後即時にアビドス高校並びに支援勢力はカイザーPMCとの休戦に同意する。

 

 契約書試案を読む先生と、いらだたしげに結論をさっさとしろという顔で遠くから眺めるカイザーPMC理事。まあ重砲と風紀委員会が大暴れして1秒ごとに損害が拡大してるからな。ウケる。

 先生が読み終えたところで、かぶりを振る砂狼シロコさん。うーん、まあそういう答えが出るか。もちろん、僕はそれはそれで構わない。カイザーにカマしてやりたいが、それは今、ここではなかったということだろう。このまま結論を牛歩で引き延ばしてこの基地が更地になるのを待つという選択肢もなしではないが。

「カイザーは確かに許せないけど、力で押しつけるのはやっぱり駄目」

「えっ、でも、最初に契約したのはあいつらなんじゃ……」

 僕の案に賛成した黒見セリカさんが所在なさげに皆の顔を見る。

「私は、もちろんアビドス高校の皆さんの意見に従います」

「じゃあ、3と4だけにしませんか?」

「"どうする?"」

 僕の右側に立って所在なさげに僕の右手をちらちら見つつ、左手を伸ばすかどうか迷っている宇沢レイサさんを見て、小さく微笑んで「あとで」と囁くと、宇沢レイサさんは真っ赤な顔になっててれてれしている。可愛いね。まあイヴちゃんと宇沢レイサさんがすごく仲が良いのなんかトリニティ生に限らず周知の事実だが、カイザーのあほの前で弱点になりかねないことを見せる必要はない。どっちか攫って脅迫したろ!とか思われたら面倒すぎるからな。

 

 PMCの将兵ががんがんなぎ倒され、あと1,000mを切った辺りで結論は決まった。先生と一緒に、代表として奥空アヤネさんと十六夜ノノミさんが前に出る。僕も盾を構えて先生の前に立っているが、これは単なる護衛で、口を挟む気はない。僕らが求めた戦争じゃないからな、これは。

「ホシノ先輩を返してください。そして、アビドス高校の主権をカイザーPMCが改めて認めるなら今すぐ、この場で停戦します」

「くそ、貴様ら……うおっ?!」

 意図したわけではないだろうが、流れ弾がカイザーPMC理事の左腕をかすめた。先生だけでも後方に下がって欲しいけど、ちらっと目をやったら先生は首を横に振った。せめてしゃがんでくれないかな~。

「やむを得ん。条件を飲む……!」

 先生がマイクに小さく囁くと、風紀委員会と重砲の轟音が止んだ。アルミスティス号(休戦の客車)にカイザーPMC理事野郎を乗せてここをコンピエーニュにして1,320億連邦マルク(そんな単位があるかわからんけど)だか218兆円だかはふんだくってやりたかった。まあ、次の宿題だな。

 砂狼シロコさんが口を開いた。

「じゃ、ホシノ先輩を迎えに行こう。先輩はどこ?」

「……後ろの3-Bバンカーの地下だ」

「行こう、みんな」

「先生も。風紀委員会には先に挨拶してきます」

「"ありがとう。また後で"」

(ありがとう、イヴちゃん)

(……ううん。手をつなぐのは、まだ後の方が良いよね……)

(帰りまで待とっか)

 右手が手持ち無沙汰なのはイヴちゃんも同じらしい。仲良きは美しき哉ではあるけどくっついちゃうのかな~。宇沢レイサさんならまあ……とは思うけど、複雑な寄生虫心だわ。

 イヴちゃんと宇沢レイサさんが先に空崎ヒナさんはじめ風紀委員会の人に向け歩き始めた。




 そもそもホシノが連れて行かれた場所が違う時点で今更ですが、対策委員会編も細かいところで流れが変わっているので、細かい流れとか台詞とかは原作通りではないです。

 明日明後日は習い事と外出のためお休みになる見込みです。続きは日曜投稿予定です。

 評価、感想、ここすき、お気に入り、しおり、誤字報告本当に有難う御座います。皆様の反応が書き続ける力になります。
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