ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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叩く時は追うて追うて根まで叩かねば駄目 できないのが残念

 カイザーPMCの正門を下側にした長方形の基地施設のうち、アビドスの大蛇(ビナー)を退けた後には上半分がほぼ真っ平らになり、塀も元々砲撃やらアビドス勢が侵入する時に壊したところやらがありで3割くらいしか残ってない惨状になった。ざまーみろって感じ。先生に聞いたけど、軽いやけどやすり傷くらいしか怪我人出なかったらしいし*1今日の飯絶対美味しいわ。

(……残りも壊して帰りたい……)

(わかる。まーアビドスの皆が停戦合意したからな~)

 いや、僕らアビドス高校所属じゃねーんで、って襲いかかったらなし崩しでみんな助けてくれそうではあるんだけど、流石に道理が通らんよな。しぶしぶ矛というか銃を納めることにするしかない。

 改めて空崎ヒナさん、阿……ファウスト様、宇沢レイサさん、下江コハルさんともちろんイヴちゃんにお礼を言って談笑してる先生に一言断って、イヴちゃんにまずヘリの様子を見に行ってもらったら、爆風でひっくり返ってたけど操縦士さんは無事だった。何とか消火したのにもう自力修理は絶対無理って呆然とはしてたが。

 一応カイザーPMCの敷地外に出てから撤収のために集合して車両やその残骸を掘り起こしたりしている風紀委員会を遠目に見ながらバイクを掘り出しに行ってもらう。砂丘の位置も滅茶苦茶動いてるしバイク自体も砂下に埋葬されちゃったしでGPSが死んでたらもう一生発掘できねーわ。ヘリから借りてきたシャベルでがっさがっさ掘るとすぐ出てきたけど。

(……うわぁ……)

(ミンチよりひでーや)

 いやそこまででもないか。原型は留めてるし、爆風で消火もできたし何だっけ、塞翁が馬(サイオー・ホース)?あんまりに悲惨を通り越してもはや笑える状態だったので写真を撮って、エンジニア部とのグループメッセージに写真を投げてもらった。速攻で返事が来た。

『イヴ、ジャンクを買ったのかな?』

『腕が鳴りますね!』

『見た目も中身も完璧に仕上げる』

『中古完動品を買ったのですが、今さっき壊れました』

『??? 買ったのに先にミレニアムに送ってこなかったの?』

 ???じゃねーが。どうして先に送って改造することが前提になってるんだろう。

『次からはちゃんと先に送ってくださいね!』

『このバイクも待ってるよ』

『アッハイ』

 何か押し切られてしまった。いつも結果的にタダでやってもらってるから申し訳なさはあるけど、まあそこまで言ってくれるなら……。

(また廃墟探査のバイト行かないとね)

(……あそこ、変なものたくさんあって楽しいよね……)

 アッハイ。まあ何かわけわからんドローンとか多いし、そもそも僕もイヴちゃんも廃墟とか好きだからなあ。あとはさっき剥ぎ取りしたビナーくんのパーツも持っていかないとだしね。

 

 空崎ヒナさん達はもう撤収する準備が整ったらしく、遠方から小さく手を振ってくれていたのでイヴちゃんも控え目に振り返した。可愛い~!!車両が半分くらいに減ってしまったようなのでトラックやらの屋根とかボンネットとかに鈴なりになっているが、それでも統率が取れた動きで撤収していく。

 イヴちゃんにバイクを担いでもらって、基地の敷地外に出た先生達の元に操縦士さんを連れて戻る。

「ファウストちゃんも本当にありがとうね。今日どうする?アビドスに泊まってく?」

『お気持ちは嬉しいですしそうしたいですけど、ちゃんと撤収して報告しないとなので』

「残念ですね」

「"レイサとコハル、イヴも?"」

 イヴちゃんはアビドスの皆と面識があるが、他の2人は人見知りするしお初でお泊まりはちょっと辛そうかな。3人で顔を見合わせ、下江コハルさんが口を開いた。

「わ、私も正義実現委員会に報告しないと……」

「私はどちらでもいいですよ!」

「……今日は、帰ろう……帰れば、また来られる……」

「いや泊まったらもう帰れないみたいな」

 イヴちゃんも疲れたっぽいから今日は帰る感じか。黒見セリカさんのツッコミに皆小さく笑う。なんて談笑していると、一旦退避していたらしいCH-53Kが戻ってきたのと、放列(火砲が撃てるように並べた列)の方向からAECマタドールっぽいトラックが走ってきた。

『そうそう、『イヴさん達が乗ってきたUH-60なのですが、よろしければアビドス高校に差し上げる』とのことだったのですが、撃墜されてしまいましたね……』

 操縦士さんは反応を見ると元々聞いてたっぽいけど、それでも機体を諦めなかったんだね。根性だなあ。

「えっ、あれいただけるんですか?!」

 結構ぼろっぼろの機体がかなり遠くに見えるけど、双眼鏡で機体を見た奥空アヤネさんは嬉しそうだ。あーそうか、それであえてUH-60を出したのか。前ちらっと聞いたトリニティの下賜外交の一種かって思うとちょっと複雑な気持ちもしなくもないけど。

「むしろ、あの状態ならもらっちゃってもいいかなって感じかな~」

「昔はアビドスにもヘリがあったのですけど、確かあの機体と同じタイプでしたよね?」

「そうなんです!格納庫に放置されてた複数の機体から使えるパーツを集めてたので、きっとあの機体からも使える部品がもらえるかなと!」

「"シャーレのヘリを使って構わないよ"」

 やった、と喜ぶアビドスの皆。ヘリからクーラーボックスが投下されて宇沢レイサさんがナイスキャッチ。

「お~、やるね~。レイサちゃんだっけ」

「はい!えっと、これはいったい」

 先生に渡して開けてもらうと、きんきんに冷えたジュースのペットボトルがたくさん入っている。

「"みんな、改めてありがとうね。ジュースだけど、乾杯しよう"」

 皆の歓声が夕暮れが迫るアビドス砂漠の空に上がった。

 

 迎えのトラックの天井にバイクの残骸を積んで固定してから宇沢レイサさん、下江コハルさん、イヴちゃん、操縦士さんが乗る。ヘリと同じ、車両横向きに据えられた椅子はクッションがしっかりしている。宇沢レイサさんとイヴちゃんはもちろん隣の席だ。

「改めてみんな、ありがとうね~」

「"ありがとう。またトリニティで"」

「今度は普通に遊びに来てね!待ってるから!」

「歓迎しますよ~☆」

「ん。ありがとう」

「ありがとうございました。お礼はいずれ」

 ニコニコと手を振ったり頭を下げたりしてくれるアビドスの皆にトリニティの皆も思い思いに応えて、トラックが走り出した。

 

 カイザーPMC基地が地平線下に見えなくなった途端、宇沢レイサさんがイヴちゃんの手を握る。イヴちゃんも握り返して手の甲を指でくすぐる。小さく笑ってくすぐり返す宇沢レイサさん。と、いちゃつく2人を猫目で真っ赤になって見てる下江コハルさんとちょっと呆然とした表情で眺めている操縦士さん。

「ま、またべたべたしてる……」

「無線でしか聞こえてませんでしたけど、確かに……」

 2人ともカイザーPMCの連中に見えなくなるまでちゃんと我慢したからえらいし、平常営業だからへーきへーき。

 

 操縦士さんは疲れてたのか早々に皆に断って寝てしまい、普通に会話に参加しつつも2人がいちゃつく様を顔を赤らめながらじーっと眺めている下江コハルさんも寝てしまい、宇沢レイサさんとイヴちゃんも肩を寄せ合って寝てしまった。トリニティの他の砲を牽引した車両群に追いついたみたいだし、僕も帰るまでちょっと寝るか。

 

 あっいけねえ。ちょっと確認だけしておかないとだ。スマフォを取り出して奥空アヤネさんにぽちぽち。例のカイザーの「アビドス高校の返済能力保ってくれよ!金利3,000倍だ!!」と、アビドスの主権をカイザーPMC理事が認めたところをちゃんと録画してくれていたらしく、動画データを送ってもらった。帰ったら編集作業だな。やっぱパソコン新しいのに買換えようかなー。

*1
あの化け物を相手にしてこれなのはキヴォトス人の頑丈さもだけど、先生の指揮もあるんだろう




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