ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
さて、図書館も古書館も空振りに近い成果だったので、憂さ晴らしと腕試し、実戦経験確保と僕自身が使えるお小遣い稼ぎを兼ねて、今夜はなんと、初めての「狩り」に来てます。女の子でもおっさんでも虫食いの鼠でもないよ。
トリニティと他の学園自治区の境界に近いエリアにチンピラその他狩りにね♥心身の鍛練は勉強よりも早く功を奏したらしく、この間、イヴちゃんが寝てからの時間におっかなびっくりD.U.主導の腕自慢・お小遣い稼ぎに集まった複数学園混合勢力で共同開催された何ちゃらヘルメット団狩りもつつがなくやれたので、満を持してソロハンティングってわけ。
イヴちゃんは熟睡してるので、イヴちゃん行きの情報は脳内で全部遮断しつつ、目を細めている。これからやる汚い行動、汚いものはあの子には似合わないし、見せたくないからね。
お小遣いに関しては、イヴちゃんは「別に使っていい」って言ってくれるんだけど、単なる脳内の居候が家主さんのお金使うのは気が引けるのと、やっぱり2人(僕は1人前に含めていいのかな?)の方針が違った時に、自由に使えるに越したことが無いお金が欲しい。あと、イヴちゃんに万が一があったときに助けられるようにしておきたいってのがある。
なので、名義はもちろんイヴちゃんで、暗証番号含めてイヴちゃんに伝えたうえで、口座を1個開設した。
今日やってきたのは、再開発が頓挫してるんだか、単に採算が取れないのかで放棄されてるキヴォトス中に山ほどある地域の1つ。そういった治安機関の目の届かないところをぶらつけば入れ食いって寸法だ。凄まじいところだと、何なら日中でも普通の学生は立ち入らないように連邦生徒会が注意喚起してるエリアなんてものもある。
ここは下調べしたところ、夜に不良が活性化するエリアらしい。不良といっても停学や退学してる学籍がない子だけとは限らない。日中は普通に通学して、夜遊んでるだけっていう子も多いからおかしい話ではない。
後は、縄張りが日中と夜では違って変動してる、みたいな線も考えられるな。夜行性の動物の徘徊みたいだね。
「お、何だ。見ねえ顔だな」
「どうも、こんばんは」
赤黒いシュマグで目以外を覆って、もう温かい季節なのに黒のロングコートを羽織り、夜のお仕事のためと身バレ防止のために新しく買った突撃銃をぶら下げておまけに糸目笑顔、機械の翼は市販品の翼ウイッグなるものを改造して入れて黒い鳥のそれに偽装してある。
僕自身が不審者以外の何者でもないが、人数が多いからか、不審だからこそ警戒しづらいのか。廃家屋の前でしゃがんだり座ったりして駄弁っていたのを止めて立ち上がり、こちらにぞろぞろ歩いてくるスケバン3人。服装が古生代って感じのロングスカートにマスク。この子達まじいつの時代の生まれなんだ?あと顔見えてるの?
「こんなとこ歩いてどうしたんだ?」
「落とし物をしてしまいまして。探してるのです」
「へえー。あたいらここらには詳しいんだ。手伝ってやろうか?」
まだだ。まだ笑うな……堪えるんだ……し、しかし……。
馴れ馴れしげに右肩に右手を回してくるスケバンA。ヤバ、笑いそう。
「ただ、お駄賃はくれよな?あんたの財布とかさ?」
はいアウトー!たまにマジで悪気も喧嘩もふっかけてこない不良もいるから交戦規定どうしようか悩んでるところだけども、これはアウトだな。背が低いから舐めてるのか、こんな腕回しただけでビビって怯むと思ってるのかな。
まあ間合いが近い分には丁度いいや。左肘を顔面に軽く入れて怯ませた直後に右腕を掴んで左足で払い、目の前のスケバンBにぶん投げた。
「「ぎゃっ!!」」
ヘイロー消えてるな。こいつらはもういい。
「な、なな、おま」
半端にふらつく銃口の右側に踏み込み、銃身を左手で掴んで引き、右手で拳を捻って人中に叩き込む。この距離でも銃を棍棒として使う傾向がないのは射撃第一が身体に染み付いてるのか戦意と経験が足りないのか。
ふげ、と間抜けな声を出してぶっ倒れるスケバンC。
「ウシッ」
左手を払い残心。ヘイロー消えてるの見えてるし、聴覚で周りを探ってるからあんま意味無いんだけど、やると落ち着く。
前世の僕は空手だかカラテだか知らんけど格闘技だか何だかをやってたらしい。特殊警棒とナイフといったコールドウェポンも持ってきたけどとりあえずは必要なかったね。
銃撃でも相手の意識を刈り取れることはわかっていたけど、音がデカいから人寄せしてしまうのが嫌だし、多分だけど素手の方が神秘が載ると思うんだよな。
なんて思いつつ、素早く視線――引き金が鴻毛より軽いキヴォトスでは射線を意味する――を遮るような暗がりに3人を引きずり込んでワイヤーで親指を拘束、スケバン達の持ち物で猿ぐつわを噛ませてから持ち物検査。
スマフォはオフ。財布と銃火器類は本当は巻き上げたいのだけれども……取り敢えず即座に使えないように弾と弾倉を全部抜いて放り出した。僕はスマフォの地図に座標と仕留めた人数のデータを記録してさっとその場を後にした。会話の時間を引いたら肘を入れてからここまで大体1分20秒。待ち伏せ襲撃に使う時間としては上出来だ。前世の教本だと殺すだけなら30秒が基準らしいけど、別に殺す気は無いしキヴォトス人を殺すのは30秒では済まなそう。ともかく童……いや処女卒業か?は無事終わったね。この例えだと乱交はしたことあるけどひとりは初めてってなるのかな?
繰り返すこと3回。3回目でついに発砲する羽目になったし銃声で集まってきた何とかヘルメット団の分派はグループが多そうだったので撒いてからデータを然るべき場所に送って今日のお仕事はおしまい。
はした金ではあるが、治安紊乱者を張り倒して当局に突き出せれば報奨金が一人頭幾らで入る。もうちょっとやれなくもなさそうだけど、通報後に治安維持機関─この場合は正義実現委員会か自警団─が到着して拘禁するまで報酬が発生しないので、時間を掛けていると仲間に解放されてタダ働きになりかねないのだ。
加えて身体の疲れと集中力の低下を考慮して安全策を取った。何しろ人命も軽いキヴォトスだし、僕自身追い剥ぎの返り討ちという血の気の多い行為をしてるんだから捕まって囲んでボーで叩かれて撃たれてそのままアビドス辺りに埋められるのはご免被りたい。
『俺より弱い奴に遭いに行く。そして弱いカツアゲウーマンをボコって正当な報酬を得る』のがお出掛けの目的。
場数を踏んでおきたいのは確かだけど、よりハードな条件で戦闘技術を磨くのはより安全な環境で教官役がいるのが望ましい。今じゃないんだよね。
しかしこの制度、よく考えたら無差別冤罪被害者発生システムにもなりかねないのでは……?片端から通りがかった生徒しばいて通報したら儲からない……?防犯カメラなりで 後で見る されるらしいけど……ほんとにぃ……?
連邦生徒会から学園治安機関を経由して報奨金が出る素晴らしい制度ではあるものの、弾薬費は自腹だし、複数人で割ると普通にバイトした方が割がいいという絶妙に使えない制度だから大量冤罪が発生してないだけなのかも……。
強い子は大体何かの役職に付きがちだしね。
撤収は迅速に、欺瞞は秘密裏に。張り倒した奴らやその仲間が追ってくる可能性もないわけじゃない。コートはリバーシブルで黒からオリーブドラブに、シュマグも同じく裏は灰色なので裏返し。でも、銃は同じなんだよな。無塗装でアクセサリ*1がない銃は逆に珍しいし。
帰りに早足で通りがかった小汚いドブ川が綺麗な月を写していた。まるでイヴちゃんという月を写してる僕みたいじゃないか、この汚い川。間抜けなカツアゲウーマンを飲み込むドブ。なんてね。
大体週3回はこんなことをしていたけども、今週はお休みしてお散歩しながら周囲の地形を覚えたり周囲の噂を集めたり、チンピラに小銭を撒いたり殴り倒してカマしたりしながら情報収集。
今回は依頼人がいる仕事なのだ。いや~いいね。イヴちゃんが寝てる時間限定だけど、勤労は尊いものだよ。
いや嘘。働きたくないでござる。でも金は必要でござる。
トリニティは割と裕福な学校だし小遣いも出てるけど、イヴちゃんのお財布に手をつけたくはなし。
それに、火力大爆発なごっつい銃火器とかを買おうと思ったらなんぼでもお金要りますねん。良いもの、ごっつい火器は高い。
金や……!金がないのは首がないんと同じなんや……!銭の花の色は清らかに白い。だが蕾は血がにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする……!
夜は善良でない大人と生徒と、それに食い物にされる生徒、そして善良でない輩をしばきに来る生徒の3種類の時間だ。今日の雲量は7、雨は降らなさそうで快適な襲撃日和。
今回の作戦はリヴォルヴァーヘルメット団アジトの襲撃。とっくに潰れて放棄されたトリニティ自治区外れの1階建の町工場がそれで、出入口は2つ、車両が入れるものと人間だけが通れるサイズの扉1つずつ。
ヘルメット団自身が管理してるのか、ガラスが割れたところは段ボールや新聞紙とかで塞がれている。電気は通ってないので、誰かが持ち込んだのであろうライトっぽい明かり複数が透けて見えつつ、歓談に興じる声が漏れ聞こえている。
見張りも立ててないのは不用心極まりないね。夜闇に紛れて忍び寄り、人間だけ用の扉側に無線起動のクレイモアを背中合わせにセット。屋根によじ登り、ラペリングの準備よしっと。
もう片方の車が入る扉には、事前にセットしておいた自動操縦の動くのが奇跡みたいなボロ中古軽自動車がはいドーン。
「な、何だ!?チェーンヘルメット団の連中か?!それとも正実か?!」
「撃て撃てぇ!」
「死ねー!」
一瞬で吹き上がるリペアなんとかヘルメット団の皆さん。あらあら。そんなに撃っちゃって大丈夫?車内にはIEDとしてこれもどっかから巻き上げてきた爆薬とか迫撃砲弾とか満載してるんだけど。
まあ遅延信管を迫撃砲弾につけておいたから多少撃とうが撃つまいが誤差ってところだけどね。
数秒後、車両が大爆発し、周りのヘルメット団員がバタバタ倒れた。大混乱に乗じて、まだ意識がある連中めがけて手榴弾5発のピンを抜いてレバーを離して1、2……良く調理してほいっと。軽く弧を描くように投げ込んだ手榴弾が炸裂し、残りの意識を刈り取った。
ロープを滑り降りる要領でブランコのように勢いをつけ、辛うじて残ってた割れ残りのガラスを蹴破って屋内に突入。
まだヘイローが残ってる奴に左腕で構えたアサルトライフルで銃弾を叩き込んだ。
死屍累々(誰も死んではない)の廃工場は酷い有様になった。まあ酷い有様にしたのは僕なんだけどね。
ガラクタだとか生活ゴミだとかが爆薬でかき回されてボヤレベルで燃えているし、ぶっ倒れている連中は15人くらいいる。今回はド派手にやったのでよその連中やらこいつらの仲間が戻ってくる可能性がある。
こいつらに痛い目に遭わされたらしい依頼人の指示は痛めつけることだけだったし、焼け死なれても寝覚めが微妙に悪いので、証拠写真を撮ってさっと通報もして撤収だな。
周囲を見渡しながらパシャパシャ写真を撮っていた僕に、洗濯物だったとおぼしきぼろ布を引っ掛けてある鉄棒が目に入った。
「あれは……?」
ううん、と呻いて意識を取り戻しそうになった何とかヘルメット団員のみぞおちに蹴りを2回入れてから鉄棒に駆け寄った。
物干し竿にしては頑丈そうだと思ったら、リヴォルバーカノンじゃない?これ……。口径20mm以上はありそう。
ヘルメット団の分派同士は基本的に仲が悪いという解釈です。ジオンの皆様みたいな、近しいものの方が違いを許せないようなイメージ。
評価、感想、ここすき、お気に入り、しおり有難う御座います。皆様の反応が書き続ける力になります。
紙での小説の書き方に基づいて書き続けていたロートルとしての改行等を改めつつ、同時に加筆修正を行いました。話の本筋には変更ありません。2025.01.19