ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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科学捜査研究所の何とか的な 多分「科学捜査サービス」とかそういう班なのかね

 イヴちゃんと宇沢レイサさんが手をつないで寮の自室に戻ってくると、静山マシロさん含む正義実現委員会の5人ほどと、事務局のロボットの人(?)が立っていた。静山マシロさんがこの中では一番えらいっぽく、代表して口を開いた。

「イヴさん、お帰りなさい。大変でしたね。早速始めていいですか?」

 とイヴちゃんが頷く前に、開けなくて済むからだろうけどドアの指紋採取はもう始まっていた。部屋の中は本人立会いでやるってことだろう。うーん有能。正義実現委員会、警察でもあるから大変だな~。

「あっ、指紋をぽんぽんするやつ……。って、ごめんなさい。大変な時にはしゃいでしまって……」

 一瞬目を輝かせて嬉しそうに呟いた宇沢レイサさんがしょんぼりした。にぎにぎと繋いでいる手を握って首を横に振るイヴちゃん。

「……大丈夫、私も『映画とかでみたやつ』って思った……」

 ほっと息をついた宇沢レイサさんに、イヴちゃんが抱きついて背伸びして額をこつんと当てて、2人ともくすくす笑う。

「あの……ごめんなさい。仲良くされてるところ。鍵開けてもらって、入っていいですか?」

 モブ顔になった静山マシロさんに声をかけられて、顔を真っ赤にしてばっと飛び退く(でも手は離してない)宇沢レイサさん。イヴちゃんは全然気にしてない感じでこくりと頷いた。つよい。

 科学捜査サービスと正義実現委員会鑑識役っぽい子2人がしめやかに部屋に入る。廊下の人口密度が少し減ったところで、ロボットの人(女性だった)が口(?)を開いた。

「イヴさん、この度はご災難でしたね。鍵の交換費用は学園事務局が負担します。お見舞い金も出ますから、どうかご無理なさらず」

 正義実現委員会の調査が終わった直後に来るように業者を手配してくれるらしい。助かり。お見舞い金は入学したときに作った口座に入れてくれるのだとか。

「加えて、ティーパーティーから特別にお見舞い金があるそうです。これはもちろん後ろ暗いものではないのですが、特例とのことですので……」

 へー。まあ正義実現委員会の子達がいるこの場で言う以上、あんまべらべら喋るなよって程度の話なんだろうな。

 しかし、みんなやりたがらないだけでお鉢が回ってきただけの自警団の代表的な椅子も結構価値があるんかね。勘ぐると口止め料的ななんかちゃうやろなみたいな気もしちゃうけど、まさか聞く訳にもいかんしな。イヴちゃんも宇沢レイサさんも素直に感心しているし突っ返す必要も無いだろうからもらっといたら良いんだろうけど。なんかなー。

 

 事務員ロボットさんが帰ってから、イヴちゃんは邪魔にならないように宇沢レイサさんと一緒に部屋を覗き込んで証拠品になりそうなものを捜している正義実現委員会の子達を「映画とか漫画とかで見たやつ」って感心している。

「一応確認しておきますけど、この動画の人に心当たりとか、ないですよね?」

 イヴちゃんは首を横に振った。一緒に動画を見ている宇沢レイサさんもうーんと唸っている。

「単なる物盗りにしては何というか、あまりに素人臭すぎますし、恨みを買ってるとかなら部屋に爆弾を仕掛けたりとか火をつけたりとか、もう少し何かありそうですが」

「そもそも、イヴさんだけでなくて自警団に恨みがあったりしたら、もう絞り込みようが……」

「……レイサちゃんも、鍵つけ替えたりとか、した方がいいかも……?」

「そうですね!!今、事務局に手続きしておきます!あと、スズミさんにも言っておきますね!!」

「正義実現委員会の方からしておきましょうか?」

「今、もう送ったので、万が一通らなかったらお願いします!!」

 ううん、とイヴちゃんが小さな唸り声をあげつつ頭を小さく回すように振る。ちょっと珍しいっていうとイヴちゃんが普段から頭使ってないみたいだけど。使ってるよね?

「……例えば、成績とかで逆恨みされたりしたら、とか、可能性は無限大……」

 嫌な無限の可能性だなあ。ちょっと話がずれてたからか、おほん、と咳払いして静山マシロさんが続ける。

「どんな動機であれ、許せない不正義です」

 本職の窃盗犯、5分くらいで全部済ませて逃げるっていうし、そもそも何も貴重品だとか下着だとか盗られたりしてないしな。イヴちゃんを性的な目で見るやつは○すって(イヴちゃんの脳内で)言ったろ。侵入者○すぞ。イヴちゃんに魅力がないと思ったから下着とか盗らなかったのか?○すぞ。

 

 ……はっ!脳内反復横跳びをまたしてしまった。その間に鑑識の子達の調査が終わったらしい。落ちてた毛とかも拾って鑑定にかけるらしく、遊びに来た友達を聞かれて、宇沢レイサさんグループの全員と、後は遊びに来てはないけど一緒にご飯を食べたりと接近機会があった伊落マリーさんと下江コハルさんの名前を伝えておいた。

「鑑定用に髪の毛をもらいに行くので、お手間ですけど事前に連絡しておいてください」

 それと、と静山マシロさんは言葉を続ける。

「本当は友達のこういう調査に関わるのは気分もよくないでしょうし、あまりよくないのですけど、人手が足りなくて。ごめんなさい」

 イヴちゃんはううん、と首を横に振った。

「……忙しいのは知ってるから、大丈夫。でも今度はこういうのじゃなくて遊びに来てほしい、かな……」

 事務仕事は相当減ったけど、定時ぎりぎりまで仕事きりきりしないといけない状況なのは見てたらわかるししょうがないね。

「そう言ってもらえると助かります。では私はこれで。進捗があればもちろんお伝えします」

 静山マシロさんは最後に捜査に関してはあまり期待しないでほしいという申し訳なさそうな顔をして、同僚を引き連れて帰って行った。まー指紋も結局出なかったっぽいしね。髪の毛もしっかり帽子で隠してたし望み薄そう。

 入れ替わりに鍵交換にやってきた業者さんは犬の人(?)でこれも女性だった。この辺の配慮、トリニティしっかりしてるなって思うな。シベリアンハスキー?かな?の大柄な犬の人が作業している間、宇沢レイサさんを招き入れ、暇潰し用に映画*1を再生して、お茶と茶菓子にナッツ類を出すイヴちゃん。ティーバッグだけど割といいやつ。イヴちゃんのマグカップは最近買ったHe○nekenのロゴを捩った某ギタリスト*2のロゴのやつで、宇沢レイサさんに出したのは客人用に揃えたイチジクの葉っぱが書かれた白いマグカップ。業者さんにも勧めたが「お気持ちだけで」と断られてしまった。まあしゃーない。

「美味しいです」

「……私のはちょっと、あんまり好みじゃなかった……」

 キャラメルとかバニラの香り付をした紅茶、味見のために砂糖少なめにしたのがよくなかったのかな。興味深そうな宇沢レイサさんにイヴちゃんはコップを渡してナッツをひとつまみ。あっ、これは間接キスなのでは……?という顔をして、カップを持ったまま固まって目だけでちらちらイヴちゃんを見る宇沢レイサさん。

「……飲まないの……?」

「いえ!飲みます!全部もらいます!」

 全部ぐいっと飲んでけほけほする宇沢レイサさんの後ろに回って背中をさするイヴちゃん。宇沢レイサさん、体温高いなあ。耳とか首筋とかもう真っ赤だし逆に身体に悪いかもしれない。

 

 鍵の交換が終わって業者さんは帰ったけど、宇沢レイサさんの目線はイヴちゃんと映画、ほぼ空になったナッツの皿の間を行ったり来たりしている。うーん、これはあくまでイヴちゃんの大切な友達に対してね、助け船を出すとしますか。

(イヴちゃん、宇沢レイサさん何か言いたそうだけど)

「……レイサちゃん?」

「ひゃい?!」

 考え込んでいたからかまた椅子から飛び跳ねる宇沢レイサさん。可愛いなあ。

「……映画、つまらない……?」

「いえ、何だか……フイトジリン学園*3ってこんな感じなんだなあって」

 いやこの映画やたらダニート○ホみたいな子出てくるけど、こんな濃い子おるかなあ?!おるんかな…。このサツバツ感はキヴォトス標準なんで、ちょっとアクションが強めの普通の映画、みたいになってるのはキヴォトスやべーなって思うけど……いやそうじゃなくて。イヴちゃんも首を傾げた。

「……それだけ……?」

「う、い、えっと……も、もしもですけど、お邪魔でも、迷惑でもないなら、晩ご飯一緒に食べて、泊まってもいい……ですか?」

「……いいよ……」

 ぱあっと顔が明るくなる宇沢レイサさん。きっと泥棒入って心細いか心配してくれたんやろうな。優しい……。まあイヴちゃん的には侵入者は「気持ち悪。何この、何……」くらいの感じっぽくはあるけど。並の不良くらいなら普通にボコったら全然オッケーだもんね。せーの、暴力サイコー!*4って感じ。イヴちゃんも段々たくましくなってくれて嬉しいね。でもゴ○とか出た時に誰か一緒に退治とかしてくれたら嬉しいもんなあ。

「着替え取ってきますね!」

「……レイサちゃん、ありがとう……あ。折角だから、ソフノちゃんとモユルちゃんにも声かけていい……?」

 勢いよくドアの前まで早足だった宇沢レイサさんがピタッと止まる。顔がわかりやすぎやしませんか。サシでお泊まりの誘惑かみんなの楽しさか悩んでるな。

「呼びましょう!!」

 誘惑に打ち克ったみたいだ。えらいなあ。

「……みんなのご飯と飲み物、買ってくるね……」

 わかりました!と頷いた宇沢レイサさんはあっという間に廊下に消えていった。はやい。もう行ったのか。これで勝つるな。

(そうだ、一応、宇沢レイサさんから言ってあるとは思うけど、一応守月スズミさんにも被害に遭ったことだけ伝えておかないと)

(……送っておくね……)

 イヴちゃんも交換してもらった新しい鍵を掛けて近くのちょっといいものを売ってるスーパーに行くことにしたらしい。スマフォ片手にぽちぽちしながら歩き始めた。ながらスマフォは危ないから寮を出たらやめようね……。

*1
デスペラートっぽいタフなメキシコっぽい学園都市を舞台にギターケースを武器にまんま改造した女の子が暴れ回ったりするやつ。めっちゃB級だけど面白い

*2
S1ayerのギタリスト、故人

*3
ハチドリの意味。メキシコっぽい学園らしい

*4
一昔前の映画CMっぽく




 ロンドン警視庁の科学捜査研究所的な場所はSCO4 - 科学捜査サービス (Forensic Services)というそうですね。(Wikipedia調べ)

 わざわざお見舞い金が出るってことはまあそういう事なんですが、ジルもイヴも政治音痴なので「へ~」(おわり)ってなっています。

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