ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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間合いは格闘でも人間関係でも一番重要な要素なのかも

 会議が終わり、まだ調べ物があるらしくティーパーティーの委員に捕まっている円堂シミコさんにイヴちゃんは小さく手を振った。ふと、桐藤ナギサさんと目が合った、気がした。気がしたけど気のせいかなあ。イヴちゃんは特に気にせず目礼だけして目を逸らしたしようわからんかったけど。会議室に残っている人達は皆忙しそうだ。

「イヴさん、少しいいですか?」

 大会議室を出たところで羽川ハスミさんがイヴちゃんを呼び止める。守月スズミさんではなくてイヴちゃんに用事なのかな。守月スズミさんは羽川ハスミさんに小さく手をあげてから「それでは」といって帰っていった。

「大変申し訳ないことですが、お願いしたいことがありまして……」

「……私で、できますか?……」

「スイーツ友達であるイヴさんにしか託せないことなのです……!」

 ある意味急に雲行きが怪しなってきたな。悲壮な顔で何言うてるんやこの人。でもイヴちゃんは普通にキリっとした顔で頷いてる。どういうことなの……。

 

 羽川ハスミさんのお願いは抽選で当たった限定スイーツの受取り代行だった。同じものが2個あるので1個を報酬としてくれるらしい。羽川ハスミさんが店に連絡しておくので、抽選券とイヴちゃんの身分証を持っていけば受け取れるという。なるほど、自警団員にしてスイーツ友達であるイヴちゃんが最適任ではあるな。

「……その依頼、承りましょう……ただし、お願いがあります」

「何ですか?」

「……正義実現委員会、私と、もし都合が合えばですが、レイサちゃんも泊って構いませんか……?」

「もちろんです。寝具は……まあ我々も、マットレスなのですけど、同じ物で構いませんか?」

 こくこく頷くイヴちゃん。抽選券を受取り、慎重に改めて財布にしまう。

「この任務は、極秘のミッションです。レイサさんはもちろん、他の委員の皆にも内密に……」

 頷くイヴちゃん。朝吹ソフノさんと報野モユルさんは流石に誘えんけど、宇沢レイサさんは都合合うといいな。

 

(正義実現委員会の宿舎、泊りたかったの?)

(……もし、カイザーに抜き打ち査察とかあったら、逃したくないなって……)

(うーん、ちょっと無さそうではあるけど。でも確かに、あったら絶対参加したいね)

(……カイザーのビルを使っただるま落とし大会、私とツルギさんならきっと楽しい……)

(わかる~。トリニティのカイザービル、何階建だったか忘れたけど、エレベーター要らないくらいにしてあげたいよね)

 うふふ、と笑い合うイヴちゃんと僕。

(……それに、せっかくだし、ハスミさん達とお泊まりも楽しそう……)

(確かに)

 メッセージとかはやり取りするし、仲は悪くないけど所属組織が違うとあんまり機会無いよね。

 

 限定品、トリニティ駅前の有名店で受け取ったのはミラクル2500*1だった。こら確かに羽川ハスミさんも凍り付くな。スプーンを3つもらう。

(……私も、名前しか聞いたこと無かった……)

(抽選率300倍らしいよ。すげー)

(……すごー……)

 人数がわからないから適当に差し入れ用のクッキーとラスクを一緒に買うイヴちゃん。

 保冷剤と緩衝材を入れて厳重に梱包された箱を抱えて横取り狙いのかす不良をぶちのめすこと3回、宇沢レイサさんから「パトロールが終わって、お泊まり用の道具を取ってきます!!」という返事があった。微笑むイヴちゃん。よかった。

 

 イヴちゃんもお泊まり一式*2を取って、正義実現委員会本部手前までやってきた。羽川ハスミさんにメッセージを送ると「自警団の部屋で待っていてください」とのことだった。

 自警団の部屋で待つこと1分程度、しめやかなノックの音。

「『パルパス』」

「……どうぞ……」

 いや合言葉とか決めてなかった気が。っていうか羽川ハスミさんの声やねんから判るっちゅーねん。

「合言葉、別に決めてませんでしたね……」

 苦笑いする羽川ハスミさんが扉を閉めて、カーテンも閉める。可愛い。イヴちゃんがそっと差し出した箱をそっと受け取る。

「ありがとうございます。約束の報酬です」

 しずしずと受け取るイヴちゃん。末端価格いくらみたいな感じでちょっとウケるな。食品用のビニール袋に入れて、冷蔵庫*3にしまった。紅茶はバレないようにだろうか、魔法瓶で持ってきたものを紙コップで入れる念の入れようだ。

 

 羽川ハスミさんがスプーンで上品な仕草ですくい、ぱくりと一口。満面の笑顔で美味しそうに身体を震わせる。無言の穏やかな時間、半分ほど食べ進んだところで、イヴちゃんが口を開いた。

「……その、どうして、内緒に……?」

「実は……今年に入って3回目のダイエット宣言をしてしまい……」

 まあわかるけど。別にそんな肥えてないでしょ。って思うけど本人主観だと違うんだろうなあ。でも全然今パクパクしちゃってますけど、まあこれは言わないが華だな。

「ツルギに見られたらどれだけ溜息をつかれるか……」

 最後の一口を食べてから苦笑いする羽川ハスミさん。と同時に、ドアが勢いよくノックされた。椅子に座ったままぴょんと飛び上がる羽川ハスミさん。流行ってんのかな。

 

 勢い良すぎるノックでわかっていたけど、宇沢レイサさんだった。手元にあった食べ終わっていた容器をイヴちゃんがすっと回収して紙袋に放り込む。

「ハスミさん、こんばんは!」

「こんばんは、レイサさん」

「お泊まり誘ってくださって嬉しいです!」

「……ううん、レイサちゃん、パトロールお疲れ様……」

「以前、訓練の時にスズミさんが泊まっていたこともあったのですが、お2人は初めてですよね」

「はい!!!!お世話になります!!!!」

「ふふ、大したおもてなしもできませんが。シャワーも洗面所も普段通り使えますし、会議室にマットレスを敷いてます」

「大勢でお泊まりするの、楽しみです!!!」

「……私も……」

「基幹要員だけなので、そこまでたくさんはいませんけどね」

 ふふ、と微笑む羽川ハスミさん。優しい先輩って感じでとってもよい。

 

 限定品のケーキを半分こ、美味しい甘味でご機嫌になった宇沢レイサさんとイヴちゃん、羽川ハスミさんと3人で並んで歯を磨く。まあイヴちゃん面倒くさがって僕に頼んだ*4から主導権代わってるんだけど。

(当たり前だけど羽川ハスミさんもこうやって歯磨きとか睡眠とか普通の生活があるんだよなあ。先輩の生活ってあんま覗くことないから新鮮じゃない?)

(……確かに、ちょっと不思議、かも……)

 フロスまでして入念に。顔の良い美少女の口元の健康はこうやって守られる。い~っとする僕。うん、磨き残しなし。宇沢レイサさんがじーっと鏡を、というか鏡の僕、いやイヴちゃんを見ている。ニコッと鏡越しに笑いかけてあげると、顔がほんのり赤くなった。

 そのままシャワーへ。着替えの場所は共用なのだけども、宇沢レイサさんはイヴちゃんだけじゃなくてあっちこっちがご立派な羽川ハスミさんにも目を奪われているようで、目だけが高速でちらっちら往復している。ンモー、あんまじろじろ見たら失礼ですよ。まー確かにすげーとは思うし、何ならイヴちゃんも。

(……おお~。大人……って感じ……)

(そうだねえ)

 宇沢レイサさんに小声で声をかける。

「行こう」

「あっ、はい!!」

 固まっていた宇沢レイサさんを促す。シャワーは命の洗濯だなあ。たまには湯船に浸かりたいのはあるけど、シャワーもご機嫌。

 

 お泊まりセットに入っている服はだっさいメタルTシャツ*5バンドTシャツと、黒いジャージ。寝るときに着るけど、そのまま寝袋出て交戦とかする可能性もあるからね。

 おっさんが自分の実娘の部屋に侵入して勝手に本を読んで脳内レビューする漫画を読んでたイヴちゃんと再度交代、宿泊スペースになっている会議室に向かう。

「……そういえば、お土産にクッキーとラスクを、持ってきてました……」

「!!!私達の分は、少し残しておいてもらいましょう……」

「そうですね!!!」

 羽川ハスミさん、そんな重々しく言わんでも。

 

 会議室の机と椅子が畳んで隅にまとめられており、マットレスが敷かれている。普通に寝られるやつだ。体育用のとかだったらどうしようかと思ったが、まあ正義実現委員会で泊まることもあるだろうしな。マットレスは14人分ある。お、仲正イチカさんだ。

「あっ、ハスミ先輩、レイサ、イヴ、お疲れ様っす」

「……イチカさん、こんばんは……」

「お疲れ様です」

「……皆さんに、差し入れ、です……」

「おお、ありがとうございます!」

「イチカはこれからパトロールですか?」

「はい、ツルギ先輩が臨時で出動があったので、少しだけ早めに出ようかと。先輩は『ゆっくりしてろ』と言ってましたけどね」

 剣先ツルギさん、普通に気配りの人だよなあ。

「ふふ、ご苦労様。それでは、お願いしますね」

「了解っす!」

 会議室外で待機していた4人と、会議室の掃除と整理をしていた3人が立ち上がって仲正イチカさんについていく。

 宇沢レイサさんとイヴちゃんは適当なマットレスを使って構わないらしく、イヴちゃんが一番奥、隅っこを選び、宇沢レイサさんがその隣に陣取った。

 羽川ハスミさんがイヴちゃんの入口手前側のマットレスに腰掛けた。

「ところで、今日は何で待機なんです?」

「レイサさんも、今日のカイザーへの連邦生徒会の捜査が入ったのは聞いてますよね?」

「ああ、お昼に速報が入ってましたね」

「ええ。トリニティにもカイザーの支社がありますから。でも、実際、待機といっても何も無いとは思います」

「……無いですか……」

 無いか~。残念だね。

 

 3人でスイーツや美味しいお店の情報を交換する楽しい雑談をしていると、ごろごろしていた正義実現委員会の子2人が混ざって来て、楽しい時間を過ごせた。とはいえ、楽しい時間はすぐ過ぎるもので、あっという間に寝る時間。水分補給をしてそれぞれのマットレスに戻っていく。

(結局緊急の呼び出しはなかったね)

(……でも、楽しかったよ……お休み、ジル……)

(そうだね。お休み)

 うん、それはそう。あれ、いつの間にかちょっと離れて引かれていた宇沢レイサさんのマットレスが隣に来ているし、イヴちゃんの左手を宇沢レイサさんが握っている。

「イヴちゃん、手を握っててもいいですか?」

「……うん、お休み、レイサちゃん……」

「!!はい。お休みなさい」

 マットレスの移動も間合いの詰め方も見事なワザマエだったな。お休み、2人とも。

*1
ミラクル5000は別店舗で売ってるそうだ

*2
自警団の長距離パトロール用に一式準備してある

*3
正義実現委員会の倉庫で余ってたのを置いてもらってある

*4
僕もあんまりよくないな~って思いつつ秒で引き受けちゃう

*5
おたくちゃんちゃんこを着たお姉ちゃんがゾンビになってるB1o-Cancerの1stっぽい




 桐藤ナギサさん含めティーパーティーはイヴ監視のためだけに会議を開くほど暇ではないですが、出席するかどうか、反特定企業発言をするかも含めて確認をしておきたいと思っています。
 カイザーはトリニティクラスの学園であっても排除し得ない規模を持っており、それ故の前年ティーパーティーの轢逃げ事故への及び腰であり、この時点でも状況に大差はありません。

 トリニティは小中高一貫で、寮生活者とひとり暮らしの生徒がほとんどなので、小中時代は宿泊を伴う行事は無かったという設定です。

B1o-Cancerの1st"Ear Piercing Thrash"なので、ゾンビになってるんじゃなくて鼓膜貫通して死んでる(?)だけですね。1st聞いて相当経つのに今日知りました。
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