ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
早朝。いつもイヴちゃんより少し僕が早く目が覚めるし今日もそうだった。今日も全身が動かない。イヴちゃんの家でのお泊まり同様、宇沢レイサさんが全力で抱きついている。宇沢レイサさんの方が背が少し高いから、全身包み込まれるような感じというか、頭の香りを嗅がれている感じというか。驚異的な寝相の悪さは何とか耐えられたのか、寝相の悪さの結果なのか。
目だけを動かして壁の時計を見るとまだ起きるにはちょっと早い時間だけど、宇沢レイサさんは少々動かしても起きないから、一応配慮はしつつもするっと身体を抜け出させた。 枕元で僕達をじっと見ていたらしい子がびくりと身体を震わせた。猫目でじっと僕達を見ていたのは下江コハルさんだった。ピンクの布地に白い猫があしらわれたパジャマが可愛い。多分僕達が寝た後にパトロールから帰ってきたのだろう。
僕は小声で囁く。
「コハルさん、お早う」
「な、なんであんた達がここでエッチな事してるの!?」
下江コハルさんも器用に小声で叫び返す。
「エッチな事はしてない」
「こ、こんなに密着してるなんて、じ、実際はエッチなことしてたんでしょ?!」
僕はイヴちゃんの所作に似るように気をつけつつ首を傾げて小さく微笑んだ。
「してたらもっと慌てる」
「……そう。でも、私の前でエッチな事したら許さないから!」
残念そうな、安心したような答え。
「しないように努力する」
「しないって言いなさいよ!」
「できないことは約束しない主義だから」
「は~!?もう、そうじゃないでしょ!見つけたら本当に許さないんだから!バカ!」
下江コハルさんはマットレスに潜り込んでしまった。まだ寝直すつもりなのだろうか。まあ授業まで逆算すればまだもう少し時間があるか。
「お休み、コハルさん」
「……お休み!」
ぷんすこしながら頭の羽をぴこぴこさせている下江コハルさん可愛い。
顔を洗っていると給湯室から良い匂いがしてきた。狭いところで頑張ってみんなの朝ご飯を作っている正義実現委員会の子に手を貸すことしばし。
「イヴさん、おはようございます」
「おはようございます」
寝る時用の正義実現委員会の制服*1から着替えたらしき羽川ハスミさんも手伝いに来てくれた。といっても狭いし、詰めてる人数分の簡単なトースターとサンドイッチ、紅茶類があらかた出来上がったので、冷蔵庫にあるサラダと取り分けて一緒に運ぶ。スープはインスタントだから追加で持ってきてくれるらしい。
さて、そろそろイヴちゃん起こして、宇沢レイサさん起こしに行ってもらおうか。
(イヴちゃん朝だよ!起きて!カンカンカン!!!)
(……あと1時間……)
(ご飯食べない?焼きたてのトースターとツナとチーズのサンドイッチあるよ)
(……食べる……)
(よしよし。じゃあ交代するから、宇沢レイサさん起こして)
(……がんばる……)
今回も宇沢レイサさんは全然起きなかったので、イヴちゃんが左腕に抱えあげた。羽川ハスミさんが下江コハルさんを起こしている。
「お、おはようございます!!!」
「おはよう、コハル」
「……コハルさんは、寝起きいいね……レイサちゃん、朝……」
肩を揺すったり軽く頬をぺちぺちしたり、頬を小さくむにーっと引っ張っているけど全然起きない。すやすやしている宇沢レイサさん、寝相を除けば可愛いのでイヴちゃんも小さく微笑んでいるし楽しそうではあるのだけど、本当に起きない。
「もにゃ、いけません……それは水着じゃ無くてウツボ……」
「……今日も、起きない……」
「今日も?!もしかしていつも一緒に寝てるの?!」
首を横に振るイヴちゃん。
「……お泊まりは、この間した……ソフノちゃんと、モユルちゃんも来て、4人で……」
「4人も?!」
「ほら、コハル。着替えてご飯ですよ」
「はっ?!はい!!」
猫目で顔真っ赤になってぷるぷるしている下江コハルさん可愛い。何想像しているんだろう。
宇沢レイサさんはまじで全然起きないので、イヴちゃんは完全に諦めたらしく、両手で優しく抱え上げる。あらあら、という感じで眺めている羽川ハスミさん、穏やかな時は本当に良い先輩なんだな~。イヴちゃんが左腕で抱っこして右手で顔洗ってあげて、食堂になっている会議室に連れてきた。まだイヴちゃんに抱きつきたりなそうな感じのふにゃふにゃしている宇沢レイサさんを座らせて、良い感じに焼けたトースターにバターを塗って、蜂蜜をかけてから宇沢レイサさんの鼻の下に持っていくイヴちゃん。
「……朝ご飯だよ、レイサちゃん……」
「はっ?!お、おはようございます!!!!」
くすくすと周りの正義実現委員会の子達から好意的な笑いが漏れる。
「あんなに強い子でも朝には弱いんだ」
上手いこと言ってる子がいる。いや上手いか?
「……よかった、朝ご飯、みんなで食べよ……?」
「は、はい!」
穏やかな時間。下江コハルさんは羽川ハスミさんの隣。先輩の事を慕ってるんだなあ、というのがわかる距離感と会話。イヴちゃんはまだ眠そうな宇沢レイサさんのためにせっせとパンをちぎったりスープの支度をしたりしている。ちょっと楽しそう。
通学前に宇沢レイサさんが着替えるのを待ってる間に、モモトークをちらっと見るとアビドス勢からお礼のメッセージが入っていた。要約すると
『借金完済までこのペースなら10年以内という現実的な数字になった。助けてくれてありがとう』
という感じ。元金も利息も相当減ったしね。よかったよかった。
(……よかった……)
(本当にね)
もっと協力してあげたかったしカイザーもっとしばきたかったけどね。
ミレニアムのエンジニア部とゲーム開発部からもメッセージが来ている。
『現実逃避をしていたらバイクができたので翼のチェックとメンテのついでに見に来て欲しい』
というのと
『ゲーム開発で手伝ってほしいことがあるのでミレニアムに来る時に顔を出してほしい』というメッセージだった。もうバイクできたんだ。はやい。両方ともちゃんとイヴちゃんがToDoリストに入れておいたのであんしん。
いつも通りの授業、いつも通りのお昼。ついにいつもの宇沢レイサさんグループのお昼ご飯に下江コハルさんと伊落マリーさんが揃った。合流初手に既に猫目で顔真っ赤の下江コハルさんの視線が、宇沢レイサさんとイヴちゃんの繋いでる手と、ご飯と、清楚なのに謎の色気を全力で放出している伊落マリーさんの間を行ったり来たりしている。伊落マリーさん、まだ暑い時期じゃないからマシだけど、汗かいたりしたら本当にヤバそうだな。所作の一つ一つが上品なのに何だか色っぽいというか。紙コップに入ったお茶を飲んで喉がこくこく動く仕草だけでも何というかもうアレ。下江コハルさんのすがるような目がイヴちゃんに向くけど、イヴちゃんは首を傾げた。伊落マリーさんが下江コハルさんに声をかける。
「あの、下江さん」
「な、なによ!?」
人に懐かない猫みたいだなあ。毛並みが逆立ってそう。
「昨日は夜のパトロール、お疲れ様でした。いつもご苦労様です。もちろん、レイサさんも、イヴさんも」
「ほんと、いっつも大変だよね~」
うんうんと頷く朝吹ソフノさんと報野モユルさんとイヴちゃん。いやイヴちゃんはやってる側だけどね……?
「……コハルさん、緊張、してる……?」
「してないし!普段あんまり喋らない人がいるから警戒してるだけだし!」
「同じクラスなのに、あまりお話しする機会がありませんでしたね。その……私も、コハルさんとお呼びしても?」
「……好きにしたら」
ツンツンで頭の翼で目の上半分を覆ってる下江コハルさんと、嬉しそうに微笑む伊落マリーさん。座り直すのにちょっと足を動かすだけで謎色気が発生している。下江コハルさんの所作は半分は照れなんだろうけど、半分は謎のえっちさに圧されてるんだろうな。
今日のご飯は報野モユルさんチョイスの粗挽きハンバーグ弁当。全員同じメニューで、報野モユルさん自身と宇沢レイサさん、イヴちゃんはご飯が大盛り。
「……お弁当の、お肉とかの下におまけでついてくるスパゲティ、好き……」
「わかります!!美味しいですよね!!」
「ソフト麺が脂を吸って、てーれってれー」
「何それ」
下らないけど楽しい話が続く。下江コハルさんもぎこちないながらも話に参加できててよかった。伊落マリーさんはにこにこと頷いている。所属する部活は全然違うけど、こういう時間をこれからも作っていきたいね。まあエデン条約周り終わったら大丈夫……かなあ。そろそろ山とか海とか行く段取りもしておかないとか。
なんか……この世界の海遊びに行くってなると戦車がいるんだっけ?孤島とか行くなら水陸両用の車両とかがあった方が良いのかな。LVT4とか学園内のどっかに置いてあるかもしれない。探さないとな。
(イヴちゃん、戦車借りたりする手続きって知ってる?)
(……正義実現委員会のは、手続きしたら借りれるって聞いた。あとは、レンタカー屋さんかな……?)
(へー。じゃあ何持ってるか聞いておかないとね。ありがとう)
借りれるんだ。助かるね。そのうち準備しなきゃ。レンタカーで借りても良いんだけど。いやレンタカーであるんだね……。
もう夏のこと考えないといけない時期か。その前に定期考査最初の1つ、中間テストがあるけどね。
ゲームにおける第一部は終わりなので、閑話を挟んで新章に入ります。
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