ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
4時間目も結局才羽姉妹は出席しないつもりらしい。才羽モモイさんがエンジニア部員の顔見知りに声をかけ、モーションキャプチャ装置を使わせてもらうことになった。
その間に手すきのエンジニア部員さん達が盾を整備してくれるらしく、3人がかりで盾と
マニュアルと首っ引きになっている才羽ミドリさんに才羽モモイさんが「ねーまだー」と気軽に言って叱られているのを眺めながら装置の起動を外から眺めていた。エンジニア部員さん達が整備用の工具に盾を立てかけている。
(……盾を、たてかける……ふふ……)
(あっ、う、うん)
装置が起動してから、僕がイヴちゃんと交代する。まあ僕も別にめっちゃタツジンって訳でも無いんだけど。
「とりあえず、型でもやったらいい?」
「お願い」
覚えてる限りの型をやる。型の中で中段突きが上段突きになるだけの奴とかは割愛でいっかと思ったけど、それも一応やってほしいらしい。
一応、家でストレッチと筋トレとあわせてある程度やってるんだけど、ほんとにこんなんだっけ?ってやる度に不安になるんだよな。もう存在すら覚えてないけど、前世の僕を教えてくれてた人が見たらどう言うだろう。まあイヴちゃんの可愛らしさに胸を打たれてなんも言えんとかかもしれん。中身は僕だけどね。
太極と
才羽ミドリさんは一つ一つの挙動に「これはどういう意味?」と聞いてくる。自分のやってる型にすら自信が無くなってきたので後半はやってから脳内ライブラリにあった「型の分解」みたいな本の説明を丸パクりしてしまった。へー、型の中でやってるあれって諸手突き*1じゃなくて左手で上段受けしてから右手で突いてる変種だったんだな……っていう、気付きが遅すぎる案件もあったりした。ひどすぎる。
「参考になった……?」
キヴォトスだと指導者もいないまま独学でやってて型がちゃんとできてるか段々不安になってきた僕に、才羽モモイさんも才羽ミドリさんも頷いてくれた。
「格闘技って、やる人凄く少ないから」
「銃撃つ練習した方がいいもんね」
まあ銃は単純に間合い長いからなあ。キヴォトス人は早々死なないから心理的抵抗も全然少ないし。でも、載せれる神秘量に違いがありそうだから、全然無しとは思わんのだよな。意表突いたり静かに物事を進められたりもするし。
「あとは、歩く動作と、上中下段のキック、上中下段のガードと、キックに対するガードもあるんだよね?」
「お、意外と詳しい」
「格ゲーで見た!」
格ゲーかよ。まあ良いんだけど。
歩きは基本的にすり足で、頭を上下させないように。キックボクシングで教わったのは自分の予備動作を隠すために小さく跳ねるように、だった気がするんだけど、こっちの方が性に合ってる気がする。
前蹴り、横蹴り、回し蹴り、後ろ蹴り、後ろ回し蹴りをそれぞれやって、脛で蹴りを受ける動作をしたり、膝と肘をあわせて上段の蹴りを受ける動作をした。
格ゲーでやるみたいにローキックしながら軸足*2を使って小さく前進したり*3、水面蹴り*4とか旋風脚とか上段蹴りとか見栄えの良い技はやっぱりウケが良く、ちょっとドヤ顔をしてしまった。僕も好き。そもそも蹴り技が好きなんだよな。あ、もちろんアンダースコートは履いてるのでごあんしんだ。
才羽ミドリさんの指示通りに投げ技*5までやってあらかた満足してもらった。
「次回作は、格闘ゲーム?」
「何も考えてない!」
「お姉ちゃん」
才羽ミドリさんも才羽モモイさんも「使うかわからないけどレアだからデータ取っとこ」くらいの感じらしい。この辺すげーミレニアムの人って感じあるね。まあ良いんだけど……。折角やったから、何か役立てるといいね。
イヴちゃんはコカインで熊がドンギマリする映画を見てる。いや好きだなあ。
いつの間にかお昼休みの時間になっていたらしく、エンジニア部にやってきた白石ウタハさんが声をかけてくれた。差し入れを渡す。(ゲーム開発部用の差入れは才羽モモイさんに渡そうとしたところ「全部食べかねないから」と断られたので、まだ持ったまま)
モーションキャプチャは終わったっぽいので、イヴちゃんに交代。
「エンジニア部に急ぎの案件があってね」
「……バイク、大丈夫でした……?」
「むしろ現実逃避したさのちょうどいい発散先だったから気にしないで」
ミレニアムのロゴが描かれた灰色のシートの掛けられたバイクの前に案内される。才羽姉妹も見学というか冷やかしについてきた。えっ、こんなサイズだっけ?
(……こんなに大きかった……?)
(だよねえ?)
なんか記憶にあるより2回りくらいデカい気がするんだよな。白石ウタハさんがシートを取ってほしいという目をしているのを受けて、イヴちゃんがシートをがばっと取る。
(うわごっついな!)
(……でも……)
(……(かっこいい)……)
「えー、すっご!!!」
「『エクスプロージョンバイク』とかに出てきそう!!」
イヴちゃんもだけど、才羽姉妹も目を輝かせている。エンジニア部一同のドヤ顔もむべなるかなって感じ。
いや格好良いわ。金属部以外は盾の色に合わせてくれたのか真っ黒。冗談みたいにごついけど。元のバイクの全長1.3倍、幅は2倍ってとこか?あと、車体のパーツ全体っていうか、重心が右に寄ってない?
「総排気量8,500cc、550psの水冷V8エンジンを積んだインテリジェント・モーターサイクルだ。重量わずか390kg、最高速度450km/hのモンスターマシンだよ」
うーん、羽つけたら飛べそうだなあ。
「ヘリ用のガスタービンエンジンを積もうか意見が割れたのですが、出力はともかく燃費が悪いのでV8にしました!これもエンジニア部独自開発モデルで、例のアビドス砂漠から持ってきていただいた素材を参考に開発した新素材で非常に軽く仕上がってます!それと、イヴさんが一目見て判るとおり、重心が右に寄っています!何故かというとですね」
後ろから豊見コトリさんがばばーっと解説してくれる。ふむふむと頷くイヴちゃん。
「すみません、盾……はメンテ中ですね?」
「今終わった」
猫塚ヒビキさんと他の部員さん達が盾を持ってきてくれた。お礼を言うイヴちゃん。あ、いつものイチジクの葉っぱと燃える蠅のロゴの下にトリニティ自警団のロゴ描き足してくれてる。
「この盾も装甲板の素材を変更したり肉抜きをしたりして軽量化はしたけど、それでも450kgはある」
フル装填で500kgあったはずだから50kgも軽量化できてるんで、凄いと思うんだけどまだ改善の余地がある的な顔をしてみんな不満そうだ。
「まあ、重量改善はまた今度として、その盾を横倒しにして、ハードポイントをあわせてください」
おお、バイクの左側にしっかり盾とウッドペッカーが収まった。
「……なるほど、この盾を積む前提の設計、なんですね……」
「そう。まあ、盾を積んだら今度は重心が左に寄るし、積もうが積むまいが安定走行できるように制御システムを別途作ってある。残念ながら最高速度は盾を積むと410km/hしか出ない」
しかて。充分イカれてる最高速度やからな。
「姿勢制御以外にも多様な機能を積んでますから、インテリジェント・モーターサイクルっていう呼び名をしてるんです!無人走行もミレニアムと協定を締結している各学園の自治区内なら法的に問題ありません!」
「しかも、Bluetoothで制御可能」
えっ、初めてBluetoothの必然性が出たな。あんまりにも意外すぎてびっくりしちゃった。エンジニア部の素敵メカニック、大体Bluetooth一切必要じゃないのに。
スマートフォンにエンジニア部の制御アプリをインストールするイヴちゃん。
「もちろん、バイク単独のインターフェイスでも制御出来るけど、スマフォで操作できる方が便利だからね」
猫塚ヒビキさん、マジかよ。あんまりに真っ当すぎる発言に唖然としてしまった。悪い物でも食べたのかな。
『ハローワールド、イヴさん。私はインテリジェント・モーターサイクル。名前はありません』
おお、液晶モニタがついてバイクが喋った。
(名前かあ~)
(……私、『轢死街道』くらいしか思いつかなかった……)
(かっとんでるねえ)
轢死街道、悪くないネーミングではあるよな。なんかどっかから怒られそうな気もするんだよなあ……。
(
(……良いと思う……)
轢き○すなあ……そのまんまロードキルとかそういう名前にしようかな?って思ったんだけど、何かこのバイクむしろ
「……じゃあ、『スケルチ』ね……」
『わかりました。当該車両名を「スケルチ」とします』
「……ちなみに、元のバイクのパーツは……?」
白石ウタハさんが気の毒そうな顔をした。
「残念ながら修理不能と判断して、金属部分は溶かして素材として再活用してるよ」
白石ウタハさんがこらあかんって思ったなら駄目だったんだろうな。すまん、先代バイクくん。こいつは大事に乗ろう。とてつもなく頑丈そうではあるけど無茶な使い方しないように気をつけないとなあ。
「早速乗っていくかい?」
「乗りたい!」
「お姉ちゃんは免許持ってないでしょ」
「……練習してからなら、後ろ、乗せようか……?」
テストコースなら乗れるはずだけど、運転未経験者にこれは酷だろう。というか、僕も結構怖い。
サマソニ大阪最高でしたね。疲れ果てて1日寝潰して、昨日は家の掃除してました。
バイクのイメージはボスホス ビッグブロックの赤色部分まで黒に塗った感じです。
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