ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
セミナーの部屋に行く、と才羽ミドリさんが事前にアポの電話を入れたところ、『トリニティ生がいるならこっちから行く』ということで、向こうから人が来てくれた。セミナーの仕事が爆発四散してないからだろうけど、余裕がありそうで助かった。
てっきり早瀬ユウカさんが来るかと思ったが、来たのは少し灰色がかった長髪の子、生塩ノアさんだった。
「初めまして、シャーレの先生。そして、実験体……ごめんなさい、人の噂をするのは失礼ですね。御蔵イヴさん」
ニコニコとした笑顔ながら、底が知れない雰囲気がある。早瀬ユウカさんはいつでも最短最効率だし、寝技とか使うタイプじゃないからな。
「お二人とも、ユウカちゃんからお話はかねがね。イヴさんとお呼びしても?」
頷くイヴちゃん。
「……ノアさん、とお呼びしていいですか……」
「もちろん。ユウカちゃんお気に入りの噂の方々にお目にかかれて嬉しいです」
「"どう言われてるかは気になるけど、よろしくね、ノア"」
「ふふ、2人のお話、すごくしていて、初対面とは思えないくらいなのですけど。でも、ユウカちゃんに怒られちゃいますから、本人に聞いてみてください。と、それで、廃墟探索ですよね」
「"そう、大丈夫かな?"」
「構いませんが、そうですね……許可を出せるのは、あと3時間後までです」
「な、なんで?!」
「日没です。暗くなってしまうと、救助が必要になっても何もできませんからね」
あ、そっか、という顔をする一同。
「と、とにかく時間がないってこと!?急がなきゃ!」
「……廃墟の、探索情報をまとめた地図データと、アンテナ類の使用はできますか……?」
「"アンテナ?"」
「ミレニアムの廃墟はかなり昔からある場所なのですけど、ずっと未踏査領域でした。今年度になって、エンジニア部、ヴェリタスと、外部協力者としてイヴさんが入って、徘徊するドローンやロボット類のサンプル回収、あわせて地図作成と情報収集用の複合センサの設置をしています」
「へー、そんなことしてたんだ」
「さすがゲーム開発部の火力担当だね」
よく判らない褒められ方だけどイヴちゃんもちょっと嬉しそう。ゲーム開発部員かあ。まあ悪くは無いよね。
「パッシヴ*1類のセンサ情報はシャーレに関してなら提供します。センサの性能や場所については機密情報扱いなので、お願いしますね、先生」
「"わかった。誰にも言わないよ"」
シッテムの箱の画面をつけて生塩ノアさんとデータをやり取りする先生。
「アクティヴ*2センサに関しては、原則としては許可できません。徘徊するロボット類は敵対的で、我々の設置したセンサ類が発見されると全部破壊されるリスクがあるからです。ですが」
「"ですが?"」
「先生が緊急だと判断した場合、要請があれば使っていただいても大丈夫です。ただし、もし発見、破壊された場合の費用についてはこうなりますから、シャーレ持ちでお願いしますね?」
「"いいよ、任せて"」
生塩ノアさんが提示した1個あたりの価格は前世ライブラリの資料とかに載ってるのと比べると結構いいお値段がしたが、廃墟の危険度と使ってる生徒の労力と時間を考えたらまあ「ちょいふっかけてるな」ってところだろうか?まあ、ミレニアムの技術費考えたらそこまででもないのかもしれんけど。その辺のラインの見極めが上手いな~。
「ふふ、では、先生には今後ともよろしくしていただきたいですし、廃墟までの足を出しましょう。ユズちゃん、運転はお願いしても?」
「う、うん……」
「じゃあ急ごう!日が落ちるまでに行って帰ってこなきゃ!」
全員のスマフォに共有された廃墟の地図とG.Bibleの座標は、踏査済エリアの一角を指していた。
準備してもらった車両はピラーニャⅠ4x4っぽい車両だった。古い車両みたいだけどしっかり整備されているようで動きもスムーズ。運転は花岡ユズさん。あっという間に廃墟前にたどり着く。
エンジンはかけたまま全員が降車し、先生がシッテムの箱を操作すると廃墟の門が開いた。
「さー、行くよ!」
「お姉ちゃん、もうちょっと静かに」
「こ、怖い……」
「……先生、私の後ろに……」
「"いざとなったら私が指示するから、みんな、よろしくね"」
廃墟に何度か足を運んでいるイヴちゃんの助言で、廃墟の物陰、庇を伝って移動する一同。20mほど先にドローンが見えたが、こっちにはまだ気付いてない。
「ドローンだ」
「……任せて……」
イヴちゃんが転がってたコンクリ片を掴み、全力で投擲。甲高い金属音を立てて墜落するドローンにもう二発駄目押しで投げつけ、ドローンは沈黙した上でこっちの死角に吹き飛んでいった。
「"すごいね"」
「……ここで練習したから……。落下物と、攻撃の区別がつかないのがほとんど……」
「ほとんど、っていうことは……」
「つくのもいるんだ」
叩き落とした後に他の機体がかっ飛んで来たら後者、くらいしか見分けつかないんだよな。幸い、イヴちゃんが叩き落とした機体はセーフだったようだ。偵察要員として前に出るイヴちゃんの後ろ、才羽モモイさんがはしゃいでいる。
「メラルギアみたいだよね」
「実際に、やりたくはなかった……」
「ほんとだよ」
「"あはは……。あ、あれかな?"」
視界の正面、残り200mというところか。他の建物と見たところあまり代わり映えしない3階建くらいの高さの廃工場がある。
「建物の中は見てなかったの?」
頷くイヴちゃん。
「……もし、屋内掃討戦になったら、手間がかかりすぎるし、増援は無限に湧いてくるから……」
ドローンとかロボットとか、建物の中に入り込んでたら建物1部屋1部屋を取り合う屋内戦になっちゃうもんなあ。
無限湧き増援という言葉を聞いて震える花岡ユズさん。
周辺を警戒するイヴちゃんと、地図に目を落とす先生。左手にロボット集団がいるな。
「"とにかく、右手からぐるっと回れば大丈夫かな?"」
「あー、いや、駄目そう」
「なんで?」
「今、右手のビルの上に出てきたロボットと目があっちゃった」
才羽モモイさんが指さしたビルの上、2脚のオートマタに似ているロボットが屋上からこっちをじっと見ている。
先生とロボットの間に割込んで盾を持ち上げて
「あー、もうちょっとだったのに!」
「ひぇ……」
「ど、どうしよう先生!」
「"とにかく、目的の建物に入ろう。籠城すれば有利に戦えるし、最悪、救助の部隊を呼べる"」
先生の指揮は的確で無駄が無かった。視界に突如見えるようになった情報に大騒ぎするゲーム開発部一同含め、前後左右から無数に湧いてくる敵ロボットを排除していく。
才羽姉妹を前衛として正面と左右を警戒、イヴちゃんが中衛として前後左右と上に高火力を提供*3、花岡ユズさんが遊撃隊として撃ち漏らしを狩りつつ先生を守る配置。
才羽姉妹の息は本当にぴったりで、見事な連携だった。
先生を守るように花岡ユズさんがついてくれたので、しんがりとしてイヴちゃんが後ろに立ち、ウッドペッカーと
目的の建物を背にしたゲーム開発部員達への攻撃が止まり、じりじり合流したイヴちゃんへも攻撃をしなくなった。
「あれ、攻撃が止んだ……?」
「このドア、開かないよ!」
「……みんな、どいて……」
ウッドペッカーが頑丈そうなさび付いた鉄扉の鍵のあたりをスイスチーズのように撃ち抜いた。
「やっぱり火力は全部を解決するんだね!私もミニガンとか買おうかな?」
「お姉ちゃん、持てないじゃない……?」
「は、早く早く……!」
「……中の索敵と掃討も、お願い……」
ゲーム開発部と先生が建物の中に入ったのをちらっと見て、イヴちゃんも建物内に入る。鉄扉を閉めて、鉄扉の開いてる穴をワイヤで繋いで閉めた。外の連中がその気になったら、数秒は警戒用の時間を稼いでくれるだろう。
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