ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
工場のような建物の中、3階建くらいの建物は天井までぶち抜きになっていた。
普段から運動をしてるイヴちゃん除くゲーム開発部員3人と先生の荒い息がこだました。
「"も、もっと……運動しとかないとだめだね……"」
「ほ、ほんとに……トレーニング部覗いてみようかな……」
「う、うう……部室に、部室のロッカーに帰りたい……」
「ま、まあ、何だか知らないけど、追ってこなくなったし一安心……?」
「っていうか、何!?あのロボット達!」
人格と意思がある*1ロボットではない。もちろん市民で無い2足歩行ロボもいるんだけど、大抵の場合は警備用で、あんな苛烈な攻撃を仕掛けてきたりはしない。
「噂の、ミレニアムの無人軍*2とか……?」
「……元々、廃墟もミレニアム市街の一部で、放棄された生産施設が無限に作ってる……」
「そうなの!?」
「……マキさん*3が、言ってた噂……」
生産施設自体が自己修理・自己再生・自己進化能力を兼ね備えてたりするとか?うーん、最悪だな。
「全然信用出来なくなっちゃった。それにしても、普通の警備ロボットと違って、なんていうか……殺意?みたいな、そういうのがあったよね」
イヴちゃんが首肯する。
「……捕まったら大変なことになりそう……」
「と、とにかく、あいつら、この建物には入ってこないみたいだし、G.Bibleを探そう!」
「さ、探すって言っても、何もないけど……」
「逆に考えたら、探す手間が省けるっていうか」
「"とにかく、見て回ってみようか"」
建物内を(イヴちゃんはパルクールの要領で壁を上までよじ登ったりした)見て回るも、何もない。再び工場の中央に集まる。
「何もないね」
「ゴミとか変な虫とかばっかり」
「座標、合ってるよね……?」
「……合ってる……」
「"うーん……"」
と、この面子の誰でも無い声が響いた。
『花岡ユズ、資格がありません』
『才羽モモイ、資格がありません』
『才羽ミドリ、資格がありません』
「えっ、なになに?!」
『御蔵イヴ、資格がありません』
連邦生徒会長が設定したんなら、イヴちゃんもそうだろうな。っていうかこれあれか?連邦生徒会長の声じゃないか?録音でマイク越しだから似てるだけの他人だろうが。
『ジ……ザザ、資格が不足しています』
は?ジ何とかってことは多分僕なんだろうけど、不足しています?資格の設定条件が「大人」とかなのか?
『先生……対象の身元を確認します』
「あれ?」
『資格を確認しました。入室権限を付与します』
「先生?!いつの間にこの変な建物と仲良くなったの?!」
「"初対面だと思うけどなぁ"」
あ、そういえばここ、クソ欠陥設計の建物だった気がする。
(イヴちゃん、下しか入口がないから、多分床に落とし穴が開くと思う)
(……わかった……)
『花岡ユズ、才羽モモイ、才羽ミドリ、御蔵イヴ、ジ……の、4名を先生の「生徒」として認定、同行者にも資格を与えます』
「"……今、もう1人呼ぼうとしてなかった?でも、人数は4人か……"」
僕をどうやって判定してるんだ?魂の数的ななんか、或いは神秘の質を判定する装置かなんかがあって、僕はイヴちゃんとは違う何かを出してる?
「……みんな、私に捕まって。たぶん、床が開く……」
「え、ええ?!」
「"あ~、他に入口がないから……?"」
イヴちゃんが先生を左手で抱きしめて、右手をゲーム開発部員3人に突き出す。
「ど、ど……どうしてこんなことに……」
「まーまー、ユズ、生きてたら良いことあるって」
『下部の扉を開きます』
「す、少なくとも今はひゃうっ!?」
轟音を立てて床が下側に開いた。いや、昔はエレベータとかがあったのか?そんな構造なってないけど……。
「ユズちゃん!お姉ちゃん!先生!イヴちゃん!」
真下が真っ暗なのを見て、イヴちゃんが着発信管付の信号弾を下に放り投げた。
落下が途中で遅くなり、信号弾が点火した直後に、全員が無事に着地した。
「び、びっくりした……!」
「"みんな、怪我は無い?イヴ、ありがとうね"」
「……ううん、私は何も……」
「流石に死ぬかと思った……あっ!?」
「あっ……せ、先生、あっち見て……いや見ない方がいい?!」
「"え、どっち?"」
「……女の子……?」
全裸の女の子が椅子に座っている。天童アリスさん、いや、今はまだ名前が無いか。ゲーム開発部員全員が椅子の方に駆け寄り、ゆっくり歩み寄る先生の間にイヴちゃんが立つ。
「と、とにかく、服を……」
「『返事が無い、ただの死体のようだ』……」
「不謹慎なこと言わないで!」
「は、反応が無い、というか……『電源が入ってない』みたいに……」
才羽モモイさんが羽織っていたジャケットを羽織らせながら眠っている女の子にぺたぺた触る。
「お肌もしっとり、柔らかいね……。何か、文字が書かれてる。AL-IS……アリス?」
「ろ、ローマ字じゃない文字もある。AL-1S、じゃない……?」
「"この子、この場所……一体……?"」
「……G.Bibleを書いた、先輩だったりする……?」
「怖いこと言わないで?!その先輩、普通に卒業したはず……」
「こ、この子に聞いた方が早いかな……」
「起きて話してくれるならね。ジャケット以外も着せてあげよ」
「よ、予備も持ってきてたんだ……」
「ミドリ、待って、それ私のパンツじゃない?!」
「違うよ!猫の表情が違うでしょ!」
先生とイヴちゃんは周囲を見渡してる中、才羽ミドリさんが服一式を着せてあげた直後、警報音が鳴り響いた。
「近くにさっきのロボットとかが?!」
「こ、この子?から聞こえたような……」
『状態の変化、および接触許可対象を感知、休眠状態を解除』
女の子が目を開いた。
「"目を覚ました……?"」
「状況把握、難航。会話を試みます。説明をお願いできますか」
「い、いや……」
「説明が欲しいのはこっち!あなたは何者で、ここは何?!」
「本機の自我、記憶、目的は消失。データがありません」
「き、記憶喪失ってこと……?」
「いきなり攻撃したりはしてこないよね……?」
「肯定。遭遇時、敵対意思は発動せず」
「ロボット市民ならキヴォトスでよく見かけるけど、こんな似てるロボットって初めて!」
「と、とにかく……せ、先生、どうしましょう……」
すがりつくような目で先生を見る花岡ユズさん。まあ……困るよなあ。
「"ここは何か、あなたは誰か教えてくれる?"」
「回答不可。深層意識が反応したものと思われます」
「う、ううん……」
「廃墟、工場?の地下、ほぼ全裸の女の子、おまけに記憶喪失……そうだ!良いこと思いついた!」
「いや、あの……嫌なことしか思い当たらないんだけど……」
「???」
不思議そうに首を傾げる女の子。
復路、不思議にも*4攻撃を加えてこなかったロボット群を尻目にゲーム開発部室まで戻ってきた。
不思議そうに首を傾げる女の子と、同じく不思議そうに首を傾げたイヴちゃん。
「「???」」
「いや、こんなことだろうと思ったけど!」
「つ、つまり……」
あ、才羽ミドリさんが才羽モモイさんの首を絞め始めた。
「ちょ、う、苦しい!ゲホゲホ!しょうがないでしょ!あんな恐ろしいロボ達がいるところに置いていけないし」
「あ、そ、そのWeeリモコンは口に入れないで……!」
「放っておけないか……でも、連邦生徒会かヴァルキューレに連絡した方がいいんじゃない?」
「それはまだ。私達のやるべき事が終わってからだよ。まず名前が必要だろうから、『アリス』って呼ぼうかな」
「本機の名称、アリス」
「え、本当に……?AL-1Sちゃんじゃ……?」
「長いと呼びにくいでしょ。アリス、気に入った?」
「……肯定。本機、アリス」
「見たか!私のネーミングセンス!」
「ま、まあ本人が気に入ったならいいか……」
「さ、じゃあ次のステップだよ!」
「あ、こ、子猫や子犬を拾ってきたわけじゃないんだから……」
「ユズもミドリもよく考えてみて。どうして私達はG.Bibleを探しに出たんだっけ?」
「廃部にさせないためでしょ」
「そう、まず第一段階。部員も廃部回避の条件の1つ。アリスが5人目の部員になる」
「……つまり……」
「そう!イヴはユウカに顔が割れてたからバレちゃうだけ!アリスは誰も知らないからセーフ!」
「お姉ちゃん?!ミレニアム生徒籍を偽造して、うちの部に入れるつもり?!」
才羽モモイさんがドヤ顔をして、天童(仮称)アリスさんを見る。アリスさんは話を聞いてなかった。ゲームガールアドバンスSPを囓っている。
「ああっ?!そんなの食べちゃ駄目!」
「キヴォトス唯一の16bitゲーム機なんだよ!」
「……そもそも、食べ物じゃない……」
イヴちゃんがゲームガールアドバンスSPからアリスさんを引き剥がそうとする。うわ力強!500kgの盾ぶん回せるイヴちゃんと力比べ出来るの凄いな!何とか引き剥がせたけど、これはイヴちゃんが寝てる間の鍛錬が功を奏したのか、単にアリスさんが寝起きだからか。
「……美味しい……?」
「味覚において肯定的な刺激は受けていません」
「"美味しくないならなおのこと止めた方が……"」
「だ、大丈夫かな……」
才羽ミドリさんと花岡ユズさんが顔を見合わせる。大丈夫かなあ。
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