ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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 小塗マキと会った描写が原稿ロールバックか何かの影響で飛んでしまっていたので、前話のマキの言及に注釈を加えています。済みません。


物語・物語・物語 RPGで一番大事なのはストーリー……ってコト?!

 才羽モモイさんはヴェリタスに行くと言って席を外した。花岡ユズさんは廃墟行きの外出と先生と知らない子(天童(仮称)アリスさん)がいるストレスに耐えきれなくなったのかぷるぷる震えてロッカーに戻ってしまった。

「うーん、本当に大丈夫かな……」

「大丈夫の意味を確認、『まちがいがなくて確かなさま』*1のことと推測、肯定します」

「いやいやいや、この口調じゃ絶対怪しいでしょ!」

「……先生は、止めない……?」

「"積極的に推奨はできないから、見なかったフリしかできないかな……"」

 

 わちゃわちゃしているうちに、才羽モモイさんが戻ってきた。

「お、お姉ちゃん……やっぱり止めておかない……?」

「部室が無くなったら、ユズの居場所が無くなっちゃう。寮に戻るわけにいかないし……」

「そ、そうか……そうだね……」

 ちらちらとロッカーの方を見る才羽ミドリさん。ロッカーごとびくりと震えた気がした。

「学生証も頼んでおいたけど、私、もう一回行ってくるから。ミドリはユズ……はちょっと無理かな……。イヴと2人でアリスに『話し方』を教えてあげて」

「う、うーん……そうだね。このままだと怪しいか」

「ただでさえ『友達が少ないあなた達に新部員の募集なんてできるの?』って言われてるし。もしユウカにアリスが聞かれたら……」

 早瀬ユウカさんの物真似かな。誇張しすぎてあんま似てないけど誰かはわかる。先生は小さく笑ってる。

「『肯定、あなたの質問に対しアリスの回答を提示。本機はゲーム開発部部員』」

「あんま似てないけど、言いそう」

「……そういうゲームとか……ない……?」

「いや、いくらゲームの影響受けるったって限度があるでしょ!はあ……仕方ない。やれるだけやってみよう」

「よし、じゃあお願いね!」

「……頑張る……」

 才羽モモイさんは部室から走り出して行った。

 

 残されたイヴちゃんと才羽ミドリさんは顔を見合わせた。

「……どう、しよう……」

「え、えっと……あ、アリスちゃん?」

「肯定。本機の名称はアリスです」

「じゃあ、アリスちゃんって呼ぶね。ミドリって呼んで」

 言ってからぽんと手を叩く才羽ミドリさん。

「あ、そうだ。さっき出て行ったのが才羽モモイ、私のお姉ちゃん。ロッカーの中に入っていったのが花岡ユズちゃん、このゲーム開発部の部長。先生は先生、隣にいるのが御蔵イヴちゃん。トリニティっていう他の学校の子だけど、ゲーム開発部員だよ」

「……よろしく、イヴって呼んで……」

「了解、ミドリ、先生、イヴ」

「"話し方、か。難しいね"」

「……『言葉の書き方』とかなら、読んだことあるけど……」

「動画を見たりとか、周りの言葉を真似していくうちに自然に、って感じだと思うんだけど」

 うん?あー。何か、考えを進めて行くと頭の中(って言っていいのか?)にもやが掛かってわからんなる、「キヴォトス人は出産と乳幼児の生育的な意味でどこから来たのか」問題の一端に触れてる気がする。親?養育者?がおらんのか?聞きたい。すげー興味がある。でもこれ、イヴちゃんに聞いても何だか2人してヴォンヤリしてしまって「何の話してたっけ?」ってなっちゃうんだよな……多分、才羽ミドリさんに聞いても一緒だろうから黙ってよ……。イヴちゃんの許可を得てイヴちゃんの過去の記憶を見てみたけどわかりませんでした、いかがでしたか?ってなっちゃったし……。

 先生も今一瞬そっちの話題に食いつきそうな顔をしたけど、同じく聞かないようにしたようだ。

 あっ、と気付いたイヴちゃんが鞄から伊達眼鏡を取り出してすちゃっとかけた。

「"眼鏡……?"」

「……教育者と言えば、眼鏡……でも、先生は裸眼、か……」

「"裸眼視力2.0あるからね"」

「あ、普通に単なる伊達眼鏡なんだ。それもエンジニア部製の凄い眼鏡なのかなって思った。っていうか先生視力凄いね?!」

「"ごめん、ちょっと盛った。1.5"」

 一瞬眼鏡を見てから開発用らしきパソコンで検索し始める才羽ミドリさんと、スマフォで教育用プログラムを探すイヴちゃん。

「ええっと、子供用の教育プログラムって、インターネットとかにあるかな?」

 キョロキョロ興味深そうに部室を見渡すアリスさんが何かに気付いて手を伸ばした。

「正体不明のものを発見。確認します」

 ゲーム雑誌『ヒットガールズ』だな。付箋が何枚も貼られている。

「あー……それね。ちょっと恥ずかしいんだけど、私達が作ったゲームが載ってるの。すっごい酷評されてるんだけどね」

 該当ページを開けてあげて苦笑いする才羽ミドリさんと、興味深そうに記事を覗き込むアリスさんとイヴちゃん。

「あ、そうだ!クソゲーランキングでは1位になっちゃったし、アリスちゃんがどう思うかは分からないけど、アリスちゃん、私達のゲーム、やってみない?会話をしながら進められるから、ゲームをやってみるのも勉強になるかも」

「ここまでの意図は完全に把握しかねるものの、肯定。アリスはゲームをします」

「ほ、本当に?!ちょ、ちょっと待ってて!すぐセッティングする!」

「……私も横で見ていたいけど、終電……」

 才羽ミドリさんが時計を見る。

「大丈夫!そんなに長い作品じゃないから!」

 改めて思うけど、小さい作品1作だけ出して長いこと活動実績がない部活、確かに存続厳しそうだな。コンスタントに作品出せる体制、それはそれで大変なんだろうけど……。

 と思っている間に、才羽ミドリさんが作品をプレイする支度を調えた。

 

 アリスさんがソファに腰掛け、横のクッションに先生とイヴちゃんも座る。才羽ミドリさんは椅子を持ってきて逆側に腰掛けた。

 禍々しい*2『テイルズ・サガ・クロニクル』のロゴがばーんと表示される。

「見ての通り、この作品は王道の中世ファンタジーを下敷きにした世界観なの」

『コスモス世紀2354年、人類は劫火の炎に包まれた…』

「「……?」」

「王道って言っても、色々な要素を混ぜてるんだけど。トレンドそのままでも駄目だけど、王道だけでも古くなっちゃうから」

「ボタンを押します……」

『チュートリアルを開始します。まずはBボタンを押して、目の前の武器を装備してください』

 Bボタンをアリスさんが押すと、画面の中で大爆発が発生し、無慈悲な『Game Over』の文字がでかでかと表示された。

「!?!?」

「あはははっ!予想できる展開ほどつまらないものはないでしょ?本当はここで指示通りじゃなくて、Aボタンを押さないといけないの!」

 いつの間にか戻ってきていた才羽モモイさんがけらけら笑っている。

「お姉ちゃん、学生証は……?」

「ヴェリタスの方は終わったんだけど、遅い時間だったから事務室に誰もいなかったの。また明日行く」

「改めて見ても、この部分はちょっと酷いと思うけどなぁ……」

「もう一度始めます。再開……テキストでは説明不可能な感情が発生しています」

「あっ、私それわかるかも!きっと『興味』『期待』とかそういう感情だよ!」

「『怒り』か『困惑』じゃない……?」

「……『楽しい』とかかも……?」

「イヴちゃんも!?」

 いやー、あれでしょ。最近見たクソ映画とか由来じゃないそれ?

 

 ともかく、武器を装備し最初の戦闘に挑むアリスさん。

「緊張、高揚、興味」

 プニプニかあ。まあ定番ではあるよな。錬金○シリーズとかはぷにだっけ。

「Aボタンを押して!今度は嘘じゃないから!」

 操作チュートリアルに嘘が混じってるってどういうことなの?って改めて思うひでー発言だな。

「行きます!」

 プニプニが発砲、キヴォトス人ではない主人公は一撃で仕留められ、無慈悲な『Game Over』の文字がでかでかと表示された。

「!?!?」

『ふ、剣術など、我が銃の前では無力……』

 先生が声を殺して笑っている。イヴちゃんも楽しそう。いや変でしょ。その反応。まー僕も脳やきやき系コンテンツ好きだからちょっとだけわかるけど。

「うーん、やっぱりプニプニが『ふ』って笑うの、不自然かな?」

「……そういう問題じゃない、かも……」

「思考停止。処理が追いつきません……再開します」

「あ、アリスちゃん?大丈夫……?」

「銃の射程を鑑み、一気に接近して撃破を目指します」

「そう!レトロチックゲームの浪漫は、諦めないこと!試行錯誤の果てに正答を見つけるのが浪漫!」

 力説する才羽モモイさん。わからなくはない。攻略情報を口コミとかで共有したりね。でも理不尽と高難易度は違……やめよっか。素人に言われてもしょうがないだろうし。

 

 1時間半後、アリスさんは明らかに脳が焼けてきた感じで、><という顔をしていた。

「処理系、意思表示システムに致命的エラー」

「頑張って!ここさえ乗り越えられたらクライマックスだよ!」

 いやまじで酷かったな。ある意味実写映画みたいだった。ウィジ○・シャークとかそういう系統のだけど。

 先生とイヴちゃんは相変わらず楽しそうに画面を眺めている。いやおかしくない?だいぶトンチキだったよ?クソ装置をつけられてランニングするマグロとかそういう感じだったやん?まあ僕も嫌いじゃないけどね……。

「今のはどう考えてもシナリオ担当のお姉ちゃんのせいでしょ!『草食系』が思い出せないからって『特性で草タイプ技を食らったら攻撃力が上がる人』って書くから!」

 ポケ○ンかな??

「『私は特性で草タイプ技を食らったら攻撃力が上がる人なので、異性に気軽に声をかけられません』ってテキストでアリスちゃんが一瞬意識を失ってたじゃん!あと先生とイヴちゃんはウケてるの何で?!」

 なんでやろなあ。イヴちゃんはこういうトンチキなの好きだから……。先生も多分そうじゃない?

「"つ、通じなくもないよ……?"」

「質問。なぜ、母がヒロインで前世の妻で、腹違いの友人というのは一体……?」

 再度アリスさんの頭頂部が比喩的に火を噴いた。

「エラー!エラー!」

「が、頑張って……!もうすぐクライマックスだから!」

 頭をがくんと垂れたアリスさんが、再度頭を上げた。

「これが、ゲーム……再開します!」

 いやあ、かなり特殊なゲームだとは思うけどね……。

 

 更に30分後。完走した喜びとニューロンを焼かれた困惑が混じった表情で、コントローラを持ったままソファでぐったりするアリスさんがいた。

「こ、ろ、し、て……」

「すごい!アリス、開発者と一緒とはいえ、2時間ちょっとでトゥルーエンドだなんて!」

「いや、作者側の視点からしても、初めてプレイするゲームがこれで、通しでやりきったのが一番すごいなって……」

「"ゲームをやっていけばいくほど、語彙力が……"」

「……喋り方、流暢になってる……」

 つまりあれか?母親?が才羽モモイさんになるのか?まあ確かに精神的支柱としてはさいつよ枠なんだろうけど。

「勇者よ、汝らが同意を求めるなら、我はそれを肯定する」

「うん!間違いない!きっと!多分!Maybe……」

「ゲームそのままっていうか、近い感じだけど……言葉の羅列よりは間違いない!」

 と言ってから、頬を赤らめて目を逸らしながら、才羽ミドリさんがおずおずと尋ねた。

「こういうの、面と向かって聞くのは緊張するけど……アリスちゃん、私達のゲーム、どうだった?面白かった?!」

 才羽モモイさんも勢い込んで身を乗り出した。

「プレイしてたわけじゃない人に聞くのも何だけど、先生とイヴもよかったら感想聞きたいな!」

 イヴちゃんと先生は大きく頷いた。

「……この間見た、『幻の海』っていう映画みたいだった……ゲームは、ネットでダウンロードできる……?」

「"情熱と努力が伝わってきたよ!私も明日にでもプレイするね"」

「映画みたい?!そんなに?!あ、URL送っておくね!」

 がたがた、とその言葉に反応したのかロッカーが揺れる。

「いや待って、褒めてくれてるんだよね、イヴ?!今検索したらなんか評価がすっごく分かれてる映画だけど?!」

 イヴちゃんは再度大きく頷いた。

 謎の熱量が空回りする、風俗嬢と犬がジョギングしてる最中に犬が死ぬ、予算も掛かってたはずなのにすげー滑った映画のあれかあ……。まあ確かに、映画もゲームも楽しませたい!って熱意は伝わってきたけど。

 全員が考え込むアリスさんの方を見た。

「……説明不可」

「な、なんで?!」

「類似表現を検索中……」

「も、もしかして……悪口を探してる……?」

 数秒考え込んだアリスさんが口を開いた。

「面白さ、それは明確に存在。プレイを進めれば進めるほど、確かに別世界を旅しているような……夢を見たような、そんな……」

 アリスさんの瞳から涙がぽろぽろと溢れた。

「ど、どうして泣いてるの……?」

「私達のゲームがそれだけ感動的だったってことだよね?!」

「いやいや、いくら何でも……そもそもギャグ寄りRPGだよ……」

「ありがとう、アリス!そこらの評論家の言葉より、涙の方が100倍嬉しい!ね!ユズ!」

 ロッカーの中から、くぐもった賛同の声が聞こえる。ホラーゲームの演出みたい。

 がちゃ、とロッカーが開いて花岡ユズさんが出てきた。中にいるのがわかってるのに一瞬ビクッとする一同。

 花岡ユズさんがアリスさんに近づいた。

「アリスちゃん……ありがとう。ゲーム、楽しんでくれて。泣いてくれて……本当に、ありがとう。面白いとか、もう一度とか、そういう言葉が聞きたかったの」

「ユズちゃん……」

 ええ話や。残念ながら終電が近くなってきたのでイヴちゃんは席を立った。

(あっ、スケルチで帰ったらもっと早いんじゃない?)

(……終電、気にしなくてよかった、かな……)

(いや~、眠気でふらつきながらバイク運転は怖いでしょ)

(……確かに……)

 こっから先の温かい交流を見られないのは残念だけど、しょうがない。どっちみち完徹とかは美容の敵だしね。

*1
デジタル大辞泉

*2
僕は中身を知ってるからそう思うんだろうけど




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