ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
奥のたぶん自動ドアだった両開きドアを人力で開けて迷いなく歩いて行く天童アリスさんと着いていくゲーム開発部の皆、先生と先生をガードする位置取りで歩いているイヴちゃん。
ぴたりと天童アリスさんの足が止まった。ほんの少し古びて埃を被ってはいるが、パソコンが置いてある。普通のデスクトップパソコンで、モニタ、マウス、キーボード、ケースとおかしな部分は見当たらない。電源は既に入っているらしく、自動的にモニタがオンになり、皆を照らした。
『Divi:sion System、通常モードを起動しました。ようこそ』
「まさかの親切設計!G.Bibleについて検索してみよ!」
「い、いや、怪しいよ……」
「『ようこそ』ってことは、Divi:sion Systemっていうのがこの工場の名前なのかな?」
「キーボードを押してみます。G.Bible……」
『繧キ繧ケ繝�Β縲√せ繧ュ繝」繝ウ繝「繝シ繝�』
「こ、壊れた?!」
「まだエンターは押してませんが……」
文字が切り替わる。
『あなたはAL-1Sですか はい/いいえ』
「? いいえ、私はアリスです」
「ま、待って、アリスちゃん!」
「こ、これは何か意味が……」
『AL-1S。資格を確認しました。あなたの帰還を歓迎します』
「……キーボード、まだ押してなかった……」
「"音声認識なのかな?"」
ん?また「資格」?今度はアリスがアリス本人であればオッケーってことなのか?
っていうか、このパソコン、廃墟が放棄された年代と比べると新しい気がする。これも天童アリスさん共々、連邦生徒会長がゲーム開発部*1用に準備した撒き餌なのかな。
「AL-1Sというのは……?」
「あ、アリスちゃん本人に言ってなかったかな。AL-1Sって、書いてあった」
「アリスの、本当の名前……?あなたは、AL-1Sについて知っているのですか?」
パソコンに問いかける天童アリスさん。
パソコンのファンの唸りが気のせいでなく大きくなり、ちらちらと画面の遅延が見える。
「何か画面もボケてきたけど、処理落ちしかけてない?」
『そうで 遘√�縺薙�繧「繝ェ繧ケ縺ォ縺、縺�※逵溘↓鬩壹¥縺ケ縺榊庄諢帙&繧堤匱隕九@縺溘′縲√%縺薙↓險倥☆縺ォ縺ッ譁�ュ玲焚縺悟ー代↑縺吶℃繧九� 』
「な、何これ?どういう意味?!」
『緊急事態。電力限界に達しました。電源消失と同時に消失します。残り59秒』
「……まだ、具体的な話は何も……」
「そ、そうだよ?!っていうかアリスの話はもちろん大事だけど!G.Bibleは?!」
『あなたが求めているのはG.Bibleですか? はい/いいえ』
花岡ユズさんが電光石火の素早さで『はい』を押した。
『G.Bible……確認完了。ライブラリ登録193、廃棄対象データ。残り47秒』
「ど、どうして?!ゲーム開発者の、いや、人類の宝なのに?!」
『G.Bibleが必要なのであれば提案します。データ転送用の保存媒体を接続してください』
「えっ……どういうこと?!ありかを知ってるの?」
『あなた達も知っています。今、目の前に』
魅せるっていうか引っ張ってくるなこいつ。後ろに人が居てもおかしくない。
(イヴちゃん、投影装置のmicroSDカード出せる準備しておいて)
(……わかった……)
イヴちゃんと僕、あと悪ノリした先生が作ったクソ映像が山ほど詰まっているが、オリジナルデータは寮の自室にあるから困らない。
『正確にはG.Bibleは私の中にあります。しかし消失寸前、新しい保存媒体への移行を希望します』
「そ、そうはいっても急に保存媒体なんて……」
「……ある……私の羽の右、上から3段目のカバー開けたから、取って……」
「イヴちゃんナイス!」
『転送開始……保存領域が不足、既存データを削除します。残り9秒』
「"データは大丈夫?"」
「……先生と作った動画とか、写真とかだよ……家のパソコンにオリジナルはあるから……」
「"ああ~。あれかー"」
『データ上書き中……このデータは……?作成者のセンスが……』
あーうん、まあ……割と正気を疑うの多かった気もするけど。1677万色に光るマグロとか、笹の階段を天に向けて組むパンダのアニメーションとか、茶色のイルカが段々緑色に変色して光ってポリゴン爆発するやつ*2とか……。
『データ移行完了、G.Bible.exeを別端末で実行してください』
ふうー、と溜息が一同から漏れた。
「……アリスさんについては、何にもわからなかった……」
「Divi:sionって何なんだろう」
「こ、この端末、持って帰る……?」
Divi:sion、何だかよくわからんよなあ。過去の文明のOSとかなのかな。このパソコン自体は普通に現行規格にしか見えないが。
あ、名案だな。
「……モニタとかマウスとか、キーボードも一応持って帰ろう……」
「はい!アリスについて何かわかるかもしれません!」
手際よくパソコンをばらすイヴちゃんと手伝う天童アリスさん。一応ケーブル類も袋に詰め込んだし、地味にゲームガールアドバンスSPのデータも守れた*3し、成功といっていいだろう。
「とにかく、G.Bibleも無事手に入ったし!見ててよミレニアム、そしてユウカ!私達の新作は今度こそ、キヴォトスのゲーム界に良い意味での衝撃を与えてみせるんだから!」
小さく叫ぶ器用な才羽モモイさん。やけくそ大声って程では無かったからかロボットとかが見回りに来る気配はない。
(早いところ脱出しよう)
(……そうだね……)
「……まだ、廃墟のなか。早く撤退しよう……?」
「そ、そうだね。先生、指揮をお願いできますか?」
「"わかった。帰り道も手伝ってね、みんな"」
こくりと頷く一同。
帰り道は来た道を戻ったが、無事に蓄光テープも回収しつつ敵にも遭遇しなかった。前回見つけた階段で登るだけ……なんだけど、建物出た後にもう1戦はあるんだよな。イヴちゃんと天童アリスさんが背中にばらしたパソコンという荷物を背負ってるが、2人の筋力的には全然問題無さそうなので、まあ何とかなるだろう。
しかし行きもそうだったけど、天童アリスさんがいたら交戦しなくていいかな、って思ってたが、全然駄目だったな。攻撃禁止は施設についてて、施設から出てきた時には生きてた?
それとも個別の人格を獲得してAL-1Sでなくなった判定?わからん。まあこの建物だけに関してはもう来ること無いだろうから大丈夫だろう。大丈夫だよね?
評価、感想、ここすき、お気に入り、しおり有難う御座います。皆様の反応が書き続ける力になります。