ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
作業中に遊んでるのはどうかなって思ったけど、気を遣ってくれたのか小塗マキさんがゲームに誘ってくれて、先生含めて対戦に興じていた。
「へっへー、あたしの勝ち」
「ムキー!!!ちょっと!!今の避けたでしょ!!」
「あ、当たってた、よ……?」
「モモイ、ちゃんと当たってましたよ!」
「……当たってた……」
花岡ユズさん、天童アリスさん、イヴちゃんと動体視力の裏付けありの子達から駄目押しされて才羽モモイさんはがっくりしてしまった。
盛り上がっている一同に、小鈎ハレさんが声をかけた。
「みんな、お楽しみのところ悪いけど、microSDのデータ解析ができたよ」
「できたの?!」
「コンピュータの方はまだかかります。他の機材と繋いで確認もしてみますが、ちょっと今日は無理かもしれません」
Divi:sion入パソコンの方は時間かかるか。まあ急ぎはしてないもんな。
「これは確かに、伝説のゲーム開発者が作ったG.Bibleで間違いない」
「や、やっぱり本物なんだ!」
「ファイルの作成日、転送された日とIPを見てもほぼ確実。ついでに、1回しか転送された形式が無い。つまり、オリジナルのファイルの可能性が高い」
「おお~!」
「そ、それでパスワードは……?」
「それが、まだ解析ができてない」
「"じゃあ、見られないってこと?"」
「がっかりだよ!」
「ごめんね。パスワードの直接解析はたぶん無理そう。セキュリティファイルを除去してコピーならできると思うけど、今、手元にそのためのツール、『Optimus Mirror System』、通称鏡がなくて」
「無いの?!なんで?!」
「それは今どこにあるの?」
「私達ヴェリタスが持っていた」
「……『た』、過去形……?」
「この間、生徒会に押収されたところ」
「ユウカが急に押し入ってきて、『不法な用途の機器の所持は禁止だから!』って」
似てない物真似だけど、言いそうっていうか言ったんだろうなあ。
「『鏡』もそうですが、色々と持って行かれてしまいました。私の盗聴器とかも」
「そ、その『鏡』ってそんなに危ない……?」
「そんなことない。ただ暗号化されたシステムを開くのに最適なツールってだけ。ただ、世界に一つしか無い、私達の部長が直々に制作したハッキングツールなの」
「部長……ヒマリ先輩のこと?」
「ヒマリ……?」
「アリスちゃんもイヴちゃんも会ったこと無いよね。ヴェリタスの部長さんなの。ちょっと身体が不自由で車椅子に乗ってるから、見かけたらすぐわかると思う。すっごい人で、身体のことであの人のことに同情とか軽視する人は、ミレニアムにはいないかな。一種の天才、ミレニアム史上、まだたった3人しかもらえてない学位『全知』を持ってる……ってのは本当かわからないけど」
「うん、凄い人だよ、本当に。でも、ヒマリ先輩の装備をどうして取られちゃったのかな?」
音瀬コタマさんががっくりと肩を落とした。
「私はただ、先生のスマフォのメッセージを確認したかっただけです。そのために『鏡』が必要で……」
「"えっ、待って?!先生って私だよね?!"」
「他に、キヴォトスで先生はいませんからね。不純な動機は全く無かったのです。ただ、他の女子高生のメッセージを確認したかっただけで」
「……不純じゃ無い……の……?」
いや不純だよどう考えても。先生、同性でも容赦なく魅力で吸い込んだり落としたりするってことがわかったから収穫かもしれない。しかし能力のある覗き魔、こえーな。
「とにかく、早いところ『鏡』を回収しないと、部長に怒られちゃう!」
っていうか、明星ヒマリさんにはビナーだとか絡みでも用事があるんだよな。すっかり忘れてたけど。装甲板の話は届いてるんかなあ。あーいや、特異現象捜査部はまだできてないか。思考が纏まらん。
「私達は『鏡』を取り戻したい。それに、G.Bibleのパスワードを解くためには、ゲーム開発部にとっても『鏡』は必要でしょ?」
「なるほど、大体わかったよ」
「ふふ、さすがモモ、話が早いね」
「目的地が一緒だし、旅は道連れだよね」
「え、ええ、も、もしかして……」
「共にレイドバトルを始めるなら、私達はパーティメンバーです」
「……ごめん、その手段なら、私は協力できない……」
「えっ、イヴ?!」
「えっ、あっ、お姉ちゃん、もしかして……ヴェリタスと組んで、セミナーを襲撃するつもり?!」
「そ、それは確かに……他校のイヴさんは、無理……」
「そ、そんな。パーティメンバー、脱落の危機ですか?!」
イヴちゃんは首を縦に振ってから、小塗マキさんにもらった別のmicroSDカード*1を翼の映像投射装置に差込んで、立体映像を空中に投影させた。
「……私は、トリニティ自警団員だから、他の学校の生徒会を襲うのは無理……。代わりに、傭兵を、紹介する……」
赤黒のスカーフを顔にゲリラ巻し、滅茶苦茶ダサいバンドTシャツ*2に青黒白の都市迷彩カーゴパンツを履いて、黒い羽の翼カバーをつけたイヴちゃ……もとい、R.I.P.9/JE……は、今のところトリニティに伝わっては無さそうだけど、名乗っちゃうと不味いか。の立体像が表示された。見た目、まじでテロリストだよな。
『低い体力を鍛錬と翼に仕込まれた特殊装備で補った、機動力と近接戦闘に優れた傭兵』
「えっ、これイヴちゃんじゃ……ない……?」
「銃は違うし髪の毛も見えないけど、体格的にも特徴的にもそう……」
「せ、政治的に、別人にしておかないと、みんな困るから……」
「……私としては、協力者との協働を推薦したい。最終的にはそちらの判断だけど、無理はしない方がよいのでは……そちらにとっても、悪い話ではないと思いますが……」
どっかの仲介人っぽい文言だけど、口調は全然違う。イヴちゃんの心配した気持ちが伝わってくる言い方。
「ほ、報酬は……?」
「……新作のプレイ権……。念のため、私とこの傭兵は全然関係無い人だから……」
「わかった!よし、雇う!ちなみに、この傭兵さんの名前は?」
聞かれて口ごもるイヴちゃん。
「……
「入栖ニニコ?」
多分ニコだと思うんだけど、イヴちゃんは頷いた。
(あれ、いいの?)
(……あんまり、いなさそうな名前の方がいいかなって……)
(なるほど)
イヴちゃんの事実上の参加がわかって、安堵した雰囲気が一瞬漂う。一番最初に真面目な顔に戻った小塗マキさんが口を開いた。
「ただ、問題があって。『鏡』はセミナーの『差押品保管所』にある。そこを守ってるのがメイド部こと
「あー、ミレニアムの治安をわずか4人で守るメイド服で優雅に相手を『清掃』する……」
「そうそう!まあ些細な問題なんだけどね!」
「そっかー!そうだねー。うーん、なるほど……諦めよう!!ゲーム開発部、回れ右!」
「待って待って待って!駄目でしょモモ!G.Bibleが必要なんでしょ?!」
宥めにかかる小塗マキさんともう完全に逃げ腰になっている才羽モモイさん。
「C&Cと戦うのは、走ってる高速鉄道に通過駅のホームからジャンプして飛び乗れとか、ヒノム火山の火口の中で泳ぎなさいって言われるより無理!」
「で、でもこのままじゃ『鏡』は回収できず、あたしは部長に怒られ、ゲーム開発部も廃部だよ?!」
「……C&C、そんなに、強いの……?」
恐慌状態の才羽モモイさんに、イヴちゃんが首を傾げた。イヴちゃん寝てたからあんま実感無いと思うけど、あれはヤバいわよ。去年の時点でヤバかったから、今年はもっとヤバいと思う。
「『ご奉仕』で壊滅させられた過激派とかサークルは数知れずなの」
「最後には痕跡も残らない。有名な話だね」
「部は守りたいけど、ミドリにユズ、アリス、それに手を貸してくれるイヴの方がずっと大事!危なすぎる!」
「いえ、でも、私達もそれこそトリニティの正義実現委員会や自警団でも、ゲヘナの風紀委員会でもありません。正面から戦いを挑んだりはしませんよ」
「そう。あたし達の目標は『C&Cの撃破』じゃない。『鏡』さえ取って来れればそれでいい」
「それに、現在、私の盗聴情報によるとC&Cの部長、美甘ネルさんは不在です」
「……あの、ジャケットの怖い人……?」
めっちゃやべー人だよな。まあC&Cみんなやべーんだけど。
「正面衝突を避け、『鏡』だけを持って逃げる……確かに、そう言われればなんとか、なる……?」
「や、やろう……みんな」
「そうだよね、やろう、お姉ちゃん」
「え、ええっ?!ネル先輩がいないからって……う、ううん……」
「ゲーム開発部を無くすわけにいかないでしょ。ボロボロだし狭くて時々雨漏りまでしちゃう部室だけど、みんなで一緒にいるための大切な、私達の居場所。私達全員のために、守りたい」
「ミドリ……」
「私達ならできます。伝説の勇者は、世界の滅亡を食い止めるため魔王を倒します。アリスは45個のRPGと3個のアドベンチャーをやって、勇者達が魔王を倒すのに一番強力で必要な力を知りました」
凜々しい顔でみんなの顔を見渡す天童アリスさん。みんなが口々に答える。
「装備の強化のこと?レベルアップ?」
「やっぱり盗聴では?」
「EMPショックとか?」
「ハッキングでシステムを麻痺させる?」
「……やっぱり、火力……?」
「ち、違います。一緒にいる、仲間です」
天童アリスさんが言葉を切ってぐっと拳を握り、小さく息をついた。みんな、才羽モモイさんを見ている。
才羽モモイさんが黙り込み、目を閉じて上を見て小さく唸る。目を見開いて口を開いた。
「わかった!やろう!セミナーに潜入して『鏡』を取り戻す!ハレ!何か良い計画ない?」
「任せて。ただ、この計画は私達だけでは無理。いくつか準備が必要。盗聴もEMPもハッキングも火力もいるけど、後は『仲間』かな。私達には今は接点があんまりないから、先生にお願いしたい」
「そ、そもそも、先生的には、大丈夫……?」
「"ユウカの言い分にももちろん道理があるけど、今回は用途も非合法じゃないかららね。ユウカには私から謝るようにするし、私ができることなら手伝うよ"」
「や、やった!」
「ありがとう、先生!」
先生と花岡ユズさん、才羽モモイさんはエンジニア部に助力を求めに行った。イヴちゃんが残った面子を見渡して口を開いた。
「……こっちの戦力と、相手の戦力、後は、侵攻ルートを把握して、作戦を立てたい……」
「イヴちゃん、そういうの得意?」
「……正義実現委員会で、少しだけ。あと、友達にも習った。私一人で全部は無理だけど……」
友達ってイヴちゃんが僕を呼んでくれるのはいつもくすぐったくて、とても光栄なことだ。カフェイン酔いも覚めてきたし、頑張るか。イヴちゃん個人に関して言うと問題は火力低下なんだよなあ。
小鈎ハレさんが頷いて、ディスプレイにC&Cの公式ページを表示する。当たり前だが、メイド部的な活動しか書いて無い。
「私達ヴェリタスでも、実際に交戦したわけじゃないから、『ご奉仕』された後の生徒とかの証言とか、断片的なものしか持ってない」
「できれば一生関わりを持ちたくなかったしね」
けらけらと笑う小塗マキさん。まあそらそうなんだけども。
まずはチビメイド様こと美甘ネルさん。会ったことある。
「全員敬称は略ね。C&C、部長の美甘ネル『ダブルオー』。今回は不在だけど、一応情報共有。鎖で繋いだサブマシンガン2丁を使った近接戦闘が得意。装備で言うとイ……ニニコにちょっと近いかも?」
近接戦闘得意って言ったけど、美甘ネルさん相手は多分かなり厳しい。でも今回いないんだよね?えっそうだっけ……?なんか……天童アリスさんと戦闘してなかった?あー駄目だ、普通に思い出せん。いる前提で話を進めよう。
茶髪ストレートロング、うおでっか……の、一之瀬アスナさん。
「一之瀬アスナ『ゼロワン』、アサルトライフル持ち。超人的な勘の持ち主らしい。奇襲と状況判断が得意」
確か冬にはたまたまかもしれんけどいなかった、と思う。しかし、得意分野だけ聞くとどっかの赤黒=サンみてーだな。咄嗟の状況判断がすげーとこは一緒かあ。
褐色肌のやっぱりうおでっか……な人、角楯カリンさん。
「角楯カリン『ゼロツー』、現場にあまり姿を見せないのは狙撃要員だから」
銃を持ってる姿はもちろんキヴォトス人だからどこでも見られるって訳だな。対物狙撃銃持ってる時点でまあわかるか。機関砲持ってる前衛もいるから絶対ってわけでもないが。
眼鏡のやっぱりうおでっか……ってみんなでっかいな。メイドとでっか率高すぎてわからんなってきちゃった。室笠アカネさん。
「室笠アカネ『ゼロスリー』、爆発物による破壊工作がメイン」
火力すげーよな。前衛1、中衛1、サポートの前~中衛1、後衛1か。人数で言うと知れてるんだけど、治安組織基準で暴力慣れしてる人数でいうとこっちはイヴちゃんくらいだし。
まあ先生もいるし、向こうは分散してるはずだから、そこに勝機がある。あるよね?
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