ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
差押品保管庫はセミナーの部室があるミレニアムタワー最上階。
エレベータとセキュリティシステムは基本的にオフラインのLANネットワークで繋がっている。
「光よ!」
チャージに90秒もかかるが、事前に準備できている状態なら何の問題も無い。出力が更に増強されたレールガンが壁をぶち抜き、エレベータの指紋認証システムを破壊する。
「マキ!」
「はいよ!」
プランは単純。オンラインで接続できずにハッキングできないなら、ハッカーを連れて行ってハック&スラッシュすればいい。小塗マキさんの役目はパラディン(単独で
入栖ニニコちゃんことイヴちゃんは赤黒スカーフをゲリラ巻きして、ミレニアムの制服に着替えている。トリニティ校章付の腕章は、かなり校章が小さいのに換えてある。これが連邦生徒会法とか的には一番ヤバいんだけどしょうがない。
銃は
防衛用に湧き出てきた押収品らしい警備ロボットを皆で押しとどめ、最後の一体にイヴちゃんは飛び膝蹴りを入れて黙らせた。
エレベータが降りてきたのを見て、一同から歓声が上がる。
「……ここの護衛は、これで終わり……?」
「終わったよ!じゃあ第二段階、行こう!」
しっかり役割を果たした小塗マキさんが良い笑顔。
「……私は、外の火力支援に回る。みんな、気をつけて……」
「わかった!ありがとう、イ……ニニコ!」
突入班になるゲーム開発部の全員と、小塗マキさん、イヴちゃんが頼んでおいた仕込みを終えた豊見コトリさんがエレベータに乗る。
イヴちゃんは撤収前にエレベータ周りにブービートラップを仕掛けるイヴちゃん。
「お、いいね。みんな、ちょっとだけ待って!『ゲーム開発部とヴェリタス、エンジニア部、傭兵ニニコ参上』……っと」
小塗マキさんが手早くエレベータのドアに素早く簡略化したゲーム開発部とヴェリタスのロゴ、エンジニア部の部名とニニコちゃんの名前を描いてみんな写った自撮りを素早く済ませる。まあイヴちゃんは顔全然見えないんだけど。みんな撮られる瞬間にさらっとポーズ撮れるの、今時の子って感じだな~。
「もー、マキちゃん何してるの?急がないと!」
「ふ、ふふっ……何だか笑えて来ちゃった」
「セーブポイントですね!」
「いえ、でも緊張の緩和は重要です。なぜなら緊張することで視野が狭まり、加えて筋肉が硬直し」
高速で解説を続ける豊見コトリさん含む全員がエレベータに入ってドアが閉まる。
イヴちゃんは棟の外へ出るために撤収。戻り際、遠くから爆発音がしたので警備ロボットかなんかが引っかかったらしい。よしよし。
イヴちゃんが外に出て
ハードウェア要員の豊見コトリさん、ハッキング要員の小塗マキさんも今のところはゲーム開発部に同行できてるらしいし、欠は出てない。
(……今のところ、順調、かな……)
(ただ、そろそろ火力支援が始まるんじゃないかな)
言ってるそばから、ミレニアムタワー向かい、第3校舎の屋上、その上に立てられたプレハブの屋根がチカッと光り、鈍い銃声が響く。
イヴちゃんの強化視力でなくても人影の存在ははっきり見えるだろう、メイド服の白が眩しい、角楯カリンさんだ。
(……見つけた……)
(遮蔽物を置いてはいるみたいだけど……)
木の板か?視線を遮るくらいの効果しか期待してないだろう遮蔽物がプレハブ屋根の上に据えられている。
狙撃手が出てくるのはもちろん想定内。天童アリスさんが手すきだから
「……ニニコ、標的は第3校舎屋上、仮設家屋上……突入班は反撃不要……」
イヴちゃんが無線に囁く。第2射、ついで第3射。ゲーム開発部の装備的にレールガン以外での反撃を想定していないのか、射撃位置を変えない。金属を噛むような音をさせ、イヴちゃんがMk.44を発砲可能状態にして持ち上げる。
「……次の射撃後に発砲。私が発砲し始めたら、ヒビキさんは迫を合わせて……」
『了解』
イヴちゃんが息を吸って吐き吸い、もう一度深くゆっくり吐いて丹田に力を込め、吐き切って左手から銃身を意識して力を込める。息吹の技法の応用だ。
第4射の発砲と同時に、Mk.44が30mm機関砲弾を食べて歌い始める。精密狙撃ではないが、角楯カリンさんから見たら右側、下の方から撃たれるのは想定していなかったらしく直撃しているようだ。プレハブが粉みじんになる。
発砲の轟音に紛れて、頼りない風切り音。迫撃砲も着弾し始めた。
爆煙の中から、黒色の噴射炎、隣、こちら側の風力発電の風車に向けて何かが撃ち出された。
(……モビーディックワイヤーだ……)
(あっ、そらそうか。あれエンジニア部の作だもんね)
っていうか、噴射炎の色変えられるんだ。花火とかと一緒で添加剤に何か入れたら変えられるんだろうな。イヴちゃんの今は普通の白色なんだよな。本人の意見聞いてからだけど、目の色にあわせて濃い赤とかにしてもらおうかな。
「……ヒビキさん、目標が退避。2時方向の風車に照準変更……」
脳波コントロール機能は当然持ってないだろうけど、その分速度が速いらしいワイヤがかっ飛んで行き風車に刺さった。空中を巻き上げ機構で退避していく角楯カリンさんをイヴちゃんのMk.44の火線が追いかける。角楯カリンさんと目が遭った。
苦し紛れに近い、でもしっかり照準が合った反撃の1射。イヴちゃんは右足を下げて半身になり、反射的に左手で中段受け。Mk.44が風切り音を立てて対物狙撃銃の銃弾を弾く。
当然、銃は銃弾を受けられるようには作られてないので、Mk.44がひん曲がって沈黙した。
(……あっ……盾、ついてなかった……)
(まあまあ、目的は達成したし、短い寿命だったけど……)
修理したら使えるだろうけどね。
風車のメンテ用らしき開口部に着地したところで力尽きたっぽい角楯カリンさん目がけ、迫撃砲弾が降り注いだ。
「……ヒビキさん、発砲中止、多分もう戦闘不能……。突入班へ、狙撃手の排除完了……」
迫撃砲の発砲が止まった。
『了解。こちらは引き続き動けるから、ウタハ先輩と突入班の支援に行くね』
「……ニニコは怪我無し。ただし、Mk.44破損により火力支援不可能……」
角楯カリンさんが陣取ってた辺りとかを占拠して、逆にこっちから火力支援しに行くつもりだったんだけどね。何もかもは上手くいかないもんだな。
「……角楯カリンさんを確認と拘束してから、私も突入班の支援に行く……」
万が一高所から転げ落ちて怪我されても不味いし、逆に意識を取り戻して火力支援再開されても困るからね。
まあ突入班の支援に関しては、イヴちゃんは前に出られないから、実際には落ち穂拾いと退路確保くらいだろう。だよね?
と思った瞬間、ミレニアムタワーの方から爆音が響いた。
『シャッターの何枚かがアカネの爆薬で破られた』
マジかよ。自分が中にいるのに平然と発破掛けるんだ。キヴォトス人やっぱキレてんな。
ミレニアムタワーの照明が消えた。ハッキングと物理工作により電力供給自体が止まったようだ。
これは正面からの侵攻が上手く行かなかった場合の案。電源を落としたのを合図に予定通り一番戦闘能力が高い天童アリスさんは単独行動している……はず。いやどうかな。それはそれとして正面戦闘を継続してるか?
(イヴちゃん、急ごう)
(……うん……)
風車のメンテナンス用扉を前蹴り一発で破り、階段を駆け上がる。
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