ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
イカれたMk.44と弾帯を放り出して走り出したイヴちゃん。最初は階段を普通に走ってたけど、らせん階段なのでジャンプしてパルクール的に駆け登った方が早いなっていうのに気付いたみたい。うーん、地味に運動能力上がってえらいね。
あっという間に頂上に着くと、角楯カリンさんが壁に背を預けつつ呻きながらも起き上がろうとしているところだった。
やっぱり馴染んで無い銃で神秘の乗りが足りなかったのか、単純にスペック差があるのか、流石C&Cというべきなのか。
メンテ用のスペースで3人立ったらぎゅうぎゅう、開口部外の手すりはぎりぎり残ってる危なっかしい場所だけど、イヴちゃんは躊躇せず飛びかかる。風車内は
「くっ……って、さっきのトリニティ生?!」
「……あんまり、効いてなかった……?」
あの距離で腕章が見えたのか、イヴちゃんの情報が事前に割れてるからもう同定されちゃってるのか。
ともかく、角楯カリンさんはまだやる気らしい。膝を屈伸させて小さくステップを踏んだし、ボクシングかな?
イヴちゃんも小さくすり足ステップで右左と跳ねながら間合いを詰める。僕はすり足であまり床から足を離さず、頭の高さをなるべく変えずに動こうとするタイプだけど、イヴちゃんには本人に合うやり方を探して色々試してもらおうと思って、睡眠学習とかで色々見たり教わった記憶のある動きを伝えておいてよかった。
(……ボクシング、かな……)
(蹴りがないとは言えないから、気をつけて)
とにかくリーチの差が凄いので*1一歩詰めての牽制の左ジャブをイヴちゃんは右手中段受けし、拳を右に曲げて相手の手首の骨をこっちの手首の骨の部分で引っ掛け、強引に引っ張る。体勢を崩すまいと踏ん張る角楯カリンさんの右足ふくらはぎに左足ローキック、更に間合いを詰めて足払いして背中から体当たり。暗黒カラテ技、
イヴちゃんがそのまま反時計回りに小さく跳ねて回転、右足を跳ね上げて上段蹴りを顔面目がけて入れる。
「早い……!」
狙撃手だからか被弾のダメージもあるのか、さすがに近接戦も超一流でこなせるって感じではないらしい。それでもガードして上体を反らして致命のダメージを避けようとするが、蹴り用のガードがしっかりできてないな。ふらつきながらも気力でだろうか、反撃の左ジャブを打とうとしてくるのは見事だけど、格闘戦で基本重くないか、毒だの何だのの付随効果が無さそうか、ヤバいコンボ始点で無さそうな一撃は僕もイヴちゃんも『こらえる』しつつ殴るか蹴る一択。キヴォトス人がそもそも投げ・掴み・関節技をあまり好まない*2から掴まれないだろうとイヴちゃんは割り切ったらしく、頭頂部で拳を受けながら突っ込む。
下に向けて叩きつけるような左ジャブを左腕上段受けで跳ね上げるように受け、どんと踏み込んでしっかり腰を入れた右腕中段突きを――入れようとしたところで、先生から『戦闘中止、セミナー側が停戦合意したのと『鏡』の回収に成功』の無線が来て、イヴちゃんも角楯カリンさんも飛び退いた。
恐らくセミナーの早瀬ユウカさんからか、それとも調月リオ会長直にか、同じ指示が来たのだろう。ふうぅ、と溜息をついて座り込む角楯カリンさん。
「……大丈夫、ですか……」
「……敵に情けを受けるとは」
苦い顔をする角楯カリンさん。
「しかし、報告はしにいかないと……すまない。手を借りてもいい?」
無言で手を伸ばして力強く、でも痛くないように気を配りつつ引っ張り上げるイヴちゃん。
角楯カリンさんは特に防御のために陣取れる場所が限られるから、メタりやすかったのだよな。2対1、長射程にもっと長射程範囲攻撃ができる火器持ち2人をぶつけて疲労させてから、ほぼゼロ距離の格闘戦に持ち込んで、相手の得意な間合いを使わせずに
角楯カリンさんが苦笑いした。
「ネル先輩やアスナ先輩に近接戦闘を鍛え直してもらわないといけないな。さすが噂の実験体だ」
イヴちゃんがあからさまにキョドってしまった。
「……私は、入栖ニニコ。偶然ここに雇われて戦闘に来てるだけで、御蔵イヴは無関係……」
「ふ、ふふ。そうか。人違いか。すまないな、ニニコ」
ま、まあ顔とか見られてへんし?セーフやんね?多分。いや言葉を交した時点で
ゲリラ巻きしてるから見えないと思うけど、イヴちゃんがうっかりしちゃったのに気付いたのか耳まで真っ赤でちょー可愛い。可愛い。
対物狙撃銃を持ったまま角楯カリンさんに肩を貸して風車から降りてきたイヴちゃん。まだC&Cの他の面々は戻ってきてないらしい。
「ここまでで大丈夫。少し休憩してから行く。ありがとう、ニニコ」
イヴちゃんは首を横に振って、対物狙撃銃をそっと置いて、放り出してあったMk.44と弾帯を回収した。
「……それじゃあ、また……」
「ああ、また」
風車の白壁にもたれかかり、三角座りして小さく手を振る角楯カリンさん可愛いね。しかし、別に致命傷だとかではもちろん全然ないし、C&Cの仲間もすぐ来るだろうけど微妙に不安になる絵だな。メイド服がボロボロになっちゃってるし、C&Cの人がへたってるってのがすげーってことなのかもしれん。
あ、ミレニアムタワーの電力が復旧した。別に先生を疑ってるわけじゃないけど、ひとまず成功ってのが視覚的にもわかりやすい。まずはよかったよかった。
エンジニア部室棟前のカメラの無い一角で顔のスカーフを取ってシャワーを浴びて、ヴェリタスの部室に戻ってきたイヴちゃん。先に戻ってきていた猫塚ヒビキさんと笑顔で頷き合う。うーん可愛い。
ハッキングで支援してくれていたヴェリタスの面々はまだ後始末で忙しいらしく、一瞬ちらっとこちらに目をやって笑顔を浮かべたあと、すぐモニタに向き直る。
「お疲れ様でした。ニ……えーと、イヴさん」
「……無事、任務が遂行出来てよかったです。あの傭兵にも、ちゃんと伝えておきます……」
イヴちゃんは
明日は病院ハシゴ、明後日は所用、明明後日は習い事、その翌日は取材旅行(日帰り)のため今週は更新お休みになりそうです。すみません。
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