ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
イヴちゃんがゆっさゆっさされてる。喜びを爆発させた才羽モモイさんにだ。
「やったよ!先生とヴェリタスとエンジニア部、ゲーム開発部員全員が頑張ったから、無事に『鏡』を手に入れられた!イヴも本当にありがとう!」
興奮しながらどういう風な戦況だったかを教えてくれる才羽モモイさん。天童アリスさんは結局一時離脱せず、代わりにというか、電気供給を断ったときにはぐれてしまった花岡ユズさんがセミナー生徒のフリをして美甘ネルさんを別の場所に呼び出してGet Kotonakiしたらしい。みんなハイタッチしたり小さく跳ねたりエナジードリンクを一気飲みしたりと喜びの表現に余念が無い。
みんなの笑顔が眩しい。本当に心が踊ります。素敵だァ……。
「"みんな、本当にありがとう。お疲れ様"」
「……私は、ここで寝てただけだから……」
「えへへ、そうだった!ニニコによろしくね!」
「お礼はさっき聞いたよ、モモ~」
「お姉ちゃん、『鏡』を持ってるだけじゃだめだよ」
「そう、適切な人物が装備しないと意味がありません」
あ、そっか、と言いながら『鏡』が入っているのであろうUSBメモリを小塗マキさんに手渡す才羽モモイさん。今一瞬ちらっと見えたUSBメモリに『高山の雪解け水のように清らかな美少女、明星ヒマリ』って手書きで書いてあった……。すげー。
まだ何も終わっては無いんだけど、とにかく一段落ついたのは確かだ。
「『鏡』を使った解析は1時間くらいで終わる。ゲーム開発部に持っていくから、ご飯でも食べててよ」
「あ、そうだ!今日のヴェリタスのデリバリーは私達が出すよ!エンジニア部全員はさすがに厳しいから、また別の形でお礼するね」
「楽しみにしてるよ。でも、あまり気張らなくていいからね」
「達?!別に出すのはいいけど、そこはお姉ちゃんが『自分のお小遣いから出す!』とかじゃないの?!」
「しょ、しょうがないでしょー!金欠なんだもん!」
「ふふ、パーティの財布の管理は大変です」
「わ、私は、賛成……」
「……私も、大丈夫……」
「やったー!ステーキ頼も!」
「私は特上寿司で」
「鰻にしようかな」
「え、ええー?!」
「冗談冗談。でも折角だから、Lサイズのピザとチキンとパスタ頼んでもいい?」
「"ふふ、打上げなら私に任せてよ"」
「えー、先生大丈夫?こないだユウカが『先生はまた無駄遣いして、このままだと月末は水道水だけになる』って言ってたけど」
「"う、あ、あれは私の魂が求めてたキットだったから……"」
わちゃわちゃ楽しそうだ。結局みんなでピザを頼んでヴェリタスで食べることになった。エンジニア部の3人も一緒に食べて楽しい時間だったな。まあめっちゃ狭いからピザの匂いが滅茶苦茶籠もってしまったが。
エンジニア部の3人は食べた後に他の部員から呼ばれたらしく帰って行った。スマフォやゲーム機を触りながらちらっちらっとヴェリタスの作業を眺めているゲーム開発部員一同と、ストレッチや柔軟運動を先生と一緒にしているイヴちゃん。話を聞いていると先生の生活が余りに不摂生すぎて、心配したイヴちゃんがふんすふんすとヴェリタスの了解を得て床を2人分開けて、先生の背中を押して悲鳴を上げさせていたりした。先生は割と青息吐息だけど、いやそんなイヴちゃんフルパワー!とかじゃないよ?先生の身体が硬すぎるんだよな。ガッチガチ。
音瀬コタマさんは廃墟から持ち帰った端末の復旧作業を後回しにして先生の悲鳴を録音するのに集中し始めて、イヴちゃんが録音を邪魔しないようになるべく息を殺して小声で囁くという不思議な絵面になっていた。
「できた」
小鈎ハレさんの呟きに、おお、という声がゲーム開発部員から漏れる。先生はまだ悲鳴を上げている。床に座って先に下半身をやって今は上半身のストレッチをしているけど、背中の筋伸びてないなあ。先生の身体はあちこちが立派すぎるからっていうところもあるけど、運動不足が一番大きそう。
「……先生、ストレッチは一日にしてならず、だから……」
「"うう、はい……"」
「先生!イヴ!先生の健康とストレッチも大事だけど、G.Bibleだよ!」
「……そうだった……」
「"腕とか足とかがもげるかと思ったよ……"」
「どうせだから、G.Bibleもここで見てく?」
「そうだね!別に隠すものでもないし!」
「うんうん」
「た、楽しみ……」
G.Bibleの中身「秘訣はゲームへの愛、以上」(要約)を見たヴェリタス一同は苦笑いし、ゲーム開発部は恐慌状態に陥っていた。
「お、おしまいだ……銀の弾丸なんて無かった……知ってたけど!」
「みんなにこんなに手伝ってもらったのにね……」
「お、終わった……」
イヴちゃんと天童アリスさんは首を傾げている。
「モモイ、ミドリ、ユズ。どうして……」
「だってアリス!これじゃ何にも作れないよ!おしまい!!!部は廃部になっちゃうし、ユズは寮に戻らないとだし、アリスはシャーレ暮らしになっちゃう!」
「"と、とにかく、一旦ゲーム開発部の部室に戻ろう"」
まあそうだよな。ヴェリタスの一同も流石にずっと大騒ぎされてたら困るだろう。
「ま、まあ……元気出して、みんな」
「できる限りの相談には乗りますから」
「そーそー。ま、ミレニアムプライスには私達も出品する予定だから、プログラミングとかでどれだけ手伝えるか確約はできないけどね」
へー。ヴェリタスも何か出すんだな。なんて感心してる場合でもないんだけど。まるで敗残の将兵のようにゲーム開発部一同はヴェリタス部室を後にした。
ゲーム開発部に戻った一同は思い思いに座り、暗い顔を突き合わせる。
「だ、大丈夫……。私、寮に戻るから……」
「あ、アリスも先生にお願いするしか無いのか……」
「先生といるのは、もちろん嫌ではありませんけど……皆と一緒にいられないのですか?」
才羽モモイさんは天井を仰いだ。イヴちゃんは全員分のインスタントコーヒーを淹れている。
「お、お姉ちゃん……」
才羽ミドリさんがすがりつくように才羽モモイさんの右手の裾を掴んだ。
先生は黙ってみんなを見ている。イヴちゃんがコーヒーを置き始めた。安っぽくてわざとらしいけどいい匂いがする。才羽モモイさんがコーヒーを飲んだ。イヴちゃんはソファに腰掛けた。
「あと、36日……みんな、やろう」
才羽モモイさんが一同を見渡して宣言し、コーヒーを一気に飲み干して「あっつ!あっつ!」と騒ぐ。
「お姉ちゃん、しまらないんだから」
「で、でも、できるかな……」
「できます!私達は、今日のクエストも皆の力を合わせて達成しました!」
「そうだよね……。今日、絶対無理だと思ったのに……先生と、皆の力でできた」
「うん、やろう!先生もイヴも手伝ってくれる?」
「"もちろん。24時間常時手伝うのはちょっと無理だろうけど、完成までなるべく顔を出すし、ミレニアムに泊まるようにするね"」
「……手伝う……」
天童アリスさんはプログラマの勉強をして何とか戦力化できるかなあ、って感じのようだ。本人は意気軒昂だけど、ゼロからのスタートだからな。
それと、一応、平行して部員募集もするらしい。「VRでも古いって馬鹿にされるのに、ちょっと望み薄だけどね」と苦笑いする才羽ミドリさん。
イヴちゃんはオンラインでできるように、デバッガとアイデア出し要員になった。Gith○b的なものがあるから、リアルタイムで触っていけるらしい。
(あ、パソコンもう1台あったら、倍デバッグできるんじゃない?)
(……確かに……)
才羽モモイさんからヴェリタスとエンジニア部に聞いて、余ってるPCがあれば送ってもらえることになった。最悪、ゲーム開発部の化石みたいな余りパーツで組んだPCになるかもらしいが。
守月スズミさんから自警団員グループへのメッセージ。
『明後日からトリニティ美術館で開催される『ティーパーティーの至宝』展の開催式典ならびに役員達の護衛に、予定がない方はご参加ください。私は参加します』
ほーん。急遽開催が決まったってこれか。美術展をいきなりやるって何か変な話だけど、政治的ななんかなんだろうなあ。
(イヴちゃん、行く?)
(……予定、無かったよね……無いなら、行く……)
うんうん。守月スズミさんだけに任しておくわけにいかないしね。イヴちゃんは宇沢レイサさんに『明日の式典に参加します』とメッセージを送り、宇沢レイサさんから速攻で『私も行きます』という返事となんか可愛い星のキャラクタのスタンプが送られてきた。
っていうかこれ、先生も呼ばれてるね。
もう一つ、先生から。
『シャーレの当番生徒を引き受けてくださっているみんなに。シャーレの業務に従事する日は公休として扱われる連邦生徒会通知が各校に出ます。明日、連邦生徒会の定例記者会見でも発表されますが、通知そのものは今日付なので、秘密にしなくて大丈夫。施行日は各校によって異なるので、それぞれ確認してください』
おお。シャーレの業務には放課後しか出られないっていう制約があったからアビドス周りの案件はあんま手伝えなかったし、出席日が足りない!!!なんて恐ろしい事態にならなくて済みそう。助かり。
(……セイアさんの、『迷惑をかける』って、どういう意味なんだろう……)
(警備とかかなあ。妨害は絶対入るだろうし)
(……絶対?……)
(絶対。トリニティもゲヘナも恨みだの何だのには事欠かないから)
(……やだなあ……)
ほんとだよ。
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