ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
≪キュクロプス・トーナメント≫選手控室。≪月夜の黒猫団≫とレイジ・シノンは現在第二回戦を終え、次の準決勝に向けてミーティングを行っていた。
「――にしても、第二回戦の相手は随分殺気立った相手だったな」
「…………いや、俺らが言うのもなんだけど、お前覚えてないのか? アレ、こないだ解散させられたボス攻略ギルドの奴らだよ」
ダッカーに言われて、ようやく気付く。何処かで見覚えがあると思ったら、そういうことか。
「正直、記憶から抹消してた」
「私もよ。そう言えばあのガラの悪いケットシー、額を撃ち抜いた覚えがあるわね」
「二人ともひどい……」
サチに言われてもそんなもんだ。
「しかし、準決勝まで来たのは、見事に知り合いばかりになったな」
「そうだね。でも、ササマル? 第一回戦で俺たちと当たった領主チーム以外は順当なんじゃないかな」
ササマルとテツオの言う通り、準決勝まで勝ち抜いたのは、多かれ少なかれレイジ達の知り合いだけとなった。まあSAO・ALO含めて、強豪の知り合いが多いから当たり前といえば当たり前だが。
『間もなく、準決勝第一試合――――』
「お、そろそろ出番か」
「レイジ、古巣だからって手加減すんなよ?」
「古巣って……辞めた覚えないけど?」
「それでも、よ。手加減なんかしたら、間違いなく落とされるわ」
「……否定はしない」
ケイタを先頭に、控室を出ていく。廊下を歩き、前方に広がる
『さあ! いよいよ準決勝第一試合の役者がそろいました! 準決勝最初の顔ぶれは、SAO時代から屈指の強豪ギルド同士の戦い! ≪風林火山≫VS≪月夜の黒猫団with猫カップル≫だあああっ!!』
……そう。この試合、相手となったのは≪風林火山≫。リーダー含め全員、SAO時代からの幹部のみで構成されたチームが相手だった。そして、この後の第二試合、勝ち進んでいるのは≪スリーピング・ナイツ≫と、あろうことかキリトチームである。
「オウ、レイジ! オメェ、また女子プレイヤーがいるチームを選びやがったな!」
「≪
「我ら、『哀』に生きる戦士なり!」
……リーダーはともかく、他に参加している6人の幹部メンバー。この間リーダーに内緒で、ALOの女性限定ギルドと、合コンした癖に何言ってるんでしょう?セッティングを全部押し付けられて、準備が大変だったと言うのに。なお、結果は惨憺たるものだったのは、言うまでもない。
「――皆、悪いんだけど」
「ああ、打ち合わせで言ってたコトだろう? 任せてくれ。こんな機会も滅多にないからな。気持ちはわかるよ」
「全く、男ってやつは……どうせなら勝ってきなさいよね」
レイジの確認に、ケイタが許可を出す。打ち合わせでレイジがこの試合限定で頼んだ『要望』。その内容を思い出したシノンは苦笑気味だ。
『さあ、みなさんお待ちかね! 準決勝第一試合――――』
その言葉に、全員が身を屈め、翅に力を溜める。
『始め!!』
合図とともに、全員が飛び出す。その中で、他の誰よりも速く、かつ相手の先頭に飛び込んだ者がいた。
「ああ?! レイジ、オメェ――――」
「シャオラァッ!!」
奇声とともに、強烈な前蹴りを≪風林火山≫で先陣を切っていたクラインにブチ込み、もつれるように他のメンバーから引き離す。
「…………どういうこったよ?」
クラインがようやく態勢を立て直したとき、レイジとクラインは、他のメンバーよりも一段上の高度に佇んでいた。他の≪風林火山≫メンバーは、黒猫団とシノンが牽制している。
「あー……ちょっと強引でしたよね、リーダー」
「いきなり飛び蹴りぶちかますのが、ちょっとなのかは知らねえがな」
「まあまあ、怒らないで聞いて欲しいんですが……こんな
「『
「流石、リーダー♪」
そう、実際こんな機会は滅多にない。同じギルドメンバーで、敵対することがほとんどないけど、SAOでも指折りの実力者。その剣技と
「一対一の『決闘』を申込みます――――もちろん勝つのは、僕です」
「へっ、
≪風林火山≫ギルドマスター、クラインとの決闘が始まった。
左手を前に出し、右手を腰だめに構える。SAO時代から慣れ親しんだ
SAOとは違って、ALOで追加された空中戦闘。SAO組共通の特徴として、圧倒的な地上戦の戦闘力の高さや、近接戦闘能力があげられるが、それでも一年をALOで過ごすようになると、滞空制限の解除とともに、半永久的飛行に対応した戦闘が必要となった。そのため発展したのが翅を使った通常飛行とソードスキルによる一瞬のブーストを絡めた高機動戦闘。今リーダーが行っているのは、相手の周囲を漂う通常飛行で、そこから隙を伺い、ソードスキルで一気に加速する戦法だ。
「――――ふっ!」
周囲を漂うことしばらく、遂にリーダーが動いた。構えは上段。それに合わせる形で、ほんのわずかに構えた
風切音が、『下』から迫るのを聞いた。
「うッ!?」
咄嗟に音に反応し、間に合った左手が、下から斬り上げる衝撃で、芯から痺れた。上下変幻自在のカタナ用ソードスキル≪
「行くぜえッ!!」
こちらが怯んだ一瞬を幸いに、リーダーのカタナの刀身を炎が覆っていく。先日キリトの全面協力によって手に入れた
炎が覆い尽くしたカタナで繰り出されるのは、赤のライトエフェクトに彩られた三連撃。連撃系ソードスキル≪
「…………ッ!」
そこからの闘いは、傍で見る分には一方的な展開にも見えた。攻めるのは常に
攻撃は常に固定。それでも互いの表情には、一切の緩みも油断も見当たらなかった。その原因はレイジの持つソードスキル≪鉄拳術≫の存在。いくら弱体化し、両手武器装備の戦士が繰り出す重攻撃程度まで弱まっていると言っても、格闘型のスキルとしては破格の威力。しかも適正距離は、カタナや片手剣の距離である近距離よりさらに近い至近距離やあるいは零距離なのだから、一度ソードスキル後の硬直に滑り込まれ、懐を許してしまえば終わりである。そのためクラインは常に距離を必要以上に詰めず、硬直が短い技を選んで使っていた。もっともその分威力も抑えられ、レイジのゲージは、その類まれな防御技術も相まって、ほんのわずかにしか減らなかった。
常に隙を伺うカウンターヒッターと、鋭さ・速さ重視のスピードアタッカー。結局は硬直状態となっていたのだ。
その状況に、先に動いたのはレイジだった。
「うをッ?!」
黄色のライトエフェクトがクラインの胴体を捉えた。≪体術≫のソードスキル≪
≪体術≫特有の僅かな
「くぬやろッ!!」
「うっ!?」
「…………へへっ」
「――――ははっ」
知らず、互いの口元が吊り上がる。それは、原初の獰猛な感情。平和主義とか、博愛主義とか、そういった個人の主義・主張とは別個のものとして存在する、男子特有の欲求。生命のやり取りとか、帰還のための戦闘だとか、そういった問題無しの、純粋な勝負ゆえに、二人はより一層ソレを感じた。
すなわち、『勝利への渇望』を。
空いた距離を見て、クラインが≪霊刀カグツチ≫を片手に持ち替え、左の腰だめに構える。緑色のライトエフェクトに彩られ、その刀身に宿った炎は、今や刀を取り巻く炎の渦と変わっていた。居合系遠距離直進型ソードスキル≪
対してレイジは、拳をまるで地面に突き立てるように、空中で片膝の体勢となる。≪鉄拳術≫最上位・単発超重ソードスキル≪アシュラハオウケン≫。全てを砕く阿修羅の一撃と、炎を捲く暴風の一撃。獰猛な笑みを浮かべる二人の手元で二つの必殺が開放の時を待っていた。
決着は、一瞬だった。
炎をまるで尾のようにたなびかせる斬撃と、恒星のように輝く打撃。同時に開放されたソレらは、ちょうど中間でほんの一瞬交錯し、また同じように互いの距離を離した。果たしてどちらが勝ったのかと観客が固唾を呑んで見守る中…………
ヒュンヒュンと音を立てて、根元から砕けた右腕をくっ付けた一振りのカタナが、地面へと突き立った。
≪キュクロプス・トーナメント≫準決勝第一試合、勝者≪月夜の黒猫団with猫カップル≫。
VS≪風林火山≫終了!
いつかはやらせてみたかった、クライン戦!あの人も何だかんだでギルマスで、しかも攻略組なんだから強いはずなんだよなぁ……何で作中では、あんなに残念かね?しかも小説版では、アリシゼーション入った途端、裏表紙にすらDEBANが無い……Webの噂に聞くハーレムエンドだとしたら、スポット的に一瞬出て終わりになりかねないんですがwwプログレッシブに期待するしか?
次回はスリーピング・ナイツVSキリトハーレム(ヲイ)!史上最大の夫婦喧嘩が今始まる……!