ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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一週休んでおきながら、来週所用で投稿できるかわかりません……いいところまで進んでるのに……


020 シールドクエスト15~決勝戦、開幕!

 ≪キュクロプス・トーナメント≫選手控室。決勝戦を控え、彼ら≪スリーピング・ナイツ≫のメンバーは、最後のミーティングに余念が無かった。

 

「それにしても次はあのレイジとかー。アスナは向こうのチームってどんなだかわかるの?」

 

 ユウキの疑問はスリーピング・ナイツ全員のそれと同一。ここにいるメンバーのほとんどが≪月夜の黒猫団≫とは深い接触が無いのだから当然だが。

 

「そうね。特徴としては、予選から試合で繰り広げられているように、全員が全員、一芸特化のスペシャリストの集まりよ。正直向こうの土俵で戦ったら、こっちの勝ち目は薄いでしょうね……」

 

「そうですね……正直あそこまで異色のメンバー揃いで、ちゃんとチームとして機能しているのが正直驚きです」

 

 シウネーの肯定は無理もないこと。それほどまでに黒猫団のメンバーは異質だ。

 

「普通こんな1パーティーでの大会なら、前衛・中衛・後衛でバランスよくチームを組むよな?」

 

「そ、そうですね。それなのにあのチーム……」

 

「誰一人として、他の誰かと同じポジションのメンバーがいない……」

 

「あそこまでいくと、いっそ清々しくなるけどな」

 

 他のメンバーも頷く。実際距離だけなら前衛が二名いたりと微妙に被ってはいるのだが、ポジションとして考えると、全く性格が違うキャラとしか言いようがない。

 

「でも、その中で特に要注意なのは、やっぱり一発逆転が可能なレイジ君と、精密狙撃手(スナイパー)のしののんだよ。この二人は早い段階で、確実に誰かが落とさないと……」

 

「んー、そうだね。そうなると、スピードアタッカーの方がいいかな? ボクとアスナで開幕と同時に落とそうか」

 

 ユウキの提案は、お互いの戦力比較で妥当なもの。結果大まかな指針はそれを中心に、決まっていった。

 

「――――」

 

 そんな中、ふと、ユウキが対戦参加者各自の顔を写した画像のところで止まる。視線の先にあったのは、先程も話題に出たレイジとシノン。

 

「? ユウキ?」

 

「…………ねえ、アスナ」

 

 そのまま視線を逸らさずに、傍らのアスナへと問いかける。その声色は、アスナも感じたことのない不思議な空気を纏わせていた。

 

「――なに、かな」

 

「学校で話したあの二人……上手くいったかな?」

 

「え? えっと、どうなんだろう。まだ向こうのお祖父さんとは話せたとか、聞いていないけど」

 

「そっか…………」

 

 そこで少し言葉が途切れる。ややあって、彼女は空に融けるように、小さく呟いた。

 

 

「――――――上手く、いってほしいなあ……」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 そして、場所を移し、決勝戦会場。最後の控室でのミーティングを終え、勇壮たる戦士たちが、姿を現した。

 

『さて、会場にお集まりの皆さん! いよいよ長きにわたる≪キュクロプス・トーナメント≫も最後の一戦を残すのみとなりました!』

 

 会場に響き渡るのは、赤いスーツを纏った眼帯の男の口上。そんな中、決勝までコマを進めた選手たちは、徐々にテンションを高め、眼前の試合へと万全の状態で挑もうとしていた。

 

 そんな中、アスナだけは、装備の最終チェックを行いながら、傍らのユウキを気にかけていた。どうにも先程の控室でのユウキの様子が気になったのだ。

 

(何だろう……この胸騒ぎ…………)

 

 自分は何か見落としをしているのではないか。どうしてもそんな感覚に襲われた。

 

『それでは始めましょうッ!! ≪キュクロプス・トーナメント≫決勝戦――――』

 

 だが、そんな中でも時間は無情に過ぎ――

 

『レディィィイィィ――――、ゴ――――――――ッッ!!』

 

 ――ついに試合が始まった。

 

「くッ!!」

 

 ひとまず胸騒ぎはいったん棚上げにして、宙を舞う。隣には同じく先陣を切ったユウキの姿。その目標はちょうど宙に浮かび上がったところだったレイジとシノン。

 

 ユウキの抜き放った剣を、レイジの円形盾(バックラー)が受け止める。そこに迫るアスナ。最初に時間差で攻撃を仕掛け、一気にレイジを落とす。その後すぐさま近接戦闘能力に劣るシノンを落とす。これが≪スリーピング・ナイツ≫の作戦だった。

 

 ――しかし。

 

「そういうわけにはいかないな」

 

「ッ?!」

 

 不意にかかった声。反射的に身を躱そうとした瞬間、アスナの身体に闇色のイバラがいくつもまとわりついた。

 

「これ――――!!」

 

「そう。僕が得意な拘束系の闇魔法。アスナさんの相手は僕ら二人だよ」

 

 そう言って目の前に浮かんできたのは、黒猫団のリーダー、ケイタ。その後ろでは、シノンが弓に矢を番えていた。

 

「どうして、私を……」

 

 この場合、一番警戒すべきは≪絶剣≫の異名を持つユウキのはず。二人掛かりで落とそうというのなら、ユウキの方が優先順位は高いはずだ。

 

「仕方ないのよ……レイジが、どうしてもユウキと一対一で戦いたいっていうから」

 

「え?」

 

 その言葉に、先に突っ込んだユウキの方を向く。そこには予想だにしない光景が広がっていた。

 

「ハアアアアッ! セアッ!!」

 

「わ?! と、とととっ!!」

 

 てっきりユウキが攻め、レイジが堅実な守りを展開するかと思ったが、現実は逆。熾烈な攻撃で攻め立てているのは、レイジの方で、ユウキはそれを何とかかんとか凌いでいる状態だった。

 

「レイジ君……?」

 

「珍しいでしょ。アイツがあんなに積極的に攻撃するのって」

 

 珍しい処の話ではない。レイジは色々規格外なプレイヤーだが、その本質は壁戦士(タンク)。防御を主軸とするプレイヤーであって、あんなふうに先の先を取る闘い方はほとんど始めてではなかろうか。

 

「まあ、今回だけは例外よ。何でもレイジが確認したいことがあるんだって」

 

「一体なにを――――」

 

「≪絶剣≫ユウキの、『本心』、だそうよ」

 

「!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、アスナは茨から逃れようと、身体を大きくよじった。もっともそれくらいでほどけるような拘束でも無かったが。

 

「やっぱりか……。アスナ、私ね、さっきの準決勝で少し疑問に思ってたのよ」

 

「くッ! この!」

 

「いくらチーム戦って言っても……アスナって、剣士同士の闘いに横から手を出すほど野暮じゃないじゃない? むしろあの場面なら、エールだけ送って、自分は一刻も早く他のメンバーを落とすのに終始するわよ」

 

「はなして! はなしなさい!」

 

「なのに、あの時は、目の前の相手を他のメンバーに任せてまで、ユウキの援護に向かった。何が何でもユウキを守るために」

 

 一息。

 

 

「アスナ。貴女、あの()の『本心』に気づいてるでしょ」

 

「…………っ!!」

 

 

 そう。アスナは気付いている。気付いていて、今の今まで、一言もユウキに確認しなかった。

 

「……やっぱりか。気付いた上で、あの娘を悲しませたくないから、あえて踏み込まずに、陰になり日向になって、守ってきた。ボス戦の時も、準決勝の時も、彼女を勝たせるために、信条に背いてでも行動した。そうでしょ?」

 

「…………」

 

 答えはなく、沈黙。けれど雄弁に語っていた。

 

「……『お姉ちゃん』として、守りたいっていうのは、分かるけど。それだけじゃ進めないわよ。あの娘も言ってたんでしょ? 『ぶつかってみないと、分からないことだってある』って」

 

「でも…………!」

 

 それでもアスナは躊躇っていた。だって、ソレは。アスナの想像通りだとしたら、ユウキの『本心』は。

 

 

「あの娘にとって…………どれだけ酷か…………!」

 

 

 彼女を取り巻く『現実』を思えば余りに『酷』な本心。それを吐露させるのは、どれほど過酷なのか。彼女が、どれほど苦しむか。

 

「…………それでも、言わなくちゃ駄目なのよ」

 

 目の前の彼女は、それでも、と言う。唇を噛みしめ、拳を握り締めながら、言う。

 

「言わないと…………彼女の周りの誰も、力になれないから」

 




決勝戦・前篇終了!一応次でトーナメント編、終わる予定ですw

決勝戦は、レイジVSユウキ、ケイタ&シノンVSアスナ、黒猫団VSスリーピング・ナイツの三局の戦いへ。その中でフラグ立てたのは、ユウキが内心抱えてきた『本音』。それを抱えているか、またそれを口に出せるかが、原作ユウキとの唯一の変更点です。原作でもこの『本音』は、少なからず持ってたはずですけど、病状とかも相まって、彼女はその『願い』を言うことなく……

作者としては原作の終わりも大好きですが、ハッピーエンドにするなら、その『願い』を口に出さなきゃ始まらない!誰も力になれない!だからこそここで突っ込みます!

次回投稿は再来週予定。来週は可能であればと言ったところですw
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