ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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長かった本作も、遂に、ついに……!



アフター000 そして、また、始まりへ

 

 ――――世界は、続いていく

 

 2047年、東京都杉並区のとある中学校の屋上にて。舞台の主役は、後輩の男女三人と一人の先輩。

 

「タッグ戦の申し込みだと?」

 

「は、はい……何か、急に(クロウ)宛に来てて……」

 

「僕も、パートナーとして指名されていました、マスター。それも宛先不明の謎のメールアドレスからです」

 

「正直、気味悪いんですよ、黒雪せんぱ~い!」

 

「ハルユキ君だけでなく、ハカセ君もか……」

 

 後輩からの連絡を受け、艶のある黒い長髪の少女は、眉を顰めていた。

 

 ――――舞台を変え、主役を変え

 

「差出人について、もう少し情報はないのかい? 軍団(レギオン)や相手のアバター名は?」

 

「え、えっと……。対戦アバター名は、確か『エメラルド・スマッシュ』と『ルビー・ライフル』の二人で……。そ、そうだ。軍団(レギオン)名は、確か≪KoB≫って」

 

 その言葉に、彼ら三人に相談された少女は一瞬呆気にとられ、やがて、くすくすと笑い出した。

 

「くくっ……。成程な、悪戯をしたのはパラディンか。それなら心配いらんよ」

 

 ――――世界は、続いていく

 

「正直、それも信じがたいんですが……。≪KoB≫、つまりはあの(・・)≪血盟騎士団≫からとは」

 

 眼鏡をかけた知的な印象の少年の言葉に、昔からの幼馴染二人は首を傾げた。

 

「聞いたことないけど、どんなレギオンなんですか? ≪KoB≫って」

 

「ん? ≪KoB≫は――――そうだな。一言でいえば、『加速世界の治安維持・相互互助組織』だ」

 

「「は?」」

 

「当初は、二人の幹部が始めた活動だったのだがな。それを快く思わないバーストリンカーによって、無限EK(エネミーキル)を行われた際、通りかかった謎の二人組がその襲撃者たちを撃退。その強さに心酔した発案者二名が、その二人組を団長と副団長に推して合計四名で加速世界の治安を維持、全損しかけたリンカーを救済する組織が出来上がったそうだ」

 

「組織の規模が小さいこともそうですが、全員が全員『純色の七王』と同等の実力者という凄まじい組織とも聞いています。彼らに狙われた悪質リンカーは二度と無限中立フィールドに出てこないとか……」

 

「ほ、ほんとなんですか、先輩!?」

 

「ああ。組織母体の発案者で、幹部の『サフラン・ブロッサム』と『クロム・ファルコン』はタッグ戦ではトップクラスの実力者だ。副団長の『バイオレット・フェアリー』は、私はおろか私の師匠を超える剣の達人。そして団長の『オリハルコン・パラディン』は、剣の腕は私以上。その防御の硬さは、緑の王(グリーン・グランデ)以上という理不尽の代名詞みたいな男だ」

 

 ――――それでも変わらぬ、誰かを抱え

 

 尊敬する先輩の言葉に震え上がっていた少年は、ぽつりと言葉を紡ぐ。

 

「け、けど今回戦うのは同じ≪KoB≫の違う団員なんですよね?! その凄い人たちと戦うわけじゃないんですよね!!」

 

「いや、油断できないよ、ハル。≪KoB≫は設立以来新たな団員を認めてこなかったレギオンだ」

 

「まあ、その通りだ。それを曲げて入れたということは……余程、幹部連中に認められた大型新人なんだろう」

 

「そ、そんなあ……」

 

 ――――世界は、続いていく

 

 東京都。あるアパート。

 

『と、いうわけで! 優乃(ユノ)ちゃんと詩矢(ウタヤ)君のタッグ戦デビュー、日程決まりましたー!!』

 

「…………はあ。いきなり映像通話が来て、何かと思えば。『アルゴさんの所の息子さんに、喧嘩売りました!』って、本当に何考えてるのよ……」

 

『いやー、まさかあの子もバーストリンカーになるなんて、予想外だったからね。ユノちゃんもウタヤ君も、そろそろ腕を上げてきたし、こういうのも運命的でいいじゃん!』

 

「悪乗りしてるのは、また貴女と『ヒースクリフ』でしょ? 『ユウキ』」

 

『えへへ』

 

 AR機器が送ってくる目の前の少女の映像は、全く変わらない。対する女性は、少しばかり小さな皺が増え、全体的に穏やかに年齢を重ねていた。

 

『そういえば旦那さんは? また残業?』

 

「いえ、今日はクラインさんのところと共同開発した新しいソフトの打ち上げよ? 開発スタッフの『ブラックキャット社』全員が、クラインさんの自宅で奥様のお料理をいただくんですって」

 

『クラインの奥さんって……サーシャさんだっけ? あの二人が結婚したときは、吃驚したなあ……』

 

ブラックキャット(ウ チ)の社長夫妻は、『やっぱり』って感じだったわね」

 

 ――――役柄を変えた、誰かを抱え

 

『そろそろあの二人も帰ってくるかな。旦那さんにもよろしくねー!』

 

「ええ。あ、そうだ。例のタッグ戦、録画しておいてくれないかしら。どうせあの人が、試合中の娘の型のチェックに使うでしょうから」

 

『うん、了解。でもアイツも、大概だよね。物騒な世の中だからって、普通は娘が段位取る位、護身術を仕込まないよ?』

 

「でもおかげで、姉弟揃って元気いっぱいよ?」

 

『いや、だからさあ……どこの世界に、空手と柔道の段位を持ってて、コマンドサンボまで使う女子中学生がいるのさ? おまけにウタヤ君も、クレー射撃とバイアスロン競技のジュニア大会で優勝してるし』

 

「あら、でも動く相手の『頭部撃ち(ヘッドショット)』は全くの別物よ? あの子も手こずるんじゃないかしら」

 

『………………』

 

 ――――世界は、続いていく

 

「たっだいまー、母さん!」

 

「くあ……ただいま」

 

優乃(ゆの)、ドアは静かに開けなさい。詩矢(うたや)? 貴方、ズボンからシャツが半分はみ出してるわよ?」

 

「はーい!」

 

「ふあい……」

 

「欠伸混じりの返事も、しない」

 

 ――――絆が生んだ、新たな世代へと

 

「あ、もう聞いたの? 今度の試合、ハル君が相手だって」

 

「ええ、聞いたわ。懐かしいわね。向こうの家で貴方たち、よく遊んでたわね」

 

「あー……レトロゲームで負けたユノ(ねえ)が、現実(リアル)で腕ひしぎ十字固めやってハル(にい)泣かせたんだっけ?」

 

「いやいやいや! 何、二・三回しかない黒歴史を持ち出してるの!?」

 

「いや、技の違いはあるけど五回以上は――――」

 

「もー、黙って!」

 

 言葉は、途中で突っ込まれたイモの天ぷらに遮られた。

 

優乃(ゆの)、食べ物で遊ばない」

 

「だって、詩矢(うたや)が~~」

 

「…………(モグモグモグ)」

 

 そこは何の変哲もない、一般的な家庭の姿。

 

「そーいえば、母さん。確か母さんたちも、来週の土日、試合よね?」

 

「ええ、GG(ガンゲイル)FO(フロンティアオンライン)のね。シリーズ作品全て含めると、BoBも何回優勝したか分からなくなってきたけど。ちょうど新しいモニターTVが欲しかったのよ」

 

「あ、そっか。部活と重なってなきゃ、オレも出たかったな……」

 

「アンタじゃ決勝戦のどっかで、父さんにやられるのがオチじゃない?」

 

「それは、父さんがおかしいんだよ。何であんな戦い方で強いのさ……」

 

 不意に電子ロックが開き、上り框から声がかかる。本当に、本当に、何の変哲もない日常。

 

「あら? 打ち上げの予定だったんじゃないの?」

 

「あー、それがね。ハードを担当したレクト側の責任者で、キリト夫妻(たち)が来ててね。リーダーが二人を連れて二次会に行ったんで、自動車(クルマ)だった僕は早めに上がったんだよ」

 

「あら、そうなの。二人は元気そうだった?」

 

「ああ。何でもこの間もアメリカに渡っていたそうだが、息子さん含め息災だそうだよ。『もう二度と、暴漢なんかにやられて昏睡したりしない』とかキリトは言ってたが――――そうだ、言い忘れていた」

 

「?」

 

 かつて主役だった二人は、主役を譲り、それでも舞台の中にいる。端役だとしても、それは、きっと。そう、きっと。

 

 

「――――ただいま、詩乃」

 

「――――おかえり、優矢」

 

 

 それは、きっと。かつて恋人だった二人が、阿修羅の少年と、冥府の女神の少女が、確かに望んだ、還るべき場所。

 

 ――――世界は、続いていく

 

 

 ――ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男~アフター000

 

 ――――そして、また、始まりへ

 




これにて『ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男』連載終了となります。2012年の連載開始からお付き合いいただいた読者諸氏、皆さん本当にお世話になりました。途中手首折ったり本当に色々ありましたが、今まで読んで下さった皆さんには感謝しかありません。本当に、ありがとうございました。

最終回、飛ばされたアリシゼーション編。さて、なんですっ飛んだかと言うと、正直アリシゼーション編に行ったとしても、原作以上に楽勝ムードしか見えなかったせいです。ネットでますます神がかっているヒースクリフに、同じくネット生命化したユウキ。そしてMHCP能力全開で原作より猛威を振るうユイにレイジ……原作通りキリト襲っても、すぐに解決されそうだし、とち狂って優矢を襲えばその時点で詰むジョニーwwそういうわけで飛ばしました。

アクセルワールド編。これは次世代を象徴する物語として当初から予定してました。シノンは過去が重いからこそ、かけがえのない日常こそが還る場所だと考えています。
次世代の子供たちは、拳と銃が逆転しましたwそして20年経っても変わらない『祖父(笑)』。メタルカラーで架空のオリハルコン持ってくる辺り、やりたい放題ですww
ちなみにレイシノは未だ現役。RMTありのVRやARのFPSで荒稼ぎしてますw

予約投稿は、この一時間後の設定裏話で最後となります。

最後となりましたが、今まで読んで下さった皆さん、本当にお世話になりました。ありがとうございます!
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