ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
…さて、徐々に明らかになる主人公の、『違和感』。勘の良い人なら気づいてると思いますが、正体だけは、どうかアインクラッド終了までは秘密でお願いします!
一応予定では、12月入るか入らないか位でSAOクリアの予定ですから♪
SIDE:キリト
飛ぶ、飛ぶ。
「ぎゃあああ?!」
まるで重さがまるでない羽のように、飛んで行く。
「ひいいいい!?」
……
『あぎゃあああああ!!』
あ、今度は三人まとめてだ。
「あ、あー…………サチ?」
何と言うか、言葉をなくして、俺は傍らにいるサチに話しかけた。ちなみにその横で、アスナは巻き起こる惨劇からユイを守るため、必死にその両目を覆っていた。
「……なに? キリト」
「い、いや。レイジの奴、攻略のときと全然キャラが違うんだけど……いつもああなのか?」
「…いつも、
「…………ちなみに、一度目は?」
「一度目も、やっぱり街で≪軍≫の強硬な徴税が行われてた頃で……話を聞いたレイジが街で≪軍≫の人たちを、話も聞かずに殴り飛ばしてたかな」
「……たった今、目の前で行われてる感じでか」
さっきから、人がポンポン空へ打ち上げられている。≪圏内≫だからダメージは無いはずだが、それでも衝撃はあるし、そもそもあんな高レベル格闘ビルドの全力の攻撃なんて、迫ってきたら恐怖以外の何者でもない。まず間違いなく、アイツラはトラウマになる。
「……さっきの≪阿修羅≫って言うのは?」
「レイジの二つ名だよ。何でもレイジのスキルの中に、そんな名前のソードスキルがあるらしくて、前の時に同行してた≪風林火山≫の人がそれを口にして……」
「あの姿を見て恐怖した≪軍≫のヤツラが言い出したと。大体把握した」
最前線では≪金剛≫の二つ名を持ち、壁戦士(タンク)役兼フォロー役の鑑みたいに言われてるアイツに、こんな一面があったとは。重装備のために上げた高筋力で飛んで行く人間は、確かに圧巻だ。に、しても。
「――いいですか。アナタ達は≪徴税≫と言いましたが、それは市民に対して、何らかの奉仕をしている者が言うべき事です。公共の福利に貢献する者こそが、その享受を受けられるのであって―――!」
「ひ、ひいいいいっ!?」
「あああああ?!」
さっきから、正論で説教しながら、ボコボコにしてるんだが。むしろあんな状態で説教されたところで、ほとんど聞こえないと思うんだ。
「……よく説教しながら、全力で殴れるな」
「あ、あはははは……あれは、殴られる理由を相手もわかるべきだから、やってるらしいけど。多分お説教する回路と、殴る回路が別なんじゃないかな?」
「「いや、それはおかしい」」
俺もアスナも思わず突っ込んでしまった。そのくらいおかしな光景だった。
「で、これはどのくらいで終わるんだ?」
「うーん。前の時は、そのままの勢いで、黒鉄宮の≪軍≫本部まで行って、幹部メンバーも殴って、全員に正座で三時間説教したら終わったけど。その後しばらく≪軍≫も大人しかったんだけどね」
「「………………」」
――それは。いわゆる大惨事というべきものでは? というかそんなことをギルド内でされたら、幹部連中の権威も地に落ちるんじゃないか?
「……俺、もう二度とレイジを怒らせることはしない」
「わたしも……」
夕焼け空の下、俺とアスナはそんな誓いを固く心に決めた。
SIDE OUT
◇ ◇ ◇
その後、その場にいた全員に説教と制裁を加えた後、これ以上専横を続けるなら、もう一度本部に伺う旨を上層部に伝えるため、≪軍≫のヤツラは放してやった。≪軍≫がいなくなった途端、
「すげー! やっぱ、レイ兄、つええ!!」
「かっこいー!」
子供達の歓声が上がった。流石に照れ臭くなり、曖昧な笑みを浮かべていると、
「あ……あああああ………」
苦しげな声が、その場に響いた。
「みんなの……みんなの、こころが……」
声の方に目を向けると、アスナさんの腕の中で、≪ユイ≫と呼ばれていた少女が呻くように声を上げていた。
「ユイちゃん! 何か思い出したの!?」
「ま、ママ……」
彼女のその手は何かをつかむように空に伸ばされ――
「あたし……。ここには、いなかった。ずっと……ずっと前、
ノイズのような音が走り、まるで引き付けを起こしたように身体が痙攣した。それを見た瞬間、自然と身体が動いていた。
「≪ユイ≫ッ!」
アスナさんの腕の中の少女の手を握り、額にもう片方の手を乗せた。その瞬間―――
額の手から、光が迸った。視界を焼く光が止んだ後、ゆっくりと目を開けると、
「……れ…≪レイ……ジ≫……ありがとう……」
そう言って目を閉じ、安らかな寝息を立て始める少女の姿があった。
「今のは……」
キリトがようやくそれだけ口にした質問に、僕は答えることが出来なかった。
◇ ◇ ◇
その後、ユイちゃんは数分で目を覚ましたけど、大事を取るため、二人とも教会に泊まっていくことになった。ちなみにアスナさんは、この世界で数少ない『≪料理≫スキルマスター(マスターコック)』だったらしく、同じくマスターのサチが作ったカレーライスのスパイスの効いた味に唸っていた。
翌日、この教会では恒例となる、にぎやかな朝食を摂っていた……のだが。
「うん、サチも料理上手いんだな!」
……空気を読まずにサチの料理を絶賛する、欠食剣士が一名。アナタの隣で、KoBの副団長が凄い形相になっているので何とかしてくれませんか? 周りの子供達が、顔を青くしてるんですよ。
「ふんだ。何よ、キリト君。もう食事作ってあげないから」
「……スイマセンデシタ。アスナ様ノ料理モ大変美味シュウゴザイマス」
……今更謝っても遅いんじゃないか? とりあえず、キリトは割りとKYなところがあるんだな。
「……にしても、ビックリだね。あのキリトが、あのアスナさんと結婚するなんて」
「…ヲイ、サチ。そりゃどういう意味だ」
キリト。朝食時から、女の子を睨まない。まあ確かに意外な感じはするだろうしね。
「うーん、キリトって何か、最初は人を寄せ付けない感じがあったから。それにアスナさんは、私でも知ってる有名人だからね」
「「ぐ……」」
第一印象と、世間での評判を聞いて、ぐうの音も出ないか。それとも世間で注目されることに、引け目を感じてるのか。
「まあ、ここの人たちは、評判とかあまり気にしない人達だから、時間が空いた時にでも、遊びに来るといいよ。一応、ここの家主は僕だし」
「うん、大歓迎だよ。キリト、アスナさん」
「むー、名前で呼んでよ、サチ。同い年くらいでしょー?」
「……ふふ。わかった。アスナ」
サチも、同年代の友人が出来て、嬉しいようだ。
「そういえば……サチの仲間の人たちは、今は何を…?」
「あ、キリトから聞いたんだね。黒猫団の皆は、今では中層の上位ギルドとして結構有名なんだよ。あれから絶対にギルメンにも野良PTの人にも無理をさせず、確実にクエストをこなそうとしているから、評判もいいし」
「へえ…」
「キリトにもいつか、攻略組として追いついたら、謝りたいって言ってたよ? ケイタも、皆も」
「いや、悪いのは俺だし……」
そんな感じで、話に花を咲かせていたところ―――
コンコン
『すいませんが、≪阿修羅≫のレイジさんはご在宅でしょうか?』
そんな涼やかな、女性の声が響き渡った。
◇ ◇ ◇
警戒しながら開けてみると、前に≪軍≫の本部で会った、ユリエールさんという、ギルドリーダーの副官の人だった。何でも昨日の横暴な『徴税』を聞いたらしく、正式に謝罪したいとのことだった。とりあえず中に招きいれ、話を聞いていくと――
「ギルドリーダーを、他のメンバーが閉じ込めた……!?」
何と現在≪軍≫のギルドリーダーは、脱出困難な高レベルダンジョンの最奥部に閉じ込められているとのこと。現在実権を握っているのは『キバオウ』なる急進派で、昨日のヤツラはその急進派のメンバーらしい。キバオウ……説教中に、関西弁で何度か口答えしてたアイツか……!
「ボソッ(二度とふざけた真似が出来ないように、心を折っておくべきだったか……)」
「レイジ、ぼそっと言わない。ユリエールさんまで、顔が青くなってるから」
いや、サチ? そうしておけばこんな騒動にはならなかったわけだし、実際あの時の説教はまだ不完全燃焼だよ? 皆に止められたからやめたけど。
「それでお話と言うのは……?」
「≪軍≫のギルドリーダー、『シンカー』の救出に、力を貸していただきたいのです……!」
……これは、少々厄介ごとの匂いがし始めた。
早めの予約投稿、第一弾終了。
ようやく出せた、『阿修羅』の二つ名。この二つ名は、キリトの『黒の剣士』と『ブラッキー』やら、アスナの『狂戦士』と『閃光』みたいに、場合によって呼び分けられるものになっています。
…つまり、≪軍≫の恐怖の象徴みたいな。もっとも、語られていない最初の≪軍≫半壊のときは、レイジがオフだったせいで普段着しか身につけていません。そのため、最前線で完全装備のレイジとは結びつきませんでした。
……結びついてたら、マップ要求した時点で、全員半泣きで帰ることになってただろうな……