ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
ついに出てきた骸骨百足!
次の投稿は、正午予定です。
「偵察隊が全滅した……?!」
あれから数日、ギルド≪風林火山≫で、75層のボス部屋が発見されたと聞いた矢先の出来事だった。KoBを初めとする有力ギルドが出したボスの偵察部隊が、戻ってこなかったと言うのだ。
「ああ……今回のボス部屋なんだがよ、74層の時と同じ≪結晶無効化空間≫……おまけに、一度入ったら、部屋のドアが自動で閉まる機能までついてやがったんだそうだ……」
…それでは、脱出は完全に不可能だ。部屋にいるであろう、ボスを倒すまでは。
「本物のデスゲーム……製作者の茅場は、本当に性格が捻じ曲がってるみたいだね……」
「そりゃ、皆二年前に知ってたことさ…それで、今回のボス攻略については、攻略組を構成するギルドやソロから、精鋭を可能な限り集めて、大規模レイドを組んだ上で臨むそうだ」
なるほど。確かに情報が無いのであれば、精鋭部隊で一気に倒すのが、一番犠牲が少ないだろう。…けど。
「偵察部隊が全滅するってのは、普通じゃねえ…それもかなりの短時間だったそうだ。てことは、今回のボスは……」
「相当威力が高い攻撃手段、あるいは集団を一網打尽に出来る攻撃のどちらか、もしくはその両方を持ち合わせていることになるね…」
そういう相手となると、優秀な壁戦士(タンク)役が必要になる。僕か、ヒースクリフくらいか。
「ヒースクリフと僕は、最優先で参加したほうが良さそうだね。後、ウチのギルドから行くのは?」
「オウ。≪風林火山≫は、オレやオメエを含めて5人が参加の予定だ」
……そうか。だったら、一つ伝えておいたほうがいいか。
「だったら…皆に先に言っておく。今回のボスが予想以上に手強かったら、最悪僕は
「……ッ! マジか?」
「だから、もしそうなったら……」
「オメエがペナルティから解けるまで、絶対保護だな。まかせとけ!」
あの切り札は、≪鉄拳術≫の中でもペナルティが尋常じゃない。使った後に
◇ ◇ ◇
「今回参加するのは、これだけか……流石に有名どころのメンバーが多いね」
「まあ、そうだな。だが! ウチだって攻略組の一角なんだ、知名度だったら負けねえさ」
ボス挑戦前、ギルドリーダーとの軽い掛け合いで緊張をほぐすのは、いつものことだったけど、今日はリーダーの声に緊張が見て取れる。…やっぱり偵察部隊が全滅したことが原因だね。
「…お? ありゃ、キリト達じゃねえか?」
リーダーの声に顔を上げると、そこには確かに攻略から離れていたキリトとアスナさんの姿があった。
「オイ、キリト! こっちだ!」
リーダーが周りに響く大声で、声をかける。その掛け声に、二人がこちらへと近付いてきた。
「クライン、レイジ。お前らも参加するのか」
「オウ! 今回のボスは相当手強いみてえだからな。攻略組屈指の実力派ギルドとしては、放っとけねえさ」
「ムサイ男の集まり(ギルド)の間違いだろうが」
お互い軽口で始まったが、やはりキリトの口調も緊張しているのが分かってしまう。
「……大丈夫? 二人とも」
「…あ、うん。大丈夫。心配してくれてありがとう」
「…大丈夫さ。アスナは俺が、
……キリト。
「その発言は間違いだよ、キリト」
「え?」
「さっさと片付けて、
「……はは。でもそれじゃ、俺たちの死亡フラグみたいだけどな」
「『俺、帰ったら幼馴染に告白するんだ』――ってやつ?」
「そうそう、それ」
「……キリト君。幼馴染なんかいるの?」
「え、ちょ! アスナ、誤解だから!」
途端に慌てだしたキリトに、場の空気が少し緩む。これで少しは大丈夫かな?
「お、あっちにはエギルの奴がいるな。挨拶しとくか」
◇ ◇ ◇
やがて適度に緩んでいた空気は、KoBの団長、≪聖騎士≫ヒースクリフの登場と共に引き締められた。その後今回のボス攻略の概略へと話は進んだ。
「―――では、ボス部屋までは、≪回廊結晶≫を使用する。私の後に続いてくれたまえ」
そうして開かれるボス部屋直近までの回廊。渦巻く青の光は、プレイヤーを飲み込む渦潮にも見えた。
「行くぞぉ、オメエラ!」
『ウス!』
リーダーの号令のもと、ギルド≪風林火山≫の精鋭もまた、その光へと踏み込んだ。
◇ ◇ ◇
ボス部屋の中は、余りにも殺風景だった。特に目に付くオブジェクトがあるわけでもなく、極めて一般的なダンジョンの一室だった。全員がその部屋に踏み込んだ時、その背後で扉が重苦しい音を立てて閉まり、それを合図に全員がボスが湧出(ポップ)するであろう中央に注目した。
「……来ない?」
いや、そんなはずは無い。考えられるのは、今回はイレギュラーで、どこかの壁側から現れるか、もしくは―――
「上よ!」
アスナさんの声に全員が上を向く。そこには――天井を、何か白いものがはいずっている? それは段々と大きさを増して―――
「くっ!」
巨大なボスが、張り付いていた天井から、落ちてきているのだと悟った時には、中央部の最前列から≪ザンエイ≫で避難していた。瞬間巻き起こる振動と衝撃。湧出(ポップ)されたボスの名は――≪The Skullreaper(骸骨の狩り手)≫。
「まずい、戻らないと!」
咄嗟だったとはいえ、ボスから離れすぎた。硬直が解けるよりも早く、ボスに近いところにいた他のギルドの壁戦士(タンク)が三人、ボスの鎌で掬い上げられ―――
―――一瞬で、ポリゴン片へと変わった。
「―――ッ!!」
その瞬間聞こえてくる、
「――君は、右の鎌だ」
並走していた真紅の影からそんな言葉を投げかけられ、すぐさま自分の持ち場へと向かう。ボスの右正面に着いたと同時、左正面には、このSAO最強の剣士、ヒースクリフが着いていた。そして、待ち構えたかのように振り下ろされる二つの鎌。
衝撃に、膝をつきそうになった。先日戦った死神に、勝るとも劣らない衝撃。だけど威力自体は、何とか耐えられる範囲だった。
「ボスの攻撃は、我々が防ぐ! 皆は、側面から攻撃を!」
そのヒースクリフの号令と共に、全員が動く。攻撃役(アタッカー)と壁戦士(タンク)が適度にバラけ、あちこちから攻撃する内、……悲鳴が巻き起こった。
(……尻尾か!)
見ると、ボスの尻尾は鋭利な骨の槍になっており、その部位もまた、致命的な攻撃力を持っているようだった。今まさにその犠牲となったプレイヤーからの悲鳴と絶叫が、頭の中に酷く響く。
(やむを得ないか…!)
このまま僕とヒースクリフが鎌を防いでも、尻尾の攻撃で何人犠牲が出るか分からない。それならばどこかの攻撃力を大幅に落とすことが必要だ。
「リーダー、キリト、アスナさん!」
近くの側面から、攻撃を加えていた三人に声をかける。ここで切り札を切るために!
「≪鉄拳術≫の切り札を切る! 硬直時間中の僕の防御と、その間の尻尾の対処を!!」
そう言って、盾で抑えていた右の鎌を、≪シールド・チャージ≫で弾き飛ばす。これで事前モーションを出す時間が稼げた。
「ふぅっ!!」
両手を腰だめへと持ってくる。その姿勢から右の手だけを動かし、やがて片膝の姿勢へと移行し、力強く地面を打ち付ける。ズンッ、と来る衝撃と共に、身体を太陽の炎のような明るいオレンジのライトエフェクトが包んでいく。そしてその炎を、巻き込むようにして、再び腰の位置へと戻る右手。そのときには、身体の炎は、右の拳を中心に渦巻いていた。
事前モーションの終わりと共に、眼前へと迫るボスの鎌。その鎌にはソードスキルのライトエフェクトを纏っているが……それに対するのは、この世界最強の拳!
「≪アシュラ――――」
その拳は赤く、紅く、朱く、全ての炎の要素を秘めるが如く、輝く。身体には紫電を纏い、その身は一柱の闘神(アシュラ)へと昇華した。それこそが―――
「――――ハオウケン≫!!!」
一瞬の交錯、突き出した右の拳を、再び地面へと付く。その背後では―――根元から折られた鎌が宙を飛び、ボスの右半身がポリゴンとなって砕けていた。
≪鉄拳術≫最上位・単発超重ソードスキル≪アシュラハオウケン≫。異常に長い事前モーションから繰り出されるその一撃は、並みのボスなら一撃で即死させかねない威力を誇っており、≪アダマス・バックラー≫の材料を持ったボスもこれで倒した。
ただしそのペナルティはほかのソードスキルの比ではなく、HPが強制的に
「オメェラッ! 硬直終了まで絶対守れよ!」
『オオオオッ!!』
近場の百足状の胴体から繰り出された踏みつけ攻撃を、リーダーと≪風林火山≫の皆が必死になって防いでいる。鎌より弱くても、その攻撃力は十分に脅威だった。
「いくよ、キリト君!」
「分かってる! これでアイツの攻撃力も半減だ!」
その言葉とともに、もう一つの脅威である尻尾へと向かう、黒と白のコンビ。…いや、夫婦と言うべきか。
「壁戦士は、尻尾の攻撃を捌くのにまわって! レイジ君が復帰するまで、犠牲者を出しちゃダメよ!」
「みんな、なぎ払い攻撃は亀になって凌ぐんだ! 突き刺し攻撃は、俺が何とか捌いてみせる!」
片膝の姿勢のまま硬直する僕の周りで、そんな暖かな声が響いていた。
連続投稿第一弾終了です。
やっぱりクオーターポイントのボスは強いんですが……それ以上に主人公のスキルがヤバすぎでした。
最悪の敵、それに対する、主人公最強の切り札!! みたいな少年誌的展開は好きなんですが、自分の実力ではこの描写が限界です。
さて、ここでスキルの話。ROの『阿修羅』はSP(MPにあたる)を1にし、ボスに大ダメージ与える技なんですが、SAOにはMPすら存在しない……そこでこうなりました。まあROですら当てた後に、ボスの範囲攻撃でモンクがやられるってよくありますし。SP回復不能は、死ぬか即時ログアウトしないと解けないし……