ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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二日続きの連続投稿第四弾!

これにて、アインクラッド本編終了!!



015 世界を砕く者

 

SIDE:キリト

 

「レイジーーーッ!!」

 

「……レイジ君ッ!!」

 

 俺たちは、目の前の光景が信じられなかった。レイジに突き刺さった剣は、本来なら俺に刺さるはずだった。…余りにも不用意に、隙の大きいソードスキルを発動させてしまった俺に。

 

 だと言うのに、剣が突き刺さる瞬間、俺はアスナにかばわれ、さらに二人そろってレイジに救われた。……俺は…。

 

「フム、麻痺で動けなかったハズのアスナ君が飛び込んできたこともそうだが……まさか君が、彼らをかばうとは思わなかったよ、レイジ君」

 

 剣をレイジに突き刺したまま、茅場は語る。

 

「だが、君はここでリタイヤだ。……この後はどうするかね、キリト君。剣を一本失った状態で、アスナ君と共に挑むかね?」

 

 そう言ってこっちに視線を向けてくる。…コイツは。コイツは、レイジを殺した。ならば、敵わずとも俺たちだって……!

 

 …そう考えていた俺たちに代わって、答えた声があった。

 

 

「……ああ、そうだね」

 

 

 声は、クリティカルポイントの心臓を貫かれたハズの、レイジからだった。

 

 

「選手、交代だっ!!!」

 

 

 そう叫んで、レイジは右足を力強く振り下ろした。

 

「うおっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

「ぬうっ…!」

 

 途端に地面が、まともに立っていられないほど揺れ動く。

 

 それは、≪鉄拳術≫妨害(・・)用ソードスキル≪ジライシン≫。振り下ろした足を中心とした振動で、敵の動きを阻害するソードスキルだった。

 

 見ると、レイジは自分を貫いた剣を、腕ごと抱え込んで固定していた。

 

 

 ……あんなにまでなっても、戦おうとしていた。

 

 

 それを見た瞬間、俺とアスナは同時に動き出した。

 

「ハアアアアアッ!」

 

 敏捷に勝るアスナが、先陣を切る。その白銀の細剣(レイピア)は純白の光を放った。≪細剣≫上位ソードスキル≪スター・スプラッシュ≫。

 

「ムンッ!!」

 

 短い気合と共に、ヤツはアスナのソードスキルを全て左手の十字盾で打ち落とした。明らかに、ヤツ本来の反応速度を超える動き。≪オーバーアシスト≫だ。

 

「交代と言っておきながら、実質三人がかりなのだ。文句は言うまいな?」

 

 そう言って、アスナを十字盾のなぎ払いで横に飛ばす。軽装のアスナは、それだけでHPが赤く染まった。

 

「おおおおっ!!!」

 

 雄たけびを上げ、デュエルの駆け引きも、何もかも頭から放り投げて、俺は突進していった。選んだのは、これまで最も多くの敵を倒してきた片手剣単発重攻撃ソードスキル――――≪ヴォーパル・ストライク≫。

 

「ムダだよ、キリト君。たとえいかなる攻撃でも、この盾に正面からは――――」

 

 そう嘯くヒースクリフの――

 

 

「じゃあ、この攻撃なら、どう?」

 

 

 笑みが、凍りついた。

 

 視線の先、ヒースクリフの傍らで、レイジが片膝の姿勢で、拳を地面に打ち付けていた。明らかに――――先ほどクオーターポイントのボスすら半壊させた最強のソードスキル、≪アシュラハオウケン≫。身に纏う炎が、拳へと収束していく。

 

「く、おおおおおっ!」

 

 それに対しヒースクリフは、両手から片手となって固定が緩んだ右手の長剣を、胸から肩口まで斬り抉ることで脱出した。バックステップと共に、防御の姿勢をとる長剣と、十字盾。

 

 

 …その途端、レイジの身体が、末端から徐々にポリゴンとなって砕け始めた。

 

 ……だが、それでも。

 

 

「あああああっ!!!」

 

 

 拳は、止まらなかった。

 

 一瞬の、交錯。それは、レイジの右手を粉砕し、ヒースクリフの十字盾を、上空へと跳ね上げるという結果をもたらした。

 

 

「茅場アアアアッ!!」

 

 

 今や片手剣のみとなった茅場晶彦の胸へと迫る、俺のソードスキル。

 

 

 …一瞬、ヒースクリフのヤツが、笑ったような気がした。

 

 

 真紅の光を伴って、胸に深々と刺さる、俺の剣。確実に倒したと言う手ごたえだけで、ヤツの身体がポリゴンへと砕けるのを確認することも無く、俺はレイジのところへと駆け出した。

 

『――ただいまアインクラッドの全プレイヤーに対し、お知らせがあります。全フィールドはクリミナルコード保護圏内に変更され――――』

 

「レイジ君! ダメ、死んじゃダメェッ!!」

 

「――ッ、レイジ……」

 

 無機質なアナウンスが流れる中、俺が駆け寄った時には、レイジの右手と両足は、完全に砕けてしまっていて、見るそばからその範囲が広がっていた。……これじゃ、もう。

 

 

「キリトォッ!!!」

 

 

 そんな事を考えていたところに、クラインのヤツが叫び、何かを投げつけてきた。俺の手に収まったのは――――虹色の、結晶。

 

 

 あの日、一人でも生き返らせようと、必死で求めた――――――≪還魂の聖晶石≫。

 

 

「――――ッ! どいてくれ、アスナ!」

 

 俺は、システムが何事かを告げるアナウンスが流れる中、その結晶をレイジの胸へと押し付けた。

 

 

「≪蘇生≫ッ! レイジッ!!」

 

 

 ――――――そして、世界は虹の光に包まれた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 光が収まり、俺たちは一面真っ白な空間にいた。

 

「…? ここは……?」

 

「雲の、上……?」

 

 隣からアスナの声が、聞こえた。俺もアスナも帯剣こそしていなかったが、戦闘用の装備のままで、先ほどの戦いが嘘のようだった。

 

「…! キリト君、見て!!」

 

 雲の端から下を覗き込んだアスナの声に、俺も覗き込んでみると、雲間に浮かぶ、黒い円柱が見えた。

 

 

「アイン、クラッド……」

 

 

 俺たち二人が出会い、笑い、泣きながら二年間を過ごした黒鉄の城が………徐々にその姿を崩していた。

 

「おわった、のか……」

 

「そうね……」

 

「そうだね…」

 

 

……

 

………ん?

 

 

「「レイジ(君)ッ?!」」

 

 

 声のしたほうに振り向くと、そこに先ほどまで死に掛けていたレイジがいた。……額に御札をつけ、中国風の帽子を被った格好で。

 

「……えっと、なに、やってるんだ? レイジ?」

 

「ん? いや~、実は聖晶石が間に合わなかったみたいで………早速、化けて出てきたんだよ。う~ら~め~し――――」

 

「イ、イヤアアアアッ!」

 

「ぶがっ?!」

 

「あーあ……」

 

 明らかにふざけて言っているレイジの言葉に、実はお化けが苦手なアスナが過剰に反応し、キレイに右ストレートを鳩尾に決めていた。予想外に決まった一撃に、レイジが崩れ落ちている。……格闘型の壁戦士(タンク)を一撃か、すごいな。

 

「ううっ、元気な姿を見せて安心させようと思って、茶目っ気を出しただけなのに……」

 

「自業自得よ!」

 

「はは……」

 

 何と言うか、元気そうで本当に良かった。心からそう思えた。

 

 

「――そろそろいいかね?」

 

 

 その声と共に出てきたのは、現実の姿をした茅場晶彦だった。

 

「茅場……、あの城はどうなってるんだ?」

 

「何、あの光景は現状の比喩的表現であり、現在アーガス本社に設置されたゲームサーバーの全データの消去作業に入っている。生き残っていた6000人以上のプレイヤーは、先ほど全員ログアウトを完了したよ」

 

「そう……」

 

 ならば…エギルもクラインも、この世界で会った全ての人たちは無事に現実に帰れたのだ。……帰れないのは、ただ一人。

 

「茅場……今まで亡くなった人たちは―――」

 

「キリト君、人は簡単には生き返らない。命は一人に一つだけだ。それを軽々に覆すことは出来んよ」

 

 

 ……それはつまり、やっぱりレイジは帰れないということで。

 

 

「なあ、茅場。なんでこんなことをしたんだ」

 

 なぜかそれだけは聞いておかなければいけない気がして、俺は目の前の男に問いかけた。

 

「……さて、どうしてだろうな。私は物心付いた頃には、既にあの黒鉄の城を夢想し、何時の日かそれを現実のものにする日を夢見ていた。そのためにアーガスを作り、様々なプログラムを作り…………だが、まさか、最後に自分の生み出した存在によって、あの城が砕かれる日が来るとは、夢にも思わなかったよ」

 

 …確かに、そうだ。コイツは言うなればMHCPとしてのレイジの『親』であり、自身の『息子』にその世界を砕かれたのだから。

 

「……さて、私はそろそろ行くよ」

 

 そう言って、茅場は二度と振り返ること無く、俺たちから離れていった。

 

「これから、どうするんだ? レイジ」

 

「ん? まあ、これでこの世界にとどまる理由も無いし、皆が無事に現実に帰ったのを確認したら、ネットの海を回遊しようかと」

 

「回遊って……一体何をする気?」

 

「そうだね……二年の間に色々世界も変わっただろうし。それに現実に戻った皆に、せめて挨拶くらいはしに行こうかな、と」

 

「「はは……」」

 

 現実に戻れないと言うのに……どうやらレイジにとっては、余りに小さな事柄らしい。

 

「だからさ……二人とも、現実の名前教えてくれる? 皆が元気になったら、必ず会いに行くから」

 

「――ああ、分かった。桐ヶ谷和人、先月で十六歳だ」

 

「えっ!? キリト君、年下だったの? 私は結城明日菜、十七歳」

 

「んー、僕の名前は、この世界のレイジって名前が本名みたいなものだしなー。…ところで」

 

 そう言って、視線をアスナの方に向ける。

 

「アスナさん、気をつけた方がいいよー。KoBの副団長で、今回のこともあるしかなりの有名人になっちゃっただろうし。その上まさか本名とは……」

 

「あー、そうだな。ただでさえこっちでもアイドル扱いだったのにな……」

 

「何よ?! 私はこのSAOが初MMOだったんだから仕方ないでしょ!? そういうことなら、キリト君だって、ゲームクリアの立役者じゃない!!」

 

「MMOデビューがSAOって……」

 

「運が悪すぎる……」

 

「やめて、落ち込むから」

 

 そんな事を言っている内に、雲間に見える城は崩壊が進み、いよいよ最後の階層にさしかかった。

 

「それじゃ、そろそろだね」

 

「ああ……」

 

「うん……」

 

 本当に目の前にいる男には、世話になってしまった。サチの件でも、ボス攻略でも、色々とフォローしてもらってばかりだった気がする。……何も返せてないな。

 

 

「それじゃ、二人とも……『またね』」

 

「……ッ、ああ! 『またな』!」

 

「『またね』!」

 

 

 これが、アインクラッドでの最後の光景だった。

 

 

SIDE OUT

 





二日続きの連続投稿第四弾終了です!

かなり急ぎ足で終わらせてしまいましたが、いかがでしたでしょうか?

初登場の妨害ソードスキル≪ジライシン≫。こういう搦め手系のソードスキルって、本編で本当に少ないですね~。カタナの幻月か、『バーサス』で出たアレくらいか?

ちなみに、本編でレイジが最後に被っていたのは、ROプレイヤーなら誰でも知ってる『ムナック帽』というアイテムです。ROネタはスキルくらいしか出さないつもりでしたが、こういう悪ふざけならアリだろうと思って出しました。それに実は……次のALOがこういうネタの嵐になっておりまして…………

後の更新は、主人公のアインクラッド最終ステータスと幕間を入れて、アルヴヘイム編に入りたいと思います! 次の更新は、いつもどおり土曜の予定です。

 ―――ちなみに、ALOは原作改変の嵐となります。レイジという主人公だからこそ、やってみたいことが沢山ありますので、全部入れてみました!!(ヲイ)
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