ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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毎週恒例の土曜日更新です! 少し手直ししてたら遅れてしまいました。

今回は、現実のキリトSIDEから始まります。原作との相違点やいかに!



002 リスタート

SIDE:キリト

 

 SAOから戻ってから二ヶ月、俺は一緒にもどるはずだったアスナの病院を訪れるのが日課になっていた。彼女はなぜか現実に戻ることは無く、今も300人近くのSAOプレイヤーと共に眠り続けている。

 

 そしてある日、俺はアスナの父親とその部下から、アスナが近くその部下と結婚するという話を聞かされる。その部下は……アスナの父親が帰った途端に、本性を表すような下種ヤローだった。

 

 傷心の俺は、妹の直葉に『あきらめるな』と慰められ、気持ちを新たにしたのだが――――

 

「おい、エギル! この写真は何なんだ!!」

 

 今、元SAOプレイヤーのエギルことアンドリュー・ギルバート・ミルズの経営するバーに来ていた。病院に見舞いに行った翌日、このエギルからアスナに良く似た女性の写るスクリーンショットを送られたのだ。

 

 それは木にぶら下がった鳥かごのような物の中で、鋭いトゲのついた茨(・・・・・・・・・)が生い茂ったその中には、確かにアスナの面影を持った少女がいた。

 

「まあ、落ち着け。それを話すには、この写真の撮られた経緯と、このゲームの中の、もう一つのウワサについて話さにゃならんからな」

 

 エギルの話は、こうだった。このスクリーンショットは、≪アルヴヘイム・オンライン≫と呼ばれるVRMMOの中で撮られたもので、内部のプレイヤーは翅を持った妖精の姿だが、その翅をもってしてもたどり着けない高度の『世界樹』なる一本の樹木が立っている。この写真は、その枝の写真だというのだ。

 

「滞空飛行制限があるんだろ? どうやって撮ったんだ、そいつは」

 

「何でも、背丈順に多段式ロケットみたいに飛んだんだそうだ。どこにでも、馬鹿なことを考えるヤツってのはいるもんさ」

 

 それを聞いて、俺は思わず苦笑していた。本当に久しぶりの笑みだった。

 

「なるほど、確かに馬鹿だけど頭良いな……それでもう一つのウワサってのは?」

 

「ああ、それは……コイツを見てくれ」

 

 そう言って差し出されたのは――――一枚のスクリーンショットだった。

 

 

「な………!?」

 

 

 そのスクリーンショットを見て、俺は驚愕した。それは、先ほどのようなゲーム内での写真ではなく、一枚の絵画のようなスクリーンショットだった。だが、それに描かれていたのは――先ほどの少女が、椅子に腰掛ける全身像だったのだ。

 

「アスナ…! 間違いない、アスナだ!!」

 

 先ほどの画質の悪いスクリーンショットと違い、その絵は彼女の特徴を良く捉え、俺に確信を抱かせるには十分だった。

 

「おい、これどうやって描かれたんだ! こんな確実な証拠があるんなら―――」

 

「まあ、待て。コイツはさっき言ったもう一つのウワサと関わってるんだよ」

 

 そうしてエギルが語りだしたのは、何とも奇妙なウワサだった。妖精の世界である筈のこのゲーム内に、明らかにプレイヤーと思われる半透明の『人間』が現れるというのだ。その男は、各都市を回って、そこの領主にこの絵画を一枚渡し、奇妙な頼みごとをするというのだ。

 

「何て、頼んでいくんだ?」

 

「それがな……『≪二刀流≫の≪黒の剣士≫を探して欲しい』って、頼むんだとよ」

 

「は…………?」

 

 その二つ名は、あの世界にいた人間しか知らない筈だ。その男もSAOの生還者だとでも言うのだろうか?

 

「……で、今どうなってるんだ?」

 

「まあ、あれだ。イベントを進めようと、こぞって『我こそは≪黒の剣士≫』って名乗ってる奴らが出てるらしい。何かソイツへの連絡手段があるって話だが、映像ごしに腕前を見て、確認してるって話だ」

 

「はは……じゃあ、まだ現れてないんだな」

 

 自分がやっていたから分かるが、二刀流はそんなに簡単なものではない。俺だってシステムアシストと、膨大な反復練習無しには習得できなかっただろう。

 

「本物は、目の前にいるだろうが。このゲームのヤツラに、どんだけ違うのか教えてやりな」

 

「ああ。……でも、その半透明の『人間』って何者なんだろうな」

 

 そう言った途端、エギルのヤツは何とも言いがたい表情をした。まるで嬉しさでほころびそうな顔を、必死に抑えつけているようだった。

 

「何だよ?」

 

「いや、そいつの特徴も聞いたんだがな……もし、俺の考えてる通りなら、どうにも嬉しくってな」

 

 そう言ったエギルの顔は、やっぱり笑みだった。知ってるやつなのか?

 

「そいつ、このゲームで最強とウワサされているどっかの将軍と一対一でデュエルしたらしいんだが、そん時の話によればな」

 

 エギルは口元をニヤけさせつつ、

 

 

純白(・・)の髪の格闘家で、今じゃ≪ニブルヘイムの幽霊拳士(ドッペルゲンガー)≫なんて呼ばれてるらしい」

 

 

 そう言った。

 

SIDE OUT

 

 ……ここは、妖精の住まう世界、≪アルヴヘイム・オンライン≫の内部。その中でも全てのプレイヤーがその目標とする頂点、≪世界樹≫の上である。

 

 

『んー、ヒマだねー。……アスナさん』

 

 

 そんなある意味重要な場所に、全く持って似つかわしくない声が響いた。

 

「……そうね。キリト君は、手がかりに気づいてくれたかしら」

 

 次の声は、世界樹の一本の枝に設えられた鳥かごの中から聞こえた。彼女はその鳥かごに囚われた姫君なのだ。

 

『大丈夫だと思うよ? あれだけ思わせぶりな発言をしておけば、ゲーム内はおろか、外のネットでもそれなりの話題になるだろうし、そのためにあの渾身の力作渡したんだし』

 

「つくづくレイジ君が、≪絵画≫スキル持ちで、画材を持ち歩いてて良かったと思ったわ……」

 

 この二人、SAOからの脱出後、このゲームに閉じ込められてから脱出の為に様々な方策を取った。その一つが今回のイベント騒動と言うわけだ。

 

「それにしても、レイジ君が私とキリト君の帰還をモニタリングしてくれなかったら、どうなってたことか…」

 

 ここにレイジがいるのは、何のこともなく、二人が無事に帰還するのを確認しようとしたら、彼女だけがログアウト後に、サーバーに仕掛けられたリンク先へ飛ばすトラップに引っかかり、この世界へ飛ばされたのをその目で目撃したからなのだ。急いで初期化目前だったSAOサーバーから残っていたツールやアプリを持ち出し、後を追ったというわけだ。

 

『まー、そこは運が良かったってことで。他の皆も今の段階では、まだ何もされてないから大丈夫だよ』

 

「それも、この『茨』のおかげなのよね……本当に、ありがとう」

 

 鳥かごを包んでいる『茨』はただのオブジェクトではない。SAOサーバーから持ち出したウイルスが仕込まれており、触れるとペインアブソーバーをある程度無視して、鋭い痛みが走るように出来ている。そしてこの『茨』は、脳だけをオブジェクト化されて安置されている、ほかのプレイヤー達の周りにも仕掛けてあるのだ。おかげで彼らを閉じ込めて、『人体実験』を目論んでいた研究者達は、精々プレイヤー達の『夢』をモニタリングすることしか出来ていない。

 

『この『茨』を解くのは、SAOの≪カーディナル≫の劣化コピーでは事実上不可能……とりあえず現状の維持には役立ってるね』

 

「そうね…でも、『茨』越しにあの男が言ってたことが……」

 

 昨日、主犯の須郷こと妖精王オベイロンが訪問し、アスナさんの父親を『説得』し、現実の彼女と彼との『結婚』が正式に決まったと言うのだ。もっともあの男の口ぶりからして、現実の彼女の肉体には、あの男もまだ(・・)手出しはしていないようだが……

 

 

「私が妻になるのは、後にも先にも、キリト君だけよ」

 

 

 決意を秘めた瞳で彼女はそう言った。……お熱いことで。

 

『そうだね。僕から見ても、二人はお似合いだし。でも独り身の僕の前でそういう発言は控えて欲しいかなー』

 

「お、お似合い?! って、レイジ君だって、サチと仲良かったじゃない?」

 

 ……あー、うん。そうだけど。

 

『現実に帰れる見込み、なかったからさ…』

 

「……ゴメン」

 

 そこで会話が重く途切れた。…しまったなあ。

 

「全く、二ヶ月の遅刻だなんて……」

 

『来たら、アルン名物の『オオトカゲスパゲティ』をおごってもらおう』

 

 そんな事を言いつつ、空を見上げた。

 

 

『大丈夫……君の勇者様は、どんな困難だって斬り払って必ず迎えにくるよ。あのSAOの皆を助けた、真の勇者なんだから』

 

「うん……ありがとう」

 

 

 勇者の訪れを、彼らは樹上にて待ち続けていた。

 




はい、ALO第二話終了です!

レイジが飛び込んでしまったせいで、目的を全く果たせなくなった『須郷と愉快な仲間達』♪そのくせ300人も昏睡状態にしているから、間違いなく重罪になるという…

それでも一切同情の余地が無い点、ある意味名悪役ですね。これからさらにヒドイ目にもあいますが……
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