ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
来週は仕事で更新できるかわからないので、今週二話連続更新します!
更新できたとしても、日曜や月曜になるかも…
SIDE:リーファ
私が、その彼に会ったのは本当に偶然だった。パーティーでの狩りの帰り、敵対種族である火妖精(サラマンダー)の一群に襲われ、最後の一人になって、死亡罰則(デスペナ)覚悟で特攻しようとしていたところを助けてもらったのだ。
明らかに初心者用の装備を身に着けた、影妖精(スプリガン)の少年に。その少年は、初期装備の剣でありながら、重装備の火妖精(サラマンダー)を一蹴し、撤退させたのだ。
私はそんな彼に、近場の自分達の本拠である、翡翠の都≪スイルベーン≫で一杯おごると約束したのだ。そして彼から質問されたのは、今最も話題の二つの事柄。
(≪世界樹≫と≪ニブルヘイムの幽霊拳士(ドッペルゲンガー)≫について、ねえ……)
あまりに目の前の彼が必死に頼んでくるので答えてあげたが、どちらもこのゲームをやっている人間なら誰でも知っている事柄だった。まず一つ目の世界樹については其処を制覇することがこのゲームのグランドクエストであり、どこの種族に属していようとそこを守るガーディアンを突破することを目的としている。翅での飛行が可能なこのゲームにおいて、『滞空制限解除』という報酬は抗し難い魅力を持つのだ。
もう一つの方…≪ニブルヘイムの幽霊拳士(ドッペルゲンガー)≫については、大した情報はない。各地の領主に『≪二刀流≫の≪黒の剣士≫が見つかったら連絡して欲しい。自分は世界樹の上で待つから』って伝えていくだけなのだから。
だが、そう答えた際の彼の反応がとても気になったのだ。
「そうか……アイツも、世界樹に……」
その口ぶりは、まるで幽霊拳士が誰か知っているかのようで―――気になった私は、とにかく一刻も早く≪世界樹≫へ向かうという彼のガイド役を買って出たのだ。
―――そして、今日。
「でもさー、幽霊拳士以外にも人を探してるって、どんな人なの? ―――キリト君」
「あ、ああ。……ごめん。簡単には説明できない」
そう言って会話を切り上げられてしまった。何か話せない事情でもあるのだろうか?
「んー、それじゃあさ、幽霊拳士の方について教えてよ。あの口ぶりは知り合いなんでしょ?」
「ああ、アイツは……俺の大事な友人で……散々迷惑ばかりかけた恩人だよ……」
そう言って、彼は酷く感慨深そうに言葉を切った。こちらも一言では語りつくせない内容のようだ。
「でも、それじゃあ、やっぱり幽霊拳士は人間のプレイヤーなんだね? 凄く人間くさい反応する人だから、そうじゃないかとは思ってたんだけど」
「……君も、アイツを知ってるのか?」
その言葉に、私は若干口ごもった。
「んー、知ってるっていうかー……」
◇ ◇ ◇
あの日、私はスイルベーンに侵入してきた幽霊拳士に一番に出会ったのだ。
「領主……? サクヤに会いたいの?」
『はい』
「一応、他種族のプレイヤーは、よっぽどのことがないと領主に取り次げないことになってるんだけど……」
『そこを、なんとか』
……んー、やっぱりNPCって感じじゃないなー。受け答えも自然だし、所作がいちいち人間くさいし。
「り、リーファちゃん~。この人イベントのスタッフでしょ? だったらGMってことも……」
『ははは、どうだろうね?』
「そこでとぼけてどうするのよ……そうだ」
これでも自分はそれなりのベテランだし、デュエル大会では上位に食い込む実力がある。運営側のスタッフかどうか、もっと手っ取り早い方法で確かめればいいじゃないか。
「勝負よ。私に勝てたら、サクヤに取り次ぐわ」
そう言って、腰から愛刀を抜き放った。仮にも運営側ならプレイヤーではあり得ない実力に設定されていてもおかしくないし、もし違うなら他種族ということで排除できる。私は、そう考えていた。
「リーファちゃん!?」
『あはは、どっかの副団長並みに血の気の多いことで。……いいですよ、受けて立ちます』
そう言って、相手はフードマントの中から両腕を出して構えを取った。装備は左腕に携えた円形盾(バックラー)のみで、後は手足にバンテージを巻いてるだけ、と割と簡素な装備だった。
「そっちもやる気みたいね……空中戦と地上戦、どちらがお好み?」
『どちらでもかまいませんよ? ……勝つのは、僕ですから』
「!」
それを聞いて、安い挑発とは思ったが、簡単に血が上り、長刀を大上段に構えると……何のフェイントも無くまっすぐ突っ込んだ。
「はあああ!」
『ふっ!』
全力ダッシュからの打ち降ろしを、左手のバックラーで防ぐと、次の瞬間には無防備の顔面に手刀が迫っていた。
「くっ!」
それを首をそらすことで避けつつ、翅を広げ、空中へと距離を取った。…が、相手が一向に追ってこない。
「…何よ、あなた飛べないの? なら空中戦闘(エアレイド)なんて元からムリじゃない」
そのセリフに、相手は顔に浮かべた笑みを崩さず、
『あ~、確かに翅がないから、空中を自在に飛ぶのはムリですね。でも………
「!?」
そう言ってのけ、それと同時に、地面にいたはずの相手が目の前に迫っていた。
「ひゃあ!?」
少しばかり情けない声を出しながら旋回してそれを避けると、どうやら相手は十メートル以上の高さを一気にジャンプしたらしく、徐々に落下に移っていた。
(とった!)
ジャンプしか出来ないのなら、空中で攻撃を避けるのは不可能だろうと、右後ろから長刀を振りかぶる。…が、今度は相手が一瞬にして消えた。
「え?!」
「リーファちゃん、後ろ!!」
「!!!」
下から見ていたレコンの声に、すぐさま振り返ると、視界一杯に拳が迫っていた。やられる!
「………?」
思わず瞑っていた目を開くと、拳は顔に当たるスレスレで止まっており、相手は私の長刀を左手で抑え、足を引っ掛けてバランスを取っていた。
『…僕の勝ちですね』
「…何よ、まだ勝負は……」
『あそこで寸止めしなければどうなっていたか、貴女が一番分かってるでしょう?』
「……!」
そう言ってソイツは絡めていた手足を解くと、地面へと降りていった。私もそれを追う。
「……私の負け、ね」
『それでは、早速ですけど、サクヤ様を紹介していただけますか』
「……」
確かにそれが約束だし、紹介するのはやぶさかではない。もっとも約束自体は私が勝手に言い出したことなので、どうしようかとも思っていると、
「その必要はないぞ、リーファ」
件のシルフ族の領主サクヤが、人ごみの中から姿を現した。
「サクヤッ!?」
「シルフの中でも実力者のリーファを退けるとは中々だな、≪幽霊拳士(ドッペルゲンガー)≫」
『いえいえ、それほどでもありません。今回は意表を突けただけですから』
そう言って、彼は握りしめていた拳を開き、サクヤの前に差し出した。
『改めまして、僕が≪ニブルヘイムの幽霊拳士≫です。今回はシルフ族の領主サクヤ様に、お願いがあって来ました』
「サクヤでいいよ。様付けなどされては、どうにもむずがゆい」
そう返して、サクヤはソイツの右手を握り返した。
「それで、今回ここを訪れたのは、例のイベントかい?」
『はい。まず―――』
◇ ◇ ◇
「―――で、詳しい伝言と共に、一枚の絵を置いていって、そいつは
「蹄? そっちはわからないけど……やっぱりアイツも、世界樹にいるんだな」
そう呟いた彼の横顔は、どこか嬉しそうだった。
「絵についても見せてあげたかったけど、アレについては重要なイベントの起点とみなされてて、領主の執務室に保管してあるんだ。だから部外者には、おいそれと見せられないの。ごめんね」
「…いや、いいよ。今の話で、大分確信も持てたし。それよりアルンに行くための洞窟って言うのは、後どれくらいなんだ?」
「うん、≪ルグルー回廊≫ね。それなら目の前の山の中腹だよ」
「よし! 急ごう!」
そこで話を終え、私達は目前の山脈へと全速力で駆け抜けた。
……その後ろに迫る、赤い瞳のコウモリに気づけないまま。
SIDE OUT
連続更新第一話終了!
さて今回のレイジVSリーファ。何でレイジに空中戦闘できるかは……SAO特有のシステムの応用です。原作小説読んでる人はわかるかも……ちなみにレイジの手足のバンテージは、SAOクリア時に手足が消し飛んだせいです。
そして蹄の音は……ROやってる人なら、多分わかるネタです! DOPと言えば、コレでしょう! ちょっとした必要があって、導入しました。まあ、コレがいないとこの先がねえ……