ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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 さて、恒例の土曜更新。

 今回は各領主との交渉が主になります。戦闘を期待しておられた方、もう少しだけお待ち下さい。

 そして! 現時点で、全速力で『阿修羅』のストックと、『闇の剣と星の剣』の次話を執筆中です! 予定としては、本日の19時か20時に『闇の剣と星の剣』の次の話を投稿したいと思います!!



006 取引と修羅場と

「お前、やっぱり二ヶ月で性格悪くなってるぞ……」

 

 そう口にするのは、先ほどのシルフ、ケットシー、サラマンダーとの会談を目にしていたキリトだ。そんなに言うほどかな?

 

『何で? 少なくとも、報酬や依頼内容には、嘘は含まれてないよ?』

 

「詳しい内容を話してないってだけで、ほとんど確信犯じゃないか……」

 

 そう言ってキリトはあからさまに肩を落とした。別に問題ないだろう?

 

 

「何をどうしたら、『SAO未帰還者の救出(・・・・・・・・・・)』に、ALOプレイヤーを巻き込もうなんて思いつくんだよ…」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

SIDE:キリト

 

「『妖精王オベイロン』の討伐(・・)、だと……?」

 

 レイジが言った言葉に、全員が驚愕していた。…確か、オベイロンはこの世界で飛行制限がない種族『アルフ』への転生を司る存在、だったか?

 

『……はい。皆さんには、全ての妖精を欺いてきたあの男を倒して欲しいのです』

 

「ま、まて! 欺いてきたというのは、どういうことだ?!」

 

 その言葉に慌てたのは、シルフ領主のサクヤだ。今回の同盟も、もともとは世界樹の攻略を見据えたもので、オベイロンへの謁見が目的だったと聞く。…慌てるのは、当然か。

 

『皆さんは、奴についてどの程度知っていますか?』

 

 その言葉に答えたのは、ケットシーの領主、アリシャ・ルーだ。

 

「ンー、確かカミサマみたいな存在だよネー? 謁見に来た種族を『アルフ』に転生させてくれる―――」

 

 

『それが、『嘘』なのです』

 

 

 そのレイジの断言に、一同は静まり返った。

 

「……嘘、だと……?」

 

『ええ、そもそも、オベイロンの奴には、他の種族を『アルフ』へと転生させることなど、『出来ない』のです』

 

「なっ!!?」

 

 これには全員が驚いた。それでは、グランドクエストの前提条件自体が、成り立たなくなる。

 

『『アルフ』と呼ばれる種族は…この妖精世界において最上位の存在です。そして、今では余りに少なくなってしまった』

 

 ……恐らく語られているのは、このクエストを設定したときに作り上げた、≪バックグラウンド・ストーリー≫だろう。―――もっともアイツのことだから、須郷が仕掛けた設定だの、現実の状況だのをふんだんに織り交ぜているようだが。

 

 

『今現在―――『最後のアルフ』は、かつてアルフの王女であった彼女、『ティターニア』と、その父王の地位を簒奪した、『オベイロン』の二人だけなのです。そして奴は彼女に婚姻を迫ることで、名実ともにこの世界の全てを支配しようと目論んでいます』

 

 

 ……これも、現実の状況、だよな。よくこんなでっち上げが出来るもんだ。

 

「では、世界樹の上に、アルフ族が暮らす空中都市があるというのは――」

 

『そんな都市は、存在しません。オベイロンが王位を簒奪する際に作り上げた、更地ならありますが…』

 

 その発言にまた、一同の間に沈黙が下りた。やはり皆、世界樹上にあると聞く、まだ見ぬ都市に心惹かれていたのだろう。

 

 

「―――少し、待ってもらえるか」

 

 

 そう言って沈黙を破ったのは、サラマンダーの将軍、ユージーンだった。

 

「貴様の言い分は分かった…しかし、我々にはオベイロンが言い続けたことと、お前達が言っている事と、どちらが正しいのか判断することは出来ない。その上で―――よりにもよって、この世界の『神』とも呼ばれるオベイロンに刃を向けろと言うのか?」

 

 …確かにその通りだ。俺はともかく、ただの一プレイヤーに過ぎない彼らには、判断するための材料が足りなさすぎる。

 

『全く持ってその通りですね。では――――取引しませんか、ユージーン将軍?』

 

 ……ALO最強のプレイヤーに、こう言ってのける俺の友人は、やっぱり二ヶ月前よりも腹黒になってる気がした。

 

「取引だと…?」

 

『ええ、今回のクエスト、僕の提案としては、シルフ・ケットシー・サラマンダーの各領地から2パーティー、14名のプレイヤーを出してもらい、協力して討伐に挑むつもりでした』

 

「フム……その程度ならば、此方としてもすぐにも準備することは可能だ。だが、それを出すにも、取引材料が何なのか―――」

 

『出していただけるのならば、世界樹直下の『天蓋の門』が開き、中に入れた時点で、先ほど話した報酬をお渡ししましょう』

 

「なっ………?!」

 

 これには、俺も絶句した。それはつまり中にさえ入れれば、オベイロンの討伐自体は手伝わなくても良いと言ったに等しい。――そこから裏切り、オベイロンの側に付く(・・・・・・・・・・)可能性すらあるのに、だ。

 

「戦力を、求めていたのではないのか……?」

 

『確かに求めていましたが、それが必要となるのは、あのドーム状のゲートでガーディアンを突破するためです。色々と因縁の相手ですので、オベイロンは自分達の手でやりたいんですよ』

 

「俺達がオベイロンの側に付いたとしたら、どうするのだ……」

 

『……どちらに付くのかは、世界樹の上にたどり着いた時に、各々が決めてください。そこで此方に刃を向けたとしても、僕は一切恨み言は言いません』

 

 このレイジの言葉に、場に沈黙が下りた。俺自身、今は何も話すべきではないと感じていた。

 

 

「――――分かった、俺の負けだ」

 

 

 場の静寂を破ったのは、またもやユージーン将軍だった。

 

「俺から兄者に今回の共同クエストについて進言し、すぐにも精鋭を揃えよう……しかし、大規模(レイド)パーティーは本来7パーティーだぞ? 3種族から2パーティーずつで6としても、最後のパーティーはどうするのだ?」

 

 その言葉に―――レイジはニヤリといった笑みを浮かべると、

 

 

『いるじゃないですか……貴方を倒した『二刀流の黒の剣士』と――幽霊拳士(ドッペルゲンガー)が』

 

 

SIDE OUT

 

 ◇ ◇ ◇

 

 ――そう、今回のクエストの目的は世界樹上部に陣取る妖精王オベイロンこと須郷の討伐であり、その過程でSAOプレイヤーをログアウトさせるための、≪GMコンソール≫にも接触の機会がある。二ヶ月かけてログアウト用のカードキーを作成したはいいが、今まではどうやってもGMコンソールまで近付けず、手をこまねいているしかなかった。

 

 そこで考えたのが、『力押しでの正面突破』であり、どうせならこのALOで組めるだけの最大戦力である、大規模連結(レイド)パーティーを巻き込めないかと考えた。そしてこの世界のプログラムやシステムについて調査を進めるうちに、この世界には≪滞空飛行制限≫なるものが存在し、現在GM権限により『ロック解除不可能(・・・・・・・・)』になっていると判明したのだ。

 

「GMによって意図的に(・・・・)解除不可能に設定されている、その≪滞空飛行制限≫を解除するチートアイテムを作り上げ、それをエサにALOプレイヤーを巻き込む……ゲームプログラムに、勝手に介入して良かったのか?」

 

『問題ないよ。レクトCEOの令嬢のアスナさんが、現実に戻ったらそのチートアイテムについても正式なものと認定するし、今回のイベントでALOのプレイヤーが不当なアカウント停止(BAN)を受けないように働きかけると確約してくれたからね。おかげで思い切りムチャもできた』

 

 その上、決行は明日の定期メンテナンス終了の二時間後の午後五時、央都アルンでの集合で、決行まで各自『極秘事項』としてもらった。定期メンテナンスのときに、サーバーやプレイヤーなどのゲームデータのバックアップが入るから、最悪メンテナンス前までデータを『巻き戻し』することも考えている。失敗したとしても、ALOを楽しむ彼らに被害は及ばせないつもりだ。最悪保険(・・)もかけてあるし。

 

「ヲイヲイ…」

 

 キリトはあきれ返った顔をしているが、結構大変なんだよ? 特に、須郷を現実で逮捕させた()の根回しとか。この辺りは、ある程度のわがままを通せる可能性があるアスナさんに任せたが。

 

『ちなみに今回の決行日は、須郷の出張中に設定してある。奴が気づかなければ、そもそもオベイロンとの戦闘自体なくなるね』

 

「ヲイ……その場合、ALOの皆はどうするんだ? 戦闘もなしに納得するのか……?」

 

『大丈夫。須郷の手下の違法研究者が、何人か常駐してるから。最悪、オベイロンの代わりにラスボス役をやってもらう』

 

「………悪いのは向こうだけど、流石にそこまででっち上げで罪を着せられると可哀想なんだが…」

 

 こういうのはね、キリト。『因果応報』っていうんだよ?

 

「――しかし、その作戦のおかげで、ALO最大種族のサラマンダーと、そのライバルであるシルフ、さらにはケットシーからも領主自ら率いる討伐パーティーが各14名ずつ参加か…。そこに俺達が加わることになるから、規模としてはまさに攻略組のフロアボス攻略並みだな」

 

『まあ今回は相手側もゲートを守るガーディアンを大量に備えてるみたいだし、ボス攻略というより大規模レイド同士のPvP戦と考えた方がいいかもね。こっちは向こうのGMコンソールにタッチダウンできれば勝ちという条件戦だけどね』

 

 ちなみに、今回のシルフ・ウンディーネ同盟の会談場所をサラマンダーに漏らしたシルフの軍事面の責任者、シグルドは先ほど領地を追放され、今回のクエストは領主のサクヤ様が直接指揮することになった。裏切りを働くような人間は、信用が置けないと言う理由だ。

 

「向こうは、こっちを一人残らず全滅させれば勝利か……その場合、俺達は――」

 

『ストップ』

 

 そこでキリトの言葉をさえぎる。その先は、絶対に言わせちゃいけない。

 

『……キリト、何事も最悪を想定するのは思考回路としてはいいけど、そこで思考を停止させちゃいけない。そこで止まった奴から死んでいくって言うのは、あの世界で分かってるはずでしょ?』

 

「――――っ、わかった。悪いな、レイジ。ヒースクリフのときといい、元気付けてもらってばっかりで」

 

『別にいいよ。それより、出来ればアスナさんにも詳しい作戦や状況の補足を――――』

 

 そう言って、二ヶ月番犬役を務めている囚われのお姫様に目を向けると――――

 

 

 そこには、ボス部屋もかくやという、異空間が発生していた。

 

 

 何と言えばいいのか、自分の真下の鳥篭から画面奥のキリトを判別し、その隣に佇む緑がかった金髪の美少女剣士を視界に収めた時から、そのフォーカスはロックオンされ、そこから微動だにしていない。というか、これはもはや、ただ副団長殿がお得意の刺突(ピアース)属性攻撃をその視線に込めてるだけ――――

 

 

「…………キリト君」

 

「『は、はい!」』

 

 呼ばれてもいないのに、そのやたら底冷えのする声に、思わず返事をしてしまった自分は決して悪くない。一度教会で子供達とふざけて遊んでいたら、サーシャさんとサチの年長者二人組に全く同じ声色で凄まれたことを考えたら、僕の行動は少しもおかしくないはずだ。

 

 ……一応あそこの名義人は僕でも、ヒエラルキーにおいては、下っ端だったのだから。

 

「随分、かわいらしいお嬢さんね? 私が必死で助けを求めている間、こちらのお嬢さんと一体どのくらい遊んでいたの? 妹さんって言うのは、どういうこと? 詳しいOHANASHI、聞かせてくれるかな?」

 

 ――――ヤバイ。ここにいたら、確実に巻き込まれる。かといって、逃げ場もない。これが伝説のネット用語の一つ、『魔王のOHANASHI』か……!

 

「――レイジ君」

 

『ッ?!』

 

 不意に矛先が、自分に向いた。ああ、もう! 須郷は、彼女を妻にする企みをしていたけど、どこが良かったんだ?! この人と一緒になったら、死に様は間違いなく、重圧(プレッシャー)による胃穿孔か何かだ! 少なくとも僕は、この重圧の中で夫婦生活を過ごすなんて考えられない!!

 

「話が終わるまで、にげないでね?」

 

『イエス・ユア・マジェスティ(仰せのままに、陛下)!!』

 

 思わず敬礼してしまった僕は、絶対に悪くない。

 




 と、いうわけで第六話でした~。

 ちなみに須郷が出張中というのは、原作でもナメクジ研究者が言っていたことです。そのため取り入れてみました。このためレイジの考える最良は、『須郷に気づかれず脱出』です。まあ、そう上手くはいきませんが…

 『定期メンテナンス』と『データ巻き戻り』……作者はコレのせいで、モンク転職のためのアイテムと転職を全部消されたことがあります。だからこそ思いついたのですが、あの時はマジで泣き崩れました。

 これによって正式に決まったレイドパーティー!

 …ですが、皆さん。各領地のパーティーと違い、キリトパーティーはリーファとレコン、それにレイジを入れても上限の七人には足りませんね……?

 ここで問題です。『キリトパーティーの残りの三人』は誰でしょう?

 まあ、全員そろうのに若干のタイムラグはありますが、かなり意外な人物を入れています。特に一人は、絶対に予測できない人物です。皆さん、お考えの程を…
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