ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
2013年初更新行きます!今回は経過回なので、原作組には、確認だけになるかも……
そして!何とか年末年始でストックも溜めれたので、作者のもう一つの作品、『魔法先生ネギま!~闇の剣と星の剣』を週一更新へと移行します!この最新話と同じ時間に予約投稿します。よろしければご覧下さい♪
『キリト……今更なんだけどさ……』
「……何だよ? レイジ…」
『お祓い、してもらった方がいいんじゃない?』
「ほっとけ!」
話は、前回の続きから。あの後キリトの必死の弁明(いいわけ)により、彼女は本当に現実の妹であることが判明したわけだが、とにかくさらに詳しい話を、ということでキリトが近場に見つけた村に立ち寄ったのだが……
『実装されたばかりの、高難度ダンジョンに引きずり込むMobにいきなり出会うとか……』
「うぐ……」
『さらに実の妹を、巨大ミミズでヌルヌルでネチャネチャな目にあわせた挙句、外に出たとたんに
「そうね……一度お兄ちゃんは『開き』になるべきよね?」
「ス、スグ! わざとじゃない! わざとじゃないぞ!!」
キリトは外に出る際、先に外に出ていたリーファの胸に突っ込んだ上…起き上がる時にしっかり胸を揉んで行った。……普通にハラスメント行為だよなあ……
「まったく、もう! キリト君って、誰にでもそういうことするんだね!」
「い、いや! アスナ? あれは事故で……」
「――お兄ちゃん? もしかして、前にもこんなこと、シタノカナ?」
「ヒィッ……!」
――何と言うか、これが本当にSAOでトップ剣士だった≪黒の剣士≫だろうか? 以前に知り合った、『竜使い』シリカとかは尊敬の目でキリトの話をしていたが、今の姿を見せてやりたい気分だ。
『まあ、ともかく―――今はこの≪ヨツンヘイム≫から出る方法だね?』
「…そうだね。ここは、さっきお兄ちゃんが互角に戦ったユージーン将軍を、簡単にねじ伏せちゃう邪神がうようよいるところだし……」
「マジか!?」
「ちなみにパパ、私の索敵範囲内には、大型の邪神が少なくとも十数匹はいます…」
―――そう、ここはALOでもつい一月前に実装されたばかりの最高難度のフィールド、氷の地下世界≪ヨツンヘイム≫。通常ここのMobは少なくとも
「そんなに強いMobが出るんじゃ、二人だけでの脱出は無理そうね? リーファちゃん」
「そ、そうですね……」
そこで会話が途切れ、気まずい沈黙が流れた。彼女には先ほど、今までの経緯を説明し、協力を申し込んでいる。今も昏睡状態のSAOプレイヤーを救うためだと聞くと、二年の間キリトの帰りを待ち続けた彼女も協力してくれることになったのだが……
(その一方、キリトの恋人だったアスナさんには複雑な想いがある―――って、ところか)
いろいろ変質しているとは言え、元は人の感情を読み取ることに長けたMHCP。これくらいは画面越しでも、一目瞭然だった。
とはいえ、これに対処する方法がほとんど無いのも事実だった。まさかキリトとアスナさんに『現実で付き合うな』とは言えないし――
(その上、彼女自身、自分の気持ちを必死で押さえ込もうとして、無理をしているような気がする…こういうのをほうっておけないんだよねえ……)
MHCPの本能としても、『人間』としても、放っては置けなかった。なのに、解決方法が無い……
(ん~~~、どうすれば―――
「ぼぼぼるううううっ!」「ひゅるるるるるぅっ!」
「「「『……ん?」」」』
画面越しに、大きな足音とともに何とも奇妙な鳴き声が聞こえてきた。間違いなく――ヨツンヘイムの邪神だろう。
『マズイッ! Mobに見つかったの?! 今すぐそこを離れ―――』
「いえ、違います、レイジ!」
僕の指示は、すぐ後に続いたユイ姉の言葉にさえぎられた。
「接近中の邪神二体は、お互いを攻撃し合っています!!」
「「「『なっ!?」」」』
…通常Mob同士が、攻撃しあうなどあり得ない。あるとすれば、魔法やスキルで片方がプレイヤーの味方についている場合だが――
「お兄ちゃん、とにかく、様子見に行こ」
「キリト君、気をつけてね……」
「ああ、分かったよ、アスナ……」
アスナさんの言葉に、キリトは頷いたが、その横でリーファさんが、ほんの少し顔を苦しげに歪めていることには気づいていなかった。……シリカやリズさんからキリトの話を聞いたときも思ったけど、何でこう鈍感なんだろう?
ともかく今必要なのは現状の確認だと、問題を棚上げにし頭を切り替えた。そしてそちらに向かう二人の後を追うように、空中に浮かんだ『窓』も追う。
「ぼるうううっ!」
目の前には、すさまじい巨体が屹立していた。SAOの時のフロアボスと比べても遜色ない。四腕三面のかろうじて人型らしき邪神が、象と
「ど、どういうこと……?」
「プレイヤーも見当たらない……何でこんな『同士討ち』が……?」
周りにプレイヤーがいないのでは、そもそもモンスター同士で殺し合うなど通常考えられない。後考えられるのは、コレ自体が、何らかのイベントの場合だけだが……
そうこうするうちに、象水母は見る見る体力を減らしていく。巨人の剣で斬りつけられ、その体液が周りに飛び散る様は、余りにも痛々しかった。…だから、次の言葉がかかるのも必然だったのかもしれない。
「「……助けよ、キリト君」」
窓の向こう側にいる金髪のシルフと、鳥かごの中のお姫サマから、全く同じ単語で、勇者サマにお達しが下った。
「ど、どっちを」
「「もちろん、苛められているほうよ」」
…これまたシンクロ。なにか、息がぴったりだこの二人。
(でもどうするかな……)
もちろん、自分も出来れば助けてやりたい。けれどここの邪神は一体一体がレイドパーティー並みの強さで、いくらキリトが規格外とはいえ、巨人に挑めば一蹴されるのは目に見えている。かといって象水母を上手く勝たせる方法も―――水母?
『――ユイ姉、僕に考えがある。この近くに、大きな水場は?』
「本当ですか、レイジ! 北に二百メートルほど行ったところに、氷結した湖があります!」
『そう…分かった、じゃあ二人とも死ぬ気で頑張ってね』
「ってオイ、何やらせる気だよ?」
他に名案も浮かばないし、やはり方法は一つだろう。
『…………巨人にちょっかい出して、その湖まで死に物狂いで走れ』
「「「……は?」」」
◇ ◇ ◇
――結果として、僕の出した作戦が功を奏した。象水母は水棲型邪神だったようで、キリトとリーファが巨人を氷結湖まで引っ張って行ったおかげで、水中戦で巨人はあえなく象水母に敗北した。そこで勝利した象水母はどうしたかと言うと、
「おーい、トンキー。起きてよ~」
どういうわけかキリトとリーファを背中に乗せて、世界樹の真下まで運んだ挙句、中心の大穴の縁で眠りについている。ちなみに象水母には、キリトとリーファがトンキーという名前をつけた。……僕の出した、『クラぞう』という名前は却下された。
『…やはりコレは、何らかのイベントとみなすべきか』
「う~ん、でももしかしたら、さっきの戦いの傷を癒してるのかもしれないわよ? ねえ、リーファちゃん」
「そうですね。でも、これからどうすればいいか分からないから、できれば早めに起きて欲しいです」
「こればっかりは、トンキーに任せるしかないか~」
……ちなみにこの二人、先ほどトンキーを助けてほしいと頼んだ辺りから、幾分固さの取れた感じだ。このままいい方向に転がって欲しいと切に思う。
―――そして、そんなところに、水妖精(ウンディーネ)の邪神狩りパーティーが到着した。
◇ ◇ ◇
「それにしても、惜しかったよなー。≪聖剣エクスキャリバー≫」
「もー、まだ言ってる。キリト君は、いっつもそうなんだから」
「お兄ちゃんって、SAOでもずーっとこうなんですか?」
「そうだよー。この間なんか――」
「ア、アスナ! ストップ、ストップ!!」
現在二人は、ヨツンヘイムを抜け、地上への脱出路と考えられる階段を登っている。あの後……ウンディーネだけで構成された邪神狩りのパーティーが、トンキーを狩ろうとやって来てキリト達に警告した。キリトもリーファも何とか思いとどまってくれないかと食い下がっては見たが、ただMob狩りをしているだけのパーティーがそんな事を聞き入れるはずもない。仕方ないので、
『――――ヨツンヘイムで初めて発見された、≪イベントクエスト≫に興味ありません?』
通常の依頼型クエストでもそうだが、このALOに取り入れられているイベントクエストにも、たいていは『報酬』が存在する。もっとも選択肢を間違えると簡単に『
結局≪幽霊拳士≫の懇願であったことと、その報酬がヨツンヘイム最難関の氷柱ダンジョンへの入場だったこともあって、彼らはトンキーを狩ることなく引き下がってくれた。
そのせいで、クエストの詳細とフラグとなる『象水母救出』も教えてしまったので、≪聖剣エクスキャリバー≫は、ウンディーネの誰かが持つことになるかも知れないが。
『さ、切り替えて、切り替えて。地上に戻ったら、今日の午後五時には討伐クエスト開始なんだから』
「……そうだな。アスナも他の皆も、俺が必ず助けるよ」
「…キリト君」
「あー、もー、今は甘い空気禁止ー! 全部助けてからでしょ、お兄ちゃん!!」
そんなことを言い合いながら、階段の奥、地上への光を目指した。
というわけで、トンキー登場回でした。とはいえ、この辺りほとんど原作と同じなので、特に書くこともないという……キリトのラッキースケベくらいか?
あと、既に兄だとバレてるせいで発生した、アスナとの微妙な距離感。この辺り、この描写が作者の限界です。
さて、次はアニメでも原作でも存在したお見舞いイベントです。そして……(ニヤリ)