ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
今回キリが悪くなりそうだったので、少し短いです。但し……フラグは大量にあります♪
SIDE:リーファ
「――――彼女が『攻略組』ギルド≪血盟騎士団≫の副団長、≪閃光≫のアスナだ。アスナ、リーファこと妹の直葉だよ」
「初めまして、アスナさん」
今私達は、先ほどまでゲーム内で一緒だった、アスナさんの病室にいる。本来お兄ちゃんはすぐにでもアスナさんを助けに行きたかっただろうが、ALOは今日の午後三時まで定期メンテナンスが入ってしまった。それまではどうしようもない。
「それにしても……まさかALOのGMが、この人を『監禁』してるだなんて……。ねえ、お兄ちゃん。現実で何とかできないのかな?」
私が真っ先に考えたのはそれだった。SAOの未帰還者300人を出すだけなら現実からどうにかできるんじゃないだろうか? だけどその返答は芳しくなかった。
「俺も考えたんだけどな……俺たちの手元に証拠が無いし、仮にあったとしても、最悪須郷がアスナを二度と現実に戻れなくする事だってあると思う。俺は、それが怖い」
「……そう、だね」
『SAO事件』の時ですら、政府の専門機関が出張ったのに、誰一人助けることが出来なかった。ナーヴギアに囚われたら、外部からの干渉はほぼ不可能という何よりの証拠だ。
「じゃあ、負けられないね。私も現実でアスナさんに会ってみたいもん」
私のそんな言葉にお兄ちゃんは、
「……ああ、そうだな」
と呟き、とても深い想いを乗せた瞳でベッドの中のアスナさんを見つめていた。
――――その、深い瞳に秘められた、想いを感じることが、今の私には、辛かったんだ。
◇ ◇ ◇
「にしても、レイジ君って言うんだね。あのヒト」
「ああ。『攻略組』ギルド≪風林火山≫で壁戦士(タンク)リーダーをやってて、二つ名は≪金剛≫、もしくは≪阿修羅≫。俺もアスナも何度もその盾で守ってもらったよ」
お兄ちゃんの知り合いで、元々はSAOの最前線で戦う『攻略組』。私が勝てないほどの強さなのも納得だ。
「……でも、翅もないのに、どうやって空中戦闘(エアレイド)してるんだろうね?」
正直、ソコだけが疑問だった。地上戦なら確かに私は勝てないかも知れないが、私が負けたのは空中戦。しかも翅も持たない人間相手にだ。
「んー、一つだけ心当たりはあるけどな」
「え、何?! 教えてよ、お兄ちゃん!」
流石に一年のALO歴で、あそこまで見事に出し抜かれたのは初めてで、ぜひとも秘密が知りたい! そう思ってお兄ちゃんに詰め寄っていると…
「結城さん、検温のお時間です」
不意に看護師の方が入ってきた。どうやら長居しすぎたようだ。
「あら、お見舞いの方ですか? ただいまから検温を行いますので――」
「あ、スイマセン。それなら、これで失礼します」
二人して、椅子にかけてあった上着を取り上げる。流石に、寝ている患者さんへの措置を、つぶさに覗いていく趣味は無い。
「ご兄弟で、お見舞いですか? 仲がよろしくていいですね」
「あ、ハイ……」
「この患者さんもSAOで眠り続けているとはいえ、そうやってお見舞いに来てくれる人がいるのは、嬉しいと思いますよ? 中にはお見舞いに来てくれる方が、ほとんどいない方もいらっしゃいますから」
「ハ、ハア……それじゃ失礼します」
私とお兄ちゃんはその看護師の言葉に生返事で答え、その場を後にした。
「ハア、これで次来るまでは会えないか……」
「もー、そんな顔しない! 次はちゃんと起きてるアスナさんに会うんでしょ?」
精一杯、虚勢を張る。カラ元気だって自分でも分かってるけど、私にはそれしか出来ない。
「……ああ、そうだな」
そんなほんの少しだけ希望を抱いたようなお兄ちゃんの答えに、私はほんの少し胸が痛んだ。
SIDE OUT
SIDE:須郷
「――どうかしたのかね?」
出張中の僕の元に、ALOで『謎のバグ』に対処していた研究員の一人から連絡が入った。『茨』の形をしたソレは、どういうわけか通常のエラー検出プログラムも、ウイルス除去システムも反応せず、今に至るまで解除に成功したのは一部だけだ。
(出張中の僕の元にわざわざ連絡するくらいなら、その時間を茨の解析にあてればいいものを……グズが)
思わずそんな思いを抱く。あの茨さえなければ今頃僕は、人間の記憶と思考の完全制御に成功し、名実ともにこの世界の神になれた。あの明日奈という娘も、今頃は僕に従順な花嫁になっていたものを……!
「――何? ALOプレイヤーからの、『領主による不当な追放処分の訴え』? ……ふん、そんなものいつもどおり『プレイヤー間の個人的問題には、GMは介入しません』とでも―――」
だが次に発せられた言葉に、僕の目は大きく見開かれた。
「≪妖精王オベイロン≫への反逆の情報を掴んだ、だと……?」
―――面白い。真っ先に思ったのはソレだった。オベイロンはあの世界での絶対者、いわば≪神≫に等しき存在だ。それに逆らおうなどと、地べたを低く飛ぶことしか出来ない羽虫に等しいプレイヤーが……。
「分かった、すぐに戻ろう。そのプレイヤーは……そうだな、≪央都アルン≫の指定の場所に待たせておけ」
そこで電話を切り、出張を早めに切り上げ、帰路に着くこととした。
「――『シグルド』君か。仲良くなれそうだねぇ。ククク……」
SIDE OUT
(さて、結城さんへの措置は終了。次はと……)
和人と直葉が去った病院で、先ほどの看護師は歩を進めていた。…とある謎めいた患者の下へと。
(『生きているはずの無い患者』、か……)
元々はその患者も、先ほどの彼女と同じSAO被害者で、当初は政府関係者がモニタリングしていた。だが、そこでおかしな事態が発生したのだ。
(SAO内で『死んだ』にも関わらず、肉体は生き続け、傍目にはただの昏睡……どういうことなのかしら?)
政府関係者は躍起になって原因を突き止めようとしたが、結局その原因は不明。ただのバグではないか、とまで言われた。
「――――――
病院で最も安い一般病棟の個室の中、ベッドの中で、一人の少年が眠り続けていた――――
というわけで、第二回投稿でした。
ここまで、一切セリフも描写もなかった、須郷が登場。それに伴い、出張からの早期帰還フラグが立ちました。流石に、今まで名前しか出てこなかったあの人物がフラグを立てるとは、読者の皆さんも予想外だったのではないでしょうか☆
そして……最後に出てきた謎の患者。ここで『ゴール』を示しておくのもアリかと思いまして♪
次回はいよいよ決戦の準備! そして、『キリトパーティー』五人目のメンバーが明らかに! まあ、このヒトは予想つくかもだけど。