ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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ALO第10話、グランドクエスト開始です!

今回以前に予告していたオリジナルキャラの二人目が出てきます。名前だけは原作にも出てたんだけどねえ……



010 グランドクエスト

「皆さん、本日は≪討伐クエスト≫にお集まり頂き、ありがとうございます!」

 

「「「「………」」」」

 

「私は、…えー、今回参加させていただきます、≪アルフ≫の≪ティターニア≫と申します。皆さんどうぞよろしく――――」

 

「アー、その前にちょっと質問してイイカナ?」

 

「どうぞ、えっと―――」

 

「ケットシー領主のアリシャ・ルーだヨー。それはそれとして…………なンで幽霊君は、ボロボロの姿になってるノ?」

 

 討伐クエスト、集合場所の広場。ケットシー・シルフ・サラマンダーの三種族、計6パーティーが集まっている場所で、全員が全員今回のクエストを持ちかけた≪幽霊拳士≫の惨状に目を覆った。纏っていたローブはあちこち擦り切れ、まるで誰かに私刑(リンチ)にでも遭ったような――

 

「気にしないで下さい」

 

「いや、デモ――」

 

「気にしないで下さい」

 

「…………」

 

 有無を言わせぬ迫力。そんな雰囲気がにじみ出る言葉だった。

 

「――まあ、気にするなというんだ。気にせずクエストの詳細を確認すべきではないか?」

 

 場の雰囲気を変えるため発言したのは、サラマンダーの領主、モーティマー。大柄で骨太な印象の強いサラマンダーとしては線が細く、その身体を、明らかにレアリティが高いと分かる、赤地に金の刺繍が施されたマントで包んだ、魔法使い(メイジ)タイプの男だった。

 

「ありがとうございます。では詳細を――――」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 今回のクエストは、単純に言えば門を守る守護騎士(ガーディアン)を突破するというもの。ただしそのPOP数は尋常ではなく、全体で見ればHP無限のボスを相手取っているに等しい。もっとも全体を相手にする必要は無く、一点突破で門に辿り着けば良いということにもなる。

 

「そこで俺たちが先陣切って突撃、領主合同パーティーはその援護っていう作戦が成り立つわけだな、レイジ」

 

『そうだね、キリト。門を開けられるのはソレ専用のコードを作成した僕か、さっきコピーしてたユイ姉だけだから』

 

 ――このクエスト、一見すると突破力のあるパーティーならクリア可能に見えるが、実は門自体に「管理者権限を持たないと開かない」というとんでもない鍵がかかっている。つまりプレイヤーにはクリア不可能のイベントというわけだ。

 

「そうなると、ユイちゃんをくっつけたキリト君か、レイジ君を真っ先に突破させなきゃいけないってことね?」

 

 そう声をかけたのは、僕のテイムモンスターである『メア』に跨った、アスナさん。色々調べて分かったが、アスナさんの背中の翅は、須郷の手によって飛べないように細工をされていた。ブロックを解こうにも時間がかかるので、今回はメアに跨って空中戦闘(エアレイド)をしてもらうというわけだ。

 

「まっかせといて! 必ずお兄ちゃんもレイジ君もガーディアンを突破させてみせるから!!」

 

「り、リーファちゃ~~ん。一体なにがどうなってるの~~?」

 

 最後に答えたのはキリトの妹のリーファと、その友人のレコン。しかしレコンは、敵対種族のはずのサラマンダーまで集まっている今の現状についていけていない。…当たり前だが。

 

「……それでは」

 

 アスナさんのその言葉とともに、全員の視線が、前へと移る。そこに佇むのは、世界樹の根元に設えられた、白亜の扉。

 

「――戦闘、開始!」

 

SIDE:リーファ

 

 それはまさに、「雲霞の如く」という形容表現がぴったり来るような大軍だった。私達が天蓋に門を備えたドーム状の空間に入り込むと、余りにも圧倒的な数の守護騎士があちこちから湧出(ポップ)したのだ。普通に考えればしり込みするような数。

 

 そんな中を―――≪閃光≫と≪漆黒≫は駆け巡った。

 

「セアアアッ!」

 

 短い気勢とともに、ほとんど視認できないような速さで、守護騎士の関節や喉に突き刺さる光の刺突。自分の兄の剣速にも驚いたが、単純な速度ならば、明らかに彼女が上だ。その上その攻撃は正確そのもの。店売り品で、そんなにダメージを期待できない細剣(レイピア)だというのに、確実に装甲の弱い場所を射抜き、破壊していく。

 

 それでも数が多く、囲まれるのは否めないが、そうした状況を、彼女が乗った天馬は打ち砕く。

 

「ヒヒィィィンッ!」

 

 メアと名づけられたその天馬の嘶きとともに、周りに黒い霧が立ち込め、そこから黒い光弾が発射される。

 それこそが、レアモンスター『ナイトメア』の特性。インプ領に棲むモンスターらしく闇属性の魔法に精通しており、その上インプ同様洞窟やダンジョンでも一定時間飛行が可能というとんでもない性質を秘めている。そのためケットシーにしてみれば、喉から手が出るほど欲しいモンスターである。だが、いかんせん生息域が限定的で、しかもマスター級のテイマーで無ければ調教(テイム)することがほぼ不可能であるため、先ほどの顔合わせでは、ケットシー全員が羨望の眼差しを送っていた。

 

 メアの出した光弾は、周りに寄ってきた守護騎士を一掃し、その背に跨ったアスナさんの細剣(レイピア)は、正確にその獲物を射抜く。その戦闘は、とてもALOでの初戦闘だとは感じさせないものだ。

 

 そしてその横を―――黒白の剣持つ、≪二刀流の黒の剣士≫がなぎ払った。

 

「オ……アアアアアアッ!!」

 

 その手に持った大剣が、これまた凄まじい速度で閃いた。その威力もまた凄まじく、あっという間にアスナさんを遠巻きに囲んでいた守護騎士の半分が砕け散った。

 

「アスナ! 焦りは禁物だぞ!」

 

「うん、キリト君!」

 

 その信頼しきった様子に……私はまた、少し胸が痛んだ。

 

 そんな時、視界の隅を―――≪阿修羅≫と呼ばれた拳士が駆け上がった。

 

『ハアアアアッ!』

 

 そんな気合とともに、レイジ君は戦場を縦横無尽に駆け上がっていく。しかも恐ろしいことに――――――空中を(・・・)蹴り飛ばして(・・・・・・)

 

 その秘密は…SAOから彼が唯一持ち込んだソードスキル≪ザンエイ≫。何でも、SAOのソードスキルは、『発動させると空中で静止する』という特性を秘めており、ソレを利用すれば擬似的に空を駆け上がることも可能だとか。それを利用するため、彼は自分の数あるスキルの中から、あれだけを『モンスタースキル』の一種として登録した。その結果が今目の前で行われている。

 

『フウウッ、ラアアアアッ!』

 

 空中で展開される掌打の三連撃、そこからの追撃がさらに四発、渾身の右ストレート、そこから近付き、止めの五連撃……。とんでもないレベルのコンボに、あっという間に固まっていた守護騎士を十体以上消し飛ばした。

 

(すごい……!)

 

 ALOに、格闘型のキャラクターは、極めて少ない。それは当然魔法が存在しているせいで、各種近接武器の使い手が少なくなっているためだ。格闘型はその中でも極端に間合いが狭く、また武器の威力が低いため、精々テイム・モンスターというダメージソースが存在するケットシーか、耐久力が極めて高い土妖精(ノーム)にしか存在しない。こんな大規模(レイド)パーティーで見かけることなどほとんど無い存在だった。

 

 当然、あんな猪突猛進みたいな戦いをすれば、周りの守護騎士の憎悪値(ヘイト)を引き付けることになるが、その攻撃が彼に当たることはない。甲高い金属音を立てて、守護騎士の攻撃は全て、彼の左手の鋼鉄の円形盾(バックラー)に防がれる。店売り品と思しきそれは、敵の再三の攻撃で表面に無数の傷がついているが、それでも壊れることなく主とその後ろの仲間達を守り続ける。

 

 …私はここに来て、ようやく実感が湧いてきた。

 

 ―――正確無比で最速のフェンサー。

 ―――攻撃力特化の二刀流の黒の剣士。

 ―――そして、最前線で仲間を守る盾持ち拳士。

 

 ……この人たちが、あの狂ったデスゲームの中で、真の英雄だったことが。そして、お兄ちゃんがその一人だったことが。そこに、私は…………どうしようも無い距離を感じてしまうのだった。

 

「――――リーファちゃん!」

 

「へ?!」

 

 不意に俯いてしまった私に、レコンが大声で呼びかけた。クエストの真っ只中で考え事なんて、余りにも致命的だ。

 

「ゴ、ゴメン、レコン。少しボーッとしてた」

 

「大丈夫? それより見てよ! 『お義兄さん』達も凄いけど、サクヤさん達も凄いよ!」

 

 ……何か今、妙なイントネーションがあったような。とりあえずスルーして視線を向けると、サクヤ・アリシャ・モーティマーのおよそあり得ない連合軍もまた、とんでもない奮闘振りだった。

 

竜騎士(ドラグーン)隊、ファイアブレス、撃てぇーーーーーーっ!!」

 

 ケットシーの切り札、竜騎士(ドラグーン)隊。十騎もの飛竜を備えるそれは、ALOでかつて見たことが無いほどの威容を誇った。その威容が偽りでは無いと証明するように、竜の(あぎと)から迸った熱線は、あっという間に守護騎士の多くを葬った。

 

「こちらも負けん…! シルフ隊、≪フェンリルストーム≫放て!!」

 

 サクヤの号令とともに、シルフの一団が、エクストラアタックを発動し、その剣から天高く射抜く雷の奔流を放出した。それはドラゴンの炎からかろうじて逃れた守護騎士に向かい、その多くを焼き尽くしていった。

 

 ――そして。

 

「A隊、左翼に展開! B隊、向かって2時の方角の敵集団に突撃。メイジ隊、『空間爆撃』用ー意ッ!」

 

 サラマンダーは、シルフともケットシーとも違った動きを見せていた。自身の領地から出した14のメンバーを細かく分け、時には敵を引き付け、時には引き離し、敵の動きを完全に制御しているようだった。

 

「メイジ隊、放てーーーーッ!!」

 

 その号令とともに、ドラゴンのブレスやシルフのエクストラアタックに勝るとも劣らない数の守護騎士が、『空間爆撃』によって消し飛んだ。

 

(あんな使いづらい魔法で、あそこまで……?!)

 

 『空間爆撃』系統の魔法は、ほとんどの属性魔法に存在する広範囲殲滅魔法の略称だ。確かに大量の敵を殲滅するのにはもってこいの魔法なのだが、いかんせん『座標指定』型の魔法であるため、空中戦闘では使いづらい魔法でもある。地面の上と違って、敵には上下にも逃げ道があるのだから当たり前だ。

 

 だと言うのに今、サラマンダーの領主モーティマーは、細かく分けた隊によって完全に守護騎士の動きを制御し、見事に敵の大量殲滅に成功した。

 

「…さすがと言えるな」

 

 顔を上げると、そこにはいつの間にか、シルフ領主であるサクヤがいた。

 

「サクヤ、さすがって…?」

 

「モーティマーの奴は、冷酷非情なやり口ばかり取り沙汰されるが、領主になる前のアイツは、ALOで類を見ないほどの卓越した軍師だったのだ。特に大規模戦闘では、アイツが指揮をすると、地上戦だろうが空中戦だろうが、「必ず相手が敗北する」とまで言わせたほどの男だ」

 

「……!」

 

「ついた二つ名は――≪神眼の軍師≫。まるで神のように、相手の行く先が見えているように、軍を動かすことからそう呼ばれた……」

 

 ……それが決して偽りでないことは、目の前の光景が証明していた。確かに相手を完全に支配するかのような戦いは、神か悪魔にしか見えない。

 

(いける……!)

 

 この人たちと一緒なら出来る。私はそう確信し、力の限り叫んだ。

 

 

「アスナさん、レイジ君……お兄ちゃん! 行っけーーーーーー!!」

 

 

 その声に、三人が応えた。

 

 

「「「ハァアアアアアアアーーーーッ!!!」」」

 

 

 光速のフェンサーが、二刀流の黒の剣士が、そして盾持つ幽霊拳士(ドッペルゲンガー)が、それぞれの軌跡を引いて、守護騎士の群れを蹂躙していく。それを止めようと群がる守護騎士は、ドラゴンのブレスが、シルフの雷が、サラマンダーの爆撃が、根こそぎ消し飛ばしていく。まるで分厚い雲のようだった守護騎士の群れは、貫かれ、斬り裂かれ、砕かれ、焼かれ……次第に薄くなり、最後には――

 

 

 ――――光が、差した。

 

 

SIDE OUT

 




第10話、終~了~。あとがき、長文になります!

 と言うわけでオリジナルキャラは、サラマンダーの領主、『知』のモーティマーでした。正直このキャラは、サクヤとかから冷酷非情と言われているのに、何故か他の領地と同じく『人気投票』で領主になってる不思議なキャラ(システムはどこも一緒のはずなので)。
 裏工作なんてALOで出来ると思えないし、対抗馬のはずのユージーンにもトップを譲ってないキャラなんですよ……。
 そこで考えたのが、『自分の領地の発展のために私心を殺し、策略を巡らせる知力チートキャラ』! モチーフには、コードギアスの反逆の英雄、『ゼロ』!
細身でマント姿なのは、そのせいです。そうでもしないと、軍師キャラってたいてい人望は無いんだよな……(孔明とか百計のクロとか)

 次に『空中戦闘』の話。アスナが黒いペガサスに乗ってエアレイドしてますが、これはアニメ版で空がひらけてるのに飛ばないシーンがあったためです。須郷ならこういう措置も取るだろうし、原作版ではアスナが『圏内殺人』で馬に乗ってますからこういう方法取りました。
 そして、レイジの空中≪ザンエイ≫! まあこれは単に面白い方法で飛ばせたかっただけという(ヲイ)。そのために当初から『単発スキルに繋がる』という性能を持たせ、原作でも存在した『ソードスキル中は空に浮かぶ』という設定に搦めてみました。

 ……さて、みなさん。今回でグランドクエストは終了です。しかし!皆さん原作で存在した『彼』の見せ場がないことに気づきましたね!?
しかも!キリトパーティーは、あと『二人』残っています!

 次回から始まる、『最終決戦』をお楽しみ下さい!!
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