ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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それではALO最終決戦、第一話開幕です!

ついに現れる、キリトパーティーの6人目。チートの中のチート、登場。



011 復活

「……こんな何も無い空間が、空中都市の正体だったとはな…」

 

 その場に集った全員の心情を代弁するように、サクヤさんが口を開いた。今僕たちはグランドクエストを突破し、終着点である世界樹上層部に到達している。しかし、そこは何も無いただ白いだけの空間であり、まだ見ぬ空中都市など何処を探しても無かった。

 

「許されないぞ、須郷……」

 

「キリト君…」

 

 須郷への怒りに燃えているキリトを、傍らのアスナさんは心配そうに見つめている。まあ、この空間に怒りを燃やしているのは、ここにいる全員なのだけれども。

 

『……でも、皆さん? 本当についてくるんですか? 先ほどイベントアイテムはお渡ししましたし、正直ここから先は何の報酬も見返りもありませんよ?』

 

 今の問題はソレだ。既に今回の報酬である≪月光の水晶鏡≫、≪星屑の聖宝玉≫そして≪日輪の炎王剣≫の三つのアイテムは、それぞれシルフ・ケットシー・サラマンダーに渡してある。これでイベントは終了だと、全員に解散を促したのだが…

 

「我々は、全ての真実が知りたい。偽りの空中都市、通常では恐らく突破不可能なグランドクエスト、語られていたアルフへの転生…それぞれが属する種族のためにも、またこの世界にいる多くのプレイヤーのためにも、我々は全てを知らねばならん」

 

 この一言で、レイドはそのまま。このままオベイロンに会わせて欲しいの一点張り。仕方ないので、須郷の手先の研究員のアバターを倒すところを見せ、大人しく帰ってもらうことにする。そうして少しの間歩き続けると。

 

『――着いた』

 

 白塗りの廊下を歩き、「実験体隔離室」と書かれた部屋の前で止まる。即座にコードを解析、扉のロックを外し、開く。中の様子を見て、サクヤさんが呟いた。

 

「な、んだ、ここは……?」

 

 そこは、今まで通ってきた部屋の中でも異質。青い光を湛えた円柱状のナニカの周りに『茨』が生い茂り、まるで中に存在するナニカを隠すかのようだった。

 

「ふエー、キレイダネー、この柱」

 

 そう言って、アリシャさんが、手近な柱に近付いていく。茨は完全に柱を覆い隠してはおらず、中の様子も一部覗ける。だからこそ彼女は……見てしまった。

 

「……? ……、…! ひいっ?!」

 

 悲鳴とともに、アリシャさんが柱から離れた。その声に皆がその柱へと視線を向けると――

 

 ――そこには、ヒトの脳があった。

 

「な……」

 

 全員が絶句した。この世界はあくまで『剣と魔法のファンタジー』のはず。それなのに、ヒトの脳がまるでホルマリン漬けにでもされたような光景に出会うなど、およそ考えられないことだったからだ。

 

 ――その一方で。

 

(おかしい…)

 

 レイジは、内心違和感を感じていた。この隔離室はGMコンソールが存在する部屋であり、実験体であるSAO未帰還者の経過観察もこの部屋で行われる。だというのに、自分達は未だに研究員に出会っていない。これでは、まるで、誘い込まれたかのような―――

 

 

 ―――そこまで考えたところで、全員が地面に押し付けられた。

 

 

「があっ……!?」

 

「な、何これ!?」

 

 横目で見ると、キリトもアスナさんも、いやその場にいた全員が地面に引き寄せられるように倒れこんでいた。僕もそうだが、頭上からまるで重石をかけられているかのような重圧が襲い、立っていることもままならない。

 

 

「……やれやれ。僕の小鳥ちゃんが逃げ出したと思ったら、僕の城に羽虫とゴキブリを連れて戻ってくるとは。これは少しばかり罰を与えないといけないねえ」

 

 

 声に振り向くと、そこには須郷のアバターである、≪妖精王オベイロン≫とナメクジモンスター型のアバターが二体。そして、名も知らぬシルフの男がいた。

 

「シグルド……ッ!? お前が何故そこに…? 脱領者(レネゲイド)のはずのお前が……!」

 

「失礼だなぁ、サクヤ。今の俺は、妖精王オベイロンの忠実なる家臣。そして……君に代わる、新たなシルフの領主だよ! 口の聞き方に気をつけたまえ!」

 

 そう言ってシグルドはサクヤさんへ歩み寄ると、その腹を蹴りつけた。その衝撃にサクヤさんの端正な顔がゆがむ。

 

「須郷…ッ! これだけの人に知られてしまったんだ、もう逃げられないぞ! 大人しく自首して法の裁きを受けろ!」

 

「逃げられない? 誰が? 逃げる必要なんてないさ。僕の研究は、僕を本当の『神』へと変える研究! この場にいる全員に試せばすむことじゃないか」

 

 その須郷の言葉に、僕とアスナさんは凍りついた。須郷のやろうとしていた研究の詳細を知っているのは、奴の自慢話を延々聞かされ続けた僕と彼女だけだ。キリトにも流石に詳細までは話していない。

 

「あなた、まさか……」

 

「そう! かつて君に話した、『人間の記憶と人格を書き換える』実験! 妙なウイルスのせいでSAOプレイヤーへの手出しは出来なかったけど……予定を前倒しして、彼らALOプレイヤーに味わってもらうさ。アハハハハハッ!!」

 

 狂気に満ちた哄笑。余りにも常軌を逸した内容。この場に集ったALOプレイヤーは、全員が石になったかのように動けなくなっていた。

 

「……じゃあ、じゃあ、さっきの柱の中にあったモノって……」

 

「んー? アレを見たのかい? そのとーり! SAOから僕が浚って、実験にご協力いただいているゲストだよ! まあ、実験に手足は必要ないから、全部(・・)はがして、ああいう格好で協力してもらっているけどねえ! 中々いい格好だとは思わないかい?」

 

 狂笑。そうとしか表現できないオベイロンの笑み。問いを投げかけたアリシャさんは、恐怖の余りそれ以上聞いていられないようだった。

 

 そんな中、僕だけは少しばかり違うことを考えていた。

 

保険(・・)が効くまで、あと数分……それまで出来る限り会話を引き伸ばし、証拠となる単語を引き出さないと……)

 

 先ほどから、響いている会話の全てを、音楽妖精(プーカ)領地で買い求めた音楽保存用ビンに記録している。念のため音声ファイルは、アスナさんとの共通ウインドウに収納しておく。二ヶ月の間須郷の犯罪の証拠を掴むため、作り上げた数々の方策。その一つが証拠となる数々のデータをアスナさんに持っていってもらうこと。現実に身体を持ち、またレクトCEOの娘である彼女なら、証拠さえあれば須郷に対抗できると考えた。そのためこの音声ファイルにしても、ログアウト時にアスナさんのナーヴギアに保存されるよう細工してある。

 

 

『……一つ質問してもいいかな? 妖精王オベイロン』

 

 

 突然の質問。だが相手はそれでも興味を示した様子だった。

 

「ん? 君は……あー、そうか。あのわけの分からないイベントを仕組んで、僕の世界を散々引っ掻き回してくれた亡霊か。やれやれ、君には真っ先に罰を与えないといけないねえ……」

 

 そう言って、須郷は此方に近付いてきた。そして右手を天へとかざす。

 

「システムコマンド! ペイン・アブソーバ、レベル8に変更! ならびにオブジェクトID≪エクスキャリバー≫をジェネレート!」

 

 その途端……押し付けられた身体から、圧迫による鈍い『痛み』が上ってきた。

 

『な……?!』

 

「ひひ、これはVR世界で発生する『痛み』を抑えてくれているペイン・アブソーバを弱めるコマンドさ。余り強めると……ショック死してしまう可能性が出るけどねぇ!!」

 

 その言葉とともに須郷は、黄金の装飾が美しい宝剣を僕の身体に突き立てた。

 

『ぐぅっ……!?』

 

「ひひひひひ! まるでピンで留められた標本みたいじゃないか! 何か質問があったんだろう? ほら、言ってみなよ。痛みで何も喋れないかもしれないけどねえ!!」

 

 そう言って勝ち誇る。…喋れない? 痛い? こんなもの、あの世界に比べれば!

 

 

『アンタは、何がしたいんだ……?』

 

 

 そうして、投げかけた問いに―――オベイロンが止まった。

 

「はあ…? 何がって決まってるじゃないか。僕は僕の研究でこの世界と、現実で『神』になる! こんなすばらしい研究は―――」

 

『だから。その『神』になって、『何がしたいんだ』って聞いている』

 

 そこで、言葉が止まる。やはり、ここが、コイツの、『根源』。

 

『アンタ、『神』になって、何かがしたいんじゃなくて、ただ『神』の座を『奪いたい』だけだろ……?』

 

 その言葉に―――オベイロンの端正な顔が大きく歪む。それは、はっきりとした……『憎悪』。

 

『アンタの目的は、ただ『奪う』ことだ。『神』の座を持っていた(・・・・・)あの男から』

 

「…黙れよ」

 

『本当は…別に『神』の座でなくても良かった。それこそ、アイツの持っているものなら何でも良かった』

 

「……黙れ」

 

『自分には持っていなかったものを持っていた『あの男』から……本当は何も持っていない『裸の王様』の悪あがき。ある意味同情するな』

 

「黙れ黙れ黙れェッ!!! 何も知らないガキが、知った風な口を聞くなァッ!!!!」

 

 口の端から泡を飛ばしそうな勢いで、オベイロンが駆け寄り、背中に刺さっていた宝剣を抜くと、そのまま両手でメッタ刺しにする。そのたびに背中に激しい痛みが走った。

 

『……ッ!』

 

「お前にわかるのか!? アイツと、アイツといつも比べられる僕の気持ちが! アイツと競わされた僕の気持ちが!! お前みたいなガキに分かるってのかよォッ!」

 

『ッ、そう、いうのは……八つ当たりじゃなく、本人同士(・・・・)でやってくれ』

 

 その言葉と同時、横合いから伸びたモノに、オベイロンが持っていた宝剣が弾かれる。弾いたのは――――白地の十字盾。

 

 

「――――久しいな、須郷君」

 

 

 そこにいたのは、アインクラッド最強の剣士、≪聖騎士≫ヒースクリフの姿だった。

 




 最終決戦、第一話終~了~。

 と言うわけで、6人目はヒースクリフさんでした。レイジ以上の防御力、アスナ以上の剣速、キリト以上の反射速度(オーバーアシスト時)、ユイ以上のGM権限……
 ホントにチートや…
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