ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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最終決戦第二話。

正直余りの戦力差に、須郷がカワイソウになってきた件。

さて、ストックが切れたぞ…


012 封印解放

「な……何だお前は? 僕がロックした空間に、どうやって入って来たんだ?!」

 

 その言葉に答えず、静かに周りを睥睨するのは、アインクラッド最強の剣士、≪聖騎士≫ヒースクリフ。

 

「レイジ君の要請によって、ココに来たのだが……何とも情けない姿だな、キリト君、レイジ君?」

 

 僕は聖剣に串刺しにされているし、視線を横に向けると、キリトはナメクジにのしかかられ、アスナさんとリーファはソイツの出す触手で縛り上げられていた。

 

「ふむ、どうするか……」

 

 ソレを見ても、ヒースクリフは動こうとしない。まるで興味が無い、といわんばかりに。

 

「私に要請されたのは、元SAOプレイヤーの安全の確保と、現在のALOプレイヤーの保護であって……君ら二人の救出までは、依頼されていないのだよ?」

 

『……!』

 

 確かに、そうだ。ネット上に散在していたヒースクリフの意識を呼び集めたのは、万が一にもALOプレイヤーまで被害にあわせてはいけないと考えたからであって、僕たちを助ける必要は―――

 

「しかし……君らがどうしてもと頼むのなら、『助けてあげる』ことは可能だよ? キリト君、レイジ君」

 

「『(……ピキッ)」』

 

 ヒースクリフのその一言で、色々なものに、ヒビが入った。

 

「君らにとって、あの世界は幻だった。一度は否定したくせに、システムには所詮勝てないと、『屈服する』のだろう?」

 

「『(ビキキッ!)」』

 

「アスナ君も…レイジ君から聞いた君の妹さんも私が『救ってあげよう』。だから『無力』な君達は、おとなしく―――」

 

「『(…………ブチィッ!!)」』

 

 やたらえらそうに言われたその一言に、僕とキリトはまちがいなく仮想の血管が切れる音が聞こえた。

 

 

「『ふっ…………ざけんなああああっ!!」』

 

 

 二人そろって、もう重力とか剣とかナメクジとかを、根こそぎ払いのけて立ち上がった。

 

「アスナとリーファを、今すぐ、離せェッ!!」

 

 気合一閃、二人を縛めていた触手は全てキリトの二刀に斬り飛ばされた。重力に従って二人とも地面に尻餅をつく。

 

『こンのおおおぉッ!!』

 

 こっちはこっちで、背中から胸まで貫通していた黄金の宝剣を力ずくで引っこ抜く。正直相当な痛みと不快感があったが、それでも完全に抜いて部屋の奥へと放り投げた。

 

「ば、バカな!? 僕が作り上げた、重力魔法から自力で抜け出すなんて!?」

 

 そう言って須郷は後ずさり、何かの操作をしようと、周りに無数に浮かぶシステムウィンドウに手を伸ばす。だがそこに、静かな言葉が響いた。

 

「システムコマンド、スーパーバイザ権限変更。ID≪オベイロン≫をレベル1に」

 

 その言葉とともに、須郷の周りのウィンドウは消失した。

 

「ば……ばかな……この世界は僕が作り上げた世界だぞ! 僕の権限を消すなんて、誰にも出来るわけが―――」

 

「そうでもないよ、須郷君。私の権限がそのままということは、本当にココはただ君が盗み出しただけの世界だったのだな」

 

 そのヒースクリフの言葉に、須郷は最初戸惑いを浮かべていたが、徐々に目の前の人物の正体を察したのか、驚愕と憎しみの表情を浮かべた。

 

「あ、あんた……アンタは……ッ!」

 

「そういうことさ。しばらくだったな、須郷君」

 

「『茅場、晶彦』……ッ!!」

 

 そのありとあらゆる怨嗟がこもった声は、当然近くにいたALOプレイヤーたちにも聞こえていた。

 

「茅場晶彦ですって?!」

 

「コイツが!?」

 

 驚愕とともに、全員が後ずさった。当然だ。目の前にいる人物はSAOに一万人の人間を閉じ込めた張本人なのだから。

 

「……誤解のないように言っておくと、私は今回ALOプレイヤーにはなんら危害を加えるつもりは無い。ここに赴いたのは、SAO唯一のGMとしての責務を果たしに来ただけだ」

 

 そう言って、その手の剣を須郷へと向ける。

 

「ゲームクリアによる、SAOプレイヤー全員(・・)の現実への帰還――それが私がGMとして行った唯一つの公約だ」

 

「……!」

 

「須郷君……今すぐにSAOプレイヤー全員を解放したまえ。あとは私が言うことでもないが、自首をお勧めするよ」

 

 この言葉に……須郷は今までの憎悪の感情を上回る激怒を面に現し、感情のまま叫び散らした。

 

「ふざッ……ふざけんなよ……アンタが、アンタなんかに誰が従うかよォォォォォォッ!!!」

 

 そう叫び、スペルを紡ぐ。しかしそれは、いまだこの世界で聞いたことも無いスペルだった。

 

 

「オ――――アアアアアアアアッ!!!」

 

 

 目の前の須郷だったモノが雄たけびを上げる。ソレは、巨大な体躯をしていた。褐色と鉛色を混ぜ合わせたような色の皮膚は、その存在を誇示するかのように膨れ上がり、邪悪な気配を纏っていた。背中には黒く染まり千切れた鳥の羽根が付き、体中あちこちに目玉が浮かび上がっていた。口からは紫色がかった息を吐き出し、顔にある瞳は五つに増え、濁った黄色い光を宿していた。

 

 …やがて変化が収まり、そこにいたのは身の丈5mを優に超える、鋼の筋肉持つ悪魔そのものだった。そして、目の前にその名前が表示された。

 

≪The Morocc≫

 

「は…………ははっはははははははっ!! どうだい、この力強い姿! これはスプリガンの使うチャチな幻なんかじゃない、自分のステータスをモンスターそのものに変えるスペル! これが僕が作り上げた、≪魔法≫の力! この世界最強の存在! ≪魔王モロク≫の姿だよォッ!!!」

 

 狂ったように笑い続けるソイツを見て……僕やキリト、アスナさんが思ったことは一つ。

 

『「「……だから?』」」

 

「………………は?」

 

『いや、だから、そのボスの姿になることのどこがすごいの?』

 

「正直SAOのフロアボスと変わらないわね……」

 

「大体中身がアレじゃあ、AIじゃないせいで、むしろ弱くなってるだろ……」

 

 SAO時代の数々の経験から、コレくらいの変化では今更驚かない。…中身のせいで弱そうだし。

 

「ぐっ……ぐぐっ……後悔するなよその言葉ァッ!」

 

 そう言ってモロクは今度は同じスペルをナメクジ研究者二体とシグルドと呼ばれたシルフに向けた。

 

「「「オ……オオオオオッ!」」」

 

 雄たけびをあげ、その場にいた三つの影が変化した。

 

 最初に立ち上がったのは、二つの影。その頭には黄金に輝く角が生え、身体は紅と黄色の体毛に覆われていた。その顔は獣のものとなり、瞳は黄色く濁っていた。

 

 全体的な印象は、グリームアイズによく似ているが、それよりもさらに邪悪でまがまがしいものを感じた。ソレが、二体。その手に巨大な鎌を携えたところで、その名前が表示された。

 

≪The Baphomet≫

 

 そして、最後に立ち上がる影。全体的な印象は『騎士』。だがその瞳は狂気の赤い光を宿し、血塗れた鎧を纏い、血が滴る剣を手にしていた。もはやそこには風の妖精らしき姿は何処にもなく、ただただそこにいたのは邪悪なる剣士。そして、名前が瞬いた。

 

≪The Tanatos≫

 

「はははははッ!! どーだい、悪魔系最強のボス≪バフォメット≫と、人間系最強の≪魔剣士タナトス≫! 君らごときじゃ絶対に叶わない相手だよッ!! はははははッ!!!」

 

 増えた、か。

 

 ……まあ、確かにボス四体は脅威なんだけど、中身が中身だし。とはいえ、スキル無しは流石にきついか。

 

『……ヒースクリフ。あの『依頼』は?』

 

「…終わっている。ちょうどおあつらえ向きの相手が現れたのだ。早速始めよう」

 

 言葉とともに、ヒースクリフの周りにさっきまでの須郷をはるかに上回る量のシステムウィンドウが発生する。ヒースクリフはそれらのウィンドウを操作し、一つの命令を下した。

 

 

「全ソードスキル――――≪完全(フル)封印解放(アクティベート)≫!!」

 

 

 その言葉とともに、僕やキリト、アスナさんの身体が光り輝く。自分のウィンドウを開き、スキル欄を見ると、そこには確かに≪鉄拳術≫の文字。

 

「ユニークスキルも含め、全てのソードスキルをこのゲームコンポーネントに適応させた。これで君らの力はSAOと同等に扱えるはずだ」

 

 二人へと視線を向けると、いっそう強くその手の大剣と細剣を握り締める姿が。これなら勝てると確信しているのだ。

 

「それと…コレは私からの餞別だ」

 

 そう言って、ヒースクリフが剣を何故かキリトの肩のユイ姉に向け、その切っ先から光線を放った。

 

『何を?!』

 

 ヒースクリフの行動に驚いていると、光線が当たったユイ姉から眩い光があふれ、たまらず目を瞑る。

 

「ユ……ユイ……なのか?」

 

 キリトの呆然としたような声が響き、目を開けてみると――――キリトとアスナさんの間に、一人の少女がいた。

 

 その少女は黒髪の長髪で、白のワンピースを纏っていた。手には死神すら消し去る炎剣≪レーヴァテイン≫を持ち、瞳には星をちりばめたような輝き、そしてその背中には以前と同じ白い翅が付いていた。

 

「ユイ君に、この世界のプレイヤー属性を付加した。どうやらランダム選択のせいで、音楽妖精(プーカ)になっているようだな。そして―――」

 

 そう言ってヒースクリフが空に手をかざすと、部屋全体の風景が変わり、天井から三つの剣と、一つの盾が落ちてきた。

 

「≪エリュシデータ≫、≪ダークリパルサー≫、≪ランベントライト≫、そして≪アダマス・バックラー≫。君らとともに戦い続けた掛け替えの無い相棒を、ALOへと移植した。そして眠り続けるSAOプレイヤーに影響が出ないよう、我々と敵の両方を違う空間へと移送した。この空間では、我々SAO経験者と敵であるあのボス四体は、ペイン・アブソーバ無しでの痛みを味わうことになるが…今更君らは恐れなどしないだろう?」

 

 その言葉には答えず、それぞれが命を預けていた相棒を手にする。たった二ヶ月だというのに、随分と長く離れていたような気がした。

 

 

「は、ははは……そんなチンケな剣や盾を持ったからって、僕らに勝てるつもりかよオォッ!!」

 

 

 部屋の向こう側で、バフォメットとタナトスを従え、モロクが叫ぶ。

 

 ……だけど。

 

 

「「『……当然ッ!!!」」』

 

 

 全ての力を取り戻した。もう何も恐れることなどない!!

 




最終決戦第二話終了!

カワイソウと言っておきながら、さらに戦力投入ww

最後に投入されるのは、≪オブジェクト・イレイサー≫の剣を持つ、ユイ!
さらに、『全ソードスキル解放』に、エリュシデータを初めとする全ての武器の投入!

対して須郷は、悪役の王道、『巨大モンスター化』で挑む!しかもRO最強のMVPボス『魔王モロク』!!そして有名MVPの『バフォメット』と『タナトス』!HP24,000,000のボスは衝撃的だった…(第二形態も18,000,000あります)
それでも中身のせいで勝てる気がしないと言うwww

……須郷の冥福を祈りましょう。

前書きにも書きましたが、ストックが切れました。書きあがれば次回も投稿しますが、もしかしたら一週休むかも知れません。ご了承下さい。

-追記-
書き忘れましたが、ユイがキリトパーティー最後の一人です。しかも彼女は予定としては、『キャリバー』のときにキリト側のパーティーに入る予定。シノンはレイジと一緒に別パーティーに入る予定なので…
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