ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
とうとう毎週投稿が切れてしもうた……
須郷、ナメクジ(研究者)、シグルドのフルボッコタイムをお楽しみ下さい♪
「はははっ! ≪王≫の力を思い知れよぉっ!!」
そう言ってモロクが両手を振り回すと、たちまち足元から無数の泥状の魔物が生まれた。それらは一つとして同じ姿をしておらず、流動するようなその身体に、多大な悪意を振りまいていた。
「取り巻きモンスターか……ユイ君、彼らの相手を頼めるかね?」
「了解です! 私だってパパやママの力になります!」
そう叫んでユイはその手にもつ≪オブジェクトイレイサー≫が付加された炎剣を振り回す。一瞬の内に、取り巻きモンスターが十数体一気に消し飛んだ。
「ちょっと団長! ウチの娘になんてことさせてるんですか!?」
「アスナ君、ここでは『団長』は禁句だよ……なにを、と聞かれても取り巻きの排除だ」
「そーじゃなくて……!」
「いや、アレでいいんだよ、アスナ……下手にプレイヤーが操るモンスターに手を出せば、彼女にどんな影響があるか分からないからな」
「あっ……!」
元々プレイヤーのメンタルを診断するために作られたユイは、ことさら人の悪意や絶望に弱い面がある。ましてや今回の敵は、SAOプレイヤーをALO内に閉じ込めた奴らだ。その悪意の影響は、出来れば最小限にしたいのだ。
「…そうだね、分かった。じゃあ私達は、残りのボスの排除だね!」
「ああ、シグルドが化けたタナトスは、ALOプレイヤーの
「「グギャアアアアアッ!!」」
凄まじい悲鳴が聞こえ、思わず二人が視線を投げかけると、視線の先、ちょうどモロクとの中間点の辺りで、二体の黄金の山羊、バフォメットの巨体が――――宙を舞っていた。
『――――≪ラセツハオウゲキ≫』
僅かに聞こえたその呟き声が、レイジが今繰り出したソードスキルの名前だった。≪鉄拳術≫最大の重攻撃五連撃ソードスキル≪ラセツハオウゲキ≫。流石に≪アシュラハオウケン≫ほどではないが威力は≪鉄拳術≫の中でもかなり高く、ソレに迫る威力だ。ボスを空中に弾き飛ばすこともワケはなかった。
「い、いてえ……いてえよおぉ……」
「チクショウ、この研究さえ完成すれば、俺たちは歴史に名を残すことだって……」
二体の山羊は、床で身体を丸めながらいっそ哀れを誘うかのようにうめき続けていた。だがそんな中でも研究に執着を見せたのは……失敗だったな。
『研究の完成、ねえ……それがどんなこと生み出すのか、良ければ見せてあげるよ?』
「「…何?」」
流石に予想外だったのか、目の前の奴らが食いつく。―――しかし。
『君達があの実験で行おうとしていたのは、外部からの刺激による思考と感情のモニタリング……分かりやすく、『
「「……?」」
『具体的には――――ギリギリ死なないレベルで、痛めつけてあげる♪』
そう言って、二体の巨獣へと近付いていく、レイジの姿は――確かに『
「「うわあ……」」
ソレを端から見ていたキリトとアスナは絶句していた。教会の一件でレイジは怒らせてはならないと確信していたものの、それを目の当たりにすると、流石にドン引きだった。
「感心している場合かね、キリト君、アスナ君」
そんなヒースクリフの言葉に視線を戻すと、既に取り巻きはユイに半分以上殲滅され、魔王モロクへの道が開いていた。
「…そうだな。アスナ、君は、俺が必ず守るから、だから……『一緒に』戦って欲しい」
「キリト君……」
「お前ら、何二人の世界に入ってんだよ!?」
完全にいい雰囲気だったと言うのに、モロクが大声でさえぎってきた。内心――アスナとキリトが舌を打ったのは確実だろう。
「須郷君……君は昔からそうだが、他者への配慮に欠けるところがあるようだね?」
「アンタが、言うなあああああっ!!」
偽りの魔王となった男と、SAOの最前線で戦い続けた、『聖騎士』・『閃光』・『黒の剣士』との戦いが始まった。
◇ ◇ ◇
「はははははっ! これが、これが『力』かッ!! すばらしい、すばらしいよ!!!」
「シグルドッ、あなた…!」
「シルフ隊、包囲陣形、詠唱終わり次第、各自攻撃!」
「サラマンダー! A隊は後方から呪文詠唱開始。B・C・E隊は右翼、左翼から突撃せよ!」
キリトたちからは離れた一角、ALOプレイヤーはかつての仲間であったシグルドが操る≪魔剣士タナトス≫との戦闘に突入していた。しかしその余りの強さに、近付くことすら難しい状況だった。それもそのはず。シグルドは本来『シルフ五傑』に数えられるほどの剣士であり、ただの研究者でしかない須郷たちとは、一線を画す強さを持っていたのだ。
「サクヤッ、全軍を下がらせて! これ以上は……!」
「だが、下がったところで、どうする!? ログアウトしようにも彼らもまた戦闘中だ! 悠長に外に出られるのを待ってくれるとは思えん!」
「それは―――ッ!!」
「誰が、逃がすかよオオオオッ!!」
突然の轟音に振り向くと、タナトスの巨体はすぐ目の前にあり、その手に持つ血の滴る大剣は、振り下ろされる直前だった。
(やられるッ!?)
衝撃を覚悟し、思わず瞑った視界の中に――――
「リーファちゃんッ!!!」
自分をこの世界へと誘ってくれた、現実での友人の声が、響いた。
「……レ、レコン…………?」
見開いた視界、その中でいつも自分についてきていた小柄な少年は――――その身体を食い込ませることで、タナトスの大剣を止めていた。
「……誰かと思えば、リーファの金魚のフンの、レコンじゃないか。大した実力も無い貴様が、何の真似だ?」
侮蔑を大いに含んだシグルドの言葉に、レコンは反論するでもなく、ただ、薄く笑った。
「確かに、僕の実力は、リーファちゃんはおろか、シグルドにだって届いてない。お義兄さんなんて、夢のまた夢だよ……だけどッ!!」
そう叫び、レコンは不思議な韻律のスペルを紡ぐ。その周りに展開された魔方陣の色は、紫。シルフ領ではほとんど見かけることのない、闇属性魔法であることを示していた。そしてそのスペルに――――闇魔法を習得しているアリシャと、サラマンダー最強の
「キミ、ダメだヨッ!!」
「やめろ、少年ッ! そのスペルは――ッ!!」
だがその言葉に構わず、レコンはスペルを完成させる。たちまちのうちに魔方陣が彼に殺到し、まるで力を溜めるかのように輝きだす。
「リーファちゃんは、僕が守るッ!!」
瞬間――――とんでもない閃光と轟音に、その場にいた全てのプレイヤーが眼を覆った。一番近くにいたリーファは爆発の余波で後ろへと飛ばされ、ようやく閃光で飛んだ視界が再び回復したとき……言葉を失った。
そこには、ただ空中に揺れ動く小さな緑色の
「あ、あああああ…あの、ガキィィィッ!」
口角から泡を飛ばしながら、シグルドが怨嗟の声を上げる。同じボスである彼も痛みを味わっているはずだが、ソレをはるかに上回る怒りが、彼を何とか支えていた。
闇魔法に存在する、最大の範囲攻撃魔法―――≪自爆魔法≫。その威力と引き換えに、術者は通常の数倍にも値する
それだけのものをつぎ込んで、ただ一人の少女を守る。その姿に……ALOでも有数のハイプレイヤーたる一同が、奮い立った。
「シルフ隊! ≪フェンリルストーム≫発射後、突撃ッ! 速度でかく乱しつつ、攻撃を加えよ!」
「こっちも負けてられないヨッ!
「ユージーンッ!
「おおっ、兄者! サラマンダー、俺に続けぇっ!!」
『雄オォーーーーーーッ!!!』
シルフ、ケットシー、サラマンダー。本来なら交わるはずの無い異種族のパーティーは、このとき完全に一つとなった。それはまさに、一人の少年が呼んだ、『奇跡』。
(私だって……!)
そしてその少年が守った少女もまた、立ち上がった。その手に光るのは、ALOで少年がかつて見繕ってくれた、愛用の長刀。
「負ける、もんかーーーッ!」
◇ ◇ ◇
人間系ボス、タナトスとALOプレイヤーの戦闘が続く中、レイジと二体のバフォメットとの戦闘には終わりが見えてきていた。元々戦闘者でもない研究者では、そもそもスペックに頼った戦いしか出来ず、勝負になるはずがなかったのだ。
『ハアッ!』
掛け声とともに、上段、下段、中段を緑のライトエフェクトを纏った掌打が打ち抜く。≪鉄拳術≫連撃系ソードスキル≪サンダンショウ≫。そして、そのスキルの終わり、先に戻していた右腕に――黄色いライトエフェクトが、宿った。
『フウッ!!』
まるでボクシングのフックのように、弧を描いて四発の掌打が殺到する。≪鉄拳術≫連撃系ソードスキル≪レンダショウ≫。これらは、≪鉄拳術≫では珍しい≪スキルコンボ≫のスキル群であり、硬直が長すぎることからSAOでは滅多に使用することのなかったスキルだ。
…そして、それだけでは、終わらない。
『セアッ!』
オレンジのライトエフェクトを纏った拳が、バフォメットに吸い込まれる。≪鉄拳術≫単発重攻撃ソードスキル≪モウリュウケン≫。たまらずに、食らったバフォメットは隣のもう一体を巻き込んで吹き飛んだが、その後ろには――――墨色のライトエフェクトを纏った、僕。
『…フッ!』
両手を同時に突き出し、拳で吹き飛んできた二体を受け止める。≪鉄拳術≫単発攻撃ソードスキル≪フッコケン≫。相手の動きを止め、スキルコンボの最後の技に、つなぐことの出来るスキル。
瞬間、両手が炎のようなライトエフェクトに包まれる。そして、身体が描くのは、中国拳法で、『五行拳』とも呼ばれる単純にして究極の一。拳が横から刺さり、さらに顔面を殴り飛ばし、地面に叩きつけ、打ち上げられ、そして渾身の一撃が迫る。
『オラアアアアアッ!!』
「「ギャアアアアアッ!」」
≪鉄拳術≫連撃系重攻撃ソードスキル≪レンチュウホウゲキ≫。このスキルコンボの最終段階でしか出せないという制約つきだが、全体的な威力は≪アシュラハオウケン≫に勝るとも劣らない。最後の『崩撃』で吹き飛ばされたボス二体は、身体のあちこちからダメージ判定のライトエフェクトを輝かせ、もはや動く気配もない。
『……終わった、終わった! さーて、向こうはどうかな?』
硬直から解けて眼を向けると、空間の向こう側では、十字盾が鉛色の魔王の攻撃を全て防ぎ、白のフェンサーと黒の剣士が、的確にその魔王に攻撃を加える姿があった。
「なぜだ?! 僕は神だ、この世界の王だ! このモロクだって最強のはずなんだ! それが、それが…なぜだああああっ!!」
無差別に暴れるその巨腕を、悉く一枚の盾が防ぐ。そしてその腕をくぐりぬけ、関節や身体中の瞳に無数の閃光が突き刺さる。そして、身体のあらゆるところに、二振りの片手剣が振り下ろされる。そのたびに身体のあちこちからライトエフェクトがきらめく。
「なんでだ? なんで、こんなことが……なんで現実には何の力もない、勇者でもなんでもない、ただのガキが、こんな……」
「これで、終わりよ」
「さらばだ、須郷君」
「…終わりに、しよう。泥棒の王と
「こ、この、このガキイイイイイイィッ!!」
鉛色の魔王モロクは、力任せにその右腕を地面へと振り下ろした。しかしそれはまたしても一人の男に阻まれた。それは、SAOにおいて最高の剣士であった者。
「――――やりたまえ、アスナ君、キリト君」
その言葉とともに、白のフェンサーはモロクの腕を駆け上がる。その手には純白の光を放つ細剣。≪細剣≫上位ソードスキル≪スター・スプラッシュ≫。
「ハアッ!」
一息に解放された細剣は、モロクの瞳に次々と突き刺さり、たまらず苦悶の声を上げさせた。
「う――――おおおおおおおっ!!」
殺到する二本の剣が、モロクの身体を斬り裂く。≪二刀流≫上位ソードスキル、≪スターバースト・ストリーム≫。足が飛び、腕が飛び、身体を二つに斬り裂き、最後にその顔へと突き刺さった。
「ギ、ギャアアアアアアアッ!!!」
右肩から左脇腹にかけて斬り飛ばされ、さらに左腕も二の腕から先を失い、右眼にはダークリパルサーが突き刺さっていた。その余りの痛みに、須郷は意識を無くしたのか、前のめりに地面に倒れる。
「終わった、な……」
「そう、だね……」
ようやく終わったのだ、と剣を下ろす。その手の『相棒』は、ただ静かにきらめいていた。
『感慨にふけるのは少し早いよ、キリト?』
「そうだな、これから私が全SAOプレイヤーのログアウト処理に入る。処理自体は簡単ではあるが、膨大なチェックもあるので手伝って欲しいのだが?」
勝利の余韻に浸らせる間もなくそんな事を言う友人と、元凶に苦笑しつつ歩を進めていった。
――――――その後ろで、狂気と執念に、瞳を濁らせた男に、気がつかないまま。
最終決戦終了!
今回は、レコンが魅せました!!原作でも凄くいい見せ場があったのに、何でこのヒト不遇なんだ……?ALO以降は≪キャリバー≫でも出てこれなかったし…
そして、ROモンクの人気技、コンボ入りました!3HIT、4HIT、1HIT、1HIT、5HITと言うわけで合計14HITコンボ!!ちなみにバフォメットたちは、1ドットだけHP残ってます…
ちなみに須郷のやられっぷりは、アニメや原作とほぼ同じでしたね……
しかーし! キリトー! うしろ、うしろ!!