ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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ALO編最終話、投稿!

長かった「プロローグ」の終わり……



017 阿修羅から人へ

 須郷が病院で事件を起こしてからしばらく――――僕も、アスナさんもキリトも、かなりの間後始末というか厄介ごとに巻き込まれた。

 まず、そもそも須郷が病院で騒動を起こすであろうことを、どうやって予測したのかとか、なんでアスナさんは目覚めているのかとか、そこから説明しなければならず、その上ヒースクリフの存在が厄介だった。

 

 下手に言うと、死人が蘇っただの、茅場の共犯者だの言われかねないので、それについては黙秘したが、須郷が牢獄の中でわめき散らしていたので、結局追求を受けることになった。

 

 事件に直接関与したわけでもない、未成年のALOプレイヤーたちには、捜査協力程度にしか話を聞けなかったようではあるが、しばらく疑いの目を向けられるのは我慢しなければならなくなった。

 

 ……そう言えばその過程で、あのシグルドも実はかなり幼い未成年のプレイヤーだったらしいと知ったが、何でもVRゲーム自体に強い恐怖を抱いているらしく、アミュスフィアを触ることすら拒否しているそうだ。

 

 そしてALOは、一時運営を停止しなければならなくなった。あれだけ大々的にイベントとして宣伝してしまった以上、情報は完全には止められず、その上須郷が事件まで起こしたのだから、それも仕方なかった。

 レクトは、子会社であり運営会社でもあったレクトプログレスを廃し、関係者に処分を下したが、社会的な批判は収まらず、レクト本社への打撃だけではなく、VRゲーム全体にも打撃を被ることとなった。

 

 

 ――そんな状況を救ったのが、茅場がキリトに託した『世界の種子』だった。

 

 

 簡易型VRゲーム製作エンジン、≪ザ・シード≫。キリトがエギルさんと協力して調査を行い、無料サーバーに置いたソレは、ある程度のサーバーさえあれば、大会社でなくともVRゲームを作れる環境を提供するものだった。何せ、簡易版のカーディナルまで搭載しているのだから。今ではVRゲームばかりではなく、様々な方面への応用が期待されている。

 

 これによってALOも新規ベンチャー会社にライセンスを譲渡し、新たに運営を再開することになった。ちなみに裏で再開できるように働きかけていたアスナさんは、一度そのベンチャー会社のスタッフに会う機会があったそうだが、ALOプレイヤーでもある彼らの中に、まるで『チェシャ猫』のような笑いを浮かべる女性と、各スタッフをまるで『軍師』のように指揮する男性がいたとかいないとか……。

 

 ALO関係はそれで一時決着はついたのだが、未だに残る問題もあった。それは……

 

「あン、の、バカ須郷の、せいで、リハビリの時間に、出遅れたって、ことだよねえ……」

 

 現在、病院のリハビリルーム。もはや息も絶え絶えと言った様子で、大の字になって横たわっていた。先に解放されたキリトたちと違ってALO事件の被害者はさらに二ヶ月ほど眠り続けていた。そのためリハビリに出遅れた形となり、未だに身体機能がまともに戻らないのだ。

 

「あー、俺にも経験あるなー……。リハビリって見た目以上にキツイんだよな…」

 

「このままじゃ4月の入学に間に合わないじゃない……全くとんだ迷惑よ」

 

「大丈夫だよ、アスナ。俺も出来る限り協力するから」

 

「キリト君……」

 

 リハビリルームの壁際で、車椅子に座ったアスナさんと見詰め合うキリト。……この二人、病院のあちこちでしょっちゅう二人の世界を作り上げている。「とんだ迷惑」と言いたいのは、こっちだ!

 

「二人とも…イチャつくなら、他所でやってくれない? 今は、ツッコム元気もないから」

 

「い、イチャ?! そんな積もりないわよ!?」

 

「そ、そうだぞ、レイジ!?」

 

 ……それが、イチャついてるっていうんだよ。これなら、『助け舟』なんか出すんじゃなかった。

 

 

「まったく……正式に婚約者候補(・・・・・)になれたからって、公序良俗は守ってほし――――」

 

「「だから、違うって!!」」

 

 

 …そう、実はこの二人、既に父親公認の婚約者『候補』なのである。それと言うのも、本来婚約者であった須郷の奴は、SAOのプレイヤーを監禁し、さらには病院内で刃物を持って暴れた「犯罪者」であり、それによってアスナさんの経歴に傷がつくことを、両親、特に父親の結城彰三氏は恐れていた。そこで、こんな助け舟を出したのだ。

 

 

『既に違う人物を婚約者にしていた、というのはどうでしょう?』

 

 

 ちょうど詳しい事情説明のためにキリトこと桐ヶ谷和人とともに、アスナさんこと結城明日奈さんの病室を訪れていた僕の発言で、何とか収拾を図ることになったのだ。須郷が犯罪に手を染めたのはSAO事件の被害者が解放された直後のことであり、ちょうどその頃に彰三氏の前に現れた一人の人物を見込んで婚約者にしていた、という話にすれば彼女の経歴にも傷はつかないのでは…という方向に持っていったのだ。もちろん相手は、SAO内で彼女と交際し、『結婚』までしていた一人の少年。娘の心情を慮ったとすれば、割と容易に周囲にも受け入れられると提案した。

 

 しかし、彰三氏もさる者。さすがというべきか、此方の思惑を読み切って、あくまで『候補』に留めるとされてしまった。まあ、ここからは本人達に任せるべきか。

 

 ちなみにこの交渉で、何故か彰三氏に気に入られて、『大学を卒業したら、ウチに来たまえ』とか言われた。随分先の話なので、大学に進学した後に話をしたいとさせてもらった。

 

 それからご両親が帰った後、キリトとアスナさんの二人に、

 

『『お前(君)、腹黒っていうか、もう怖いよ(わ)』』

 

 とか思い切り引きつった顔で言われた。かなりショックだった。

 

「…はあ、そろそろ病室戻るからね」

 

「ん? あ、そうか。ちょっと待て、レイジ。実は少し話しがあるんだよ」

 

「ん? なに?」

 

「あー、ここじゃなんだな……お前の病室で話そうぜ」

 

「いいけど…?」

 

 キリトの態度に何か違和感を感じたが、特に気にせず病室に向かった。何故かアスナさんもニヤニヤニコニコしていたが、一体……?

 

 疑問が解けたのは、病室の扉を開けたときだった。

 

 

『レイジ、おかえりーーーっ!!』

 

「うひゃあっ?!」

 

 

 いきなりの歓声に驚いて、変な声が出てしまった。病室の中を改めて見ると、そこには懐かしい顔ぶれが勢ぞろいしていた。

 

「レイジ、テメェ、シレッと帰って来てんじゃねえよッ! 帰って来たなら、連絡くらい寄越しやがれ!」

 

 リーダーのクラインさんを始めとする、≪風林火山≫のみんな。

 

「レイジ君、お帰り、お帰り……ッ!」

 

「レイ兄ーーッ!」

 

「今度の冒険の話、聞かせてくれよッ!!」

 

 サーシャさんと、教会のみんな。

 

「コイツは、お見舞いの果物と、ウチの秘伝のコーヒー豆だ……病院内じゃ、飲めないかもしれんがな」

 

 教会の食料を仕入れてくれていた、エギルさん。

 

「もー、お兄ちゃん。呼びに行ったのに、なかなか戻ってこないんだもん。心配しちゃったわよ?」

 

「リ、リーファちゃ~ん。病院内で騒ぐのは、マズイんじゃ…?」

 

 ALOで出会ったキリトの妹、リーファとその友人レコン。

 

「みんな、待っていたんだ。向こうでのこと、ぜひお礼が言いたくてね」

 

「なんだよ、ケイタはお固いな~」

 

「お前が軽すぎなんだよ、ダッカー」

 

「そうそう」

 

 ギルド≪月夜の黒猫団≫のみんな。…そして。

 

 

「おかえり、レイジ」

 

 

 あの教会で一緒に過ごした少女――――サチ。

 

「――っ、ただ、いま……」

 

 余りにも不意打ちの再会に、声が詰まって返事が上手くできなかった。ふと後ろを見ると、キリトとアスナさんがニヤニヤ笑っていた。……仕組んだな。

 

「よーし、パーティーだ、パーティーだ!」

 

「あんまり騒ぎすぎるなよ、ダッカー」

 

「オイオイ、パーティーより先に主役からの挨拶だろ?」

 

「あ、そうだな! オイ、レイジ、こっちでのオメエの名前何てんだ? 自己紹介も兼ねて、挨拶しろよ!」

 

「――っ、はいっ、リーダー!」

 

 そうして、息を吸い、告げる。

 

 

「皆さん、初めまして! 銅島(ドウジマ)優矢(ユウヤ)といいます!!」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ――――阿修羅(アシュラ)の英雄譚は、これにてひと時幕を閉じる。

 

 ここより先は、一人の少年の物語(モノガタリ)

 

 其処には英雄はおらず、笑い、泣き、恋をする、ありふれたモノガタリ。

 

 出会うは、少女。心をいまだ凍てつかせし、『冥府の女神』である。

 

 語られしは、悲劇か、喜劇か……………………では、モノガタリを始めよう。

 

 




これにてALO編終了!

なんか最後は『俺達の戦いはこれからだッ!』みたいですが、まだまだ続きますよ?作者がこういう引きが結構好きでして……

最終ステータス表と幕間はさんでいよいよGGO!メインヒロイン登場!

……なのだが、一瞬書いただけで圧倒的存在感。サチ、ヒロイン力高すぎだろ!

ここで一つお知らせ。GGO編の修正と練りこみのため、来週の投稿はお休みします。なので、ステータスと幕間の投稿は再来週になります。
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