ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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GGO編、第一話投稿!

何と、スタートはALO編のすぐ後です!



001 新たな生活と新たな隣人

 

 3月末。東京。

 

「あ、スイマセン。その先の道を右に―――」

 

 僕、銅島優矢(ドウジマ ユウヤ)はSAOとALOの事件解決後、東京都内の新設校に通うことに伴い、一人暮らしを始めることになりました。

 

 文章にすると一行だけど、実際にはそんなにいいものじゃない。何でもSAOに囚われてる間に、両親が離婚し、さらにそれぞれ別の相手と再婚していたらしいのだ。その上僕の親権がどちらに属するのかは未だに決まっておらず、一応は父方の祖父母の保護下にあるらしい。

 

 ただ、そうなると困るのは学校側で、都内の新設校はSAO被害者の監視も兼ねて設立されており、地方在住の祖父母の元に僕が帰ると、政府の目論見が外れることになる。

 

 政府側からも、地方在住の被害者は寮も用意するし、一人暮らしを支援する補助金も出すから何とか新設校に入って欲しいとの事だった。まあ、SAOのプレイヤーの中には、積極的ではなくても殺人に手を染めたプレイヤーも少なからずいる。当然地方に分散されると政府も監視しづらくなるから、やたら待遇を良くしてでもひとつ所に留めたいという意図が目に見えた。

 

 これは僕にとっては、身の不幸ではあるものの、ある面からすると幸運ともいえる状況でもあった。僕はMHCP-002だったこともあって、未だにSAOに入る前の自分と整合性が取れていない。それ以前の記憶も確かにあるのだが、どうにも他人のアルバムを見ているような感じなのだ。

 

(その上で、銅島優矢としての自覚もある…あの特殊な状況じゃ、仕方ないよね)

 

 本来、銅島優矢が宿っていた≪コペル≫と言うプレイヤーは、あのSAO開始当初に命を落としている。それでも助かったのは、MHCP-002≪Reiji≫が、喪失したデータを補填してくれたからだ。本来なら脳を焼き切られていたはずなのだから、どんな形であれ、文句は言わない。

 

 それに何だかんだ言ったところで、≪レイジ≫も自分自身なのだ。自分に感謝の念を抱くのもおかしな話である。

 

(今はそれより、自分の新居へ、思いを馳せますか)

 

 などと、頭を切り替え、詩的なことでも考えようとしていたのだが……

 

「なあ、レイジ。お前の新居、まだ着かないのか?」

 

 引越しの荷物を載せた荷台からの、文句ありげな声で全て台無しになった。

 

「……キリト。荷物を預かってた父の家からの所要時間は、予め説明したよね?」

 

「んなこと言ったって。この荷台、どうにも狭くて、早く出たいんだよ」

 

 幾分苦しそうな声が聞こえる。まあ、エギルさんが知り合いから借りてくれたこの軽トラックの荷台は、僕の運び込んだ家具や段ボールが一杯だから無理も無いか。

 

「もう少し我慢してくれる? あと少しで着く筈だから」

 

「ふぁ~い」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 そうして車に揺られること十分。ようやく新居に到着した。

 

 と言っても、新生活において少しでも節約しようと、不動産屋から紹介された、家賃が安くかなり古臭いアパートであった。かろうじてドアのロックこそ電子錠であるものの、本当に取って付けたような印象を受ける。

 

「ふ~、やっと出られた」

 

「…お疲れ」

 

 車から出た途端、近くの塀に寄りかかっているキリト――桐ヶ谷和人に、僕は松葉杖をつきながら声をかけた。

 

 僕の身体は、この一月の始めまでALOに囚われた状態であり、未だに筋肉がしっかり戻っていない。同時期に開放されたアスナさんも、未だにリハビリ中であり、4月の入学に間に合うかは、少し微妙なところらしい。

 

「何だよ、キリト! 現実じゃ体力無さ過ぎんぞ」

 

 そう声をかけるのは、我らがギルド≪風林火山≫のリーダー、クライン。正直本名も聞いたのだが、あの野武士ヅラと名前が僕の中で完全に一致しており、『リーダー』や『クラインさん』以外で呼ぼうとするとどうにも違和感が付きまとう。しばらくは『リーダー』で通すつもりだ。

 

「ごめん、ごめん。やっと追いついたよ」

 

「ここがレイジの新居かー」

 

「向こうでも世話になったんだ、これくらいしないとな」

 

「へっ、だけどシーフの俺は、重い荷物は持てねえぜ!」

 

「「「いばるな」」」

 

 他の車で手伝いに来てくれたのは、ギルド≪月夜の黒猫団≫のメンバー。ケイタ、ササマル、テツオ、ダッカーの四人。この四人とキリトは、現実に戻った当初、非常に微妙な空気が漂ったが、そこは年長者であるリーダーやエギルさんが何とかまとめてくれた。持つべきものは、友である。

 

「さーて、それじゃ運び込むか」

 

 ここまで車を運転してきたのは、東京の御徒町でバーを営むエギルさん。本名アンドリュー何とかさんらしいが、長すぎてしばらく『エギルさん』と呼ぶことにした。ちなみに黒猫団もそうなのだが、皆の許可は取っていない。

 

 これだけ大人数を動員したのは、僕が未だに松葉杖であり、引越しの作業が不自由だろうという、彼らの好意によるものだ。正直非常にありがたかった。

 

「オシ。俺やエギルが重い家具類を運び込むから、オメエとレイジは軽い段ボール頼むわ。くれぐれもレイジに無理させんじゃねえぞ」

 

「「は~~い」」

 

 ◇ ◇ ◇

 

「ふ~、大体片付いたな」

 

「そうだな、家具も全部運び込んだし」

 

「後は衣類とかの荷解きだけど、それくらいならレイジ一人で何とかなるだろ」

 

 夕方。あらかた作業も終了し、一仕事終えた皆が六畳間でくつろいでいた。まあ高校生の一人暮らしだから、狭くても余り不自由もない。この人数で入ると若干手狭になるが。

 

「みんなー。ピザ取ったから、食べるかい?」

 

『オーウ』

 

 やはり、引越しはピザだ。手づかみで食えるし、食器を出す必要もない。

 

「しかし少し古臭いけどいいなあ、ココ。スグの奴と喧嘩したら使わせてもらおうかな」

 

「人の家を≪安全地帯≫扱いですか。その場合、竹刀持ったリーファの突撃に、僕まで巻き込まれるでしょうが」

 

 キリトの妹、リーファこと直葉さんは、何でも剣道の腕前で推薦まで取っており、将来を嘱望された剣士だ。その上、ALOの世界では魔法も交えたシルフ族の一流剣士としてその名を轟かせている。万一兄妹喧嘩に巻き込まれようものなら、惨事になること請け合いだ。僕も好き好んでケガはしたくない。ALOの世界でも、≪鉄拳術≫無しなら勝てないし。

 

「にしても、生活費とかどうなってんだ? 都内で一人暮らしなら、それなりにかかるだろう?」

 

「家賃や光熱費は国からの補助金。後はSAO事件の賠償金を祖父母が別に保管してくれてたんで、それから出てるよ。でも大した額じゃないし、やっぱり夏休みに入ったらVR関係でバイトでも入れようかと……」

 

 MHCP時代の能力は、もうほとんど無くなったけど、プログラムへの理解力と構築力は未だに健在だ。何せ元々そっちの一部だったのだから、僕以上に理解出来ているのは、茅場の関係者か、姉のユイくらいだろう。

 

「オウ、それならウチに来な。社長にクチ聞いといてやるよ」

 

「リーダー、ありがとうございますっ!」

 

 これはありがたい。生活費の問題をなくす為にも、夏は稼がねば! そう決意しているところ、玄関の呼び鈴が鳴った。

 

「こんにちはー!」

 

「レイジ君、差し入れ持って来たわよー」

 

「こっちでの料理はまだ自信ないから、お母さんに手伝ってもらったけどね」

 

 そんな声と共に現れたのは、SAOで武器屋を営んでいたリズさん(本当はリズベットさんというらしい)こと篠崎里香さんと、その親友のアスナさんこと結城明日菜さん。それにサチこと、赤木幸恵だった。まあ、アスナさんはキリトが目当てな気もするが。

 

「それじゃあ、レイジの新たな門出を祝って!」

 

 追加されたドリンクが全員に行き渡り、いざ音頭を取るのは、我らがリーダー、クラインさん。

 

『かんぱーい!!!』

 

 ◇ ◇ ◇

 

「ほんじゃなー、レイジ」

 

「今度はウチの店に寄んなよ」

 

「それじゃあな、レイジ」

 

「今度は春に学校でねー」

 

「またねー」

 

 引越しの打ち上げも終わり、皆はそれぞれ帰路へ。――しかし。

 

「これからご近所へ挨拶回りかー。さっきまでの騒ぎで悪影響出ないかな?」

 

 時間的にもまだ早いから、伺っても大丈夫とは思うが、騒がしいのが嫌いなら、さっきので影響が出ることも十分考えられる。

 

(まあ、なるようになるか……)

 

 そんなことを考えつつ、自分の家のすぐ隣のインターホンを鳴らす。僕の家はアパートの奥側、階段から三つ目の扉で、この階に入っているのは、不動産屋さんの話では、お隣さんだけのはずだ。

 

『はい……?』

 

「あー、すいません。隣に引っ越してきた銅島といいます。引越しの挨拶に来ました」

 

『あ、はい。今開けますね』

 

 そうして、一度チェーンロックでこちらを確認した後、出てきたのは自分と同年代くらいの眼鏡をかけた少女だった。

 

「あ、どうも。隣に引っ越してきた、銅島優矢といいます」

 

 そう言って、洗剤のギフトセットを差し出した。だが、そんな中でも、僕はAI時代の勘なのかどうなのか、目の前の少女の纏った少し暗い印象が気になっていた。

 

 

「あ、ご丁寧にどうも。……私、『朝田詩乃』といいます」

 

 

 これが、僕と少女、朝田詩乃の出会い。そしてそれは、僕を新たな大地、銃と硝煙があふれる世界、≪ガンゲイル・オンライン≫へと導くのだった。

 

 




と、いうわけで第一話でした。

シノンは、噂が広がってから、学校側でフラグを立てようとすると大変なキャラですが、『安アパートで一人暮らし』、『恭二が出入りできたから女子寮の類ではない』という辺りを考えて、隣人フラグにしてみました。この展開のためだけに、離婚したレイジの両親……

あと、SAOの二次小説で作者が疑問に思っていた、『何で皆キリトと一緒にコンバートするんだ?』という素朴な疑問に、完全に反する展開になります。『強くてニューゲーム』って、あんまり好きじゃないんですよ……
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