ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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一週空いて再開です!

今回は、数あるSAO二次創作でも、SAO以外にはほとんど登場しないヒトを出してみました。多分こういう理由だと思います……


007 再会と最初のクエスト

 

「……さて、これからどうしようか?」

 

 シュピーゲルの質問に、全員が顔を見合わせる。実際本日はチュートリアルで時間を取られるだろうと、かなり夜の早い時間にログインしているのだ。

 

「私は……まだ大丈夫」

 

「僕も大丈夫だよ。ただ、さっきいきなり対人戦だったから、次はモンスター相手の方がいいかな」

 

「そ、そうだね。うーん、でもこのレベル帯にちょうどいいダンジョンかー……」

 

 シュピーゲルが悩んでいるようだが、何もダンジョンに限る必要ないんじゃないか?

 

「あのさ…何もダンジョンに潜らないでも、クエストとかイベントを探してみるとかでもいいんじゃない?」

 

 モノによっては、ダンジョンよりも短時間で終わる場合もあるし。いくら早い時間でも、対人戦をこなした後に長時間のダンジョン探索は、シノンには負担だろう。

 

「うーん、そうだね。それじゃあ向こうの広場にある≪立体(ホロ)クエストボード≫を見てみようか」

 

「へえ、そんなのあるのか」

 

 その話に興味を引かれ、シュピーゲルの先導で歩き出す。実際ALOではファンタジーの世界観を出すためか、そう言った未来的なオブジェはほとんど無かった。

 

「ほら、あれだよ」

 

「うわあ……!」

 

「すごい……!」

 

 それは、まるで巨大な塔。空中にいくつものクエストボードが浮かび、それがはるか上空まで続いている。それだけではなく、赤や黄色の電飾、キラキラと輝くグラデーションなど、見るからに面白そうに飾り立てることで、少しでも見る人を取り込もうと必死だった。

 

「このクエストボードはNPCや運営側が出すものだけじゃなく、一般プレイヤーもクエストを出せるんだよ」

 

「へえ、それは面白いね」

 

「……どういうこと?」

 

 ココで疑問を挟んだのは、まだこうしたゲームに詳しくないシノンだ。

 

「うーん、つまりね、Aというプレイヤーが、Bというモンスターから出るアイテムが10個必要なら――」

 

「このボードを利用して、他の誰かに集めてきてもらうことも可能ってこと」

 

「…そっか。そのときに何らかの報酬をもらえば、その依頼を受けるプレイヤーにもメリットが出てくるってことね」

 

「「そういうこと」」

 

 この辺りは、ゲームを普段やる人間とやらない人間の認識の違いだろう。実際「何かを取って来い」と言われても、ゲームに慣れてないと「どこどこの敵を倒す」という物騒な発想は出てこない。

 

「クエストの確認自体は、気になったボードに視線でカーソルを合わせて、指先で空中をクリックすれば、ズーム画面が見られるよ」

 

「へえ、どれどれ……」

 

 早速ビルの三階分くらいの高さにあるオレンジのボードに注目し、クリック。すると手元に、内容が同じウインドウが新たに生じた。

 

「ふ~ん、『南の砂漠のオオイトクモから出る糸球を20個集めよ』か。どのくらいの強さなのかな?」

 

 実際、内容だけ見ても難易度が解らない。そう思っていたのだが……

 

「あ、あれ? 適正レベルが書いてある。プレイヤー依頼のはずなのに、随分と親切なクエストだな」

 

 一体どんな基準で、適正レベルを決めたんだ?

 気になって、クエストの依頼人の名前に目を走らせた。

 

 

「………………え?」

 

 

 そこに書いてあった名前に、驚愕した。

 

「シュピーゲル! クエストの依頼者に会う方法は!?」

 

「わわ! どうしたのさ、零二!」

 

「頼む、どうしても知りたいんだ」

 

「……って、いわれてもな…このクエストボードは相手と会わずに依頼品をやり取りすることが出来るし、直接会うことはほとんど無いと思うよ。名前がわかってるなら、近隣連絡用のインスタンスメッセージで呼び出すくらいかな?」

 

「そっか、その方法があった!」

 

 言われて即座に、空中にキーボードを呼び出し、打ち込む。あのゲーム(・・・・・)にいた本人なら、すぐにわかるメッセージを。

 

「でも、インスタンスメッセージは少なくともこの街の中にいないと届かないし、相手もログインしてないといけないよ。第一、相手が応じるかどうか……」

 

「……いや、あの人なら、必ず応じると思う」

 

 この内容を見たら、必ず。

 

「……一体、どうしたの、零二? 私には全然話が見えないんだけど、その依頼者と何かあったの?」

 

「何かというか……あー、その、古い友人なんだ」

 

 流石にSAOのことは話せない。どんな風に質問をかわそうかと、考えていたときだった。

 

 

『ひどいナー、オイラとのことはアソビだったのカイ?』

 

 

 そんな勘違いされそうなセリフを吐く、第三者の声が響いた……。

 

「え?! 誰!?」

 

「僕にもわからない……≪隠蔽(ハイディング)≫スキルか!?」

 

「――そのとーりダヨ。……君達は普通のGGOプレイヤーみたいダネ」

 

 新たな声が響いたのは、何と三人の立ち位置の中心。そこに新たな人影が、いきなり生じたのだ。

 

 それは、この硝煙と砂で覆われた世界に似つかわしくない人物だった。背丈はシュピーゲルよりほんの少しだけ低いが、それでもシノンより高い。ロングの髪は全体にウェーブがかかり、きらめくような金髪だった。その美貌もまたすばらしく、文字通りきらめくような美しさだった。

 装備自体はオーソドックスな砂漠色の迷彩服に、同色のフードマント。腰には四角い奇妙な銃が提げられていた。

 

 その顔にも、その装備にも覚えはなかったが、一つだけ、記憶と合致するものがあった。

 

「……で、オイラをあんなメールで呼び出した、ソッチの君は、ドコのドナタなのカナ?」

 

 それは、顔全体に施された、『三本線のおヒゲ』のペイント。

 

「……僕ですよ、『アルゴ』さん」

 

 そう言って、顔のゴーグルとマフラーを外し、素顔を晒す。そこにあるのは、以前の世界と変わらない自分の顔。たちまち目の前の人物が、息を呑む。

 

 

「――――レ、レイ坊……?」

 

 SAO最高の情報屋、≪鼠≫のアルゴがそこにいた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

「ぷッは~~!」

 

 ここは、街の路地裏にあった小さな酒場。あれから、「話を他の人間に聞かれたくない」ということで、アルゴの行きつけの酒場に連れられてきた。こちらは初心者ばかりのため、酒代は各自支払いとなった。

 

 ちなみに彼女を呼び出すのに使ったメッセージは、以前キリトに聞いた、β時代の『おヒゲの理由』だった。

 

「――それで? 何でアルゴさんは、この世界にいるんですか?」

 

「オイオイ、それはこっちの台詞ダゾ? なーんで、レイ坊はこのGGOに来たんダ? こっちじゃ、レイ坊のプレイスタイルなんて戦うこともままならないダロウ?」

 

 まあ、確かに。SAO時代の僕を知ってる人間からすれば、そっちの方が違和感はあるか。

 

「こっちも現実(リアル)でいろいろあったんですよ……そっちも答えてくださいよ? 商売の基本はギブアンドテイクでしょ?」

 

「ん? 小遣い稼ぎダヨ?」

 

 きょとんとした顔で返された。しっかし、昔の彼女を知っている自分からすると、あの外見(アバター)で、昔の≪鼠≫っぽい仕草は、死ぬほど似合わない。

 

「……『通貨還元システム』ですか」

 

「そーいうこと。コレが結構な稼ぎになるんダヨ~♪」

 

「……守銭奴っぷりに、ますます磨きがかかってませんか」

 

 彼女のプレイスタイルなら、恐らく相当稼ぐことも可能だろう。……恨みも相当、買いそうだが。

 

「あ、あのさ、零二……」

 

「ん?」

 

「そろそろ私達に、彼女を紹介してくれると嬉しいんだけど……」

 

「おお! こりゃウッカリしてタ! そーいや、自己紹介もまだダッタナ!」

 

 そう言ってアルゴさんが、二人のほうを向く。その顔は、本性を知らなければ騙されそうな、笑み。

 

「オレっちの名前はアルゴ。昔レイ坊とただならぬカンケイに――――」

 

「ただの情報屋と、その常連客です。以上!」

 

 情報屋のクセに、いきなりガセを流すとは何事か。

 

「「……『情報屋』?」」

 

「ソウ、情報屋。オイラはプレイヤーが必要な情報を売り払うことを生業にしてるのサ。必要な情報があるなら、売るゾ? レイ坊の知り合いみたいだから特別割引で♪」

 

「割引はしても、金は取るんですね……」

 

 ある意味、さすがと言える。

 

「で、でも、ゲームの攻略情報なんて、それこそどこかでサイトを探せば見つかるじゃない? 情報屋さんから買う人なんて――」

 

「ところがどっこい! このゲームではそんな常識は通用しないのサ! 何故だか分かるカナ?」

 

 そこでシュピーゲルが、ぽんと手を叩く。

 

「『通貨還元システム』か……!」

 

 そう、ソレこそがこのゲームの『足枷』だ。

 

「そのトーリ! このゲームは、ある意味現実の通貨をやり取りするからネ。儲け話があっても、他のゲーム以上に情報が広まりにくいのサ!」

 

 情報の封鎖、隠蔽、改ざん、詐欺。恐らくこのゲームのシステムなら、かつてのSAOと同じ位の欺瞞情報が乱立するだろう。そう考えると、ここで彼女に会えたのは幸運だった。

 

「それじゃあ、アルゴさん。交渉に移りましょう」

 

「オ? 久々に≪風林火山≫の参謀モードじゃないカ。だけど……情報に見合った、コイツはあるのカイ?」

 

 そう言って彼女は、右手の親指と人差し指で丸を作る。本ッ当に、あの外見にはモッタイナイ。

 

 

「僕らの今のレベル帯で受けられる中で、最高のクリア報酬が得られるクエスト・ダンジョンを教えてください。報酬は……あのゲームでの『貸し』全部」

 

 

 GGOでも長い付き合いとなる、彼女との最初の交渉は、成功した。

 




というわけで、満を持して『鼠のアルゴ』登場!
多分このヒトが出てこないのは、『情報屋』の商売が他のゲームだと『出来ない』からだと思ったんですよ。『善意』の情報サイトで事足りますから……

情報屋が成り立つのは、

1.期間限定のゲーム(βテストなど)
2.デスゲーム(いわずと知れたSAO)
3.現実のお金が絡む(GGO)

くらいだと思ったので、ここで登場となりました!
貴重なアドバイザー役がいると、物語進めやすいんですよ♪

ちなみにアルゴのキャラデータは、SAO→ALO→GGOと渡り歩いた最高ランクの情報屋キャラです!
現時点だと、闇風より強いかも……
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