ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
今回は、数あるSAO二次創作でも、SAO以外にはほとんど登場しないヒトを出してみました。多分こういう理由だと思います……
「……さて、これからどうしようか?」
シュピーゲルの質問に、全員が顔を見合わせる。実際本日はチュートリアルで時間を取られるだろうと、かなり夜の早い時間にログインしているのだ。
「私は……まだ大丈夫」
「僕も大丈夫だよ。ただ、さっきいきなり対人戦だったから、次はモンスター相手の方がいいかな」
「そ、そうだね。うーん、でもこのレベル帯にちょうどいいダンジョンかー……」
シュピーゲルが悩んでいるようだが、何もダンジョンに限る必要ないんじゃないか?
「あのさ…何もダンジョンに潜らないでも、クエストとかイベントを探してみるとかでもいいんじゃない?」
モノによっては、ダンジョンよりも短時間で終わる場合もあるし。いくら早い時間でも、対人戦をこなした後に長時間のダンジョン探索は、シノンには負担だろう。
「うーん、そうだね。それじゃあ向こうの広場にある≪
「へえ、そんなのあるのか」
その話に興味を引かれ、シュピーゲルの先導で歩き出す。実際ALOではファンタジーの世界観を出すためか、そう言った未来的なオブジェはほとんど無かった。
「ほら、あれだよ」
「うわあ……!」
「すごい……!」
それは、まるで巨大な塔。空中にいくつものクエストボードが浮かび、それがはるか上空まで続いている。それだけではなく、赤や黄色の電飾、キラキラと輝くグラデーションなど、見るからに面白そうに飾り立てることで、少しでも見る人を取り込もうと必死だった。
「このクエストボードはNPCや運営側が出すものだけじゃなく、一般プレイヤーもクエストを出せるんだよ」
「へえ、それは面白いね」
「……どういうこと?」
ココで疑問を挟んだのは、まだこうしたゲームに詳しくないシノンだ。
「うーん、つまりね、Aというプレイヤーが、Bというモンスターから出るアイテムが10個必要なら――」
「このボードを利用して、他の誰かに集めてきてもらうことも可能ってこと」
「…そっか。そのときに何らかの報酬をもらえば、その依頼を受けるプレイヤーにもメリットが出てくるってことね」
「「そういうこと」」
この辺りは、ゲームを普段やる人間とやらない人間の認識の違いだろう。実際「何かを取って来い」と言われても、ゲームに慣れてないと「どこどこの敵を倒す」という物騒な発想は出てこない。
「クエストの確認自体は、気になったボードに視線でカーソルを合わせて、指先で空中をクリックすれば、ズーム画面が見られるよ」
「へえ、どれどれ……」
早速ビルの三階分くらいの高さにあるオレンジのボードに注目し、クリック。すると手元に、内容が同じウインドウが新たに生じた。
「ふ~ん、『南の砂漠のオオイトクモから出る糸球を20個集めよ』か。どのくらいの強さなのかな?」
実際、内容だけ見ても難易度が解らない。そう思っていたのだが……
「あ、あれ? 適正レベルが書いてある。プレイヤー依頼のはずなのに、随分と親切なクエストだな」
一体どんな基準で、適正レベルを決めたんだ?
気になって、クエストの依頼人の名前に目を走らせた。
「………………え?」
そこに書いてあった名前に、驚愕した。
「シュピーゲル! クエストの依頼者に会う方法は!?」
「わわ! どうしたのさ、零二!」
「頼む、どうしても知りたいんだ」
「……って、いわれてもな…このクエストボードは相手と会わずに依頼品をやり取りすることが出来るし、直接会うことはほとんど無いと思うよ。名前がわかってるなら、近隣連絡用のインスタンスメッセージで呼び出すくらいかな?」
「そっか、その方法があった!」
言われて即座に、空中にキーボードを呼び出し、打ち込む。
「でも、インスタンスメッセージは少なくともこの街の中にいないと届かないし、相手もログインしてないといけないよ。第一、相手が応じるかどうか……」
「……いや、あの人なら、必ず応じると思う」
この内容を見たら、必ず。
「……一体、どうしたの、零二? 私には全然話が見えないんだけど、その依頼者と何かあったの?」
「何かというか……あー、その、古い友人なんだ」
流石にSAOのことは話せない。どんな風に質問をかわそうかと、考えていたときだった。
『ひどいナー、オイラとのことはアソビだったのカイ?』
そんな勘違いされそうなセリフを吐く、第三者の声が響いた……。
「え?! 誰!?」
「僕にもわからない……≪
「――そのとーりダヨ。……君達は普通のGGOプレイヤーみたいダネ」
新たな声が響いたのは、何と三人の立ち位置の中心。そこに新たな人影が、いきなり生じたのだ。
それは、この硝煙と砂で覆われた世界に似つかわしくない人物だった。背丈はシュピーゲルよりほんの少しだけ低いが、それでもシノンより高い。ロングの髪は全体にウェーブがかかり、きらめくような金髪だった。その美貌もまたすばらしく、文字通りきらめくような美しさだった。
装備自体はオーソドックスな砂漠色の迷彩服に、同色のフードマント。腰には四角い奇妙な銃が提げられていた。
その顔にも、その装備にも覚えはなかったが、一つだけ、記憶と合致するものがあった。
「……で、オイラをあんなメールで呼び出した、ソッチの君は、ドコのドナタなのカナ?」
それは、顔全体に施された、『三本線のおヒゲ』のペイント。
「……僕ですよ、『アルゴ』さん」
そう言って、顔のゴーグルとマフラーを外し、素顔を晒す。そこにあるのは、以前の世界と変わらない自分の顔。たちまち目の前の人物が、息を呑む。
「――――レ、レイ坊……?」
SAO最高の情報屋、≪鼠≫のアルゴがそこにいた。
◇ ◇ ◇
「ぷッは~~!」
ここは、街の路地裏にあった小さな酒場。あれから、「話を他の人間に聞かれたくない」ということで、アルゴの行きつけの酒場に連れられてきた。こちらは初心者ばかりのため、酒代は各自支払いとなった。
ちなみに彼女を呼び出すのに使ったメッセージは、以前キリトに聞いた、β時代の『おヒゲの理由』だった。
「――それで? 何でアルゴさんは、この世界にいるんですか?」
「オイオイ、それはこっちの台詞ダゾ? なーんで、レイ坊はこのGGOに来たんダ? こっちじゃ、レイ坊のプレイスタイルなんて戦うこともままならないダロウ?」
まあ、確かに。SAO時代の僕を知ってる人間からすれば、そっちの方が違和感はあるか。
「こっちも
「ん? 小遣い稼ぎダヨ?」
きょとんとした顔で返された。しっかし、昔の彼女を知っている自分からすると、あの
「……『通貨還元システム』ですか」
「そーいうこと。コレが結構な稼ぎになるんダヨ~♪」
「……守銭奴っぷりに、ますます磨きがかかってませんか」
彼女のプレイスタイルなら、恐らく相当稼ぐことも可能だろう。……恨みも相当、買いそうだが。
「あ、あのさ、零二……」
「ん?」
「そろそろ私達に、彼女を紹介してくれると嬉しいんだけど……」
「おお! こりゃウッカリしてタ! そーいや、自己紹介もまだダッタナ!」
そう言ってアルゴさんが、二人のほうを向く。その顔は、本性を知らなければ騙されそうな、笑み。
「オレっちの名前はアルゴ。昔レイ坊とただならぬカンケイに――――」
「ただの情報屋と、その常連客です。以上!」
情報屋のクセに、いきなりガセを流すとは何事か。
「「……『情報屋』?」」
「ソウ、情報屋。オイラはプレイヤーが必要な情報を売り払うことを生業にしてるのサ。必要な情報があるなら、売るゾ? レイ坊の知り合いみたいだから特別割引で♪」
「割引はしても、金は取るんですね……」
ある意味、さすがと言える。
「で、でも、ゲームの攻略情報なんて、それこそどこかでサイトを探せば見つかるじゃない? 情報屋さんから買う人なんて――」
「ところがどっこい! このゲームではそんな常識は通用しないのサ! 何故だか分かるカナ?」
そこでシュピーゲルが、ぽんと手を叩く。
「『通貨還元システム』か……!」
そう、ソレこそがこのゲームの『足枷』だ。
「そのトーリ! このゲームは、ある意味現実の通貨をやり取りするからネ。儲け話があっても、他のゲーム以上に情報が広まりにくいのサ!」
情報の封鎖、隠蔽、改ざん、詐欺。恐らくこのゲームのシステムなら、かつてのSAOと同じ位の欺瞞情報が乱立するだろう。そう考えると、ここで彼女に会えたのは幸運だった。
「それじゃあ、アルゴさん。交渉に移りましょう」
「オ? 久々に≪風林火山≫の参謀モードじゃないカ。だけど……情報に見合った、コイツはあるのカイ?」
そう言って彼女は、右手の親指と人差し指で丸を作る。本ッ当に、あの外見にはモッタイナイ。
「僕らの今のレベル帯で受けられる中で、最高のクリア報酬が得られるクエスト・ダンジョンを教えてください。報酬は……あのゲームでの『貸し』全部」
GGOでも長い付き合いとなる、彼女との最初の交渉は、成功した。
というわけで、満を持して『鼠のアルゴ』登場!
多分このヒトが出てこないのは、『情報屋』の商売が他のゲームだと『出来ない』からだと思ったんですよ。『善意』の情報サイトで事足りますから……
情報屋が成り立つのは、
1.期間限定のゲーム(βテストなど)
2.デスゲーム(いわずと知れたSAO)
3.現実のお金が絡む(GGO)
くらいだと思ったので、ここで登場となりました!
貴重なアドバイザー役がいると、物語進めやすいんですよ♪
ちなみにアルゴのキャラデータは、SAO→ALO→GGOと渡り歩いた最高ランクの情報屋キャラです!
現時点だと、闇風より強いかも……