ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
そして前回を少し修正しました。ビームライフルが、『跳弾』するわけない……
SIDE:シノン
8月。東京。
それなりにGGOにも慣れ、対Mobや対プレイヤー戦もこなすようになってきたある日のこと、私とシュピーゲルは、GGO内の路地の一角にあった喫茶店で、一人の友人について話していた。
「……シュピーゲル。私最近、疑問に思うことがあるんだけど」
「奇遇だね、シノン。僕もだよ……」
…そう、それは。
「「零二って、何者?」」
このガンゲイル・オンラインというゲームにおいて、彼のプレイスタイルは明らかに異質だ。2ヶ月たった今でこそ、銃も少しは当たるようになったものの、それでも命中率は高くない。半分も当たればかなり
では、強くないのかと言うと、そんなことは無いのだ。実際、あの最初の襲撃から、何度かプレイヤーの集団に襲われることもあったが、撃退できたのは、半分くらい彼のおかげである。勘が鋭いのか分からないが、敵が迫ってきている時に限って、いち早く彼が気づいて対応できる時が何度もあった。
「……アイツの勘は、どうなってるのかしらね」
本人は、最近では≪索敵≫と≪聴音≫スキルを取って、さらにその感覚を伸ばす気でいる。その内1km先の狙撃すら感知しそうで怖い。
そして、肝心のプレイスタイルはと言うと、彼のプレイスタイルは、現状あるどんなビルドにも当てはまらないのは確かだ。
「それもそうだけど、僕はあの武器切り替えも脅威だと思うよ?」
彼は、≪
彼はSTR=VITの二極型で、重機関銃などの重過ぎる武器は持てない。それ自体は分かるのだが、それならそれで、ハンドガンや軽機関銃のマスタリーを取れば良い。
それなのに、彼はそうした≪
こうした持ち替えが可能な理由としては、光学銃の特徴の一つに、『エネルギーパックの規格が共通』であることが挙げられる。容量の差こそあれ、同一の規格だから、付け替えが可能なのだ。
もっとも、重量制限のせいで、持ち運びできるのは、精々二~三種類が限界だが。それでも多彩な攻撃方法を選択可能というのは、非常にうらやましい。
「……武器、か。一番好んで使うのが、鉄板入りの靴での『蹴り』だっていうんだからね」
そんな彼が唯一取った攻撃スキルは、恐らく日本で取っているのは彼一人だと断言できる≪
しかし、銃があるのに、なぜそこまで蹴りや拳を使いたがるのかは、未だに分からない。敵を銃床で殴った時は、流石に説教したが。
「でも、助けられているのは事実だよ。彼、僕らのパーティーでは、≪
…そうなのだ。彼が、もっとも得意とするのは、
それによって、敵の目を引きつける
「最近では、私達の装備も見てくれるようになったわね……」
「はは……」
このゲーム、基本的に対人用の実弾銃は、プレイヤーの手では作れない。そのため、基本的にはダンジョンなどで取ってきた銃をカスタマイズして使うのだが、信頼できる改造屋が現状少ないのも事実なのだ。それならと言って、スキルスロットに余裕がある零二が、≪銃器改造≫と≪防具作製≫のスキルを取ったのだ。そのため、二人とも銃のカスタマイズは彼に一任して、それぞれの専門を伸ばすスキルを取っている。
「そういえばさ、シノン知ってた? 最近零二、
「…そうなの? まあ、確かにこのゲームじゃ、
「うん。でも、不定期に路地裏に出店を出すだけらしいけどね」
意味が分からないのは、その≪防具作製≫だ。このゲームで、それを行ってくれるところが、ほとんど無いと知った時点で、真っ先に取っていたが、何か必要なものでもあるのだろうか?
「そう言えば、その彼、今日は何で来なかったの? 用事としか聞いてないけど?」
「何でも、夏期休暇中だから、アルバイトとバイクの免許を取りに行ってるらしいわよ? 知り合いから要らないバイクをもらう予定があるんだって」
「へえ……そうなんだ。僕はてっきり、この間みたいにもう片方のVRに入り浸ってるのかと思ったよ」
彼がやっている『もう一つのVRゲーム』について、私達は深く追求してはいない。そっちでの彼は、純粋な
「でも、気になるよね。彼、一体何処で、あんな凄い格闘技能を身につけたのか」
「何でも、他のゲームで身につけた、とは言ってたわね? でもどんなことをしたら、VR空間であんなに動けるのかしら……」
「う~ん…何かそのゲームの、特徴とか聞いてない?」
確かに気にはなる。ビルドからして、私達はあんなインファイトは行えないが、彼は他のゲームでは一体どんなプレイヤーなのだろうか?
「特徴……確か、オーソドックスな『剣と魔法のファンタジー』で……ああ、そうだ、確か」
「何?」
「いや、確か向こうのゲームでは、プレイヤー全員『飛べる』から、空中コンボが入れられない、って言ってたわね」
「え……」
その特徴を聞いた途端、シュピーゲルの両目が大きく見開かれた。
「何? もしかして、心当たりあるの?」
「う、うん……それ、多分、一時期話題になった、≪アルヴヘイム・オンライン≫だと思う」
「え? それって…あの≪ALO事件≫の?」
「うん」
ALO事件。それは、一人の科学者によって、旧SAOプレイヤーの仮想空間での『監禁』と、違法な『人体実験』が明らかになった事件だ。実際現行の≪アミュスフィア≫では、様々なセーフティによって、監禁することなど出来ないが、悪名高き≪ナーヴギア≫には、そんなセーフティはついておらず、彼はそんなSAOプレイヤーで、人体実験を行おうとしていたと言うのだから恐ろしい。
他のVRMMOにそこまで詳しくない自分でも、散々ニュースになったせいで、名前くらいは知っている。
「あれって…一体どんなゲームなの?」
「確か、完全スキル制。レベルが無いから、自分の取ったスキルを使い続けて、キャラを強化していくゲームだね」
「うわ、ハード……」
レベルで数値的な差がつかないなら、勝敗を決めるのは、唯一プレイヤースキルのみ。どれだけそのキャラの力量を引き出せるかの差になってしまう。
「それと、シード規格に生まれ変わった後、もう一つ5月頃に、話題になったアップデートがあったね」
「どんなの?」
「≪ソードアート・オンライン≫の舞台、浮遊城≪アインクラッド≫の実装と、SAOの≪ソードスキル・システム≫の実装だよ」
「SAO!?」
スキルの方は聞いたことの無いシステムだが、SAOというゲーム名は知っている。というか、VRゲーマーでなくても、あれだけ騒がれた事件を知らないものなど、ほとんどいない。
SAO事件。それは、今から三年ほど前、当時まだ黎明期といえたVRMMORPGに、一万人もの人々が囚われ、ログアウトできない状態となるという事件だった。開放されたのは二年後、当初一万人いたプレイヤーは、開放時点で6000人弱まで減っていたというのだから恐ろしい話だ。主犯の茅場氏によれば、無理矢理ナーヴギアを取るか、内部でHPがゼロになると、脳をマイクロ波で焼き切る仕掛けを施してあるとのことで、実際にその仕掛けで4000人近い人の命が奪われている。当時はまだVRゲームに興味も無かった自分ですらニュースで何度も見たのだから、VRゲーマーにとっても、『伝説のゲーム』といえるだろう。
「SAOの≪ソードスキル≫は、自分の手に持った武器で、特定の動きをすると発動し、ダメージが大きくなると言うものだけど…そうか、だからなのかも知れないね」
「え?」
「いや、彼の動きの中に、どう見ても、大げさで動きの大きなものがあったでしょ?」
そう言われ、思い返す。彼は、銃を持っているときは蹴りくらいしか使わないが、それでもコマのように回転したり、ダッシュ状態から蹴り上げたりと、妙に動きが大きいものがあった。
「…そうだね。確かにあった」
「あれは、ソードスキルの一種なのかも。…あれ、そうなると、彼は……」
そのことは、一つの結論を導き出す。そうだとすれば、彼は……
「「…SAO
それなら、彼の異常なほどのプレイヤースキルの高さ、近接戦での異常な強さも一応は説明がつく。だけど……
「いくらなんでも、それはないわよね…?」
「そもそも…デスゲームの中で、素手で戦おうなんて、考える人はいないよね?」
HPが無くなれば死ぬ状況で、武器もなしに戦おうなんて、常軌を逸している。いくらなんでも、そんな奴はいないだろう。
「それなら……多分ALOの古参プレイヤーってことじゃない? 完全スキル制なら、ベテランプレイヤーには、そういう人もいるだろうし」
「そ、そうだよね。いくらなんでも、素手でデスゲームから生き残るなんて……」
この時、私達は彼の正体も、何も知らなかった。だけど、この数ヵ月後、私は彼の正体と共に、その背負った罪も同時に知ることとなった。それは、私が抱える闇と再び向き合うことにもなったんだ。
◇ ◇ ◇
「そう言えば、彼のこと知ったプレイヤーが、変な二つ名で彼を呼び始めたらしいよ?」
「……どんな?」
「うん。彼がどんなビルドにも当てはまらない、あらゆる銃を使うところから――」
「ガンスリンガー(銃使い)、だってさ」
SIDE OUT
はい、今回は考察回でした。
レイジがALOプレイヤーだとバレてしまいましたね。もっともSAOの方はそう簡単にバレないのですが…
レイジはマスタリーをとらずに、切り替える戦闘方法にしました。弾丸、というかエネルギーパックが共通なら可能なやり方です。そして、多分誰もやらない……スキル構成には作製系やら≪聴音≫やら入ってるし、完全に謎ビルドです♪
ここでお知らせ。来週またもや所用があり、投稿できなくなりました。しかも再来週にもその所用がずれ込むことも……もしかしたら、一週間か二週間、間が開くかもしれません。読んで下さっている皆さん、申し訳ないです!
次でネタ回に入ろうと思ってたのに……グスン