ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
ピ○チ姫か?
否!ヒロインとは『景品』ではなく、『女英雄』のことである!
「蹂躙せよ!!」
「ヒャッハー! 汚物は消毒だーーッ!!」
「今度こそ喰らうがいい! 我が、南○爆殺拳!」
「やかましーーーッ!!」
相手の口上をぶった切り、バイクの上空に正面からジャンプ。筋力値を活かしたその跳躍は、バイクの加速度も手伝って、強力な蹴りを火炎放射器持ちに喰らわせる結果となった。
「ぐえッ……!?」
奇妙な声を上げた相手の口に、ショットガンを突っ込み引き金を引く。一瞬も耐えることなく、首から上はポリゴンの破片と散った。
「おのれッ!」
仲間をやられたことで逆上した、
「……じゃあ、これならどうだ?」
そう言って、足元に落ちていた先ほどの男の火炎放射器のタンクを、徐に掴み――――投げつけた。
「なッ……?!」
全員が全員爆弾持ちだったこともあって、そいつらは距離を取ろうとせず、突っ込んできていた。ではそこに、正面から
「「「「し、死にたくねええええッ、死に、たわらばっ!?」」」」
……最期まで、息のピッタリと合ったネタに、素直に感心した。全員の手持ちの爆発物にも引火し、辺りは爆撃機から空爆でも受けたかのような惨状となった。
「フフフフフッ! 少しはやるみたいだなぁ!」
次に目の前に出てきたのは
「兄より優れた弟など存在しねえ!! オレ様がそのことを証明してやろう!」
「……いや、ここに世紀末救世主はいませんから」
そういうことは本人に言ってください。大体その理屈だと真後ろに『最強』がいます。
「ぶふふ~、小鼠ちゃんおいで~。オレ様が抱きしめてあげよう~」
「ちょっと?! 流石にソレはセクハラダヨ!?」
「離れてください、変質者!」
そう言って、シュピーゲルが
「な……弾丸が?!」
「脂肪にめり込んで……!?」
「ぶふふふふ~! これぞオレ様の切り札、生体服用型
つまり、銃弾が効かない。脂肪で威力を吸収しているだけなので、恐らくは実弾系だけであろうが……。
「なら、これでどうダヨ!」
そう言って放たれたのは、アルゴさんが腰に提げていた、
しかし、それでも目の前の相手は悠々と向かってくる。
「ぶふふふふ~。オレ様はこの≪ファットマン≫が無くても、
「「くっ……」」
ここにきて二人は、ようやく理解する。目の前にいるのは、ネタだけではない、真の実力者なのだと。
◇ ◇ ◇
「アルゴさん! シュピーゲル!」
「おおっと。助けに行きたけりゃ、このオレ様を倒すんだなぁ~~?」
目の前を横付けしたハーレーでふさがれる。……ふざけてるのか?
「なら、一瞬で――――」
「
此方がダッシュした一瞬を見切り、停止したハーレーでその場で鋭いターンを決める。砂漠を再現して発生する≪砂煙≫のエフェクトに視界をふさがれる。
「なッ……!?」
「今は悪魔のほほえむ時代なんだぁ~っ!」
ネタセリフとともに、『両手』にショットガンを持った
「曲乗りですか?!」
「オレ様たちはなぁ、ロールプレイのためなら、いくらでも苦難を超えられるんだよ!」
ある意味すごい人達だが、情熱の方向が絶対に間違ってる。横に転がりながら、銃弾をかわし続ける。しかし『面』で広がるショットガンを全てかわすことなど出来ず、HPがたちまち黄色く染まる。
「これで終わりだぁ~~~!!」
そう言って相手が取り出したのは、ハーレーの横にくくりつけてあった、『バズーカ砲』。一瞬もためらうことなく、引き金を引く。
銃弾よりは遅い、ロケット砲が自分へと向かう中、僕がその顔に浮かべたのは、恐怖でも、絶望でもなく――――『笑み』だった。
「残念だったなあ!」
ロケット砲の下を潜り抜け、幅跳びの要領で大ジャンプ。その瞬間に広がる『爆発』と『爆風』。
「なにいいっ!?」
ショットガンを放棄し、装備を軽くしたため、先ほどのジャンプキックとは比べ物にならない高度へと到達する。その位置から相手を倒すため……、こちらもネタに走った。
「あたたたたたたたたたた! ≪北○百裂拳≫!」
「ぬうっ! その技で来るか! ならばこちらも、≪北○羅漢撃≫!!」
相手はわざわざバイクを降り、素手で突進してきた。……やはりだ。この人たちは勝つことよりも、ネタに走ることを至上としている。だからこそ……『引っ掛け』にも引っかかる。
「ぬうんっ! って、なにいっ!?」
こちらの連続パンチに対抗して出された右腕を掴み、引き寄せる。相手の頭上に回るころには、既にモーションに入っていた。
「これがこのゲームの≪
台詞とともに、相手の首を180度回転。ゴキリという音とともに、HPを完全に消し飛ばす。敵の身体のポリゴンが舞い散る中、姿勢を変えて着地する。
「ハア、ハア……早く皆の下へ――――」
そう言って歩き始めた僕に、黒く大きな影が差した。
「……見事な腕だな」
そう話すその身は、GGOではありえぬほどの威容。そして、その馬もまたあきらかに周囲に威圧を放っていた。
「……次は、オレが貴様を葬ってやろう」
目の前の、巨体。それが決して見せ掛けではなく、類まれな強者であると感じていた。
◇ ◇ ◇
「ぶふふ~、効かん、効かん! そんな豆鉄砲じゃ、この
「くそ、くそおおおおっ!!」
もはややけくそのようになりながら、シュピーゲルは手にしたサブマシンガンを撃つ。しかしその銃弾の全ては、
横目では、
(何で、何で僕はこんなに弱いんだ)
湧き上がるのは、焦燥。渦巻くのは嫉妬だった。
(僕が、この世界に誘ったんだ……僕の方が、銃の知識だって、何だって上のはずなんだ……!)
自分の方が上だと思っていたのに、いつの間にか横から割り込んできた奴に、自分の優位性も何もかも覆されようとしている。銃をまともに当てることも出来ない、素人に毛の生えたような奴に。
(いつか、彼女も、シノンまで奪われるのか……?)
最初に声をかけたのは、本物の銃を撃ったことがあるという興味。そこから憧れを抱いた。いつか彼女を手に入れたいと考えるようになった。
だけど、常にその隣にはアイツがいた。普段はそうでもないが、彼女が沈んでいる時、苦しそうな時に必ず手を差し伸べているのはアイツだった。
(彼女は、彼女だけは、僕の、僕だけのものだ……!)
段々と、その考えは澱のように心に積み重なっていった。
「ぶふふ~、これで終わりだ~!」
「しまった!」
ついに一発も効かない弾幕を押しのけ、
『……そうはさせないわよ?』
最初に走ったのは、強引に切り裂かれた空気の衝撃。次に響いたのは、とても銃声とは思えないほどの轟音だった。腹の底に響くその衝撃に、思わず閉じた両目を開けてみると、そこには予想外の光景が広がっていた。
「あ、あ、あ~~~?」
急に動きを止めた
「ひ~、ひでぶっ!!」
最期までネタに走りながら、
『…………まったく、とんだじゃじゃ馬ね?』
そこに響き渡ったのは、一つの声。戦場には似つかわしくない、涼やかな声だった。
「……シーちゃん、ナノカ? 今の攻撃は……」
『ッ、ええ……そうよ……本当に、とんでもない銃だわ……反動で、私にまでダメージがきた上に……身体がシビレて、しばらく動けないわ』
自分自身すら傷付けるような銃。あるいは、いまだ彼女が『ソレ』を持てるだけのレベルに至っていないことが原因なのか、彼女に第二射を要求するのは難しそうだった。
「一体……どんな銃ナンダ?」
『ええ…それは……』
『ソレ』こそが、後にGGOで彼女の代名詞ともなる銃。
『――――≪ヘカートⅡ≫、『冥府の女神』よ』
GGOにその名を轟かせることになる女狙撃手、『冥府の女神』はここに誕生した。
冥府の女神、誕生!の回でした。ぶっちゃけ彼女の覚醒を書きたいが為だけにこのネタ回は存在します。その割りに前半空気でしたが……
このネタ回、入る前が8月で次のイベントが10月なので、ちょうどシノンがソロで最深部ダンジョンに落っこちた頃なんですよ。
途中で出てきた≪ファットマン≫。やはりハート様といえば、矢も受け付けない身体なので、頑張りました!それでもヘカートに一撃でしたが……
そして、シュピーゲルは黒化し始めてます。零二がいるせいで、非AGI型とは違う劣等感も抱いてるんですよ……