ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

53 / 106
バトル、バトル、バトル!


013 拳の王

 

「今度はアンタが相手か……」

 

 ≪北斗の軍≫のリーダーである、羅皇(ラオウ)。正直あの世紀末マンガでは、一番印象深いキャラではある。何と言うか、『最強』のイメージがそのままキャラになったみたいで。唯一の救いは目の前のコイツはあくまでものまねに過ぎず、あそこまで理不尽な強さじゃないということだけか。

 

「ふ…………まあ、貴様に果たして、俺が相手をするほどの価値があるかどうかは分からんがな」

 

「……あ?」

 

 ホンモノなら、言いそうな台詞ではある。あるが…………イラッと来た。

 

「まずはこの俺を、この黒王から下ろし、地面に立たせてみるがいい……話はそれからだ」

 

「――――ッ、そう、かよ!」

 

 返事もそこそこに、ダッシュで相手に突っ込み、両手に持ったハンドガン≪クリムゾンボルト≫の引き金を引く。狙いはともかく、乱射に近い状態で、必ず数撃分のダメージは発生する……はずだった。

 

「ぬんっ!!」

 

 羅皇(ラオウ)は、飛んできた光弾を横合いから、掌打……ほとんどビンタに近い形で、殴り落とした(・・・・・・)。…………はい?

 

「どうかしたか?」

 

「いやいやいや…………光学式の弾丸を、殴り落とすって、ありえないでしょ」

 

 明らかに目の前のコイツに、ダメージエフェクトは出ていない。つまり、本当に『無傷で』殴り落としたことになる。

 

「そのようなこと、この拳王には、児戯に等しいことよ」

 

「いや、明らかにおかしいから。……何か特殊なアイテムか?」

 

 光弾を殴り落とした奇抜な行動に目が行きそうになるが、むしろノーダメージだったことが奇妙だ。考えられるのは、あの『掌』に防御に特化したアイテムを使用している可能性だけだ。

 

 僕の問いに対し、羅皇(ラオウ)はその両手を上げ、手首にはめた黒い鋲つきのリストバンドを掲げて見せた。

 

「よく気づいたな……これこそが我が武器、『攻勢型』対光学銃防護フィールド≪ザ・キング≫だ」

 

「…………何?」

 

 『対光学銃防護フィールド』。それは読んで字の如く、光学銃に対し防御力を上げる効果を持つアイテムだ。だがソレにしたところで、距離が近すぎれば威力を減衰しきれないし、ノーダメージということもあり得ない。そんな強力なアイテムは、ゲーム全体のバランスを崩すからだ。

 

「不思議そうだな……このアイテムは稀少度(レアリティ)こそユニーク級だが、そこまで強力なアイテムではない。何せフィールドの効果範囲は『掌』限定で、着用と同時にアバターが大型化し、掌以外への攻撃威力が倍増するのでな」

 

「オイオイ……」

 

 的がでかくなれば、それだけ当てやすくなる。大柄なアバターは威圧感こそ大きくなるものの、防御が弱くなるのだ。ましてや大きくなった身体へのダメージが倍化するのでは、今のところあんなアイテムをつける意味が無い。

 

「だが、それでもこのアイテムは、羅皇(ラオウ)として身に着けるべきアイテムだ。このように……」

 

 そう言って、目の前の男は右腕を振り上げ……

 

「自身の打撃を、『エネルギー攻撃』に変えるアイテムはな!」

 

「な? うおおおおお!?」

 

 まるで鉄槌のように振り下ろした。振り下ろされた掌が向いていた砂丘は、一瞬で、巨大なクレーターへと変化した。……マジ?

 

「いわば掌から、力場(フィールド)を発生させるアイテムだ……もっともコイツを扱いきるためには、それこそそのためのキャラ構築(ビルド)が必要となる。俺のように、全てのステータスポイントを打撃の威力を底上げする筋力(STR)敏捷力(AGI)につぎ込むくらいでなくてはな」

 

「納得したよ……」

 

 この男にとって、武器は自身の肉体なのだ。そしてその上げまくった打撃を、あの≪ザ・キング≫で飛ばしてくる。ある意味原作にとんでもなく忠実というわけだ。

 

「受けよ! 北○剛掌破ーーーーッ!!」

 

「おおおああああああッ!?」

 

 砂丘は吹き飛び、最後のバトルはここに開幕した。

 

SIDE:アルゴ

 

 視線の先の光景に、私は思わず唇をかみ締めた。

 

(あの羅皇(ラオウ)ってヤツ、滅茶苦茶強い……今のレイ坊じゃ、勝てないかもしれないナ……)

 

 かつての≪金剛の阿修羅≫レイジを知るからこそ、余計にその想いは強い。この世界では、彼の最強の相棒だった≪鉄拳術≫が存在しないのだから、格闘戦に持ち込んでも、あのフィールドで近付くこともままならないだろう。

 

(……だけど、何でダロウナ?)

 

 冷静に考えれば、勝ち負けは決まっている。切り札を封じられて、勝てるほど甘い相手ではない。そんなことは、頭では理解している。

 

(レイ坊なら、『必ず勝ってくれる』って、信じちゃってる自分がいるノハ?)

 

 どうかしている。この胸のほんの少しの『高鳴り』も。

 

(同時に『負けるトコなんて見たくない』って、思っちゃってるんダヨナア……)

 

 本当に、どうかしている。

 

 視線の先では、この胸に高鳴りを覚えさせたヤツが、両手に持ったハンドガンを投げ捨てていた。

 

SIDE OUT

 

「武器を捨てるとは、血迷ったか!?」

 

「アンタ相手に、生半可な武器じゃ叶いそうにないからね……なら、最も慣れ親しんだ武器でいかせてもらう」

 

 かつてのコペルは片手剣の使い手だったが、この『レイジ』がもっとも長く使ってきた武器は、『素手』。負けるためではなく、勝つためにこの武器を選んだ。

 

「ならば、来るが良い!」

 

「オオラアアアアアッ!」

 

 突撃とともに、羅皇(ラオウ)の両掌を、側面から叩き落す。この『武器』の弱点は、決して掌以外からフィールドを発生できないことだ。対してこちらは、SAOを生き抜いたこの身体の全てが武器!

 

「ハアッ!」

 

 肩口から相手の胸板に衝突する。≪鉄拳術≫中段ダッシュソードスキル、≪シュラシンダン≫。エフェクトは出ず、威力も見る影も無いが、それでも二年の研鑽で磨かれた打撃が相手を吹き飛ばす。

 

「ぬうッ! だが、甘い! そんな打撃では、この羅皇(ラオウ)を倒すことなど出来ん!」

 

「『出来る、出来ない』じゃない! 『やる』んだよ!」

 

 少なくとも、SAOの中ではそうだった。『やらなければ』、どんなに後悔したって、自分や他の誰かの生命は護れないから!

 

「オオオオオオオッ!」

 

 拳を、蹴りを、手刀を、頭突きを、次々と羅皇(ラオウ)の身体へと叩き込む。攻撃の間も常に気を張り、相手の掌を避ける。周りは余波で砂が吹き飛び、クレーターだらけになってしまった。

 

「貴様ッ……本来は格闘主体の戦士か! 何故それがこの銃の世界に来た!!」

 

「どうしても助けたかった人がいた、支えていたかった……だからこの世界に来た。それだけだ!」

 

「ワケがわからん!」

 

「だろうね!」

 

 会話の間も、お互いに手を休めることなど無い。気がつけば羅皇(ラオウ)のHPは僕の打撃で黄色く染まり、僕のHPもまたフィールド攻撃の余波で、イエローゾーンに到達していた。

 

「だが、貴様に勝ち目は無い……アイテムもスキルも無しに、この羅皇(ラオウ)のHPを消し飛ばすことは出来ん」

 

「アイテムを使わないとは言っていないさ。要はやりようなんだしな」

 

「ほう……?」

 

 既に僕の中では、たった一つだけ羅皇(ラオウ)を倒しきる方法が思いついている。本来の僕からすれば取らない手段かも知れないが、『生き残る』ことを常に考えるのはSAOプレイヤーにとっては当たり前だ。

 

「ならば、見せてみるがいい!」

 

 突撃してくる羅皇(ラオウ)の掌打。渾身の一撃であるソレを……僕はしゃがみこんで避けた。

 

「コレはッ?!」

 

 驚愕の表情をしているが、遅い。あるいは彼もまたSAOプレイヤーなら、この動きが何を意味するか気づけただろう。

 

 

「コレが、切り札だ」

 

 

 そう言って羅皇(ラオウ)の胸板に押し付けたのは…………グレネードと、ソレを覆う布を握りこんだ左手だった。

 

「バカな!? こんな近くで爆発させれば貴様も死ぬぞ!」

 

「この『布』は、爆発への耐久性に特化させた代物だ! ちょっとやそっとじゃ破れもしない!」

 

 そうして、胸板にくっつけた左手を右手で殴る。かつての世界のように全力で!

 

「≪アシュラハオウケン≫!!」

 

 拳の衝撃によってグレネードは起爆。衝撃とともに、羅皇(ラオウ)の分厚い胸板に大穴を穿っていった。

 

「ハア、ハア……」

 

 高めすぎた集中力に、息が上がる。こちらも相手に劣らず満身創痍で、左腕は半ばまで消滅。右手も拳が消し飛んでいた。

 

「…………フ、見事だ」

 

 そう語る羅皇(ラオウ)には、先ほどまであった威圧は何処にも無い。ただどこか此方への敬意を感じた。

 

「オイ、アンタ。アルゴさんのことは……」

 

「心配せずとも、今後狙うことはせん。負けて尚恥を晒そうとは思わん」

 

 ……なら、一安心か。こんなにこのGGOを楽しんでいる人たちは見たこと無いし、そんなヤツ等が友人と変なことになるのは嫌だからな。

 

「俺もまた、天へ……同胞達の下へ帰ろう」

 

 そう言って、空を見上げる。空には鉛と硫黄を混ぜ合わせたような分厚い雲。

 

「この羅皇(ラオウ)、天に帰るに人の手は借りぬ!」

 

 そう叫び、両手を自分の胸板にぶつける。徐々に徐々にゼロへと近付いていたHPバーがものすごい勢いでゼロへと至る。

 

 

「我が生涯に、一片の悔いなしッ!!」

 

 

 最後に放たれた一撃。その衝撃は分厚い雲を一瞬だけ吹き飛ばし、僕等はこの世界で始めて青空を見た。

 




北斗編、終了……と思ったら、後一週やることに。
ノリすぎた……

やはり最後は格闘戦!これが北斗とレイジのノリなので!後は、ドラゴンボールでも面白かったかもしれない。スーパー化とガチンコとか燃える!

アルゴがもう完全にヒロインに。一応彼女は、この後のGGO原作本編で、一つの役割を担ってもらいます。どんな展開かはお楽しみに♪
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。