ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
「疲れた……」
「ほんとにね……」
「早く街でログアウトしたい……」
「にゃはは……」
≪北斗の軍≫との死闘の後、何とかオアシスに存在した隠しダンジョンへと辿り着き、その中にあった専用騎乗アイテムも手に入れた。ちなみに、あそこのアイテム解放のための『鍵』は、どうやらそれぞれ難易度が決まっているらしく、最高難易度のクエストをクリアしたら、どうやら砲塔つきの軍用装甲車が手に入っていたらしい……。内容が、ALO版アインクラッド・フロアボス並みの強さの、『ボスモンスター百体と同時に戦って無双せよ』というフザケた内容だったが。
「にしても……レイ坊とシーちゃんは、正気カ? そんなマシン、砂漠や岩場で乗ったら、吹っ飛ぶゾ?」
アルゴさんがそういうのは、先ほど僕とシノンが選んできたバイクのことだ。現実と違って排ガス規制も最高時速規制もないため、思い切りかっ飛ばしてみたくて選んだ。僕のマシンは、≪カワサキ・ニンジャZX-12R≫。そしてシノンも同じ目的なのか、選んだのは≪スズキ・GSX1300Rハヤブサ≫。双方とも最高時速300km超というあり得ない数値をたたき出す、『メガスポーツバイク』というジャンルだ。オプションも選べたため、現実ではあり得ない専用オフロードタイヤやサスペンションで走破性を高めている。現実にオフロードで乗ったら、間違いなく死亡するが。
「いや、ゲームだからこそ、最速に挑戦したくなるよね?」
「私も、昔田舎で祖父のバイクの後ろに乗せて貰ってたから、どうせなら一番早いバイクに乗ってみたかったのよ」
「だからって、ソレはやり過ぎじゃナイカ?」
まあ、ゲーム内だから、当然ノーヘルで乗ることになるしね。慣れない人は風圧だの、縦揺れだのでヒドイかもしれないが。
「二人とも、すごいよね……僕なんて、スタートも出来なかったのに……」
実際ひどかったのは、シュピーゲル。僕とシノンがこのマシンを選んでしまったため、自分も乗ろうとして、ダンジョン内の試運転スペースで乗ったのだが、スタートで後ろに吹っ飛び、マシンだけがロケットのように直進することになってしまった。結論として
「あ~、まあまあ、そんなに落ち込まないで! そ、それにホラ! ≪北斗の軍≫のやつらのドロップで、懐も結構温まったし!」
あの後、倒した奴等のドロップ装備をかき集めたところ、結構なレアアイテムも存在した。この後早速街で売り払う予定である。ただ、買い手がつくか分からなかったのは……
「何で、≪ファットマン≫まで落ちてたのかなぁ……?」
向こう側の幹部の一人、
「ん……? オヤ? 妙ダナ、コリャ?」
そんな時に、不意にアルゴさんが声を上げた。
「どうかしたんですか?」
「いや、街の入り口に集団で陣取ってる奴等がいるんダケド、ソイツラがなあ……」
言われて視線を目の前に移す。なるほど、街に入る大通りのど真ん中に、何人かの集団が陣取っている。と、いうか……
「――≪北斗の軍≫の人たちか。早速お礼参り?」
バイクや車で道幅一杯に広がってるし、他にないよね?そう思っていたところ、向こう側から
「「「頼む!
「「「「……え?」」」」
◇ ◇ ◇
よくよく話を聞いてみると、
で、これからもロールプレイを楽しむために、どうしてもあのアイテムを売られたくなく、こうして待ち伏せたとのことだった。
「……まあ、どうせ売ろうと考えてたアイテムだし、そっちで引き取ってくれるっていうなら、それでもいいけど。対価は払えるの?」
「ぐ……そ、それがよ、俺らはアバターの装飾に結構な量つぎ込んじまっててよ……」
「そこで話し合った結果、我々の持つアイテムを複数そちらに譲ろうと思うのだ。リストを作ったので、そちらでいくつか選んでくれ」
そう言って渡されたリストを皆で見る。……銃の類は
「…………なあ、この銃、本当に持ってる?」
ラインナップの中に、以前アルゴさんに探してもらっていた、ずっと捜し求めた『銃』を見つけた。
「ん? その銃か……確かに持ってはいるが、まともなのは基幹部分だけで、他は修理しなければ使えない。外装から何から、作り直すことになるぞ?」
「十分だ。僕は≪銃器改造≫持ちだからね。……ほかのみんなはどう?」
周りの皆に聞いてみるが、皆特に欲しいものも無かったらしく、結局僕が欲しかったその『銃』と、防具用の素材アイテムを大量につけてもらうことでトレードが成立した。
「いやあ、ありがとよ! しかし、いいのか? 防具用の素材アイテムなんて、これから転売する手間が掛かるだろう?」
どうもこちらの転売の手間を考えたらしい発言だったのだが、それに対する僕の返答が、今後の彼等との関係を決定付けてしまったといえるだろう。
「大丈夫。僕が≪防具作製≫スキル持ちだし、自分の店で出す奴だから」
「「「「「………………何ィーーーーーッ!!!」」」」」
微妙に、世紀末以外のマンガっぽい驚きの声が、周囲に響き渡った……。
◇ ◇ ◇
「毎度、ありがとうございまーす」
「おお! いいじゃねえか、このヘルメットの退廃的な装飾! この鉄の味!」
「ぶふふ~。このトゲ、それにこの皮のジャケットの風合い、いい仕事だね~」
「ふむ、このマントの装飾……零二よ、相変わらず良い仕事をするな」
今、目の前には≪北斗の軍≫の幹部連中が部下も引き連れて、僕に頼んだ防具の出来を眺めている。何でもこの世界で中々防具を作製できるプレイヤーに出会わず、今まではオークションに出てくるソレっぽい装飾の
「それでは、また来る。次もよろしく頼むぞ」
「おお、そんじゃな!」
「小鼠ちゃんにもよろしく~」
「「「「お世話になりました、
「…………ども」
アレ以来、アルゴさんを襲わなくなったのはいいが、≪北斗の軍≫の平メンバーが、僕等三人とアルゴさんを、『
「――零二、今忙しいかな?」
「ん? シュピーゲル、珍しいね。一人でこの店に来るなんて」
≪北斗の軍≫が去った後、路地の入り口に、シュピーゲルが一人で立っていた。その様子はどこか思い詰めたようだった。
「実は、零二に頼みたいことがあって……」
「ん? 何?」
後に思えば、この一言が全ての始まりだったかもしれない。
「僕とシノンの仲を、取り持ってくれないかな?」
そう、『崩壊』はこの一言から始まった。心地よかった陽だまりの時間は終わり、徐々に徐々に、血生臭い『戦場』の匂いが近付いてきていた。
これにて北斗編、終!了!
シノンの覚醒、シュピーゲルの嫉妬と、結構内容的にはフラグを詰め込んでみました!それでも、アルゴのヒロイン振りが予想外……なんでこうなったっけ?
作中に出てきた、≪カワサキ・ニンジャZX-12R≫と≪スズキ・GSX1300Rハヤブサ≫。両方とも20世紀末~21世紀初頭に出た、最後の国産最速マシンです。後300km超えは、ブラックバードと呼ばれるのがありますが、排ガスと時速規制であえなく生産終了した、モンスターマシン……当たり前ですがオフロードで乗ることは出来ません。どっかのASEドライバーなら乗れるでしょうが……
北斗キャラは面白いので、これからも一瞬だけは登場するかもしれません♪まあ、ストーリーを喰わない程度に……