ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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第二回BoBの開幕です!

そして、この上なく分かりやすい巨大なフラグ……



015 第二回BoB 開幕

 

 10月。GGO内最大の都市、≪SBCグロッケン≫。この日は、国内サーバーと海外サーバーが分離して初となる、最強者決定バトルロイヤル戦、≪バレット・オブ・バレッツ(BoB)≫の開催日でもある。当然街には参加者だけでなく、見物客が殺到していた。

 

『お集まりの皆様、お待たせしました! まもなくGGO最強を決定するバトルロイヤル戦! ≪バレット・オブ・バレッツ(BoB)≫の開催となります』

 

「――いよいよ開始だね……」

 

「そうね。けどシュピーゲルも惜しかったわね。まさか準決勝の相手が、耐久力(VIT)一極の≪シシガネ≫だなんて」

 

「アハハ、でもしょうがないよ。僕はここで二人の応援してるから」

 

 本当は、三人全員で決勝に進出したかったが、シュピーゲルは準決勝で相手に銃弾が通じず、敗退となってしまった。僕とシノンは何とか出場できたが、二人とも切り札となる銃は持ってきていない。未だにどちらも扱える状態ではないためだ。

 

「ところで、零二……予選でやったような勝ち方したら、後で殴るからね?」

 

「ア、アハハ……」

 

 実を言うと昨日の予選、狙撃手のシノンからすれば、とても感化できない方法で勝ち上がった。そのため今日のシノンは、とてつもなく不機嫌である。

 

「ま、まあまあ、シノン! ほ、ほら、決勝ではお互い敵同士なんだし、シノンの銃で、直接思い知らせればいいじゃない!」

 

 シュピーゲル、君は、僕に死ねと?この間「仲を取り持て」とまで言ってきて、協力を了承した友人に向かって?そんなこと言ったら、絶対……

 

「――その通りね、シュピーゲル」

 

 ……眼を爛々と光らせて、ノリノリな人が一名。マズイ。

 

「…………えっと、僕も決勝ではチームメイトじゃなくて、一人の戦士として戦うから、もしかしたら、シノンがやられる結果になるかもしれないよ……?」

 

 おずおずと言った僕の言葉に、シノンは挑戦的な光を帯びた視線を向けてきた。

 

「上等よ。本気の零二を倒さなかったら、意味ないもの。私だって手は抜かないからね」

 

「もちろん。決勝戦で当たっても、絶対手は抜かない。全力で挑むから」

 

 そう言って、右の拳を出し、シノンの拳と軽く打ち合わせる。そうして、お互いの意気込みを確かめ合う。だからこそ……横で静かに佇むシュピーゲルの瞳に、昏い影があったことに気づけなかった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 BoB決勝の舞台、≪ISLラグナロク≫。ガンシューティングの決勝に相応しく、直径十キロの孤島には、森林や砂漠、廃棄都市といった様々なステージが内包されている。自分にとって有利なステージを選び、相手をいかに倒すかが求められるマップだ。

 

 そして、何よりGGOは銃のゲーム。そのナンバー1を決めるバトルロイヤル戦ともなれば、求められるのはスニーキングの技術と、とっさの対応力など、遭遇戦に適した才能だ。

 

 つまり、何が言いたいかというと、

 

「≪闇風(ヤミカゼ)≫ーーーーーッ! 勝負ーーーーーーッ!!」

 

 大声上げながら、開始すぐの≪衛星捕捉(サテライト・スキャン)≫で、AGI最強の呼び声高いプレイヤーに≪神風特攻≫をかますプレイヤーは、誰もいないということだ。

 

 目の前のブッシュに身を隠していた闇風は、一瞬驚いたように顔を上げ、すぐに行動を開始した。ブッシュから飛び出し、その手に持った≪キャリコ・M900A≫を此方に向けてくる。

 

 それに対してこちらは、右手に光学式レーザーライフル≪サイクロン≫、左手に光学式ショットガン≪ゲートキーパーDD≫を構え、正面から突っ込む。ダッシュの速度は一切緩めず、両手の武器を乱射した。

 

 流石はAGI型最強と言うべきか、闇風は全ての弾丸を左右へのステップだけで避ける。それだけではなく、返す刀でこちらに弾丸を乱射してきた。AGI型は、全ての数値を速度のみに振るため、命中率は望めない。相手に当たるかどうかは、銃自体に設定された弾丸の散らばりを抑える集弾性能と、本人の腕だけだ。

 

 つまり、AGI一極型だというのに、9割以上の弾丸がまっすぐ飛んできているのは、間違いなく彼の腕のよさというわけだ。

 

「こン、のぉーーーーッ!」

 

 瞬間的に、筋力(STR)補正が最大で発動する、上空へのジャンプを選択する。闇風の銃弾が、そちらを追う。

 

「くっ!」

 

 右手のライフルを一度手放し、腰のポーチから出したワイヤーガンを近くの岩に打ち込む。ワイヤーの巻き戻りを利用し、ジャンプの方向を急激に変えて、銃弾の弾道から離脱した。

 

(やっぱり、アレが無いと、突っ込みきれないか……)

 

 一度岩陰に隠れ、舌打ちと共に考えるのは、大会前に完成しなかった、二つの装備。この世界でどうしても欲しかった『銃』と、とある『防具』が、材料の不足で完成しなかったのだ。

 

「まあ、でも……」

 

 素手になった、右手の五指を揃える。その形は、かつてSAOで多くの戦場を共にした、体術スキル≪エンブレイサー≫。

 

「こういう状況を、覆してこそ!」

 

「シッ!」

 

 手刀とショットガンで挑む、SAOでのかつての戦神(アシュラ)。GGOで『プレイヤースキル最強』をウワサされる瞬速の戦士。両雄の戦いは再び開始された。

 

SIDE:シュピーゲル

 

「零二……」

 

 視線の先、分割された画面には、今では見慣れた白髪とゴーグルの人物が、GGOでも最強のプレイヤーではないかといわれる≪闇風≫と激闘を繰り広げる様子が映し出されていた。

 

 先ほどまでは、分割画面にシノンの戦闘の様子も映し出されていたが、戦闘終了と共に画面が切り替わってしまった。それだけに、今の自分の視線は、零二の戦闘に釘付けとなっていた。

 

(なんで、僕は、弱いんだ……!)

 

 戦闘の激しさと共に、自分の胸の中に、ドロドロとした感情が渦巻いていく。

 それは、嫉妬。ゲームの先輩だというのに、視線の先、画面の中に行けない、どうしようもない『才能の壁』という現実。

 

(――――強さが、『力』が、欲しい……!)

 

 ドロドロとした感情は、次第に一つの方向へと向いていった。それは、圧倒的な、『力への渇望』。

 

(AGI型を馬鹿にする奴等を、僕が弱いと思ってる奴等を、ねじ伏せられる圧倒的な『力』が欲しい……!)

 

 心の底から、そう思った。そのためなら…………たとえ、『悪魔』にだって、魂を売ってやろうと思った。

 

 

「――――そんなに、激しい顔は、初めて、だな」

 

 

 不意にかかった声に、驚いて振り返った。すると自分のすぐ後ろに、一人の男が立っていた。

 

 その男の印象は、ただ一言、『幽霊(ゴースト)』という感じだった。身に纏うのは、艶消しの黒で統一された防護服(ファティーグ)。ぼろぼろのギリーマントを羽織り、顔にはスカルフェイスのマスクをつけていた。

 

 

「ク、クク。こちら、では、随分、久しぶりじゃないか? シュピーゲル」

 

「――――――にいさん」

 

 

 幽鬼は、嗤う。それは、夜闇の中への(いざな)い。銃火飛び交う、戦場の開幕であった。

 

SIDE OUT

 




ザザさん、初登場!
そして、完全に闇落ちが確定したシュピーゲル。まあメインヒロインを巡る恋敵だったため、最後にはこうなってたんですが……

今回のもう一つの目玉、レイジVS闇風!
縦横無尽に駆け巡る闇風に対抗させるため、レイジはワイヤーガンを駆使してもらいました。一つの案としては、『進撃の巨人』の立体機動装置使わせるのも考えたんですが、さすがに悪ノリのしすぎかと思いまして。前回までのネタ回ならともかくねえ……

次回は第二回BoBの反省会です。いろいろ第三回へ向けて、パワーアップのフラグを入れようと思ってます。
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