ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
そして、この上なく分かりやすい巨大なフラグ……
10月。GGO内最大の都市、≪SBCグロッケン≫。この日は、国内サーバーと海外サーバーが分離して初となる、最強者決定バトルロイヤル戦、≪バレット・オブ・バレッツ(BoB)≫の開催日でもある。当然街には参加者だけでなく、見物客が殺到していた。
『お集まりの皆様、お待たせしました! まもなくGGO最強を決定するバトルロイヤル戦! ≪バレット・オブ・バレッツ(BoB)≫の開催となります』
「――いよいよ開始だね……」
「そうね。けどシュピーゲルも惜しかったわね。まさか準決勝の相手が、
「アハハ、でもしょうがないよ。僕はここで二人の応援してるから」
本当は、三人全員で決勝に進出したかったが、シュピーゲルは準決勝で相手に銃弾が通じず、敗退となってしまった。僕とシノンは何とか出場できたが、二人とも切り札となる銃は持ってきていない。未だにどちらも扱える状態ではないためだ。
「ところで、零二……予選でやったような勝ち方したら、後で殴るからね?」
「ア、アハハ……」
実を言うと昨日の予選、狙撃手のシノンからすれば、とても感化できない方法で勝ち上がった。そのため今日のシノンは、とてつもなく不機嫌である。
「ま、まあまあ、シノン! ほ、ほら、決勝ではお互い敵同士なんだし、シノンの銃で、直接思い知らせればいいじゃない!」
シュピーゲル、君は、僕に死ねと?この間「仲を取り持て」とまで言ってきて、協力を了承した友人に向かって?そんなこと言ったら、絶対……
「――その通りね、シュピーゲル」
……眼を爛々と光らせて、ノリノリな人が一名。マズイ。
「…………えっと、僕も決勝ではチームメイトじゃなくて、一人の戦士として戦うから、もしかしたら、シノンがやられる結果になるかもしれないよ……?」
おずおずと言った僕の言葉に、シノンは挑戦的な光を帯びた視線を向けてきた。
「上等よ。本気の零二を倒さなかったら、意味ないもの。私だって手は抜かないからね」
「もちろん。決勝戦で当たっても、絶対手は抜かない。全力で挑むから」
そう言って、右の拳を出し、シノンの拳と軽く打ち合わせる。そうして、お互いの意気込みを確かめ合う。だからこそ……横で静かに佇むシュピーゲルの瞳に、昏い影があったことに気づけなかった。
◇ ◇ ◇
BoB決勝の舞台、≪ISLラグナロク≫。ガンシューティングの決勝に相応しく、直径十キロの孤島には、森林や砂漠、廃棄都市といった様々なステージが内包されている。自分にとって有利なステージを選び、相手をいかに倒すかが求められるマップだ。
そして、何よりGGOは銃のゲーム。そのナンバー1を決めるバトルロイヤル戦ともなれば、求められるのはスニーキングの技術と、とっさの対応力など、遭遇戦に適した才能だ。
つまり、何が言いたいかというと、
「≪
大声上げながら、開始すぐの≪
目の前のブッシュに身を隠していた闇風は、一瞬驚いたように顔を上げ、すぐに行動を開始した。ブッシュから飛び出し、その手に持った≪キャリコ・M900A≫を此方に向けてくる。
それに対してこちらは、右手に光学式レーザーライフル≪サイクロン≫、左手に光学式ショットガン≪ゲートキーパーDD≫を構え、正面から突っ込む。ダッシュの速度は一切緩めず、両手の武器を乱射した。
流石はAGI型最強と言うべきか、闇風は全ての弾丸を左右へのステップだけで避ける。それだけではなく、返す刀でこちらに弾丸を乱射してきた。AGI型は、全ての数値を速度のみに振るため、命中率は望めない。相手に当たるかどうかは、銃自体に設定された弾丸の散らばりを抑える集弾性能と、本人の腕だけだ。
つまり、AGI一極型だというのに、9割以上の弾丸がまっすぐ飛んできているのは、間違いなく彼の腕のよさというわけだ。
「こン、のぉーーーーッ!」
瞬間的に、
「くっ!」
右手のライフルを一度手放し、腰のポーチから出したワイヤーガンを近くの岩に打ち込む。ワイヤーの巻き戻りを利用し、ジャンプの方向を急激に変えて、銃弾の弾道から離脱した。
(やっぱり、アレが無いと、突っ込みきれないか……)
一度岩陰に隠れ、舌打ちと共に考えるのは、大会前に完成しなかった、二つの装備。この世界でどうしても欲しかった『銃』と、とある『防具』が、材料の不足で完成しなかったのだ。
「まあ、でも……」
素手になった、右手の五指を揃える。その形は、かつてSAOで多くの戦場を共にした、体術スキル≪エンブレイサー≫。
「こういう状況を、覆してこそ!」
「シッ!」
手刀とショットガンで挑む、SAOでのかつての
SIDE:シュピーゲル
「零二……」
視線の先、分割された画面には、今では見慣れた白髪とゴーグルの人物が、GGOでも最強のプレイヤーではないかといわれる≪闇風≫と激闘を繰り広げる様子が映し出されていた。
先ほどまでは、分割画面にシノンの戦闘の様子も映し出されていたが、戦闘終了と共に画面が切り替わってしまった。それだけに、今の自分の視線は、零二の戦闘に釘付けとなっていた。
(なんで、僕は、弱いんだ……!)
戦闘の激しさと共に、自分の胸の中に、ドロドロとした感情が渦巻いていく。
それは、嫉妬。ゲームの先輩だというのに、視線の先、画面の中に行けない、どうしようもない『才能の壁』という現実。
(――――強さが、『力』が、欲しい……!)
ドロドロとした感情は、次第に一つの方向へと向いていった。それは、圧倒的な、『力への渇望』。
(AGI型を馬鹿にする奴等を、僕が弱いと思ってる奴等を、ねじ伏せられる圧倒的な『力』が欲しい……!)
心の底から、そう思った。そのためなら…………たとえ、『悪魔』にだって、魂を売ってやろうと思った。
「――――そんなに、激しい顔は、初めて、だな」
不意にかかった声に、驚いて振り返った。すると自分のすぐ後ろに、一人の男が立っていた。
その男の印象は、ただ一言、『
「ク、クク。こちら、では、随分、久しぶりじゃないか? シュピーゲル」
「――――――にいさん」
幽鬼は、嗤う。それは、夜闇の中への
SIDE OUT
ザザさん、初登場!
そして、完全に闇落ちが確定したシュピーゲル。まあメインヒロインを巡る恋敵だったため、最後にはこうなってたんですが……
今回のもう一つの目玉、レイジVS闇風!
縦横無尽に駆け巡る闇風に対抗させるため、レイジはワイヤーガンを駆使してもらいました。一つの案としては、『進撃の巨人』の立体機動装置使わせるのも考えたんですが、さすがに悪ノリのしすぎかと思いまして。前回までのネタ回ならともかくねえ……
次回は第二回BoBの反省会です。いろいろ第三回へ向けて、パワーアップのフラグを入れようと思ってます。