ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
なお、感想にて実は軍も結構強い旨指摘があったので、軍が与えたダメージとレイジが与えたダメージを少し変えました。
やられて慌てふためいてるイメージしか無かったからねえ…軍の人たち
・・・終わった。
いや、本当に更なる犠牲者を出さずに済んだのは良かったし、色々あったけどボスを倒すことは出来たし、全体を見れば良かったことが多い。だけど。だけどさ。
「何でこんなことに……」
なぜこんな大群衆の真ん中で、戦うことに?
「フム、キミの謎めいたエクストラスキル、存分に見せてもらおうか」
そしてなぜ、相手がアインクラッド最強と目される≪神聖剣≫ヒースクリフ?
「ハア……憂鬱だなぁ………」
◇ ◇ ◇
「オイ、キリト! テメエ、さっきのは一体何だよ!」
ボスが倒れた後、ウチのリーダーが開口一番発したのはそんな言葉だった。ちなみに当のキリトは、アインクラッドでのアイドル的存在、アスナさんに抱きつかれている。……噂が広まったら、刺されるんじゃないかな?
まあ確かにこのゲームでは剣を二本持つことは出来ても、イレギュラー装備扱いになるだけで、戦闘に使うことは出来ないと思っていた。それなのに、あの剣が纏っていたライトエフェクト。あれは明らかにシステムに規定されたものだった。と、いうことは……
「……エクストラスキルだよ。≪二刀流≫」
話を聞いていた周りにざわめきが走る。やっぱりか。今まで、見たことも聞いたことも無いスキルの登場だ。とんでもない反響が予想されるだろう。
「しゅ、出現条件は」
「分かってたら、公開してるさ。それより、そっちこそ何だよ。格闘系で、ボスを壁まで吹っ飛ばせるスキルなんて初めて見たぞ」
そう言って、キリトがこっちに視線を向けてくる。リーダーも他のギルドメンバーも、苦虫を噛み潰したような顔だけど、今回、追求はやむを得ないか。
「こっちもエクストラスキルだよ。格闘系
おおお・・・、とキリトとアスナさん、それと傍観してた≪軍≫の人たちが感嘆の声を上げる。まあ、格闘系はメインで使う人こそ少ないものの、武器を失ったときの緊急用に覚える人も多いから、興味が湧くのは当然か。
「…出現条件は?」
「……こっちも、不明」
「はあ?」
そんな声を上げたのはキリト。まあ普通は何らかのクエストなり、条件を満たした場合に現れる、というのがエクストラスキルだし、それも当たり前だね。
「あー、もしかして、いきなりスキルウィンドウに現れたりした?」
「……そっちは、そんな風に現れたの? 違うけど」
「はい……」
いきなり現れるって、入手条件を周知する気がないのか? このゲームの作者は。
「レイジの場合は、仕方ねえのさ。俺たちと≪はじまりの街≫で会ったときには、
「「は・・・・・・?」」
おお、キリトはともかく、アインクラッドでアイドル並みの人気があるアスナさんの驚き顔か。記録結晶に撮って売れないかな?
「つまりこのゲームが始まった当初から、持ってたと?」
「あー、いやまあ、そうだ」
「何よ、それ……」
二人とも驚きのほかに、若干疑いの眼を向けてくるけど……僕がデータの改ざんでもしたと、思ってるのかな?
「キリト。オメエはレイジの
「…ああ」
「じゃあ、
「……分かった」
納得してくれたようで、何より。それにデータの改ざんは、ありえない。なぜなら……
「まあ、僕がもしデータの書き換えなんか行うんなら、間違ってもあんなスキル選ばないよ」
「? そりゃ、どういう意味だ?」
「そうよ。ボスにあんな大ダメージ与えるなんて、すごいスキルじゃない」
あー、お二人とも。そう言ってもらえるのは、嬉しいけどねえ……。
「あのスキルは、とんでもないリスクを背負うスキルでね……二人も見たでしょ、あの硬直」
「あー、確かにな」
「大体どのくらい続くものなの?」
「通常攻撃の硬直で、両手用大型武器の重攻撃くらいかな……」
「「…………それは……」」
二人とも気の毒そうにしてるけど、事実だよ。まあリターンも大きいが。
「後、もう一つ大きなリスクがある。もっともこれは、このスキルの根幹に大きく関わるリスクだけど」
「どんななんだ?」
「…このスキルの肝は、『自身の身に着けた防具の合計防御力を、全て攻撃力に変換する』ことなんだよ」
「「はあっ!!?」」
そう、それこそがこのスキルの最大の長所であり、最大の
「但し、制約もある」
「ど、どんな……」
「まず利き手は『素手』であることが要求される。そして、スキルの事前モーションから、スキル発動後の硬直終了まで、自身の防御力は『ゼロ』のままになる」
「ヲイヲイ……」
「俺らも説明見たときは、本気で作ったヤツの正気を疑ったぜ……」
威力がピーキーな分、とんでもなくリスキー。それがこのスキルなんだよ。
「まあ、そんなわけで、俺らの仲間内で有力な説は、デスゲームになる前にデザインされたスキルが、バグって出てきたんじゃねえか、って説だ」
「…そうだな。デスゲームでこんな危険なスキル、覚えようとする奴はいないだろう」
「……目の前に、思いっきり使用してるコがいるけどね」
……すいませんでした。謝りますから、アスナさん、そんな目で睨まないで下さい。美人に睨まれると、非常に怖いです。
「まあ、おかげで壁戦士(タンク)役でありながら、戦況次第でダメージディーラーもできるんだから、ありがたいけどね」
「その代わり、一発当たったら即死しかねないってことよね」
「俺も、最初は良いかもと思ったけど、やっぱ覚えたくないな……」
この二人、何気に息がピッタリだ。ずっと抱き合ってるし、そういう関係なんだろうか。
「使い勝手で言えば、オメエのスキルのほうが断然上だ。オイ、キリト。俺らは言いふらす趣味は無えが、コリャ少しばかり話題になるのは確実だぞ」
「だろうな…」
「それに……」
そう言ってリーダーが、視線を抱きついたままのアスナさんの方に少し向けた。
「……まあ、頑張りたまえ。若人よ」
「他人事だと思いやがって……」
実際、他人事だしね。その後は、今回無謀な特攻を仕掛けた≪軍≫の連中に、上層部に改善させるよう伝えて、次の階層の転移門を起動し、帰路に着いた。しかし、僕らが去るまであの二人はずっと抱き合っていたが、大丈夫なのかね? 確実に熱狂的なファンやストーカーに狙われそうだが。
「しかし、これでレイジの奴のスキルもばれちまったな。話題になることは覚悟しねえと」
「んー、そうだね。でも、もっと使い勝手がよさそうなスキルが一緒に現れたから、そっちが注目されるんじゃない?」
「そんなら良いが……」
後日、僕は自分の認識が甘かったことを知った。
◇ ◇ ◇
「レイジ君、血盟騎士団(ウチ)に入りたまえ」
…イヤイヤイヤ、何でそうなりますか。アインクラッド最強の剣士、ヒースクリフさん。
突然だが、ここは血盟騎士団の本部である。あの後、結局僕の≪鉄拳術≫が話題になることは避けられなかった。ただ―――
『ボスを瀕死へと追い込んだ一撃必殺スキル』とか、『ボスの左半身を消し飛ばす、鬼のような体当たり』とか、絶対デマと分かりますよね? それなのになぜこんな所に呼ばれてギルドに勧誘しますか。
「何、攻略に関して、集められるだけの戦力は集めておきたいと思ったからだよ」
そんなことを、イイ笑顔で言われても。今のギルドを抜ける気はサラサラ無いし、どうやって断ったものか……
「あんな
……そんな言葉を口にしたのは、同席していたKoBの幹部と思しき一人。自分達のギルドに自信を持つのは良いけど…………カチン、ときたぞ。
「……そちらにとっては、
言葉に、怒気を込める。流石に失言だったと気づいたのか、その幹部は何も言わなくなった。しかし、
「取り消させたいならば、剣を……キミの場合は、拳を以って通したまえレイジ君。我々も、キミの実力の確かなところが知りたい」
「…………いいでしょう」
こういうのを、売り言葉に買い言葉って言うんだろうなぁ。
と言うわけで、鉄拳術のリスク二つ目、『攻防力入れ替え』でした。
元々このスキルは、ROのモンクの持ち味である、『ボスにすら通用する高火力』を、何とか再現できないかと四苦八苦しながら考えたスキルです。そのため、ユニークよりも劣るエクストラで再現するために、デスゲームではありえないリスクを背負い込むことになりました。
ちなみに、もしユニーク扱いにしてしまうと、そもそもALOで高火力が再現できないんですよ……どう考えても、両手斧や大剣よりも威力に劣りそうなナックル系の武器を装備させて、ボスを粉々にするのはおかしいし。