ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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今回は予選開始まで。さて、組み合わせはどうなるかな?



020 はじまる戦い

 

 人ごみを縦横無尽に走りぬけ、三輪バギーがたくさん駐車しているスペースに駆け寄る。運転席によじ登り、エンジンをかけ、急いできた道を戻る。歩道の上に特徴ある青の髪と、やたら長い黒髪が目に入る。

 

「二人とも、乗って!」

 

 叫びながら、彼女達のすぐ横でジャックナイフ・ターン。正直、三輪バギーでやると、吹っ飛ばされそうになる。

 

「ナイス、零二!」

 

「おい、俺はどこに乗ればいいんだよ!?」

 

 後部座席によじ登ったシノンはともかくとして、キリトの乗るところを忘れていた。……よし。

 

「キリト、STR優先型だったよね? 大丈夫、君ならサイドにしがみついた状態で、1時間はもつ」

 

「マジかあああっ?!」

 

 絶叫しながら、それでもキリトはサイドにしがみついた。…まあ、大丈夫だろ。

 

「飛ばすからね! しっかり捕まって!」

 

「うおおおおっ!」

 

 エンジンスタートと共に、アクセル全開での急発進。サイドにしがみついたキリトは、流石のバランス感覚と筋力で、落ちなかった。……くそ。

 

 

「あははは! きもちいい! もっと飛ばして!」

 

 

 そんな光景を尻目に、不意に後ろからそんな楽しげな声が響いた。いつでも張り詰めた雰囲気の彼女からは、想像もしなかったくらい楽しそうな声だった。だから僕は、そのリクエストに全力で応えることにした。

 

「オッケー!!」

 

 僕は思いっきり、スロットルを開けた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 結論として、僕ら三人はBoBの予選エントリーにギリギリで間に合った。エントリーの際に現実の賞品が欲しい場合は、現実の住所などを入れる必要もあるが、特に欲しいものもないので、全部空欄にした。

 

「ギリギリ間に合ったね…」

 

「そうね…」

 

「スマン、二人とも、俺のせいで…」

 

「「ホントにね」」

 

「ぐっ……」

 

 キリトが唸っているけど、原因は間違いなくキミだからね。

 

「そ、そういや、お前らは予選何ブロックなんだ? 俺はEの二十六番」

 

「僕は、Fの三十七番だね」

 

「ふーん、私はFの十二番。零二と当たるとしたら決勝か……」

 

「ってことは、あれか? 俺が決勝で勝っても、零二やシノンのどっちかとしか戦えないのか?」

 

 …キリト、だから下調べしようよ。

 

「……アンタ、本当に何も調べてないのね」

 

「こういうヤツなんだよ……」

 

 BoBの決勝は、各予選ブロックの一位と二位が出場可能で、決勝自体は明日。予選は勝ち抜き戦で、勝ったものだけが控え室に戻される、等々…。BoBの方式を教え込んだ後、お互いのネームカードを交換しておく。そうしてたどり着いたのは、選手控え室に設えられたロッカールーム。

 

「それじゃ、私ここ使うから」

 

「ああ、うん――――……ッ!」

 

 シノンに返事をした瞬間、そのシノンの後に続こうとしていた不届き者を発見。即座に首根っこを捕まえる。

 

「ぐえっ…零二、何すんだよ?!」

 

「それはこっちのセリフだよ。何、女性の着替えについて行こうとしているの?」

 

 面と向かって言って、ようやくここがロッカールームだと察したようだ。

 

「はあ…シノン、キリトは隣のロッカールームに連れて行くから、安心してソコ使って」

 

「うん、ありがとう」

 

 そのままキリトの襟を捕まえた状態で、ロッカールームに引っ張り込んだ。使い方も一通りレクチャーした。

 

 ――だけど。

 

「周りから、ロッカールームに『女性』連れ込んだ、不届き者みたいに見られてるんだけど……」

 

「ははは、零二、ドンマイ!」

 

「そもそも、アンタがそんなアバターなのが原因よ」

 

 ちなみにキリトの服装はナイトカモの防護服(ファティーグ)、僕の服装はいつものゴーグルとロングマフラー、最近作ったダークブラウンのロングコートと同色の上下となっている。

 

「零二、シノン! 良かった、遅刻するんじゃないかと思って心配したよ」

 

 僕が肩を落としていると、人ごみの中からシュピーゲルが顔を出した。彼は出場しないと聞いていたけれど…?

 

「こんにちは、シュピーゲル。ちょっと予想外の用事で遅れちゃって」

 

「無計画・無鉄砲な友人のせいでね」

 

「第一印象から、ヒドイ扱いだな!?」

 

 キミの場合、親しくなればなるほどそんな印象だよ? SAO時代の、初対面の女性にいちいちフラグを立てる、気障で皮肉屋の最強剣士は、どこに行ったの?

 

「え……えっと、零二のお友達ですか……? まさか、彼女さんとか…」

 

 ……このシュピーゲルの、丁寧な対応。僕はまた新たな勘違いが生まれたことを察する。

 

「「騙されないで、ソイツ男だ(よ)(から)」」

 

「えっ……。お、男? そのアバターで……?」

 

 まあ確かにあのアバターは相当なレアだとは聞いた。但し、ログイン時間で決まるとも聞いた。なら必然ともいえる。

 

「あー、キリトです。どうぞよろしく」

 

「…キリト? どこかで聞いたような……あっ!」

 

 キリトの名前を聞いて、考え込んでいたシュピーゲルが声を上げた。

 

「零二から聞いた、現実でもゲームでも女の子に囲まれてる、ハーレム男!?」

 

「おいいいいいっ?! 零二、何話したんだよ!?」

 

 ……そう言えば話したなあ、『事実』を。

 

「それ、聞いたことあるわね……確か、ゲーム内で『結婚』までした彼女がいるのに、出会った女の子全てに気障なセリフを吐いて落とした、とか」

 

「そうそう! あまつさえ、義理の妹にまで手を出した、とか!」

 

「零二…テメエ……」

 

 キリトが恨みがましい視線を向けてくるけど、僕は事実しか言っていないよ? 事実しか。

 

「……ん? 違うVRゲーム、友人の男女……ああ、そうか、お前が気にかけてたの、ってええええええ?!」

 

 キリトが余計なことを言い出したので、≪鉄拳術≫の≪シュラシンダン≫で壁まで吹き飛ばした。ハハハ、ナニイッテル、キサマ?

 

「キリト……それ以上何か口にしたら、アスナさんに事実五割、誇張五割で今日の内容を―――」

 

「スイマセンデシタ! マコトニモウシワケアリマセン!」

 

 途端に低姿勢になり、上体を90°に近い形まで傾ける。…そんなに怖いのか。

 

「……なに? 何の話なの?」

 

「なんでもない、なんでもない。それより、シュピーゲルはやっぱり出ることにしたの?」

 

「あー、いや。やっぱり武装の差が大きいからね。ここから二人の応援しようと思って、来たんだよ」

 

 それは、ありがたい。……ただ。

 

「――僕らもFブロックの決勝で、当たることになったんだ。そのときは、シノンの応援してあげてよ」

 

「え……そうなの?」

 

 事実を知ったシュピーゲルがシノンに顔を向ける。まあ、公式戦では初対戦だからね。

 

「そうだけど……別に、零二の応援してくれてかまわないわよ? それくらいのことで負けたりしないから」

 

「いや、僕はシノンの応援するよ」

 

「そ、そう?」

 

「まあどっちにしても、僕も手は抜かない。前回のこともあるし、本気でぶつかるからね」

 

 そう彼女に言葉をかけると、シノンは実に不敵な笑みを見せた。

 

「いいわ。私も全力で。但し気づいたら、頭が吹っ飛んでるかも知れないけどね」

 

 そう言って、お互いに前に差し出した拳を軽く合わせる。決勝まで行ければ明日の本戦出場は可能とは言っても、それと勝負は別だ。

 

「キリトも。たとえ決勝までいっても、そこで手を抜いちゃダメだからね」

 

「う……」

 

 ……この反応。少し思っていたな。

 

「何言ってるのよ、零二? 今日コンバートしてきて、その上光剣なんか使おうとしてる奴が、決勝まで来れる訳ないでしょ?」

 

 まあ、それが普通の認識だよね。

 

「シノン、キリトを甘く見ないほうがいい。彼が普段どれだけナンパ男でも、僕らがやってるALOでは、一・二を争う剣士だから」

 

「ヲイ、今サラッと毒吐いたな」

 

「いや、そもそも剣じゃ銃には勝てないでしょう?」

 

「……それは、どうかな?」

 

 シノンのセリフに皮肉気に笑うキリト。そんな態度にシノンが反感を抱いていたけど、そんな態度だから気障だの皮肉屋だの言われるのに……。

 

「彼のゲームセンスは常軌を逸しているからね……僕らじゃ考えもしない方法で勝ち上がってくると思うよ」

 

「へえ…それは楽しみね」

 

「おい、それより零二。俺は未だに予選の方式すら教えてもらっていないんだが」

 

 あ~、そういえばそうか。まあ、言うことなんて一つだけだ。

 

 

「ステージのどこかに敵がいる。近付いて斬れ。以上」

 

 

 そんなことを話していたところで、アナウンスが流れ始める。いよいよBoB予選、開始だ。

 




と、いうわけで、シノンと当たるのはレイジです。思いっきり『格闘型』の彼が、いったいどうやって『狙撃型』のシノンに挑むのか。それを予選のテーマにしたいと思います。作者が考えたのは、余りにも常軌を逸した『回答』です♪
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