ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
視界を白い光に覆われ、一回戦の会場へと転移される。試合開始前に与えられる時間は一分間。その間に装備を整え、試合に臨む形となる。
僕はアイテムウィンドウと装備フィギュアを出し、今回に向けてカスタマイズしてきた装備をつける。まず左手用のサブウェポンは、紅いリボルバータイプの拳銃を模した、光学式ハンドガン≪クリムゾンボルト≫。速射性と貫通性に特化させており、遠距離からでも高出力の防護フィールドでもなければ、確実にダメージを与えることが出来る。
そして、右手のメインウェポンは、白い銃身に黒の持ち手が付いた光学式ハンドガン≪ガリスン≫。こちらはレア度が高い基幹部に様々な材料を盛り込み、光学銃としてはありえないほどの高威力となっている。実際、先日の大会で持ち込んだレーザーライフル≪サイクロン≫を、軽く上回るほどの攻撃力だ。だがその分、連射性や速射性は皆無に等しい。
最後に自分の装備フィギュアの左腕部分に、新しく作ったプロテクターを装備する。プロテクター≪クリスタル・バックラー≫。ボスモンスター≪クリスタル・タランチュラ≫の外皮を使って作り出した、実弾銃に対して最硬の守り。光学銃に対しては全く無意味だが、それでもこの世界で現在最強の盾といえるだろう。
装備を終え、開始の合図を待つ。盾も付いてSAOの頃の感覚にかなり近づけた。そして『最後の切り札』も改造が終わり、腰の後ろのアイテムポーチに収納してある。これなら本戦でも優勝が狙えると自信が持てる。しかし、懸念もある。
(……何でキリトは、GGOに来たんだ?)
菊岡氏のバイトというのは、恐らく理由の半分だ。もう一つ、何か重要な理由があるはずだ。そうでなければ、ユイ姉が存在するALOからキャラのコンバートなんて、彼が行うはずが無い。第一コンバートせざるを得なかったと言うことは、キャラを作る暇も無いほど、相当切羽詰った状況だと考えられる。
(BoBが滅茶苦茶になることだけは避けたいな…)
参加中の彼女は、この大会で何とかトラウマを乗り越える糸口を見つけようと頑張っている。出来ればその努力が無駄になるような事態は避けたい。
そんなことを考えていると、目の前に試合開始5秒前の合図が出た。…3、2、1、START!
開始と共に、正面に向かってダッシュする。敵がどこからスタートするかはランダムだが、向こうもこちらを見つけようとするはず。シノンと同じスナイパーだと厄介だが、それはそれでやりようはある。
優先してとった≪索敵≫スキルと≪聴音≫スキルで、周りの敵をソナーのように探す。特に≪聴音≫スキルは他のスキルよりも優先しているため、既にマスターだ。実はこのゲームも、リファインされたカーディナルの上で動いているため、たとえ≪隠蔽≫スキルをマスターしていたとしても、見え辛くなるだけで、視覚以外で探されると簡単に発見されるのだ。
敵の場所は…………二時の方向、120m! 即座に方向を調整し、一直線に敵に突っ込む。前方の茂みの中から、深緑の迷彩服を身に着けたひげ面の男が身を起こした。敵も此方の接近に気づくと、すぐさま立ち膝の姿勢で手に持った軽機関銃≪ミニミ≫を向けてきた。
タタタタン! と軽快な音を立てて、自分に向かってくる弾丸を、左腕のバックラーで受け止める。最初の乱射のうち、5発を盾で受け、他は回避した。軽機関銃の弾丸を受けたバックラーは、欠けてもいないし、HPも減っていない。この程度なら問題なく受けられる性能に仕上がったようだ。
相手は目を見開きながら、さらに発射。しかし、バックラーの実験が終わった以上、当たってやる義理もないので、その場で斜め前に側転しながら弾丸を回避する。
「ちぃっ!」
相手は舌打ちしながら、弾丸が切れたカートリッジの交換に入る。そこを好機と見て、左腕の≪クリムソンボルト≫を五連射。フィールドを抜け、見事に胴体に三発が当たった。
当たったのを確認しながら、さらにダッシュ。この時点でお互いの距離は、15mほどまで狭まっていた。
相手が着弾の硬直から抜け、ようやく弾倉の交換を終え、≪ミニミ≫をこちらに向ける。それと同時に、7割ほどだったスピードを、一気にトップスピードへと引き上げる。
次の瞬間には、僕の身体は、相手の側面に回りこんでいた。≪鉄拳術≫移動用ソードスキル≪ザンエイ≫。ここ半年、訓練に訓練を重ね完全に再現が可能になった、『横へジャンプ』する移動スキル。SAOやALOと違い、硬直もないため、この上ないほど高速戦闘に役に立つ。現に目の前の相手は、一瞬で横に回りこまれた事実に思考が追いついていない。
相手が銃口を向けるより早く、右手に握った切り札≪ガリスン≫の銃口を向ける。胴体と眉間への二連射。最初の一発で、相手の身体はポリゴンの塊へと姿を変えた。
戦闘終了の合図が流れ、僕の身体はまた控え室へと戻って行った。
◇ ◇ ◇
「ふうっ……」
選手控えの大広間へと戻り、僕は詰めていた息を吐いた。GGOの戦闘は銃の威力も相まって、電撃戦になることが多い。そのため、短時間でやたらと集中力を削る。
「あ、いた。零二、こっちこっち」
かけられた声に辺りを見回すと、程近いところにシュピーゲルの姿があった。
「さっきの戦闘見てたよ。すごいね、あのプロテクター!」
「まあ、自信作だからね。シュピーゲルにも一つ進呈しようか?」
実際あの防具は、極限まで軽量化改造をすればAGI一極型にもつく。武装の貧弱さに悩む同志を放っては置けない。そんな気持ちで、言葉を向けてみたのだが。
「うーん……いや、いいよ。僕は実弾系だから装備重量に余裕はないし、やっぱり武装の差があるからつけてもね……」
そんな感じで肩を落とす。プレイヤースキル次第だとは思うけど、こうなると声をかけられない。
「あー……それじゃ、他の試合は? シノンの試合はどうなってる? あと、ついでにキリトも」
「ついでなんだ……。シノンは……今試合終了した。さっきのキリトって奴はもう終わった。とんでもない方法で勝利してたよ……」
そう言って遠い目になるシュピーゲル。そんなところに、ちょうどシノンが走り寄ってきた。
「お疲れ、零二。シュピーゲルは……どうしたの?」
「いや、キリトの試合内容を聞いてたら……」
「キリト? あいつも勝ったの? どんな勝ち方したのよ?」
シノンからも聞き返されて、シュピーゲルが頭痛を抑えるような仕草で、試合内容を語った。
「フルオートの機関銃の弾丸を全部光剣で斬り落して、ダッシュで相手に近付いて叩き斬ってた……」
「「………」」
相変わらず非常識な……。弾道予測線が見えても、普通は斬り落とすことなんて出来ないだろうに。
「アイツ……何者?」
「本当に彼、人間?」
実際その点については、僕も疑問符が付くね。
「ALOでも一・二を争う剣士で、反射速度だけなら間違いなくALOでもトップ。後ALOで唯一、≪二刀流≫を実戦で扱える剣士だね」
「二刀流? ……! それで光剣をもう一本貸したの!?」
「まあ、そうだね。いずれ当たるなら全力で戦いたいし」
「それにしたって、かなり不利になるんじゃない?」
「塩を送る、なんてものじゃないわね……」
でもALOじゃPvPでの全力戦闘なんてめったに無いし、やっぱり戦ってみたいんだよ。
「ちなみに彼の反射速度に関しては、攻撃魔法の『雷』斬ろうとした辺りから、気にしないことにしたよ……」
「雷って……」
「システム上で速度調整されてても、斬れないよね……」
実際タイミングは、ほとんど完璧だったしね。属性やらクリティカルポイントやらの問題が解決すれば、斬れたんじゃないだろうか。
「で、当のキリトは…いた、いた」
人ごみの中からキリトを見つけ、歩み寄る瞬間。
「……ッ!!」
猛烈な違和感と、身体にまとわり付くような殺気を感じた。反射的に
「アンタは……」
ぼろぼろのギリーマントをまとい、赤いゴーグルをつけた、スカルフェイスの男がそこにいた。
ようやく、レイジがGGO最終装備になりました!
まあ、『切り札』の銃は、いまだにポーチの中ですがw防御範囲が広く、マシンガンすら防ぎきる円盾(バックラー)は、やはりレイジに必須です!どっかの誰かと違って、弾丸斬り落とすなんて出来ませんし……
そして、≪死銃≫と接触!≪聴音≫持ちのレイジには、『透明マント』なんて効きません。
ここで一つお知らせ。またもや来週仕事が入り、投稿することが出来なくなりました……。正直、仕事で体力の限界……。