ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
SIDE:キリト
光を抜け出した先に広がるのは、赤茶けた荒野だった。すぐに周りを確認すると、周りには大小さまざまな岩石が点在するが、密林や都市部と違って、隠れるのは難しそうだ。
(……にしても、『銃』を使わない相手か)
この世界に来てから、そんな相手には出会わなかった。レイジですら、この世界の戦闘ではハンドガンを使っているみたいだったし、正直自分以外には『銃』以外で戦えるとも思えなかった。
「……あれが、準決勝の相手か?」
荒野の向こう側から、赤い
(――それにしても)
ソイツは、余りにも堂々と歩いていた。遭遇戦やゲリラ戦が主体のはずのこのGGOで、その在り方はあまりに異質。『兵士』というよりも、どこか『王』の雰囲気を醸し出していた。
あんなに堂々と歩いてこられたんじゃ、こちらとしても不意打ちみたいな攻撃はし辛い。仕方が無いので、身を隠していた岩陰からゆっくりと立ち上がり、こちらも胸を張って歩き出す。
「……アンタが、準決勝の相手か?」
一対一の予選ブロックでは、余りにも答えの分かり切った問い。こいつはいわば、戦闘前の確認のようなものだ。
「……そうだ。我が名は、≪
「……キリトだ」
相手の名乗りに応じ、こちらも名乗りを返す。既に右手には光剣≪カゲミツ≫、左手には≪FN・ファイブセブン≫。呼吸を整え、戦闘に向けてギアを切り替える。
「……? どうした? 構えないのか?」
こちらは銃と剣を構えていると言うのに、相手は相変わらず武装の準備もしていない。腕は胸の前で組んだままだ。
「必要ない。貴様ごとき、このままで十分よ!」
「――ああ、そうかい!」
その言葉を合図とし、光剣を横に奔らせる。ライトエフェクトこそでないが、その軌跡はまさに片手剣の水平斬撃スキル≪ホリゾンタル≫。タイミングも完璧で、確実にこの一撃で決まった、とオレは確信した。
「ぬぅんっ!!」
「なっ?!」
だからか、次に巻き起こった光景はオレにとって、余りにも予想外の光景だった。これまでどんな相手も一撃で倒してきた光剣が、
「我が武器、『攻勢型』対光学銃防護フィールド≪ザ・キング≫に光学兵器は通用せん! 残念だったな、剣士よ!!」
そう言って、
「北○剛掌破!!!」
ギリギリで掌の延長線上から避けた瞬間、後ろの地面が爆散した。弾丸の類じゃなく、衝撃を撃ち込むタイプの武器か?
「――よくかわしたな、剣士よ。今貴様が見たとおり、我が武器≪ザ・キング≫は、貴様の光剣を防ぐことも、攻撃に転ずることも出来る。威力は、一撃当たれば消し飛ばせるほどだ――行くぞ、剣士よ!!」
そうして、そこから始まる攻防は余りにも一方的だった。こちらの攻撃は全て掌で払い除けられ、鼻先をとんでもない威力の攻撃が掠めていく。誰がどう見ても、防戦一方と言った感じだった。
「どうしたッ! 攻撃すら出来んのか!」
「くっ……!」
その言葉に対し、袈裟懸けに斬り付けるが、それすらも防がれ前蹴りで吹き飛ばされた。
「――――――実に情けない、な。貴様、それでも
「――なに?」
かけられた言葉に、疑問が広がった。なぜだ。なぜ、その名前を知っている?
「不思議そうだな――俺は、この世界で≪零二≫と言う名のプレイヤーと出会い、戦った。余りにも卓越したその格闘技術とVR慣れした動きに疑問に思い、調べたのだ。そして、確信を持った。あの男は、SAO解放の立役者の一人、『英雄』≪金剛の阿修羅≫レイジだとな」
……コイツ、レイジの知り合いだったのか。確かに同じ格闘キャラで、アイツがシンパシーを感じそうな相手ではあるが。
「だからこそ、我が
「…………オレは、『勇者』なんかじゃないさ」
その言葉に歯噛みする。そうだ。オレは、勇者なんかじゃない。SAOのときも、ALOのときも、結局オレはレイジにお膳立てをしてもらってばかりだった。『鍍金の勇者』がせいぜいだろう。
「…………貴様が何を考えて、何を感じているかは、俺には分からん。だが、それならばそれに相応しい存在になればいいのではないのか?」
「…なんだと?」
「『勇者』とは、『勇敢な者』を表す言葉ではない――『勇者』とは、周囲の人間を奮い立たせ、『勇気を与える者』を示す言葉だ。自身に勇気が無く、そう呼ばれるのに足りないというのであれば、決して足を止めず、周りの人間に勇気を与えられるよう努力し続ければいい……少なくとも俺はそう考える」
「――!」
その言葉は、オレにとっては天啓に等しかった。……そうだ。足を止めず、勇者と呼ばれるに相応しい自分へと、常に努力し続ける。そうでもしないと、オレの無二の親友と呼べる『アイツ』と並び立てる自分になんか決してなれない。アイツだって、常に前に進み続けているんだから。
「だからこそ! 俺は、『覇者』を目指し! 日々、努力し続けている! 足を止めているようでは、この俺様は、決して倒せんぞ!!」
「……はは。それじゃあ、鍍金はメッキなりに、頑張ってみるさ」
そう苦笑しながら、左手のファイブセブンをホルスターに戻す。代わりに握るのは、レイジから渡された光剣、≪シラユキE2≫。
「――ようやく本領と言うわけか? 『二刀流』の≪黒の剣士≫、キリトよ」
「さて、ね。ただ、アイツの親友として、恥ずかしくない程度には足掻いてやるさ」
そこで、左手を前に、右手を後ろへと構え、ギアを切り替える。あのSAOの頃に、出来る限り近づけて。
「では――」
「ああ、尋常に――」
「「勝負!!」」
合図と共に駆け出し、二刀流の最大の強みである、連続攻撃を繰り出す。今まで攻勢に出ていた
「おおおおおおっ!」
「見事、見事だが! まだ負けえええええんっ!!」
斬り上げ、横薙ぎ、突き。どんどんと上がる攻撃速度とともに、ありとあらゆる斬撃を叩き込む。それでも崩せない。倒せない。これが『覇者』を目指すと言った者の本領か――!
「ま、ける、かよおおおおおッ!!」
天井知らずに上がる攻撃速度とテンションに任せ、身体が無意識にある動きを描き始める。それは、かつてのSAOで『相棒』とも呼べた切り札の一つ。
「≪スターバースト――――――ストリイィィィム≫!!」
二刀流・十六連撃ソードスキル、≪スターバースト・ストリーム≫。ありとあらゆる方向から飛び掛る斬撃に、ついに
「ぬ……おおおおおおおおっ!!」
こちらの攻撃にあわせた、カウンターの掌打。今のオレの長い髪を、何本も巻き込んだ渾身の一撃。それが
「――――見事だ、『勇者』よ」
Eブロック・準決勝第一試合、勝者キリト。
◇ ◇ ◇
景色が薄れ、光の中へと飛ばされる。どうやらこのままEブロック決勝戦の舞台へと移動するようだ。光を抜け出た先は、高台の崖下に広がる、
周囲を一度確認し、相手の位置を確認しようと、とりあえず高台に向けて歩き出す。その途中、崖の上に人影が現れた。
「オレは、≪獅子王リッチー≫! この高台を取った以上、オレの勝ちは確定だ! さあ、対戦者、出て来い!」
あたり一面に広がるデカイ声だったが、どうやらアレがオレの対戦相手で間違いないようだった。それだけ確認し、ほんの少しだけ顔を見せる。
「なぜなら! この≪ビッカース≫重機関銃の前には、どんな相手も粉々になるからだ!」
そう言って、こっちが顔をのぞかせた辺りを、手当たり次第に撃ち抜いてくる。成程、これが彼のスタイルと言うわけか。
それだけ確認して、オレは身を隠していた木立から抜け出し、一気に崖目掛けて走り出した。
「ハハハハハ! 破れかぶれの特攻なんぞ――――、な!!」
相手のセリフを無視し、崖の一番下に足を掛けて、一気に駆け上る。ALOでの軽量級妖精の共通スキル、≪
「ばかな、バカなあああああっ!?」
相手の乱射する弾丸を、手当たり次第に叩き斬る。そして、≪
「う…………おおおおおおおおっ!!」
空中で身体をひねり、その捻転を利用して右腰から斬り上げ、続く二撃目で右肩口から斬りおろす。二刀流重突進技、≪ダブル・サーキュラー≫。一撃でも致命的な威力の光剣の、連続攻撃。相手は反応すら出来ずに、立ったまま動きを止めた。
「お前は、もう――――死んでいる」
なんとなく口から出た言葉を最後に、相手の身体がポリゴン片へと姿を変え、オレのEブロック一位が決定した。
「
口の中でそう小さく呟き、戻ってきたロビーの景色の中、モニターを見上げる。
「……とりあえず、どっちも頑張れよ」
『Fブロック 決勝戦
SIDE OUT
獅子王さんなんて、いなかったんや……強敵のはずなのに、決勝戦の相手は一蹴。Eブロックはかなりひどい結果となりました。
ラオウがここで出てきたのは、元々決勝のバトルロイヤルに向けて、キリトに自分を再確認させるためでした。本気の二刀流でないと、この作品で『死銃』は倒せませんよ!?
次回いよいよシノンVSレイジ!!格闘型は、どうやって狙撃型と戦うのか!乞うご期待♪