ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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読者のみなさんが予想できなかった準決勝、開始です!



023 勇者と覇者、その在り方

 

SIDE:キリト

 

 光を抜け出した先に広がるのは、赤茶けた荒野だった。すぐに周りを確認すると、周りには大小さまざまな岩石が点在するが、密林や都市部と違って、隠れるのは難しそうだ。

 

(……にしても、『銃』を使わない相手か)

 

 この世界に来てから、そんな相手には出会わなかった。レイジですら、この世界の戦闘ではハンドガンを使っているみたいだったし、正直自分以外には『銃』以外で戦えるとも思えなかった。

 

「……あれが、準決勝の相手か?」

 

 荒野の向こう側から、赤い外套(マント)をなびかせ、一人の男が歩いてきた。遠目でしかないが、かなりの巨躯。どうやら鎧兜に似せた防護服(ファティーグ)を身に着けているようだ。

 

(――それにしても)

 

 ソイツは、余りにも堂々と歩いていた。遭遇戦やゲリラ戦が主体のはずのこのGGOで、その在り方はあまりに異質。『兵士』というよりも、どこか『王』の雰囲気を醸し出していた。

 

 あんなに堂々と歩いてこられたんじゃ、こちらとしても不意打ちみたいな攻撃はし辛い。仕方が無いので、身を隠していた岩陰からゆっくりと立ち上がり、こちらも胸を張って歩き出す。

 

「……アンタが、準決勝の相手か?」

 

 一対一の予選ブロックでは、余りにも答えの分かり切った問い。こいつはいわば、戦闘前の確認のようなものだ。

 

「……そうだ。我が名は、≪羅皇(ラオウ)≫! このGGOにて、覇を唱える者だ!」

 

「……キリトだ」

 

 相手の名乗りに応じ、こちらも名乗りを返す。既に右手には光剣≪カゲミツ≫、左手には≪FN・ファイブセブン≫。呼吸を整え、戦闘に向けてギアを切り替える。

 

「……? どうした? 構えないのか?」

 

 こちらは銃と剣を構えていると言うのに、相手は相変わらず武装の準備もしていない。腕は胸の前で組んだままだ。

 

「必要ない。貴様ごとき、このままで十分よ!」

 

「――ああ、そうかい!」

 

 その言葉を合図とし、光剣を横に奔らせる。ライトエフェクトこそでないが、その軌跡はまさに片手剣の水平斬撃スキル≪ホリゾンタル≫。タイミングも完璧で、確実にこの一撃で決まった、とオレは確信した。

 

「ぬぅんっ!!」

 

「なっ?!」

 

 だからか、次に巻き起こった光景はオレにとって、余りにも予想外の光景だった。これまでどんな相手も一撃で倒してきた光剣が、羅皇(ラオウ)の右手に防がれ、空中で静止するなど。

 

「我が武器、『攻勢型』対光学銃防護フィールド≪ザ・キング≫に光学兵器は通用せん! 残念だったな、剣士よ!!」

 

 そう言って、羅皇(ラオウ)はもう片方の掌を此方に向けてきた。その瞬間、背筋に寒気が走り、SAOで鍛えた危機察知能力が最大限で警鐘を鳴らした。ヤバイ!!

 

 

「北○剛掌破!!!」

 

 

 ギリギリで掌の延長線上から避けた瞬間、後ろの地面が爆散した。弾丸の類じゃなく、衝撃を撃ち込むタイプの武器か?

 

「――よくかわしたな、剣士よ。今貴様が見たとおり、我が武器≪ザ・キング≫は、貴様の光剣を防ぐことも、攻撃に転ずることも出来る。威力は、一撃当たれば消し飛ばせるほどだ――行くぞ、剣士よ!!」

 

 そうして、そこから始まる攻防は余りにも一方的だった。こちらの攻撃は全て掌で払い除けられ、鼻先をとんでもない威力の攻撃が掠めていく。誰がどう見ても、防戦一方と言った感じだった。

 

「どうしたッ! 攻撃すら出来んのか!」

 

「くっ……!」

 

 その言葉に対し、袈裟懸けに斬り付けるが、それすらも防がれ前蹴りで吹き飛ばされた。

 

「――――――実に情けない、な。貴様、それでもあの(・・)黒の剣士(・・・・)≫か?」

 

「――なに?」

 

 かけられた言葉に、疑問が広がった。なぜだ。なぜ、その名前を知っている?

 

「不思議そうだな――俺は、この世界で≪零二≫と言う名のプレイヤーと出会い、戦った。余りにも卓越したその格闘技術とVR慣れした動きに疑問に思い、調べたのだ。そして、確信を持った。あの男は、SAO解放の立役者の一人、『英雄』≪金剛の阿修羅≫レイジだとな」

 

 ……コイツ、レイジの知り合いだったのか。確かに同じ格闘キャラで、アイツがシンパシーを感じそうな相手ではあるが。

 

「だからこそ、我が強敵(とも)と話をしていた貴様の正体も、解っている……SAO解放の三英雄の一人、『勇者』≪黒の剣士≫キリト」

 

「…………オレは、『勇者』なんかじゃないさ」

 

 その言葉に歯噛みする。そうだ。オレは、勇者なんかじゃない。SAOのときも、ALOのときも、結局オレはレイジにお膳立てをしてもらってばかりだった。『鍍金の勇者』がせいぜいだろう。

 

「…………貴様が何を考えて、何を感じているかは、俺には分からん。だが、それならばそれに相応しい存在になればいいのではないのか?」

 

「…なんだと?」

 

「『勇者』とは、『勇敢な者』を表す言葉ではない――『勇者』とは、周囲の人間を奮い立たせ、『勇気を与える者』を示す言葉だ。自身に勇気が無く、そう呼ばれるのに足りないというのであれば、決して足を止めず、周りの人間に勇気を与えられるよう努力し続ければいい……少なくとも俺はそう考える」

 

「――!」

 

 その言葉は、オレにとっては天啓に等しかった。……そうだ。足を止めず、勇者と呼ばれるに相応しい自分へと、常に努力し続ける。そうでもしないと、オレの無二の親友と呼べる『アイツ』と並び立てる自分になんか決してなれない。アイツだって、常に前に進み続けているんだから。

 

「だからこそ! 俺は、『覇者』を目指し! 日々、努力し続けている! 足を止めているようでは、この俺様は、決して倒せんぞ!!」

 

「……はは。それじゃあ、鍍金はメッキなりに、頑張ってみるさ」

 

 そう苦笑しながら、左手のファイブセブンをホルスターに戻す。代わりに握るのは、レイジから渡された光剣、≪シラユキE2≫。

 

「――ようやく本領と言うわけか? 『二刀流』の≪黒の剣士≫、キリトよ」

 

「さて、ね。ただ、アイツの親友として、恥ずかしくない程度には足掻いてやるさ」

 

 そこで、左手を前に、右手を後ろへと構え、ギアを切り替える。あのSAOの頃に、出来る限り近づけて。

 

「では――」

 

「ああ、尋常に――」

 

「「勝負!!」」

 

 合図と共に駆け出し、二刀流の最大の強みである、連続攻撃を繰り出す。今まで攻勢に出ていた羅皇(ラオウ)は今度は防御へとまわる。

 

「おおおおおおっ!」

 

「見事、見事だが! まだ負けえええええんっ!!」

 

 斬り上げ、横薙ぎ、突き。どんどんと上がる攻撃速度とともに、ありとあらゆる斬撃を叩き込む。それでも崩せない。倒せない。これが『覇者』を目指すと言った者の本領か――!

 

「ま、ける、かよおおおおおッ!!」

 

 天井知らずに上がる攻撃速度とテンションに任せ、身体が無意識にある動きを描き始める。それは、かつてのSAOで『相棒』とも呼べた切り札の一つ。

 

 

「≪スターバースト――――――ストリイィィィム≫!!」

 

 

 二刀流・十六連撃ソードスキル、≪スターバースト・ストリーム≫。ありとあらゆる方向から飛び掛る斬撃に、ついに羅皇(ラオウ)の防御が崩れる。

 

「ぬ……おおおおおおおおっ!!」 

 

 こちらの攻撃にあわせた、カウンターの掌打。今のオレの長い髪を、何本も巻き込んだ渾身の一撃。それが羅皇(ラオウ)の最後の攻撃だった。胸に≪シラユキ≫を突き立てたまま、最後の言葉を交わす。

 

 

「――――見事だ、『勇者』よ」

 

 

 Eブロック・準決勝第一試合、勝者キリト。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 景色が薄れ、光の中へと飛ばされる。どうやらこのままEブロック決勝戦の舞台へと移動するようだ。光を抜け出た先は、高台の崖下に広がる、密林(ジャングル)の中だった。

 

 周囲を一度確認し、相手の位置を確認しようと、とりあえず高台に向けて歩き出す。その途中、崖の上に人影が現れた。

 

「オレは、≪獅子王リッチー≫! この高台を取った以上、オレの勝ちは確定だ! さあ、対戦者、出て来い!」

 

 あたり一面に広がるデカイ声だったが、どうやらアレがオレの対戦相手で間違いないようだった。それだけ確認し、ほんの少しだけ顔を見せる。

 

「なぜなら! この≪ビッカース≫重機関銃の前には、どんな相手も粉々になるからだ!」

 

 そう言って、こっちが顔をのぞかせた辺りを、手当たり次第に撃ち抜いてくる。成程、これが彼のスタイルと言うわけか。

 

 それだけ確認して、オレは身を隠していた木立から抜け出し、一気に崖目掛けて走り出した。

 

「ハハハハハ! 破れかぶれの特攻なんぞ――――、な!!」

 

 相手のセリフを無視し、崖の一番下に足を掛けて、一気に駆け上る。ALOでの軽量級妖精の共通スキル、≪壁走り(ウォールラン)≫。そして両手には、既に黒白の光剣。

 

「ばかな、バカなあああああっ!?」

 

 相手の乱射する弾丸を、手当たり次第に叩き斬る。そして、≪壁走り(ウォールラン)≫の勢いのまま、一気に空中まで飛び出した。

 

「う…………おおおおおおおおっ!!」

 

 空中で身体をひねり、その捻転を利用して右腰から斬り上げ、続く二撃目で右肩口から斬りおろす。二刀流重突進技、≪ダブル・サーキュラー≫。一撃でも致命的な威力の光剣の、連続攻撃。相手は反応すら出来ずに、立ったまま動きを止めた。

 

「お前は、もう――――死んでいる」

 

 なんとなく口から出た言葉を最後に、相手の身体がポリゴン片へと姿を変え、オレのEブロック一位が決定した。

 

羅皇(ラオウ)――まだまだ『勇者』には程遠いオレだけど、オレにだって意地がある。英雄(アイツ)の友人でい続けるためにも、オレだってもう立ち止まったりしないさ」

 

 口の中でそう小さく呟き、戻ってきたロビーの景色の中、モニターを見上げる。

 

「……とりあえず、どっちも頑張れよ」

 

 

『Fブロック 決勝戦 Sinon(シノン) VS 零二(レイジ)

 

 

SIDE OUT

 




獅子王さんなんて、いなかったんや……強敵のはずなのに、決勝戦の相手は一蹴。Eブロックはかなりひどい結果となりました。

ラオウがここで出てきたのは、元々決勝のバトルロイヤルに向けて、キリトに自分を再確認させるためでした。本気の二刀流でないと、この作品で『死銃』は倒せませんよ!?

次回いよいよシノンVSレイジ!!格闘型は、どうやって狙撃型と戦うのか!乞うご期待♪
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