ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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今回は、過去の因縁と現実での動きになります。このままだと、レイジの元にアレが来ちゃいますので。


027 過去と絆

 

SIDE:アルゴ

 

「――アレが……」

 

「ああ、≪死銃≫だ」

 

 今、オイラ達が見た光景は、正直想像を絶していた。目の前での殺人を止めようと走り寄ったレイジを、『空中から』霞のように滲み出た≪ジョニー・ブラック≫が阻み、その間に本来の≪死銃≫――――≪赤眼(アカメ)のザザ≫が殺人を成し遂げたんダカラナ。

 

 撃たれたペイルライダーの、無音の叫びと苦悶に満ちた表情は、夢に出てきそうダヨ。

 

「本当に殺人を犯しているんだとすれば、今接続を切断された彼も、死んだということですか……」

 

「おい! 菊岡サン、今からでもザザとジョニーの現実(リアル)を逮捕できないのか!?」

 

「それは、不可能ですよ。現在の時点で、彼らが『殺人』を犯しているという証拠は何もない」

 

「ああ、もう! だったらいっそ、この大会を中止にしなさいよ! そうすればもう殺人なんて起こらないじゃない!!」

 

「それが出来たら既に行っています。こういうとき本社を海外の地に作られると厄介ですね……」

 

 ……正直な話、レイジがジョニーの奴に毒を喰らったときは、肝が冷えたヨ。だからこそ、ここにいる皆、すぐにでもレイジやキリトを助けようとしている。

 

 

 …………シカシ。

 

 

「………………」

 

 いつも≪風林火山≫のメンバーのことを一番に考えてきたクラインの奴が、さっきから何も喋らない。らしくナイナ?

 

「アルゴ――いや、アルフよう……」

 

「ん?」

 

 その声に張りは無く、気持ちが沈んでいるのが、簡単に分かる。本当に、いつものクラインらしくもナイナ。

 

「≪死銃≫の一人は、≪ジョニー・ブラック≫で間違いないんだな?」

 

「アア、そうダヨ……どうしたんダ、クライン? らしくナイヨ」

 

 だけど私の答えに、クラインは頭を抱え、歯を食いしばっている。――何か、因縁でもあったノカ?

 

「オイ、どうしたんだ、クライン。一体何が――」

 

「……オレの、せいだ」

 

「……何?」

 

 エギルの呼びかけに、ほんの少しの反応が返ってきたが、意味が分からなかっタ。オレの、せい?

 

 

「レイジが狙われる『原因』を作ったのは……オレなんだよ。チクショウ…………」

 

SIDE OUT

 

 ◇ ◇ ◇

 

「バカ! バカバカ、バカ!!」

 

「……ゴメン、シノン」

 

 アレからなんとか麻痺も解け、振り返ってみると、目にたくさん涙を溜めながら睨みつけてくる般若がいました。フィールドのど真ん中で正座させられたあげく、絶賛説教中です。……彼女の目の前で死に掛けたからね。

 

「――とりあえずそこまでだ、シノン。それでレイジ、あのお前をやった奴は、誰なんだ? ≪死銃≫の仲間か?」

 

 遠目だったから、分かりづらかったか。

 

「≪ラフコフ≫の幹部だった、≪ジョニー・ブラック≫だよ。今は≪J.B.Pain≫って名前になってるけど」

 

「アイツもラフコフか……」

 

 キリトはどうやら昔の記憶を引っ張り出そうとしているようだけど、僕ら皆あいつ等のことは忘れたかったからね。キリトが思い出すには、時間が必要かもしれない。

 

「零二が不意打ちを喰らうなんてね……どんなやつだったの?」

 

「SAO時代は、≪隠蔽≫と複合型エクストラスキルの≪忍び足(スニーキング)≫を使用する奴で……当時から毒ナイフを愛用している奴だった」

 

 それに、何より、アイツと出会うことには、因縁を感じている。心のどこかが納得してもいた。

 

 

 だって、僕は、アイツから仲間を奪った、『殺人鬼』なのだから。

 

 

SIDE:アルゴ

 

「――オレら≪風林火山≫は、基本的には犯罪者(オレンジ)との因縁は深くはねえ。犯罪者(オレンジ)狩りと治安維持に乗り出してたのは、主に≪軍≫のやつらで、オレらは何処かから依頼でもあれば動く程度だった」

 

「ソレは知ってるヨ……でも、じゃあ何でレイジに狙われる『原因』があるなんて言うんダ? フィールドとかで出会ったことがあったとしても、数える程度の接触じゃ狙われたりもしないダロウ?」

 

 正直な話、その程度の接触ならレイジが狙われる可能性なんて低いヨ。他の攻略組プレイヤーに比べて≪風林火山≫は『地味』だからネ。

 

「――――『掃討戦』だ」

 

「!」

 

 攻略組にもかなりの死者を出した、『ラフコフ掃討戦』。アレが関係あるっていうのカイ?

 

 

「レイジは、あの時………………ジョニー・ブラックが率いていた奴の部下、五人全員を殺してる(・・・・)

 

 

『な!!』

 

 全員が、絶句した。

 確かに、レイジやクラインがあの掃討戦に参加していたのは知っていたケド、あの戦いで、誰が誰を殺したかについては全員が口を噤んだし、オイラたちも聞かなかった。それに心のどこかで、レイジが誰かを傷付けることを望まない、っていうのも信じテタ。

 

 だけど、『殺した』?

 

 レイジが、そんな……。

 

「……勘違いすんじゃねえぞ。レイジの奴は、どんなになっても誰かを傷付けることなんて望まねえ。だから、殺したのは――殺さざるを得なくしちまったのは――オレのせいなんだよ…………」

 

 そう言ったクラインの目は、涙であふれていた。

 

「あの時……オレはジョニーの奴と一騎討ちの状態だった。レイジに、ジョニー直属の部下達を足止めさせてな。レイジには、相手を殺す必要なんかねえ、ちょっと不利になれば、ヤツ等も勝手に降伏するって伝えてた。オレ自身、最初はそう信じてた」

 

「……だけど、そうならなかった」

 

 ああ、とクラインが頷く。

 

「あの掃討戦に、レイジが参加してたのは、高い耐毒スキルと防御力を備えた壁戦士(タンク)を≪聖竜連合≫のヤツ等に打診されてたからで、アイツ自身は乗り気でもなかった。だからあくまで消極的に、五人全員を決して逃がさないことに、アイツは終始してた」

 

 だけど、と語るクラインの口調は、この上なく重たかった。

 

「オレが――――……オレが油断して、ジョニーの奴が投げた毒付きの投げナイフなんか、至近距離で喰らっちまって………………地面に倒れたオレ目掛けてナイフが振り下ろされようとした時、アイツは覚悟を決めた」

 

「………………」

 

「一瞬でアイツは……目の前の二人の喉笛に、風穴開けて。蹴りで首を叩き落して、胸板を貫き、最後の一人は、首から上を拳で消し飛ばした……」

 

「もう、いい……」

 

「そして、アイツはオレを助けてくれた…………けど、けどよ……アイツが手を汚しちまったのは、やっぱりオレのせいなんだよ…………」

 

「もういいヨ……」

 

「オレが、オレが…………あの時油断なんかしちまったばっかりに………………」

 

「もういいって言ってるダロウ?!!」

 

 気がついたら、叫んでいた。だけど、そうだ。クラインのせいじゃない。もちろん、レイジのせいでもない……。………………悪いのは、もっと悪いのは――――あの日、情報をラフコフに奪われてしまっていた、私達≪情報屋≫なんダカラ。

 

「でも、これで分かったよ。つまりは仲間の敵討ちってことだね」

 

「いや、そうとも言えん――ラフコフの奴等は仲間意識が薄く、それよりも殺人への衝動が勝るところがある……今回は、あくまで『ついで』だろう」

 

 菊岡サンとエギルの声が聞こえてきていたけど、その点は同感ダヨ。アイツラが殺シに理由なんか求めるもんカイ。

 

 

「……クリスハイト。貴方はキリト君やレイジ君が、どこからダイブしているか知ってる?」

 

 

 場に、そんな静かな声が響いたのはそんな時ダッタ。発言したのは――アスナ。

 

「……キリト君のほうは、大丈夫だよ。僕が用意した病院で、万に一つの間違いも起きないよう、厳重にモニタリングしてる。だけど正直、イレギュラーのレイジ君は…………」

 

「それなら大丈夫よ。私達全員アイツの家を知ってるもの」

 

 その言葉に、周りの全員が大きく頷く。……現実に出られないはずだったアイツが、こんなにも絆を広げてたノカ……。

 

「レイジの身体の方は、そうね、サチやクラインに任せましょう。もし妙な反応でもあったら、すぐにたたき起こすのよ!!」

 

「――うん。レイジが死んじゃうなんて、嫌だもんね」

 

「お前ぇら…………。っ、おう! 任せとけ! ≪死銃≫なんかにレイジは殺させねえ!!」

 

 ようやく、元気が出てきたみたいダナ、クライン。これじゃ、私だって一肌脱ぎたくなってくるじゃナイカ!

 

「だったら、オイラも一枚噛むヨ! オイラにもレイジの自宅教えナ!!」

 

 現実(こっち)側は、任せとけレイジ。待ってろヨ!

 

SIDE OUT

 




と、いうわけで、レイジも殺人を犯してます。しかも狂乱の中ではなく、自分の意思で……洞窟の話に響いてきますね。

正直作者は、性善説でも性悪説でもないですが、殺人を嗜好し『楽しむ』ラフコフは単純に嫌悪しています。

『撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ!(コードギアスよりルルーシュ)』

――これに尽きると思いますので。
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