ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
テンションに任せて、シノンとレイジ双方の描写を増やしてみました。
キリトを活躍……させるはずだったのになあ……
SIDE:キリト
≪死銃≫へと向かっていたオレの足を止めたのは、後ろから聞こえてきたシノンの絶叫だった。
「シノン!?」
急いでそちらを振り向くと、シノンとレイジのすぐ近くに、先程見た頭陀袋。
「ちいッ!」
急いで方向転換し、二人の元へ急ぐ。そうしなければならないほどに、僅かに見えたシノンの顔色は蒼白。あのままならアミュスフィアがプレイヤーの異変を感じ取って、接続切断しかねない。そうなった場合、≪
――……『
一瞬疑問がよぎったが、その思考を遮ったのは、視界に再び意識を持っていった瞬間だった。
「なッ!?」
いない。先程までシノンたちの横にいた頭陀袋が、いなくなっている。オレは走っている間も、一度も視線を切った覚えなどないのに。
シノンのすぐ横で急停止して、周りを警戒する。やはり、いない。
そのとき、本当に、僅かに、ゾクリと背筋が凍った。
その直感に従い、身体を地面に倒れこませるようにしてかわす。今まで頭のあった場所を、銀閃が奔った。
「くっ……!?」
「ヒュー! 今のを避けるかよ! さっすが、≪黒の剣士≫サマだ。やっぱ、お前も殺してえなあ……」
そんな軽薄な言葉とともに、空中に黒い頭陀袋が浮かび上がる。さっきの透明アイテム……。だけど、その前は?視線を切った覚えのないオレの目の前で、どうやってコイツは、
「――そう、逸る、なよ、ジョニー。今回は、コイツは
そう言って後ろから近づいてくるのは、先程の髑髏マスク。カチリという硬質な音からして、どうやらさっきのでかいライフルをこっちに向けてきている。しかし、
「そーだなー。じゃあ仕方ねえ。テメエはここで『死体』にされちまって、
笑い声をバックに、後ろの髑髏マスクから殺気が迸る。…ヤバイ。
「――――口上が、長いよ」
その言葉とともに、足元で麻痺していた筈のレイジから頭陀袋に向けてワイヤーが発射され、たちまち何もない空中で巻き付く。位置的に、左腕か?
「な! 何でテメエもう治ってんだ!?」
「僕たちSAO
そう言ってレイジは、未だ空中に半分消えたままの頭陀袋を引っ張る。力比べに持ち込む気か!
「――っ、往生、際が、悪いな」
「させるかよ!」
レイジの後方で、髑髏マスクが照準をレイジに変える。その引き金が引かれるよりも早く間に割り込んだ。
「う――――おおおおおおッ!!」
雄叫びとともに、空中に浮かび上がった
「…ッ、ライフル弾を、斬る、か」
「オイオイオイオイ?! 何ですか、何ナンですかアッ? SAOから腑抜けたかと思ってりゃ、十~分、すげえ
そう言ったジョニー・ブラックが、今までの毒ナイフとは違う、真紅の刀身のナイフを取り出す。もっともこれにも何らかの効果があるのか、黒い墨のような液体が滴っていた。
「ボソッ(……キリト)」
「……ボソボソ(何だよ、レイジ。今振り向く余裕ないぞ)」
「ボソボソボソ(一旦、退こう。この状態のシノンを放置して戦闘は無理だ)」
その言葉に視線を下向ける。そこにはいまだ震えながら、両手で頭を抱える少女の姿があった。……確かにな。
「ボソボソ(わかった。でもどうやってだ?)」
「――ボソボソ(道の向こう側を見て。運転は頼める?)」
身体を動かさずに視線だけ向けると、そこには『レンタバギー』の文字。――よし。それじゃあ……
「「いくぞ!!」」
合図とともに、走る。目指すは道路の反対側。レンタバギーの駐車場だ。
「アア?! 待ちやがれ、テメエラ!」
「…逃が、さん」
当然追ってくるジョニーと、ライフルの銃口を向けてくる髑髏マスク。それを予想していたレイジは、道路に散乱していたコンクリートの瓦礫の中から一際大きな物を蹴り上げた。
「キリト!」
「任せろ!」
蹴り飛ばされたその瓦礫を、空中で分割。そこに擬似≪ザンエイ≫で追いついたレイジ。
「いっ……けえ!!」
空中の細かい破片を蹴り飛ばし、簡易的な散弾にする。もちろん蹴り飛ばした先には、頭陀袋と髑髏マスク。
「ぐあッ!? ヤロウ――」
「――ッ。くそ、が……」
近くにいたジョニーとかいう頭陀袋はもちろんのこと、ライフルを構えていた髑髏マスクも狙いを妨げることができた。その隙に、三人が乗れるタイプのレンタバギーに乗り込み、急発進させる。
「捕まってろ!」
「シノン、しっかり!」
「……ッ、う、うう……」
レイジに抱えられたシノンは未だに顔色が悪く、身体を震わせている。正直心配だが、状況がそれを許さなかった。
「オラ! 待ちやがれェッ!!」
「――クク」
後ろからオフロードバイクとロボットホースで、追いかけてくるラフコフ。どちらも走破性が高いのか、瓦礫だらけで走りにくい道で徐々に追いついてくる。
「伏せてッ!」
後方を確認していたレイジの号令で、とっさに頭を下げた。するとそのすぐ上をライフル弾が通り抜ける。この道路状況で狙撃したのか!?
「いやああぁッ!」
後部座席のシノンが叫び声をあげる。そこにはもう、あの冷静な
「シノン! 君が後部座席から、奴らを狙撃してくれ!」
「……ダメ、ダメよ。私、もう戦えない……」
オレの要請にも彼女はうわ言のように繰り返すばかり。ダメか?
「――――――だったら、半分は僕が背負う」
そう言って、狙撃銃を抱え込むように震えていたシノンを、レイジが上から包むように抱きしめ、両方の手を、彼女の手の上に添えた。
「え……零二…………?」
「シノン。手が震えて銃が持てないなら、僕が持つ。足が震えて銃が支えられないなら、僕が支える。だから……一緒に戦ってほしい」
「無理……だよ。私、もう戦えな…………」
「シノン」
彼女の名前を呼んで、レイジが力一杯彼女を抱き締める。少しでも、その震えが、寒さが和らぐようにと願うみたいに。
「――人は、誰だって戦える。戦うか、戦わないか、その選択をするのは、やっぱり本人だけかもしれない。今のシノンには……辛いかもしれない」
「……そう、だよ。それが、わかってるなら……」
「だけど!」
不意に叫んだレイジが、それまでより一層、シノンの手を強く握り締める。
「選ぶとき、隣にいることくらいなら、僕にだってできる……その手をずっと、握っていてあげることくらい、できる!」
「零二……」
「だから……一緒に、戦ってくれ。シノン……」
その言葉に、ゆっくり、ゆっくりと、シノンは銃を持ち上げ、同じくライフルを持つ髑髏マスクへと照準した。
「キリトッ! この揺れ、なんとかしてッ!」
「わかってる! 五秒後だ。……二、一、今!」
バギーが路面に突っ伏したスポーツカーに乗り上げ、宙を舞った。
「シノンッ!」
「……ッ!」
空中で放たれた大型ライフルの弾丸は、しかし、髑髏マスクをそれ、その脇に乗り捨てられた大型トラックへと食い込んだ。
次の瞬間、大型トラックは爆発炎上し、すぐ横にいたロボットホースと、並走していたオフロードバイクを丸ごと飲み込んでいた。それを見届け、後部座席でシノンがすべての力を使い果たしたかのようにへたり込む。その手を――いや、全身を、レイジは優しく包み込んでいた。
「シノン――――――一緒に戦ってくれて、ありがとう」
「……っ、う、うう…………」
僅かに漏れた彼女の嗚咽から、少しでも気を逸らすように、オレはそのままバギーの進行方向を向き、決して後ろを振り向こうとしなかった……。
SIDE OUT
原作を下敷きに、色々変更してみました。
やっぱり手を握ってくれる人がいるだけでも、今のシノンには心情的に違ってくると思ったので。
次はいよいよ洞窟。だけどお邪魔虫も一緒なんだよなあ……どうしよ?