ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
「――で、結局≪死銃≫には、どう対抗する?」
目の前の真っ黒黒助が話しかけてくるけど、その眼は明らかに笑っている。わざとか、わざとなんだな!?
「そ、そうね。正直≪死銃≫の殺害方法が分からない以上、手の打ちようもないし、あの銃で撃たれないことしか対抗策なんてないんだけど……」
答えたシノンも、顔が赤い。かくいう僕も、顔から尋常じゃないくらい熱を感じる。鏡を見たら、多分夕焼けみたいに真っ赤だろう。
「それにしても『殺害方法』か……」
そこはあまり考えていなかった。正直SAO時代は、ゲーム内での死因がどんなものであれ、最期には脳をナーヴギアに焼き切られるという死因だったため、ほとんど考えなかったのだ。昔の先入観で、脳への何らかの傷害だろうと思い込んでいた。
「キリト、先に死んだ≪ゼクシード≫と≪薄塩たらこ≫は、一体何が死因なの? 死体で見つかったことまで知ってるなら、ある程度情報も持ってるでしょ?」
「あ、ああ。二人とも『心臓』に障碍が出たことが、直接の死因だ」
「は……?」
『脳』じゃなくて、『心臓』?なんで、そんな大事なことを今まで言わなかったのかな、コイツは。
「キリト――――それなら、直接の死因は、アミュスフィアでも、VRゲームでもないよ。『脳』ならともかく、『心臓』に影響を与えるなんて、ナーヴギアにだって不可能だ」
「い、いやそんなことないだろ。ホラ、何か強い刺激を感覚に与えるとか――」
「視覚か聴覚に刺激を直接たたきこんだってことかしら? 確かにそれなら……」
確かに不意に刺激を受ければ、『びっくり』はするだろう。でもねえ……
「それだと、『お化け屋敷』と対して変わらない程度の刺激しか無理だよ。アミュスフィアはセキュリティがしっかりしてるから、当人に何らかの前兆でも起きれば、電源かネット接続のどちらかを落として、プレイヤーを必ず守る。少しでも気分が悪くなれば現実に引き戻されるだろうね」
逆に言えば、その二人はそんな暇もないほど、いきなり死んだことになる。一定以上の視覚・聴覚刺激は受け付けないように設計されているアミュスフィアで、そんな刺激は作り出せない。
「それなら……そうだ、ペインアブソーバー! あれの数値をいじって相手に最大の痛覚刺激を与えれば――――」
――ふむ。確かにその場合なら、心臓にショック死させるほどの刺激は作り出せるかもしれない。だけど、やっぱりそれでもない。
「不可能だよ、キリト。ペインアブソーバーは、あくまで仮想の痛みを体感させるものでしかない。あんなしょぼいハンドガンじゃ、そこまでの痛みは生み出せない」
「い、いや。そうじゃなくて、ハンドガンなんか比べ物にならない、ショック死するほどの痛みを身体に与えるとか」
「その場合、その激痛を受けた箇所に、確実に『痕跡』が残るよ。催眠術にかかった人間に『冷たい棒』を『焼けた火箸』だと思い込ませると、実際に火傷を負うようにね。須郷の奴も、
「――じゃあ、なんで?」
キリトが呆けたように言葉を発したが、どう考えても原因は一つ。
「≪ゼクシード≫と≪薄塩たらこ≫は、
正直なぜ二人が死んだのかは、まだわからない。けど確実にアミュスフィアは直接の死因にはなりえない。それは確定した。
「……その辺りに、あの二人が私や零二を見逃した理由もあるのかしら? 『まだ殺さない』なんて言ってたし、殺す気はあったと思うのよ」
「ん? それもそうか……」
てっきりラフコフお得意のいたぶり目的だと思ったけど、それだけが原因と考えるにはどうにも弱かった。何か別の『理由』もあるのか?
「『現実』………………」
そう呟き、キリトはずっとうつむき、何事かを考えており、やがて叫んだ。
「――――まさかッ!!」
SIDE:アルゴ
私こと有田沙耶は、クラインこと壺井遼太郎の車で、レイジの自宅に向かった。他の二人は割とレイジの実家に近かったが、私だけ離れたところに住んでいたからだ。
「……でも、レイジの家に着いても、私たちに何ができるのかな」
私の隣で悲しそうな声を出しているのは、サチこと赤木幸恵。いや、サッちゃん?これからレイジのとこに行こうって言うのに、テンション下げないでくれナイカ?!
「そこは、ホラ。えーと、手を握ったりとか……」
「……うーん。レイジ、他に好きな娘いるのに、そういうことしていいのかな?」
「え!? サッちゃん以外ニカ?!」
オネーサン、それは初耳ダヨ!てっきりサッちゃんが本命かと。うっかりアルゴ口調になるくらいの衝撃だった。
「アルゴなら知ってるかもしれねえな。何でも他のVRMMO――多分GGOで、仲良くなった男女二人組がいて、そのうちの女の子の方に惚れてるって話だ」
「ってことは――シーちゃんか! これには、オネーサン驚きダヨ!」
あのシーちゃんとねえ…………てことは、やっぱり私のこの『気持ち』は、どの道無理だった、ってことか。
「そのシーちゃんてのは、どんな娘なんだ? 俺も≪風林火山≫のリーダーとして、ギルドメンバーの精神的なケアをしなきゃならねえからな」
「ただの野次馬根性ダロ……シーちゃん、キャラ名≪シノン≫は名うての
「
そりゃキャラ性能ダロウガ。盾が完成した以上、あのコンビが組めば、確かにGGO最強かもしれないけどね。
「あ、見えてきたよ」
サッちゃんの声に外を見ると、幾分古くくたびれたアパートが見えてきた。
車が止まるのも待ちきれず、急いで降りて階段を駆け上がる。事前に聞いたレイジの部屋の前に行くと、そこには見知らぬ少年が佇んでいた。
「……? 誰、貴方?」
「え……あ。いや、あの、銅島さんのお知り合いの方ですか?」
そう言った少年は、童顔で、幾分幼く見えた。
「そうだけど……申し訳ないけど、退いてくれる? 彼の部屋に入りたいのよ」
「あ、でも、彼不在かもしれないですよ。インターホン鳴らしても返事ないし」
「構わないわ」
そういってドアに近づき、ノブを回す。
(ご丁寧にチェーンまでかけてGGOに入ってるノカ。相変わらず用心なコトダヨ)
しかし、こうなると中に入ることが不可能だ。ドアにかかるチェーンか窓を壊せば中に入れるが、そうすると今度は警察に事情を訊かれるだろう。
「駄目ね。起きるのを待つしかないわ」
「あ、あの、貴女は一体――――
「オイ、≪アルゴ≫!!」
――!」
下からのクライン呼びかけに思わず振り向き、そちらへと走り寄る。
だから、気づかなった。
私の名前を聞いたその彼――新川恭二の瞳が怪しく光ったことも、その後ろ手に、
SIDE OUT
「『現実』で、私たちの身体を殺してる
「ああ、それしか考えられない」
……成程。それならつじつまは合う。しかしそうなると――
「僕だけなら、殺せないかもしれないね」
「え?」
「どういうことだ?」
「入る前に、家にチェーンまでかけてきたからね。さすがにチェーンを壊したり、窓を壊したりは出来ないだろうし」
「いや、決めつけるのは早計じゃないか?
「そんなことできる
そうなると、余計にシノンを撃たせるわけにはいかなくなった。シノンは青褪めた顔をしているし、そこまで厳重な施錠はしなかったんだろう。
「キリト……キリトのログイン場所は、関係者以外知らないよね?」
「ああ。そうなると、オレとレイジで事に当たるしかないな」
キリトは光の剣に、僕は左手の盾に手をかけ、気合を入れなおす。僕ら二人で≪死銃≫を倒す。それしかない。
「――――待って。敵は≪死銃≫だけじゃないわ。ゲームも終盤に近い以上、確実にGGO最強候補の≪闇風≫も生き残ってるはずよ」
「……あー。普段なら喜んで相手するところだけど、今回はね…………」
実際彼と≪死銃≫は、同時に相手できるほど容易な相手じゃない。人の命がかかっている以上、どうにか≪闇風≫は相手にしたくないが……
「……そっちは、任せて」
そう言って、シノンがそっと僕の手に手を重ねてきた。
「貴方が前衛、私は後衛。いつも通りよ。いつも通りやれば――――これ以上、誰も死なせずにすむわ」
重ねたその手は、震えていた。僕はその手を左手で握り返すと、空いた右手で彼女を自分の胸へと包み込む。
「――そう、だね。もうこれ以上、誰も死なせないし――――もちろんシノンだって死なせない。この誓いは、絶対だから」
「うん…………」
触れ合ったその体温は、たとえアミュスフィアに作られたものだとしても、彼女との間に感じた絆は確かなもの。
だから、もう、僕は、誰にも負けない!
謎解き、終了。アルゴー!後ろ、後ろ!!
とりあえず対戦相手は、ほぼ原作と変わらず。レイジの相手は、『無音の暗殺者(サイレント・アサシン)』となったジョニーさんです。透明化と≪忍び足(スニ―キング)≫の相性が最悪すぎ、しかもシステム外スキルを一つだけ装備させた彼は、本気でヤバイです。
レイジとシノンの相性。キャラ性能としては、最高クラスの相性です。実際MMOでは、よくこのペアで狩りしている人を良く見かけます。これがALOに行くと……
ここで、お知らせ。来週またもや仕事が入ってしまい、土日更新が不可能に……この際隔週更新に変えてもいいんですけど、あと少しでGGO終わるしなあ。終わったらこの小説は、出来たとき投稿の不定期更新に。『とある科学の滅びの獣(バンダースナッチ)』の方を定期更新に変えようかと思ってます。読んで下さる皆さん、どうかもう少しお付き合いください!