ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
書ききったぜ……?
調子に乗っていつもの倍の量を……
では、バレンタイン編、リンクスタート!
「――『バレンタイン限定・賞品争奪戦』?」
ここはエギルさんが経営するダイシーカフェ。差し向かいでカフェオレを飲みながら、詩乃に今回のALOでのイベント内容を話した。
「そう。何でもALOを運営するベンチャー企業のスタッフの一人が企画したイベントらしくてさ、三チームに分かれて賞品の争奪戦を行うんだって」
「へえ……GGOだとそこまでの大規模集団戦はないから、面白そうね」
「でしょ? それに今回のGGOは、イベントがねえ……」
「……『10円チョコを括り付けた、子蜘蛛の大群を追い掛け回す』、だったかしら? 確かに、参加する気は起きないわね」
企画能力に、問題があるんじゃないだろうか?何か≪北斗の軍≫の人達は、嬉々として追い掛け回しそうだが。
「私も参加するわ。それでチームはどうなってるの?」
「ああ、それなら基本は二人一組での参加で、その二人の関係で組み分けされるんだって。『カップル』の赤組、『フレンド』の白組、『シングル』の青組、と三チームらしいよ」
その組み分けを語ると、詩乃の頬にほんの少し朱が差した。普段はクールだけど、こういうちょっとした照れを見ると、たまらなく愛おしくなる。
「………………赤組ね。はあ、そうなると、アスナやキリトと同じチームなのかしら?」
「いや、それが今回は違うらしいよ」
「え……あの二人、ケンカでもしたの?」
「あはは、それがさあ――……」
◇ ◇ ◇
「頑張ろうね、アスナ!」
「ふふ。ええ、頑張りましょう、ユウキ!」
当日、イベント会場。参加登録をして中に入ると、『フレンド』の白組で、元気を振りまいている紫髪の女の子と、その横で笑顔を向けている知り合いの姿があった。その腕にはイベント装備の白い腕章が巻き付いている。
「――成程。こういうこと」
「キリトも、かわいそうに」
同情の対象は、赤組の集団内で膝をつき、幼い少女に慰められていた。ちなみにこちらは、赤い腕章。
「ううっ、アスナ……」
「パパ、頑張りましょう! 私とパパのカップルで、白組なんかコテンパンです!」
「ユイ……ありがとう」
「……本当にこれ、SAO解放の『勇者』なの?」
「なんか、自信がなくなってきた……」
キリトの余りの情けなさに二人で溜息をついていると、同じ赤組から声がかかった。
「おー、やっと来たネ、幽霊君!」
「遅かったな、レイジ君」
「フム、これだけの戦力……戦略の立て甲斐があるというものだ」
「うう、リーファちゃん……」
顔を向けると、
「……え? 皆さんも赤組で参加するんですか?」
「そーダヨ☆ ラブラブのダーリンと一緒にネ♪」
「まあ、少しばかり照れくさいがな」
そう言って腕を組むアリシャ様と、モーティマーさん……………………ハイィィィッ?!お二人はいつからそんな関係に!!?
「ところで、ダーリン? 最近サラマンダーの上位陣が、≪火天龍の逆鱗≫を集めてるって聞いたんダケド?」
「ホウ、初耳だな。まあ我らサラマンダーは、ALO最大種族。彼らが自身の強化に勤しむのは、領主として誇らしい限りだよ」
「そっか~☆ 集める数が尋常じゃないカラサ、てっきりレイドパーティー全員に古代級防具装備して、フロアボス攻略の独占狙ってるのかと思ったヨ~♪」
「ふふ、面白い『
「「あはははは」」
…………アレ?カップルとか恋人って、こんな関係だったっけ?むしろ、今にも懐からデ○ノート出して、『計画通り!』って言いだしそうなくらい、黒い笑顔なんですが?
「ふふふ、アリシャは実に楽しそうじゃないか。こちらも楽しもうじゃないか、レコン君?」
「ううう……なんで、僕なんですか。僕勇気を出して、リーファちゃんを誘う気だったのに……」
「いや、イベント前日まで誘えなかったのは、君だろう? ならば、私の申し出を快く受け、エスコートしてくれるべきだと思うのだが?」
「うう……僕の意気地なし……」
ズルズルと引きずられていくレコン……ド○ドナが電波で流れてきていた……。
「あ、いたいた。こっちだよー。レイジ、シノン」
「間に合ったみたいだな」
声に振り向くと、そこには同じく赤い腕章を巻き付けたサチとケイタ。
「あれ? 二人は赤組なの?」
「うん。幼馴染だしね」
「まあ、イベントの想定とは違うだろうけどな」
ケイタは苦笑。まあ、これ本来恋人とかを想定してるだろうしねぇ。
「に、しても――――すごいね、レイジのその盾」
サチが注目してるのは、このイベント用に装備した僕の盾。まあ、ねえ……
「まさか、『クッキー』を装備する日が来るとは思わなかったよ…………」
イベント限定装備、≪チョコレートクッキーの盾≫。丸いから確かに
「それは私もよ。何よ、この悪意あるデザイン」
そう文句を言うシノンの手にあるのは、同じく限定装備の≪キューピッドの弓≫と≪ハートチョコレートの矢≫だ。このイベント、赤組は手持ちの武器や防具がチョコにまつわるものになっており、僕は両手に≪チョコエッグのグローブ≫、サチは≪た○のこの里の槍≫、ケイタは≪ト○ポの棍棒≫である。
「お、そろそろ始まるみたいだな」
ケイタの声に顔を上げると、三陣営の中心に、巨大な人の立体映像。そこにはローブを着た人が……狙ってないよね?
「――プレイヤーの諸君、わたしの世界へようこそ」
……悪趣味全開じゃないか?現に視界の端ではサチとケイタが慌ててログアウトボタンの有無を確認している。どうやらちゃんとあったようで、見るからにホッとしている。しかし、次の瞬間、僕ら赤組全員の顔はとんでもなくひきつった。
「さて、それでは――――――ヤロウども! リア充を撲滅したいかァァアァァッ!!」
『オオオオオオオオォォォォォッ!!!』
「「――は?」」
いきなりのローブの叫びとともに、青組全体から咆哮が……え、なに?
「いいか! 青組、シングルのウジ虫ども! これよりお前らは、ウジ虫から、戦士へと進化する! ヤロウども! お前らの特技は何だ!?」
『殺せ! 殺せ! 殺せ!』
「このイベントの目的は何だ!?」
『殺せ! 殺せ! 殺せ!』
「愛は捨てたか!? 哀に生きているか!?」
『ガンホー!! ガンホー!! ガンホー!!』
「……これより我らは修羅に入るッ! 人とあっては人を斬り、神とあっては神を斬れっ!! 問答無用! 大敵・レイジの首を取れッ!!!」
『オ、オオオオオオォォォーーーーーーッ!!』
「僕?!」
なぜここで僕の名前が!?…………と、言うか、さっきから気にはしないようにしてきたけど……。
「何してるんですか、
ローブの中身、声が完全に≪
「な、なに言ってんだ、オメエ? 俺はオメエらのリーダーじゃねえぞ?!」
「口調、もとに戻ってます……」
本当に、何してるんですか?
「う、うっせえぇぇっ! 俺だってな、俺だって、こんなことしたくなかったんだよ! それが、イベントの企画者から、秘密メールで今日の幕開けの口上頼まれたから――」
「いや、それで、僕の名前出す理由ないですよね?」
「いいんだよ! とりあえずこのイベントは、俺達青組こと≪リア充爆発団≫が、オメエら赤組、≪異端なるリア充チーム≫を爆破するためにあるんだから!!」
「チーム名変わってる?!」
しかもよく見ると、各陣営の上空に今言った名前のウインドウが。ちなみに白組は≪友チョコ組≫だった。
「大体、何だ、オメエは!? いつの間にか女子高生の彼女を、シレッとゲットしやがって! オメエは、≪
「ウオオオオン、オォォ……」
「彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい……」
「神は、いずこ……」
――アレ?仲間の皆が、爆発団の中で、より一層壊れているような……?
どうにも対応に困り、途方に暮れていると、後ろから一つの声がかかった。
「――――ふうん、そういうコト」
シノンが――まるでシャム猫のように、ほんのわずか口元をほころばせながら前に出る。その見とれそうな綺麗な笑顔に、ほころんだ口元に、僕の危機察知能力は、最大限の警鐘を鳴らす。だが、彼女を止めるよりも、彼女が告げる言葉の方が早かった。
「――レイジ、このイベントで勝てたら、『私の部屋』でお茶しない? ――――――勝利の『ご褒美』、あげるわよ☆」
今までで最高の笑顔で、メガトン級のプラズマグレネード並みの爆弾を投下した。
『あ、ああ、あぁああああぁぁぁあああああッ?!!』
青組全員が、壊れた。
「ちょ、何言ってんの、シノン!? この後は元々、『いつも通り』『君の部屋』で少し話をしようってなってたじゃ――」
「――あちゃ~。レイジ。それ、火に油」
「え゛?」
振り向くと…………そこには夜叉がいた。
「『いつも』、だと……!? い・つ・も・だとおおおおおッ!?」
「やはり……リアルなど、クソゲーかッ!!」
「レイジ……オレはオメエを斬らなきゃならねえ……漢として、それだけは譲れねえええええっ!!」
うあ……これはもうだめだ……多分、一度は戦わないと収まらないだろうなあ……。
「あるじよ! 我が主よ! 我が主人、『団長』よ!! 命令を!!」
『団長! 団長! 団長!!』
不意に、壇上に上がる影。『団長』?一体だれが――
「我が下僕どもよ! 命令する! リア充どもは我らの剣で朱に染めよ! 一木一草、尽く我らの敵を赤色に染め上げよ!
『オオオオオオッ! リズベット団長ーーーーーッ!!』
「何、してんのォーーーッ!?」
白組では、アスナさんも呆然としてるよ?!
「うっさいわね! 何なのよ、アンタらは! キリトもアスナもレイジもシノンも、隙あらばイチャイチャイチャイチャして! 少しはこっちにも、その幸福エナジーよこしなさいよ! 速攻でオトコ見つけてくるから!!」
「リ、リズ~、そんなこと言われても……」
「そうね。惚れた相手がいたら、少しくらいくっついていたいじゃない?」
「ムッキィィィッィィィィッ!!!」
……シノン、それトドメだから。
「フフフフフ……このイベント空間は、例え領主が討ち取られても、それぞれの領地には影響を及ぼさないわ……通常プレイヤーも、経験値の増減なしにその場で生き返る……だから、制限時間が来るまで、思う存分アンタらリア充どもをぶちのめせるってわけよ!! さあ、青組の戦士どもよ! 見敵必殺!!
『■■――ア■■オ■■■■ォオ■■■オ■■■■■オお■■おオオオオ――――ッ!!!』
青組の声にならない叫びとともに、バレンタインイベントは開始した。
◇ ◇ ◇
「おおおおっ!」
「はいやあああっ!」
「ケイタ、覚悟ぉっ!」
「テツオ、ダッカー、ササマル?! お前たちが何で――――」
「「「フザけんなッ、リア充がッ!!」」」
ケイタは黒猫団の皆に、ボコられていた。
「……ずいぶん楽しそうね、レコン?」
「リ、リーファちゃん? なんか、いつもより怖いんだけど――」
「気のせいよ☆」
「今のツッコミは無しだろ、レコン君……」
「命が、いらないんですかね……」
豹変したリーファに≪ホワイトチョコ○ッキーの剣≫で追いつめられるレコン。そしてそれを遠巻きに見守るパートナーのサクヤとシリカ。
「久々に決着をつけようではないか、≪黒の剣士≫!」
「ユージーン?! お前までシングルに……?」
「フ……俺はどこであろうと構わん。ただこのチームならば、キサマと戦うことができると思ったまでよ!!」
「くおっ!!」
キリトは、ユージーンとガチバトル。……そして。
「くそおっ! なんてコンビだ、コイツら?!」
「攻撃が効かねえ……固過ぎる!」
「来るぞ、総員防御ーーッ!」
「はあああああーーーーっ!」
≪鉄拳術≫中段ダッシュソードスキル、≪シュラシンダン≫。威力のデカイ体当たりで、敵集団を根こそぎ吹き飛ばす。たちまち身体が長い硬直に襲われ、攻撃に当たらなかった人たちが群がるが――――――次の瞬間、その全てが『豪雨』に撃たれる。
「ぎゃあああああっ!?」
「あんなのアリかよ、チクショウッ!」
豪雨の源は、皆が見上げる先、空中に浮かぶ僕のテイムモンスターのメアと、弓を番えるシノンがいた。
「インプでもねえのに、密閉空間で飛べるとか……反則だろ!」
≪迷刀・柿○種≫を支えに立ち上がるリーダー。僕とシノンは、ALO内では『夫婦』という関係になっている。これは12月に始めたばかりだった彼女をサポートする目的があったのと、僕のテイムモンスターであるメアを彼女に『共有』させるため。『狙撃』と『飛行』は相性がいいと思ったからだが、正直、
……もっとも、彼女と『夫婦』になったのは、少しばかり将来の願望がなかったとは言えなかったり――。少しだよ、ほんの少し。
「この分なら、なんとかなりそうだね」
『油断しちゃダメよ。敵はまだたくさん残ってるんだから』
「了解♪」
チーム用の限定ボイスチャットで連絡を取りながら、前を向くと――――――その顔が盛大にひきつるものを見てしまった。
「ぶふふ~~ようやく見つけたよ~~~」
「オメエら! オレの名前を言ってみろぉ!」
やたら大きな肥満体と、鉄のヘルメットみたいな兜を被った、革ジャンの男……………………ん?
「ようやく見つけたぞ。この拳王を裏切りし大罪人・零二よ」
「………………なんで、いる?」
目の前に、
「何、うぬがこのイベントに参加すると聞いたのでな、≪北斗の軍≫のメンバーに装備を預け、こちらへ一時コンバートしてきたまでよ」
「いや、だから、どうして来たのかを……
「それは、オイラの仕業だよ、レイ坊!」
……お前かあァァァーーッ!!」
アルゴ改めアルフさんが、いつの間にか青組の壇上に。一体、なぜ?!
「イヤぁ~~、レイ坊がこのイベント参加を検討してるみたいだったカラサ、≪北斗の軍≫の皆に、『哀に生きず、色に溺れようとする彼を軍のナンバー4に据えたままでいいノカ!?』って言ったら、二つ返事で――」
「そもそも入った覚えありませんけど!?」
なぜか、軍のメンバーに入れられてる!
「何を言う。貴様はBoBの大舞台ですら、拳を使うことを忘れなかった。十分に、我らの仲間の資格はある」
「こっちへ来いよ~。まあウチは≪恋愛禁止≫だけどな!」
「哀に生きているからね~、我々」
……絶対に、入りません!
「アーちゃん、頼みがあるんダガ?」
「何ですか、アルフさん。今回は敵同士なんですから――」
「もし、白組が青組に味方してくれたら、昔のキー坊の恥ずかしい秘密の情報、
「――――」
次の瞬間、凛として響き渡る声。声の主は、≪イチゴ○ッキーのレイピア≫をかかげ、叫ぶ。
「全白組、我に続け! 敵は赤組、敵は赤組!」
ちょっとォーーーーーーッ!!?
「あ~あ、アスナ……まあ、いっか。ボクもキリトとは戦ってみたかったしね♪」
たちまち駆け出す紫の妖精。目指すは、今もユージーンと戦う≪黒の剣士≫。
「さあ、久々に勝負といこうか、零二!」
「頑張ってクレー、
「キリト君の秘密キリト君の秘密……」
「いっくよー!」
突っ込んでくる新勢力に、僕とシノンは一度上を向いて一言。
「――無理だ」
「――そうね」
こんな風に、僕らのバレンタインイベントは幕を閉じた。
◇ ◇ ◇
「つ~か~れ~た~」
「本当にね……いくらなんでもハメ外しすぎよ、みんな」
詩乃の部屋でコーヒーを啜りながら、二人して小さなテーブルに突っ伏していた。最近は、朝夕の食事やお茶を、この部屋で一緒に取ることが多い。もっとも泊まったことは一度もなく、単に二人で一緒に食事をとっているだけ。昼食こそバラバラだが、食事代やガス代は、それ用に作った共通サイフから出している。
「ん~、それじゃそろそろ帰るね。あんまり遅いと悪いし」
「……そういうところ、律儀よね。あ、ホラ、忘れ物よ」
「え?」
玄関先で振り返ると、その手の中に、赤い包装紙で包まれた四角いチョコが載せられた。
「あー、えっと、ホラ、まだチョコ渡してなかったでしょ?」
「あ、うん。あの、ありがとう……」
「え、あ、うん。その代わり、お返し期待してるわよ?」
明らかにわかる、照れ隠しでそう言う詩乃が、たまらなく可愛かった。
「……うん、期待してて。それじゃ今度こそ――」
「
再び呼び止められ、振り返ろうとする頬に、柔らかい感触が触れた。ほんの一瞬だったが。
「――オヤスミ」
呆けている間に玄関から押し出され、背後のドアがバタンと勢いよく閉まった。
僕は振り返って、閉まったドアを見て、見て…………そろそろと、キスされた頬に手を触れ、顔全体がかぁっと熱くなるのを感じた。
それは、ある2月14日の出来事――――。
――――Happy Valentine!
メンバー総登場の今回。リズはこれで三、四回目くらいの登場なのに、壊れたなあ……
ALO内では『夫婦』になったレイジとシノン。これにより、シノンがメアに乗って空中爆撃可能になりました。二人の戦闘スタイルからすると、『戦闘ヘリ』と『戦車』のカップルですね♪
そして、イベント後のニヤニヤ展開……食事は一緒、共同サイフあり。極めつけのチョコともう一つの贈り物……書き……きった、ぜ……
ガク、ドシャ(砂糖の山に顔を埋める音)
今回以降、しばらく不定期更新が続くかもです。年度変わらないとなあ……