ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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何とか、休日出勤の合間に書き上げました。ここ最近、パソコンの前にまとまった時間座れない……

今回場面があちこち変わるので、三人称に挑戦。さて、どうなるか……



033 閃光、黒、その絆は『剣』

(――レイジッ……!!)

 

 背中を押し出された勢いをそのままに、キリトは砂漠を走り抜けた。そうすることしか、出来なかった。

 

 気配も音も消し、防御不能の攻撃を繰り出す相手。ジョニーを感知する手段のない自分では、最悪に相性の悪い相手だ。自分があそこに残っても、なすすべなくやられるだろう。

 

(だから……っ!)

 

 だからこそ、自分は自分の敵を倒しに行く。この≪死銃≫事件で、これ以上誰かを死なせないために。

 

 この先で待つ、あの『赤い眼(・・・)』のアイツを。

 

 そうして、見つけた。背後に大きなサボテンがある砂丘。そのふもとに向かって駆け下りる、髑髏を模したマスク。……そうだ、あの時も(・・・・)、コイツは髑髏のようなマスクを着けていた。

 

 その手にあるのは、砕け散ったライフルの銃身。おそらくはシノンの狙撃だろうが、彼女にはレイジの援護がある。だからこそ、コイツは俺一人で……!

 

 その思考を、一本の黒光りする線が引き裂いた。

 

「な……っ!」

 

 貫かれた左肩を抑え、飛び退く。視界を再び戻した先には、『あの時』と同じように、右手に握った≪刺剣(エストック)≫で、ゆらゆらと独特のリズムを刻んでいた。

 

「この世界に、まさか≪刺剣(エストック)≫なんて珍しい武器があるなんてな……」

 

 答えたのは、しゅうしゅうという独特の笑い声。……ようやく、思い出したよ。

 

「……≪ナイフ作製≫の、上位スキル、≪銃剣作製≫、で、作れる。長さや重さはこのあたりが限界だが――」

 

「わざわざ、この世界でも『刺剣(エストック)使い』であることを貫いたのか、≪赤眼(アカメ)XaXa(ザザ)≫」

 

 その言葉に、一瞬沈黙が流れる。ラフコフ幹部の中でも際立った剣の達人で、刺剣(エストック)を使った男。それが、こいつの正体だ。

 

「――――ほう。あの時、オレ、の名前を聞こうとも、しなかった貴様が、よく知って、いたものだ」

 

「ああ……出来れば思い出したくなかったよ」

 

 そう言いつつ、腰からもう一本の光剣を取り上げる。≪シラユキE2≫。レイジから託された、白銀の光剣。

 

「――そうい、えば、『監獄』の中で、知ったな。貴様は本来、≪二刀流≫の、使い手だと」

 

 二本目の剣を抜いても、目の前のザザに変化はなかった。ただ、口元にいやらしい笑みを浮かべるだけ。

 

「……だったら、何だ?」

 

「いや、何――――」

 

 そうして、ザザはぬらりと、不意に距離を詰めた。それにとっさに反応し、二本の斬撃がザザを襲うが……。

 

 

「――――どんな剣士も、行き着くところは、『一緒』、だな……!」

 

 

「――――――!?」

 

 それよりも早く、『二本(・・)』の刺突が両腕に突き刺さった。

 

「な?!」

 

「ク、ククク……」

 

 衝撃に従って後ろに跳び、体勢を立て直す。視界を上げた先、ザザの左手には、十字架の様な形状で、先端が尖った短剣。まるで刺剣(エストック)と同じように、刺突に特化し、刃を廃した武器。

 

「≪刺短剣(スティレット)≫と、呼ばれる、短剣だ……俺は、あの日以来、『監獄』の中でも、お前をこの手、で殺す日を願った。お前を、殺す手段を探し求めた……行き着いたのは、これだ」

 

 そうして、ザザはキリトにとっても見慣れたスキルの軌跡を描く。スラスト系上位ソードスキル≪スター・スプラッシュ≫八連撃。それが――――『倍』の密度で、襲い掛かる!

 

「貴様の、負け、だ。キリト――――!」

 

「ぐ、ああああああッ!?」

 

 瞬間舞い上がった真紅のダメージエフェクトは、どこか鮮血のようだった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「キリト君!!」

 

 キリトがダイブする病院の一室。そこには、タクシーで乗り込んだアスナがいた。携帯端末に接続した愛娘のユイによって映し出された画面の中、SAOやALOとは似ても似つかないキリトのアバターが、何度も貫かれる。

 

「まさか、アイツも≪二刀流≫だなんて……!」

 

 キリトのスタイルは、防御を廃した超攻撃特化型。同じく刺剣(エストック)刺短剣(スティレット)で固めたザザも、それは同じ。だが、キリトはGGOに入って間もない。オマケに持っている武器は、いつも慣れ親しんだ重量感ある金属剣ではないのだ。その不利は容易には埋められないだろう。

 

(なにか、何かないの!?)

 

 自分にできることは、何かないのか。必死になって頭を巡らせるが、自分は現実で、キリトは今はGGOの中。これではどうすることも出来ない。

 

『ママ、パパの手を!!』

 

 そんな時に、携帯端末から、ユイの声が聞こえた。

 

『アミュスフィアの体感覚インタラプトは、完全ではありません。手を握れば、ママの温もりなら、きっと届きます……お願いです。私の分まで……』

 

 消え入りそうなその後半。その声に、自分を取り戻す。そうだ、私はこの娘の母親なんだ。娘の前で、弱気なところなんて、見せちゃいけない。

 

「ううん、届くよ。ユイちゃんの温もりも……一緒に、パパを、キリト君を応援しよう」

 

 そうして、ベッドの上に投げ出された、キリトの左手を握る。アミュスフィアが反応しないように繊細に、だけど温もりを伝えられるようしっかりと。

 

 

 ――頑張って、キリト君

 

 ――負けないでください、パパ

 

 

 祈る。願いよ届けと祈る。温もりが少しでも力になるようにと、祈る。

 

 冷たかったその左手は、ほんのわずか、ぴくりと震えた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「はあっ、はあっ、は…………」

 

 本来疲れないはずのアバターに、疲労という負荷が襲い掛かる。これは、恐らく身体的なものではなく、極限の集中を要する戦闘を続けているため。それでも息が上がり、身体のあちこちで光るダメージエフェクトは、『満身創痍』という言葉に相応しかった。

 

「ク、クク……存外、イキの良い獲物だ……」

 

 そう言いつつゆらゆらと揺らすザザの刺剣(エストック)には、あちこち黒くなった箇所があった。それはキリトの斬撃が触れた箇所。アバターも装備も一撃で消し飛ばすはずの光剣の一撃は、ザザの二本の剣には通用しなかった。

 

「貴様ご自慢の、その光剣も、この世界、最高の金属で、作り上げたこの剣、には勝てん……そろそろ、終わり、だ」

 

 ぬらりと近づくその姿。髑髏マスクも相まって、その姿は、まさに『死神』というにふさわしかった。

 

「貴様、を、この世界で殺した後、俺はレイジを殺し……あの女も、殺す。お前、は無力と、絶望に苛まれる」

 

「……もうやめろ。お前らの殺害方法は、分かってるんだ。だから――」

 

「やめ、る? 何を? 例えお前が、何らかの殺害方法を、『思いついた』、としても、それを俺たちがやっている、証拠でもあるのか?」

 

「――――!」

 

「終わり、だ、キリト……!!」

 

 影が、迫る。自分のこの世界での分身体(アバター)を殺し、現実の二人を殺す影が。どうしようもない『絶望』が、右手の刺剣(エストック)を振りかぶる。

 

「くっそおおおおおおおっ!!」

 

 破れかぶれに、左手の光剣を振り上げる。だが、わかる。この攻撃より、アイツのほうが早い。次の瞬間、自分は殺され、そうして、アイツはレイジとシノンを殺す…………!

 

 その瞬間、まるで有り得ないことに、刺突を斬撃で防ごうとしていた左手を、温もりが包み込んだ。途方もなく、愛おしく感じる、温もりが。そして、聞こえた。

 

 

 ――……頑張って、キリト君

 

 ――……負けないでください、パパ

 

 

「――――――!!」

 

 その声と同時、温もりを感じる左手は、まるでひとりでに動き、一つのスキルを放った。一度も放ったことのない、だけど、この眼にどうしようもなく焼き付いた『ソレ』を。

 

「なっ――――……」

 

 その瞬間、ザザが抱いたのは、『驚愕』。確実に、自分の刺突は、相手の斬撃よりも早かった。いくら同じ二刀でも、斬撃主体のキリトと刺突特化の自分では、自分の方が早い。そう、確信していた。そのはず、だった。

 

 

 だというのに――――――なぜ、自身の右腕が、宙を舞っている(・・・・・・・)

 

 

「≪リニアー(・・・・)≫、だと……!」

 

 

 視線を前に戻した先、そこではキリトが左手に握った白い柄の光剣を、ひねりこむように伸ばしていた。刺突型ソードスキル≪リニアー≫。握った剣を、目標に向かってひねりこむように一直線に伸ばす、速度特化のソードスキル。その特徴とスキの少なさゆえに、高レベルのプレイヤーにも多用する人間が多かったスキル。

 

 だが、ありえない。そもそも、≪リニアー≫は、≪片手剣(・・・)のスキルではない(・・・・・・・・)

 

 

 ≪リニアー≫が使えるのは、自分が使う≪刺剣(エストック)≫か――――――――もしくは、≪細剣(レイピア)≫のみ。

 

 

 瞬間、すべてを悟った。

 

「……≪閃光≫ォオオオオオォォォーーーーッ!!」

 

 今のキリトと同じく、長い髪をなびかせながら、流星のごとき≪リニアー≫を操った≪細剣(レイピア)≫使いの女剣士。あの忌々しい女が、元凶だと。

 

 だが、そんな呪詛も決して届くことはない。なぜなら目の前にいるのは、『彼女たち』を守ると誓った一人の剣士だから。

 

「うおおおおおおおおッ!!」

 

 右手を失い、わずかに退こうとした≪赤眼のザザ≫に向かい、渾身の力で飛びかかる。キリトの耳には、確かに届いていたから。

 

 

 ――ほら、もうひと頑張りだよ、キリト君

 

 ――(レイジ)を、守ってください、パパ

 

 

 異なる世界で、今も祈りをささげる、本当に大切な二人の声が。

 

 

「≪スターバースト――――――――……ストリィィィムッ≫!!!」

 

 

 それは、真に一つの異世界を救った剣。魔王が自ら作り上げた、魔王を滅ぼすための剣。殺到する十六の流星群は、ザザに残った左手の刺短剣(スティレット)だけでは防ぎきれず…………その身体とそのマントを、バラバラに斬り裂いた。

 

「――――はっ、はあ、はあ……」

 

 詰めていた息を、ようやく解放する。バラバラに千切れとんだザザのアバター。ふと目を向けると、その中に、あの黒い星が刻まれた≪死銃≫もあった。銃身は半ばから斬り落とされ、二度と使うことは出来ないだろう。

 

「…………まだ、終わら……ない。終わらせ、な――――」

 

 バラバラになりながらも発していた呟きを断ち切ったのは、≪DEAD≫タグ。宙に浮かぶそれを見ながら、呟く。

 

「いいや、これで終わりだ、ザザ。――例えこの先、お前じゃなくとも、また他の誰かがSAOの因縁を持ち出したとしても……必ずオレ達(・・・)が終わらせてやるさ」

 

 そうして、振り返る。狙撃や銃火器に最適化していないアバターでは、この暗がりと距離では戦場までは見通せない。それでも、呟く。

 

「――――負けるなよ、レイジ」

 




というわけで、ザザは二刀流開眼してました!調べたら西洋でもポピュラーなのに、だれもいないんだもの……あと、作者がログホラのにゃん太班長にはまったせい♪昔のメルブラの持ちキャラが、ジョージでネコだったからなあ……

そして!キリト一家の絆は『剣』!≪閃光≫のリニアーから、≪黒の剣士≫のスターバースト・ストリームへとつなぐ、最強コンボ!!この展開のためだけに二刀を持たせたぜ……!

ちなみに不定期更新はまだ継続です。来週もその次も……
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