ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
今回場面があちこち変わるので、三人称に挑戦。さて、どうなるか……
(――レイジッ……!!)
背中を押し出された勢いをそのままに、キリトは砂漠を走り抜けた。そうすることしか、出来なかった。
気配も音も消し、防御不能の攻撃を繰り出す相手。ジョニーを感知する手段のない自分では、最悪に相性の悪い相手だ。自分があそこに残っても、なすすべなくやられるだろう。
(だから……っ!)
だからこそ、自分は自分の敵を倒しに行く。この≪死銃≫事件で、これ以上誰かを死なせないために。
この先で待つ、あの『
そうして、見つけた。背後に大きなサボテンがある砂丘。そのふもとに向かって駆け下りる、髑髏を模したマスク。……そうだ、
その手にあるのは、砕け散ったライフルの銃身。おそらくはシノンの狙撃だろうが、彼女にはレイジの援護がある。だからこそ、コイツは俺一人で……!
その思考を、一本の黒光りする線が引き裂いた。
「な……っ!」
貫かれた左肩を抑え、飛び退く。視界を再び戻した先には、『あの時』と同じように、右手に握った≪
「この世界に、まさか≪
答えたのは、しゅうしゅうという独特の笑い声。……ようやく、思い出したよ。
「……≪ナイフ作製≫の、上位スキル、≪銃剣作製≫、で、作れる。長さや重さはこのあたりが限界だが――」
「わざわざ、この世界でも『
その言葉に、一瞬沈黙が流れる。ラフコフ幹部の中でも際立った剣の達人で、
「――――ほう。あの時、オレ、の名前を聞こうとも、しなかった貴様が、よく知って、いたものだ」
「ああ……出来れば思い出したくなかったよ」
そう言いつつ、腰からもう一本の光剣を取り上げる。≪シラユキE2≫。レイジから託された、白銀の光剣。
「――そうい、えば、『監獄』の中で、知ったな。貴様は本来、≪二刀流≫の、使い手だと」
二本目の剣を抜いても、目の前のザザに変化はなかった。ただ、口元にいやらしい笑みを浮かべるだけ。
「……だったら、何だ?」
「いや、何――――」
そうして、ザザはぬらりと、不意に距離を詰めた。それにとっさに反応し、二本の斬撃がザザを襲うが……。
「――――どんな剣士も、行き着くところは、『一緒』、だな……!」
「――――――!?」
それよりも早く、『
「な?!」
「ク、ククク……」
衝撃に従って後ろに跳び、体勢を立て直す。視界を上げた先、ザザの左手には、十字架の様な形状で、先端が尖った短剣。まるで
「≪
そうして、ザザはキリトにとっても見慣れたスキルの軌跡を描く。スラスト系上位ソードスキル≪スター・スプラッシュ≫八連撃。それが――――『倍』の密度で、襲い掛かる!
「貴様の、負け、だ。キリト――――!」
「ぐ、ああああああッ!?」
瞬間舞い上がった真紅のダメージエフェクトは、どこか鮮血のようだった。
◇ ◇ ◇
「キリト君!!」
キリトがダイブする病院の一室。そこには、タクシーで乗り込んだアスナがいた。携帯端末に接続した愛娘のユイによって映し出された画面の中、SAOやALOとは似ても似つかないキリトのアバターが、何度も貫かれる。
「まさか、アイツも≪二刀流≫だなんて……!」
キリトのスタイルは、防御を廃した超攻撃特化型。同じく
(なにか、何かないの!?)
自分にできることは、何かないのか。必死になって頭を巡らせるが、自分は現実で、キリトは今はGGOの中。これではどうすることも出来ない。
『ママ、パパの手を!!』
そんな時に、携帯端末から、ユイの声が聞こえた。
『アミュスフィアの体感覚インタラプトは、完全ではありません。手を握れば、ママの温もりなら、きっと届きます……お願いです。私の分まで……』
消え入りそうなその後半。その声に、自分を取り戻す。そうだ、私はこの娘の母親なんだ。娘の前で、弱気なところなんて、見せちゃいけない。
「ううん、届くよ。ユイちゃんの温もりも……一緒に、パパを、キリト君を応援しよう」
そうして、ベッドの上に投げ出された、キリトの左手を握る。アミュスフィアが反応しないように繊細に、だけど温もりを伝えられるようしっかりと。
――頑張って、キリト君
――負けないでください、パパ
祈る。願いよ届けと祈る。温もりが少しでも力になるようにと、祈る。
冷たかったその左手は、ほんのわずか、ぴくりと震えた。
◇ ◇ ◇
「はあっ、はあっ、は…………」
本来疲れないはずのアバターに、疲労という負荷が襲い掛かる。これは、恐らく身体的なものではなく、極限の集中を要する戦闘を続けているため。それでも息が上がり、身体のあちこちで光るダメージエフェクトは、『満身創痍』という言葉に相応しかった。
「ク、クク……存外、イキの良い獲物だ……」
そう言いつつゆらゆらと揺らすザザの
「貴様ご自慢の、その光剣も、この世界、最高の金属で、作り上げたこの剣、には勝てん……そろそろ、終わり、だ」
ぬらりと近づくその姿。髑髏マスクも相まって、その姿は、まさに『死神』というにふさわしかった。
「貴様、を、この世界で殺した後、俺はレイジを殺し……あの女も、殺す。お前、は無力と、絶望に苛まれる」
「……もうやめろ。お前らの殺害方法は、分かってるんだ。だから――」
「やめ、る? 何を? 例えお前が、何らかの殺害方法を、『思いついた』、としても、それを俺たちがやっている、証拠でもあるのか?」
「――――!」
「終わり、だ、キリト……!!」
影が、迫る。自分のこの世界での
「くっそおおおおおおおっ!!」
破れかぶれに、左手の光剣を振り上げる。だが、わかる。この攻撃より、アイツのほうが早い。次の瞬間、自分は殺され、そうして、アイツはレイジとシノンを殺す…………!
その瞬間、まるで有り得ないことに、刺突を斬撃で防ごうとしていた左手を、温もりが包み込んだ。途方もなく、愛おしく感じる、温もりが。そして、聞こえた。
――……頑張って、キリト君
――……負けないでください、パパ
「――――――!!」
その声と同時、温もりを感じる左手は、まるでひとりでに動き、一つのスキルを放った。一度も放ったことのない、だけど、この眼にどうしようもなく焼き付いた『ソレ』を。
「なっ――――……」
その瞬間、ザザが抱いたのは、『驚愕』。確実に、自分の刺突は、相手の斬撃よりも早かった。いくら同じ二刀でも、斬撃主体のキリトと刺突特化の自分では、自分の方が早い。そう、確信していた。そのはず、だった。
だというのに――――――なぜ、自身の右腕が、
「≪
視線を前に戻した先、そこではキリトが左手に握った白い柄の光剣を、ひねりこむように伸ばしていた。刺突型ソードスキル≪リニアー≫。握った剣を、目標に向かってひねりこむように一直線に伸ばす、速度特化のソードスキル。その特徴とスキの少なさゆえに、高レベルのプレイヤーにも多用する人間が多かったスキル。
だが、ありえない。そもそも、≪リニアー≫は、≪
≪リニアー≫が使えるのは、自分が使う≪
瞬間、すべてを悟った。
「……≪閃光≫ォオオオオオォォォーーーーッ!!」
今のキリトと同じく、長い髪をなびかせながら、流星のごとき≪リニアー≫を操った≪
だが、そんな呪詛も決して届くことはない。なぜなら目の前にいるのは、『彼女たち』を守ると誓った一人の剣士だから。
「うおおおおおおおおッ!!」
右手を失い、わずかに退こうとした≪赤眼のザザ≫に向かい、渾身の力で飛びかかる。キリトの耳には、確かに届いていたから。
――ほら、もうひと頑張りだよ、キリト君
――
異なる世界で、今も祈りをささげる、本当に大切な二人の声が。
「≪スターバースト――――――――……ストリィィィムッ≫!!!」
それは、真に一つの異世界を救った剣。魔王が自ら作り上げた、魔王を滅ぼすための剣。殺到する十六の流星群は、ザザに残った左手の
「――――はっ、はあ、はあ……」
詰めていた息を、ようやく解放する。バラバラに千切れとんだザザのアバター。ふと目を向けると、その中に、あの黒い星が刻まれた≪死銃≫もあった。銃身は半ばから斬り落とされ、二度と使うことは出来ないだろう。
「…………まだ、終わら……ない。終わらせ、な――――」
バラバラになりながらも発していた呟きを断ち切ったのは、≪DEAD≫タグ。宙に浮かぶそれを見ながら、呟く。
「いいや、これで終わりだ、ザザ。――例えこの先、お前じゃなくとも、また他の誰かがSAOの因縁を持ち出したとしても……必ず
そうして、振り返る。狙撃や銃火器に最適化していないアバターでは、この暗がりと距離では戦場までは見通せない。それでも、呟く。
「――――負けるなよ、レイジ」
というわけで、ザザは二刀流開眼してました!調べたら西洋でもポピュラーなのに、だれもいないんだもの……あと、作者がログホラのにゃん太班長にはまったせい♪昔のメルブラの持ちキャラが、ジョージでネコだったからなあ……
そして!キリト一家の絆は『剣』!≪閃光≫のリニアーから、≪黒の剣士≫のスターバースト・ストリームへとつなぐ、最強コンボ!!この展開のためだけに二刀を持たせたぜ……!
ちなみに不定期更新はまだ継続です。来週もその次も……