ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

8 / 106
 今回、原作で言うところの『赤鼻のトナカイ』に入ります。

 但し、ぶっちゃけいろいろな伏線を張ったりする話になるので、原作の流れはかなり変わります!

 果たして黒猫団とサチの運命は・・・?


005 『再会』の時

 

SIDE:キリト

 

 ヒースクリフとの闘いから二日後、俺は結局ヒースクリフやアスナと同じギルド、≪血盟騎士団≫に所属することになった。今日はそのユニフォームを試着してみたのだ、が……

 

「……じ、地味な奴って頼まなかったっけ……」

 

「これでも十分地味な奴よ。うん、似合う、似合う!」

 

 ≪血盟騎士団≫のカラーは白地に赤の十字。そのカラーが、俺に死ぬほど似合わない。こんな格好で外に出るのか、と今から気が滅入ってきた。

 

「にしても、結局俺もレイジも、『ヒースクリフ最強伝説』に一花加えただけか……」

 

「えー、でも二人ともきっちり一矢は報いてたじゃない。それにおかげで大きな騒ぎにならないみたいだから、いいんじゃない?」

 

 まあ、それはありがたい。只でさえ≪ビーター≫と呼ばれてやっかみの対象なのに、これ以上悪目立ちする真似は本当にごめんだ。

 

「にしても、レイジには悪いことしたよ。あんな大群衆の前でデュエルだなんて、KoBの都合に巻き込んだみたいだしな」

 

「んー、確かにそうだね。まあ、結局レイジ君は古巣から離れずに済んで、良かったじゃない」

 

 あの試合の後、改めて俺とレイジはKoBに入団を打診された。俺は勝負の条件だったこともあって断れなかったが、レイジの奴は、≪風林火山≫というギルドは、二年間共に戦ってきた仲間であり、そこを離れるつもりがないこと、これからも攻略の際は積極的に参加させてもらうつもりであることを語り、入団は断ってきた。ヒースクリフの奴も部下が弱小ギルド呼ばわりしたことを謝罪し、今回の件は手打ちとなった。

 

「そういえばさ、キリト君ってレイジ君とは親しいの?」

 

「え?」

 

 アスナが俺の座る椅子の肘掛に腰をおろし、そんなことを聞いてきた。親しいように見えたのだろうか?

 

「……いや、どうだろうな。あそこのリーダーのクラインとは、SAO開始の頃からの腐れ縁だけど、レイジとはそんなでも無い。そっちはどうなんだ?」

 

「私もそんなに親しいわけじゃないかな。ただね……」

 

 そう言って、アスナは顔を俯かせた。いつも言葉も行動もまっすぐな彼女にしては、珍しいことだ。

 

「何だよ?」

 

「レイジ君・・・攻略のときも、ギルド間での合同作戦とかのときも、何も言わずにフォローに回ってくれることが多いんだ。ボス戦で不測の事態が起こったときも、団長と一緒に、皆が態勢を立て直すまでこらえてくれることが多いから、気後れしちゃって……」

 

「あー……」

 

 彼女はボス戦のときに、作戦立案をやってのけることが多い。ボスの予想外の行動で作戦の立て直しを迫られた際、時間を稼ぎ、前線を支えるのは相当に負担だし、命がけになることだ。一際責任感が強いアスナなら、『いつも割りを食わせてる』ように感じても無理はないか。

 

「まあ、あんまり気にするなよ。レイジはそんなこと気にする奴でもないからさ」

 

「むー、親しくないって言ってた割りに、随分詳しそうじゃない?」

 

 あー、まあ、それは。

 

「一回、とんでもない迷惑をかけたことがあってな……そのときに」

 

「迷惑……? 一体何したの?」

 

 そこで、俺は語り始めた。俺がギルドを今まで敬遠していた理由。そして、そこから立ち直るきっかけをくれたヤツのことを。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 ギルド≪月夜の黒猫団≫。もう一年以上前に、本当に短い期間だけ所属したギルドだ。ビルドのバランスが明らかに悪いギルドで、その頃ソロでの活動に疲れを感じていた俺は、足りない前衛役の一人として所属することになった。自分のレベルとベータ出身者であることを隠して。

 

 そしてギルド内で、盾剣士に転向しようとしていた女性槍使いのコーチを依頼された。…のだが。

 

「……サチ。攻撃が来る時に、目を閉じちゃダメだろう」

 

「ゴ、ゴメンね、キリト」

 

 サチという名のその少女は本当に臆病で、今までは間合いの長い長槍を使っていたが、急に敵に肉薄しなければならない盾剣士への移行を迫られ、戸惑っているようだった。俺も随分コーチしてみたが、そもそも俺自身が盾持ち片手剣士ではなく、色々と勝手が違うこともあって、十分に教えられなかった。

 

「…しかし、やっぱり攻撃のたびに目を閉じるのは悪い癖だな。どっかで矯正できるといいんだけど」

 

「……ホントにゴメンね。私が臆病だから…」

 

 そんな事を話しながら、その日は帰途に着いた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「……彼女は俺に言っていたよ。『死ぬのが怖い。本当はこのゲームが怖くてたまらない』って」

 

「……そう。それで?」

 

 俺は彼女に、君は死なない、としか言うことができなかった。レベルもベータ出身者であることも隠した俺にはそれ以上何も言えなかった。

 

 それからしばらくして、どうしても攻撃の度に目を閉じるクセをどうにかできないかと悪戦苦闘していたときに――

 

 ◇ ◇ ◇

 

「よお! キリト、しばらくだな!!」

 

 最前線から離されないように、ギルドの皆にはナイショで行っていた深夜の狩り。そのときに、あのデスゲーム開始の日に別れたギルド≪風林火山≫のリーダー、クラインに会った。

 

 アイツは、以前からのネットゲーム仲間を全員同じギルドで守り続け、今に至るまで一人もギルドメンバーに死者を出していなかった。そういった意味で、俺は少しアイツを尊敬していた。

 

「――久しぶりだな、クライン」

 

「何だよ、オメー最近前線に顔出さねえと思ったら、こんな時間に狩りしてたのか? あんまり太陽浴びねえと、モグラになっちま―――」

 

 そこまで言ったところで、あっちはようやく俺のネームタグの横に表示されたギルドエンブレムに気が付いたようだった。

 

「――オメエ、ギルドに入ったのか?」

 

「…っ、まあ、な」

 

 かつて、俺はデスゲームが開始したとき、自分の仲間を置いていけないという目の前の男を置き去りにした。それ以来、俺にはパーティーを組む資格も、ギルドに入る資格もないとひたすらソロに徹してきたが、それを破ってまで俺はギルドに入ったのだ。俺に置いていかれた、目の前のクラインだって、当然俺を糾弾するとそのときは考えた。しかし――

 

 

「…良かったじゃ、ねえか」

 

 

「……え?」

 

 目の前の男はそんな事おくびにも出さず、ただ俺のギルド加入を喜んでくれた。

 

「いやな、オメエ、あれから攻略組でもちょくちょく見かけてはいたんだが、いつでもソロプレイばっかで、仲間作る楽しさみてえなモンから遠ざかろうとしてるみてえだったからな。ちょいと心配だったんだ」

 

 そう言って、クラインの奴は顔に笑みを浮かべながら、俺の首に鎧を纏った腕を回してきた。

 

「ようやく仲間作りやがって、お兄さんは嬉しいぜ? コノヤロー!」

 

「く…、苦しい。締まってる、締まってる!」

 

「なーに言ってやがる。ゲーム内なんだから、痛くねえだろうが」

 

「気分だよ! いいから離せ、暑苦しい」

 

 そう言ってクラインの奴を引き離したところで、遠巻きに眺めていた風林火山のメンバーが、俺達のところに寄ってきた。何とはなしに、俺はそのメンバーの顔を眺めていたが――

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

 一人のプレイヤーを目にしたところで、思わず自身の目を疑った。ソイツの純白(・・)の髪とそれなりの強化を施した革鎧には覚えが無かったが、左手に盾を携えた姿勢と、何よりその顔立ちは……

 

「…ア……アンタ、は…?」

 

 この上ないほど、俺の知る一人のプレイヤーに似ていた。かつて、俺の目の前で、その命を散らしたプレイヤーと。

 

「…? どうかしましたか?」

 

 そんな俺の反応に、目の前の奴は首を傾げるだけだった。周りを見ると、皆俺の反応に不思議そうな顔をするだけだった。

 

 

 ……アイツ(・・・)、じゃないのか………?

 

 

「オウ! そーだ、紹介するぜ、キリト! コイツラがウチのギルド≪風林火山≫のメンバーだ!!」

 

 そんな空気を吹き飛ばしたのは、俺の隣にいたクラインだった。今の雰囲気を何とも思わなかったのか、それとも話題を変えてくれたのかは、永遠の謎だが。

 

 そしてその場はお互いに自己紹介という流れになって、最後にアイツの番が来たとき、

 

「『レイジ』です。一応、≪風林火山≫の壁戦士(タンク)リーダーを務めています」

 

「つっても、隊長含めて三人しか隊員がいねえけどな」

 

「リーダー……アナタがそれを言いますか。第一自分だって頭数足りないからって、攻撃部隊(アタッカー)の隊長を兼任してるでしょうが」

 

「テッ、テメエ! それは言わない約束だろうが!!」

 

「権力集中型の独裁政権は、いずれ崩壊の一途を辿りますよ? ……そうだ、僕が二代目リーダーになった際の選挙公約(マニフェスト)は、『新規女性メンバーの確保』にしましょう」

 

「オ、オメエ、実はリーダーの座、狙ってやがったのか!? だ、だが、コイツラは俺と長い間背中を預けてきた戦友(とも)だ。そう簡単にゃ―――」

 

「二代目リーダー、バンザーイ!」

 

「どこまでもお供しますぜ、二代目!」

 

「出来ればかわいい系の子をお願いします、二代目! ロリであればなお良し!!」

 

「バカヤロウ! 女性といえば、ムチと伝説のビキニアーマーが似合いそうなお姉さん系だろうがぁぁぁあああぁぁ!!」

 

「オメェラなあぁぁぁあぁあっぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 …何というか、それまでのシリアスな空気が一瞬で吹き飛ばされた。

 

 うん、別人だ。

 

 俺が会ったアイツは状況的にも仕方なかったとはいえ、こんな雰囲気に溶け込む感じじゃなかった。……こんな馬鹿話を、盛り上げる感じでもなかった。

 

 ともあれ、話は前線の状況やら、最近の近況やらに移って行き……

 

「中層プレイヤーの、盾剣士への移行か…」

 

 俺が現状抱えている問題に、話題が移っていた。話してみるとレイジとは思いのほか話しやすく、また同じ盾使いという面からアドバイスをもらえないかと考えたのだ。

 

「いろいろ難しいことはあるけど、一番の問題は、その子が相手の攻撃に目を閉じちゃうって事だよね?」

 

「そうなんだ。それさえ何とかできれば盾を持たせることも可能なんだろうけど、今のままじゃ正直、彼女を中盤に戻して、俺が前線に入る方がよっぽどいいくらいなんだよな……」

 

「――一つ、荒療治ではあるけど、改善させる方法はあるよ」

 

「ホントか!?」

 

 ――このとき、俺は目下の問題が解消されるという嬉しさに、周りをよく見ていなかった。少し視線を巡らせれば、一様に顔を青くした≪風林火山≫のメンバーが見えたというのに。

 

 

「…じゃあ、僕に少しコーチをさせてくれる?」

 

 

SIDE OUT

 




 さて、今回の話でようやく生きてきた一部原作改変とキャラ魔改造タグ。

 とはいえ、サチはそこまで大幅には変えるつもりもありませんが。サチの特訓内容については一言…………『強く生きろ!!!』


 ……さてさて、レイジによく似たプレイヤーとは誰なのか?

 ちなみに、文庫版などの原作読み込んでる方なら気づくかもです。

 ヒントは、『盾持ち』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。