ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
GGO編エピローグにして番外編プロローグでもある、幕間6行きます!
「――こんなところよ。私と
ALOでのキリトとアスナのマイホーム。シノンのGGOでの顛末はようやくの終わりを迎えていた。
「……なあ、シノン」
ここで、今まで黙って聞いていたキリトが初めて口を挟んだ。
「なによ?」
死銃事件の他の顛末でも聞きたいのか?と思ったシノンは、置いてあったハーブティーを口に含む。
「『相棒』じゃなくて、『恋人』じゃないのか?」
「ブホッ!?」
次の瞬間、口の中に含んだ液体を霧のように吹き出した。乙女にあるまじき行動だが、本人にとってはそれどころではない。
「アンタ、いきなり何言いだすのよ!?」
「いや、でもな……正直、レイジが洞窟であんな情熱的な告白してたから、付き合ってるとばかり」
「え? キリト君、それホント? さっきの話では意図的に隠されてたのよね~」
「ちょっとアスナ?!」
女子にとって、他人のコイバナは最大の娯楽である――――ここ数日クラスでも、学校前で待ち合わせした優矢との関係を根掘り葉掘り聞き出そうとするクラスメートに囲まれているシノンは、嫌というほど思い知らされた。
「別に付き合ってないわよ……そんなんじゃないから」
「んふふー、でもシノンも、満更でもないんでしょ?」
目を向けると、アスナがチェシャ猫のような笑いを浮かべていた。その顔に思わず重い息を吐く。
「……まだあれから一週間しか経ってないのよ。シュピーゲル――新川君は、私達二人にとってかけがえのない戦友だった。お互い少し頭を冷やす必要があるわ」
「あ、そっか……ゴメンね、必要以上に騒いじゃって」
「別にいいわよ――――――第一ね」
そこでシノンは目を伏せる。それは彼女の中に渦巻く懸念のため。
「レイジには、私なんかよりもっとふさわしい女の子がたくさんいるわよ」
自分のように重い過去を持つ女は、彼に相応しくないのではないか……それが彼女の懸念だった。その言葉を聞いた途端、目の前で立ち上がり、テーブルをバン!と叩く者がいた。
「そんなことないッ!!」
アスナだった。
「ア、アスナ……?」
「シノン! 誰かを好きになった女の子には、その誰かと幸せになる権利と義務があるの! だから自分のことを『なんか』とか言っちゃダメ!!」
「あ、はい、ゴメンなさい……」
余りの剣幕にたじろぎながら、思わず謝る。ちなみにキリトは半笑いのまま傍観していた。その顔面に、シノンがライフル弾をぶち込みたくなったのも、仕方ないことだろう。そのまま、延々とアスナの恋愛観を語られ、訥々と諭され、解放されたのは、来訪があってからだった。
「こんにちは、お二人さん。こっちにシノンが――――なにやってるの?」
件のレイジがやってきたとき、シノンは何故か板張りの床に正座させられ、その正面で腕を組んで仁王立ちした元血盟騎士団・副団長の姿があった。
「な、なんでもないわよ……それより、何、レイジ? 私に用事?」
「…………あー、うん。少し付き合ってくれる?」
この地獄から解放されるならと、一も二もなく頷く。そのままレイジの後についていき、ついた先は、≪央都アルン≫に佇む、グランドクエスト制覇を記念する白亜の石版の前だった。
「ここ……ALO事件のときの戦場だったのよね? アスナに詳しく聞いたけど」
「う、うん……その……僕にとっては、不可能を可能にした場所というか、ゲン担ぎというか…………」
ここで、ようやくシノンはレイジのいつもとは違う様子に気が付いた。どこか落ち着かず、そわそわした様子だ。やがて、意を決したのか、システムウインドウを操作し始め、終わったときシノンの目の前に一つのウインドウが浮かんだ。
「――――――――≪結婚申請≫……?」
「……SAOでは、どんなに親しい男女でも≪結婚≫まで至った例は、本当にごく少数だった。それは、このシステムを使うってことは、本当に本当の意味で、相手と生涯を共にしたいっていう決意がないと、デメリットの方が大きいシステムだったからなんだ。えーと、だから、つまり、なんだ」
ようやく、本当にようやく、シノンはレイジが何を言いたいのかわかってきた。――そう、それは、つまり。
「――――現実とかゲームとか関係なく……僕と、付き合ってほしい。生涯一緒に、ね」
――――告白。
その言葉を聞いた瞬間、シノンは視界がぼやけるのを感じた。
「で、でも、私……」
「……『でも』なんて言わないで。僕は、君だから、一緒にいたいって思ったんだ」
「…………」
こころが、あたたたかい。
「私、過去に事件起こしてるのよ……?」
「そのことでとやかく言うやつがいるなら、守る。立ち上がれないなら、隣で支える」
「トラウマ持ちだし、体調だってよく崩すのよ?」
「支えるっていったでしょ? むしろそんなときにこそ頼って欲しいよ」
胸が、満たされていく。
「……面倒くさい、女なのよ?」
「僕は、面倒なんて思わない」
「わがままだし、自己中よ?」
「女の子のわがままに付き合うのは、男の甲斐性、かな」
「怒りっぽいし、結構嫉妬深いのよ?」
「……刃傷沙汰以外なら、受け入れます」
最後が少し情けなく、思わずクスリと笑いがこぼれた。そしてシノンは、その笑みの表情のまま、顔を上げる。
「不束者ですが、よろしくお願いします」
その回答に、レイジは一瞬呆け、徐々にその意味を理解し、感情を爆発させようと――
「~~~~~! やっ――――『おめでとー!!!』わあ?!」
その瞬間、横合いから割り込んだ声に、目を白黒させた。
「イヤー、めでたい! 今夜はパーティーだな、レイジの金で!」
「おめでとう、シノン!」
ホールの入り口の影から出てきたのは、キリトとアスナ。
「ギ、ギルマスの俺が……レイジに先越された……」
「若いってのはいいねえ……」
ショックを受けているクラインと、年寄臭い発言のエギル。
「めでたいですー! 次は、キスなんですか?」
「だ、ダメよ、ユイちゃん! そんなことあからさまに聞いちゃ!」
「はわわわわ……」
無邪気な発言のユイに慌てるリーファにシリカ。
「なんでよ……なんで私には男がいないのよー!!」
「マアマア……今撮った映像で儲けたら奢ってあげるから、元気だしナヨ、リッちゃん」
天に向かって吼えているリズベット、そして儲ける気満々のアルフ。――そして。
「おめでとう、レイジ」
祝福を告げる黒猫団から一歩進み出る、サチ。その顔には心からの祝福が溢れていた。
「――ありがとう」
「ふふ……恋人が出来たんなら、前みたいに誰彼かまわず女性に声かけちゃ駄目だよ? SAO時代はそれでやきもきしたんだから」
「は?!」
いきなりのサチの発言。その途端にシノンから少しばかり殺気がもれる。
「……ぜひ詳しく聞きたいわね」
「うん、いいよ。あ、それならこれからどっかのお店で、パーティーしながら詳しく語ろうか。レイジのSAO時代の女性遍歴」
「そんな遍歴持ってませんよ!?」
たまらず止めようとしたレイジが、後ろから羽交い絞めにされる。
「まあまあいいじゃねえか、レイジ」
「リーダー!? 自分のギルドメンバーを犠牲にする気ですか!」
「そんなつもりはねえぞ? 先越されたからって、腹いせしようなんて、これっぽっちも考えてないからな?」
「絶対、後者が理由だああああッ!!」
その後、パーティーは数時間に及び、サチによる証言に基づき、レイジは男女交際初の『恋人による折檻』を味わうこととなった……。
GGO編は前回で終了しましたが……よくよく考えたらバレンタインでやった結婚の顛末やってない!?と気が付き、キャリバー入る前に入れてみました。これがないと、空中爆撃できない……
この話と、一時間後に予約更新したキャラステータスで、GGO編は本当に終了。次回から不定期に番外編を投稿します♪
来週また休日出勤だし、次はいつになるやら……