ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
それでは阿修羅版マザロザ、『シールドクエスト』、≪リンク・スタート≫!!
「はあ……はあ……」
火の粉舞い散る中、
「ふ……はあ……!」
抑えきれない、いや決して抑えない。呼吸とともに肺に広がる、この戦場の熱気を。
「はあ……ああああああ!」
実際には肺に一ミクロンも入っていない戦場の空気。それを吸い込んで走り、跳躍する。
「後ろに、届かせるかあああああっ!!」
『ギァエエエエエエエン!!!』
火の鳥が放った極大の火球を、空中で防ぐ。火球の中心を見据え、その核を
パキィィィィン、とガラスのような音を立てて、火球と盾は、同時に粉微塵に砕け散った。
「あああ?! また壊れたぁぁぁぁぁっ!!」
◇ ◇ ◇
「それでは、無事≪光弓シェキナー≫を入手できましたことを祝って……カンパーイ!」
「「「「カンパーイ」」」」
新生アインクラッド、キリトとアスナのプレイヤーホーム。本日は
……が、その中にあって、テンションが低い者が、二名。
「つ、つかれた……」
一人はここ数日、仲間内での
「また盾が壊れた……」
もう一人はALOに来て以来しょっちゅう盾を壊している、同じく英雄のレイジ。
ちなみにもう一人の英雄、いや
「もー、テンション低いわね。こっからはレイジの盾探し手伝ってあげるから、テンション上げなさいよ」
そう言ってレイジの彼女でもあるシノンが、飲み物とツマミを手に持ってレイジの隣に座る。ここでようやくレイジが顔を上げた。
「……分かった。ありがとう、シノン」
「礼には及ばないわよ」
シノンは片目でウインクをし、持ってきたツマミへと手を伸ばす。仮想世界ゆえに、二人とも現実の身体にアルコールは一滴も入っておらず、そのまま会話に参加していく。
「――――そう言えば、何でお前、『
次の
「あー、そういやそうだな。正直、
「あ、それは私も思った。防御能力優先なら、他の種類でもいいんじゃない?
リーダーやリズさんの言う通りで、
「……一番の理由は、格闘の邪魔にならないからかな」
特殊形状の盾を選ばない一番の理由は、それである。大きい盾は、確かに防御範囲が広いが、その分取り回しの邪魔になる。その上盾での防御中は、その盾自体が自分の視界を遮るのだから、格闘スタイルの自分にはハンデでしかない。広く硬い盾と、間合いが広く威力の高い
「でもよう、そうなると選択肢がほとんどなくなるぜ?」
「この際、硬けりゃ
「本来初心者用の『
「そのプレイヤーメイドに満足してないのよー、シリカ。人が知り合いに頼んでやった
「スミマセン……」
正直、どんな盾を持っても、アインクラッドで持っていた≪アダマス・バックラー≫に比べてしまう自分がいる。アインクラッドでの長い冒険を支え続けた相棒として、身体の感覚が最適化されてしまっている。かと言って、新しい≪アダマス・バックラー≫を作ろうにも、材料の大亀はアインクラッド50層のエリアボス。未だ20層台が解放されたばかりのALOでは、何時になるかわからない。
「そうなると、今回レイジの盾はすぐに見つかりそうにないわね……年明けに気長に探しましょ」
確かに長丁場になりそうだ。何より
「シノンの言う通りだね……そう言えばシノンは年末年始は故郷で過ごすんだっけ?」
「ええ。祖父母の実家に戻るつもりよ」
シノンの実家は東北の小さな街で、祖父母と母親との四人暮らしだった。彼女の事件の噂が広まってからは敬遠していた故郷だが、彼女も一度帰る決心がついた。……とはいえ。
「――――一人で、大丈夫?」
「え。あー、大丈夫よ。元々の私の地元よ? 何の心配もいらないわ」
……僕は、シノンが故郷で広まった事件の噂に、追い立てられるように東京へ出てきたことを知っている。彼女が少しずつ事件に向き合い始めたと言っても、この12月に入ってのことだし。第一、彼女の故郷でそうした噂から守ってあげたくても、東京にいる僕じゃ――――――――、あ。
「あのさ、シノン」
「ん? 何、レイジ」
「僕も、シノンの故郷について行っていい?」
――時が、止まった。
「…………あ、あれ? シノン、どうしたの?」
シノンは、テーブルからハーブティーを持ち上げた姿勢で止まっていた。よく見ると、背景の他のメンバーも止まっていた。あれ?何かおかしなこと言った?
「……それは、私の帰省に、ついてくる、ってこと?」
「そう、だね」
「…………えっと、それは、つまり……」
そこまで言ってシノンは顔を赤くして俯いた。よく見ると耳まで真っ赤だ。
「……アンタ、既にご家族への挨拶を考えてるとか…………!」
リズさんが、少女マンガみたいな顔で後退っていた。というか、『挨拶』。まあ、そうか。えーと……
「……うん。そうだね。やっぱりシノンのご家族には、一度正式にお付き合いしてることの報告と挨拶に行かないとね」
「ふえ?!」
おお……あの普段クールなシノンが奇声を上げた。かなり
いささか緊張感に欠けていた僕の肩に、ポン、とカタナを抜き放った某野武士面の手が置かれた。
「レイジ――俺と剣で語り合おうじゃねえか」
「あの、リーダー? 一体何の真似で――――」
言った次の瞬間、カタナが振り下ろされ、イスが真っ二つになった。ちょっと?!ここ、キリトとアスナさんの家なんだから、物壊したら不在のバーサクヒーラーに殺られますよ!!
「お前に、シノン嬢ちゃんはやらねえぇえええええええッ!!」
「ちょ、さっきのボス戦よりカタナのキレがいいとか! それに何で、そのセリフをリーダーが言うんですか!!」
言う権利があるのは、花嫁の父だけだ。
「ちょっとー、散らかるわよー?」
「クラインさん……顔が鬼になってます」
「やっぱり、あの人も『SAO生還者《サバイバー》』ね。この狭い室内で、あんなに鋭い斬撃を……」
女性陣は、傍観決め込んでる!?く、こうなったらキリト!SAOもALOもGGOも、一緒に解決した君なら……!
「頑張れよ、レイジ」
「ファイトです、レイジ!」
こっちも、親子そろって、傍観モードかああああッ!!?
「それにしても、クラインは元気だな。この間
「は?」
キリトからの意外な情報に一瞬動きが止まり、そこにリーダーのカタナが衝突した。もっとも『
「リーダーが
「いや、向こうも剣だ。それも完全な地上戦。――そういや、言ってなかったな」
そして、キリトは静かにその名を告げた。
「――――――――≪絶剣≫、って知ってるか?」
シノン、≪光弓シェキナー≫GET!!あとはレイジの盾だけ……
そう思っていたら、現実の方である意味重要イベント、『実家へのご挨拶』が発生!!アニメ版マザロザで言っていた『しののんは帰省中』というセリフから、広がっていきます……
さて、次回シノンはどうなるのか?レイジはどんな挨拶をするのか?そして――――全くキャラの決まっていない、祖父母と母親はどうなるのか!?
次回更新は来週か再来週か未定です。今回みたいに急に仕事が入りそうで……