ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

88 / 106
急に仕事が入り、一日遅れました!

それでは阿修羅版マザロザ、『シールドクエスト』、≪リンク・スタート≫!!



006 シールドクエスト1~光弓シェキナー

 

「はあ……はあ……」

 

 火の粉舞い散る中、呼吸(いき)さえも響き渡る。

 

「ふ……はあ……!」

 

 抑えきれない、いや決して抑えない。呼吸とともに肺に広がる、この戦場の熱気を。

 

「はあ……ああああああ!」

 

 実際には肺に一ミクロンも入っていない戦場の空気。それを吸い込んで走り、跳躍する。

 

「後ろに、届かせるかあああああっ!!」

 

『ギァエエエエエエエン!!!』

 

 火の鳥が放った極大の火球を、空中で防ぐ。火球の中心を見据え、その核を円形盾(バックラー)で防ぎ、そして――――

 

 

 パキィィィィン、とガラスのような音を立てて、火球と盾は、同時に粉微塵に砕け散った。

 

 

「あああ?! また壊れたぁぁぁぁぁっ!!」

 

 ◇ ◇ ◇

 

「それでは、無事≪光弓シェキナー≫を入手できましたことを祝って……カンパーイ!」

 

「「「「カンパーイ」」」」

 

 新生アインクラッド、キリトとアスナのプレイヤーホーム。本日は伝説級(レジェンダリィ)武器の一つ、≪光弓シェキナー≫の入手イベントを終え、その打ち上げだ。特に武器の持ち主となるシノンは何時になく上機嫌で、シリカやリーファと楽しく談笑している。

 

 ……が、その中にあって、テンションが低い者が、二名。

 

「つ、つかれた……」

 

 一人はここ数日、仲間内での伝説級(レジェンダリィ)武器(ウェポン)入手に奔走した、SAO解放の英雄、キリト。

 

「また盾が壊れた……」

 

 もう一人はALOに来て以来しょっちゅう盾を壊している、同じく英雄のレイジ。

 

 ちなみにもう一人の英雄、いや女英雄(ヒロイン)であるアスナは、京都の実家に帰省しておりここにはいない。

 

「もー、テンション低いわね。こっからはレイジの盾探し手伝ってあげるから、テンション上げなさいよ」

 

 そう言ってレイジの彼女でもあるシノンが、飲み物とツマミを手に持ってレイジの隣に座る。ここでようやくレイジが顔を上げた。

 

「……分かった。ありがとう、シノン」

 

「礼には及ばないわよ」

 

 シノンは片目でウインクをし、持ってきたツマミへと手を伸ばす。仮想世界ゆえに、二人とも現実の身体にアルコールは一滴も入っておらず、そのまま会話に参加していく。

 

「――――そう言えば、何でお前、『円形盾(バックラー)』にこだわるんだ?」

 

 次の伝説級(レジェンダリィ)入手を企画していた時、不意にキリトが聞いてきた。

 

「あー、そういやそうだな。正直、伝説級(レジェンダリィ)ぐらいになると、他の防御範囲の広い盾が多いんじゃねーか?」

 

「あ、それは私も思った。防御能力優先なら、他の種類でもいいんじゃない? 四角盾(タワーシールド)とか三角盾(カイトシールド)とか」

 

 リーダーやリズさんの言う通りで、伝説級(レジェンダリィ)の強い防具を探していくと、それに対する曰くとか効果を表現するため、特殊な形状をしているものも多くなってくる。有名どころでは、船の底のような細長い木の葉形の≪王盾プライウェン≫とか、メドゥーサの首がくっついた≪神盾アイギス≫とか。

 

「……一番の理由は、格闘の邪魔にならないからかな」

 

 特殊形状の盾を選ばない一番の理由は、それである。大きい盾は、確かに防御範囲が広いが、その分取り回しの邪魔になる。その上盾での防御中は、その盾自体が自分の視界を遮るのだから、格闘スタイルの自分にはハンデでしかない。広く硬い盾と、間合いが広く威力の高い突撃槍(ランス)長柄武器(ポールウェポン)で攻撃するスタイルとは根本が異なる。接近戦で即応できない『目隠し』に意味はない。

 

「でもよう、そうなると選択肢がほとんどなくなるぜ?」

 

「この際、硬けりゃ伝説級(レジェンダリィ)でなくてもいいよ。防御値優先、特殊効果はなくてもいいし」

 

「本来初心者用の『円形盾(バックラー)』で、かつ防御値優先ですから……やっぱりプレイヤーメイドになるんじゃないですか?」

 

「そのプレイヤーメイドに満足してないのよー、シリカ。人が知り合いに頼んでやった円形盾(バックラー)、物足りない顔して、『次』を探し始めるし」

 

「スミマセン……」

 

 正直、どんな盾を持っても、アインクラッドで持っていた≪アダマス・バックラー≫に比べてしまう自分がいる。アインクラッドでの長い冒険を支え続けた相棒として、身体の感覚が最適化されてしまっている。かと言って、新しい≪アダマス・バックラー≫を作ろうにも、材料の大亀はアインクラッド50層のエリアボス。未だ20層台が解放されたばかりのALOでは、何時になるかわからない。

 

「そうなると、今回レイジの盾はすぐに見つかりそうにないわね……年明けに気長に探しましょ」

 

 確かに長丁場になりそうだ。何より円形盾(バックラー)以外だと動きに不具合やら違和感が出る。納得するものを探すしかないだろう。

 

「シノンの言う通りだね……そう言えばシノンは年末年始は故郷で過ごすんだっけ?」

 

「ええ。祖父母の実家に戻るつもりよ」

 

 シノンの実家は東北の小さな街で、祖父母と母親との四人暮らしだった。彼女の事件の噂が広まってからは敬遠していた故郷だが、彼女も一度帰る決心がついた。……とはいえ。

 

「――――一人で、大丈夫?」

 

「え。あー、大丈夫よ。元々の私の地元よ? 何の心配もいらないわ」

 

 ……僕は、シノンが故郷で広まった事件の噂に、追い立てられるように東京へ出てきたことを知っている。彼女が少しずつ事件に向き合い始めたと言っても、この12月に入ってのことだし。第一、彼女の故郷でそうした噂から守ってあげたくても、東京にいる僕じゃ――――――――、あ。

 

「あのさ、シノン」

 

「ん? 何、レイジ」

 

 

「僕も、シノンの故郷について行っていい?」

 

 

 ――時が、止まった。

 

「…………あ、あれ? シノン、どうしたの?」

 

 シノンは、テーブルからハーブティーを持ち上げた姿勢で止まっていた。よく見ると、背景の他のメンバーも止まっていた。あれ?何かおかしなこと言った?

 

「……それは、私の帰省に、ついてくる、ってこと?」

 

「そう、だね」

 

「…………えっと、それは、つまり……」

 

 そこまで言ってシノンは顔を赤くして俯いた。よく見ると耳まで真っ赤だ。

 

「……アンタ、既にご家族への挨拶を考えてるとか…………!」

 

 リズさんが、少女マンガみたいな顔で後退っていた。というか、『挨拶』。まあ、そうか。えーと……

 

「……うん。そうだね。やっぱりシノンのご家族には、一度正式にお付き合いしてることの報告と挨拶に行かないとね」

 

「ふえ?!」

 

 おお……あの普段クールなシノンが奇声を上げた。かなり希少(レア)な場面に頬が緩む。

 

 いささか緊張感に欠けていた僕の肩に、ポン、とカタナを抜き放った某野武士面の手が置かれた。

 

「レイジ――俺と剣で語り合おうじゃねえか」

 

「あの、リーダー? 一体何の真似で――――」

 

 言った次の瞬間、カタナが振り下ろされ、イスが真っ二つになった。ちょっと?!ここ、キリトとアスナさんの家なんだから、物壊したら不在のバーサクヒーラーに殺られますよ!!

 

「お前に、シノン嬢ちゃんはやらねえぇえええええええッ!!」

 

「ちょ、さっきのボス戦よりカタナのキレがいいとか! それに何で、そのセリフをリーダーが言うんですか!!」

 

 言う権利があるのは、花嫁の父だけだ。

 

「ちょっとー、散らかるわよー?」

 

「クラインさん……顔が鬼になってます」

 

「やっぱり、あの人も『SAO生還者《サバイバー》』ね。この狭い室内で、あんなに鋭い斬撃を……」

 

 女性陣は、傍観決め込んでる!?く、こうなったらキリト!SAOもALOもGGOも、一緒に解決した君なら……!

 

「頑張れよ、レイジ」

 

「ファイトです、レイジ!」

 

 こっちも、親子そろって、傍観モードかああああッ!!?

 

「それにしても、クラインは元気だな。この間決闘(デュエル)で負けたばかりなのに」

 

「は?」

 

 キリトからの意外な情報に一瞬動きが止まり、そこにリーダーのカタナが衝突した。もっとも『不死存在(イモータルオブジェクト)』の表示に弾かれただけだが。

 

「リーダーが決闘(デュエル)で? 完全魔法戦闘とか?」

 

「いや、向こうも剣だ。それも完全な地上戦。――そういや、言ってなかったな」

 

 そして、キリトは静かにその名を告げた。

 

 

「――――――――≪絶剣≫、って知ってるか?」

 

 




シノン、≪光弓シェキナー≫GET!!あとはレイジの盾だけ……
そう思っていたら、現実の方である意味重要イベント、『実家へのご挨拶』が発生!!アニメ版マザロザで言っていた『しののんは帰省中』というセリフから、広がっていきます……

さて、次回シノンはどうなるのか?レイジはどんな挨拶をするのか?そして――――全くキャラの決まっていない、祖父母と母親はどうなるのか!?

次回更新は来週か再来週か未定です。今回みたいに急に仕事が入りそうで……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。